【急募】安価で怪人作るわwwww   作:胡椒こしょこしょ

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対峙

澄み渡った川の清流。

しかし、街自体が下界と切り離されているからか水位は段々と下がっている。

町自体が浮いているから下へと下流域の水が垂れ流しになっているのかもしれない。

 

そんな中、私は一人...いや人格だけを含めれば3人で紫の光の柱に相対している。

私と光の柱、その発生源である祭壇の間には黒い装甲を纏った武士のような異形。

それは複数、群れを成してゾンビのように蠢いている。

どこかで見たような装甲だと思えば、幾度となく相対したあの幹部らしき男の物と類似していた。

 

「...技量まで、同じだったら.....。」

 

私は一度、自分の技を返されている。

我が九条家に伝わる剣技。

なぜ奴があんなにも容易に返すことが出来たか不思議だった。

でも、柚月からあの男が幹部にされてしまう前の名前を聞いて一度家の蔵を調べてみたら簡単に分かった。

 

太刀洗弘人。

彼は一時期ではあるが門下生だったようだ。

なんでも付近の道場を道場破りして回っていたようで、私の祖父に一度負けたことで道場に短期間であったが入ったとあった。

理由は強さを求めて。

奇しくも、あの男は私にとっても同門にあたる人物だったのだ。

だからこそ、九条の剣技を使う事が出来た。

 

もしその技量まで目の前の偽物が模倣していれば、私の攻撃が通じるか怪しくなる。

それに、連中が手に持っているのは間違いなくあの男と同じ刀。

あの刀の恐ろしさは何度も目にしている。

魔法を喰らう刀。

例え技量を模倣していなかったとしても、アレを携えた集団が一斉にこちらに迫ってくれば面倒なことになるのは想像に難くない。

 

そう考えていると....。

 

『なんだ....?ビビっちまったか?...今からでも愛川を呼ぶかよ?』

 

ポケットにほんのりと人肌くらいの熱を感じると共に、頭の中に女性の声が響く。

私はその声に対して、ただ淡々と返答した。

 

「別に....そんなことないです。それに、態々柚月から離れたのに....そんなことできません。柚月には...やるべきことがあるんで。」

 

そう言うと声の主、橘川愛羽は声に笑いを帯びながらも返答する。

 

『まぁ、そりゃそうだろうな。アイツには首謀者をぶん殴るっていう大事な役目があるしな。』

 

そうだ。

柚月だけが、あの触れられない男に一撃与えることが出来る。

彼女だけがあの男に匹敵している。

...でも、それが悔しい。

私は、柚月を守る。

そう決めたはずだ。

それなのに、柚月を一番危険な場所へと送り出すことしかできなかった。

 

それに....私はあの時確かにアイリスさんを貫いていた。

奴の意思に従って身体が勝手に動いていた。

あの時の私は、完全に奴の傀儡だったのだ。

そんな私が、柚月の...私達の最後の希望の近くに居てはいけない。

彼女のことを想うなら、なおさら....離れるべきだ。

彼女を一番近くで守りたい。

だが...それでは却って彼女を危険に晒してしまう。

 

幸い、塔の方向に飛んでいくマリアさんと信女さんを偶然見つけた。

あの進路なら塔で合流するはずだ。

それなら彼女達の方が、私なんかよりも良い。

 

傍に居られないなら、柚月の為に何が出来るだろう。

答えは一つだ。

私がしてあげられるのは周りの光の柱、なにやら奴が言う術式を構成していそうな祭壇を破壊することだけ。

それだけだ。

 

思案していると、さっきの橘川愛羽とは対照的におっとりとした声が私の頭に響く。

 

『大丈夫です...そのっ、私達も居るんで!』

 

「...ありがとう舞羽さん。」

 

ポケットからステッキを取り出す。

それは私の持っている青いステッキよりも少し小ぶりな紫色のステッキ。

この中に、橘川姉妹の意思が内包されている。

 

私が柚月から離れると言った時、柚月は心配して止めてくれた。

でも、理由を話したところ彼女がこのステッキを渡してくれたのだ。

私が一緒に居られないなら、二人に力を借りてと。

私は一人じゃない....柚月が渡してくれた、信用できる二人が居る。

...私としてはどちらかと言えば妹である舞羽さんの方が接しやすいのだが。

 

『まっ、私と舞羽が居れば百人力だし、大丈夫だって!パパってやって終わりで良いだろ。』

 

『も~、またお姉ちゃんは調子のいいこと言って....』

 

軽薄な様子でそう言う愛羽さんに舞羽さんは呆れたように言葉を漏らす。

こんな風に大雑把な感じで物事捉えて生きていければ思い悩むことも少ないんだろうなぁ。

そう思うと少し愛羽さんが羨ましい。

...まぁそれに振り回されている舞羽さんには同情を禁じえないが。

 

相手側は刀を構えて臨戦態勢。

それを見据えると、私は二つのステッキを奴らに向ける。

そして言葉を口にした。

 

「....グラジオラス、行くよ。...舞羽さん、愛羽さん...力を貸してください!」

 

『勿論...です!お姉ちゃんも行くよ...?』

 

『こっちはもう待ちきれないっての!起動しろ!ロベリアァ!!!』

 

私が声を掛けると、舞羽さんと愛羽さんが答える。

それと同時に両手の青と紫の杖が光を放った。

 

<Gladiorus start-up>

 

<Loberiawins wecken Gedaan>

 

二つの杖から機械音声が鳴り、杖の先端の宝玉が光の粒子が放出される。

青の粒子と紫の粒子、それが混ざり合いながらも晶の身体を包み込んだ。

 

<Coalescentie><Koaleszenz>

 

そして、粒子が晴れると濃い紫のフリルと薄い紫、そして青いラインの入ったぴっちりとしたラバー部で形成されたアイドル衣装に騎士装甲を身に纏った晶の姿。

髪が伸びることで、前髪が目元に掛かる。

そして横髪はツインテールに結った黒混じり紫のメカクレツインテールへと髪型が変化していた。

 

前に一度姫啞がやっていたというステッキの同時使用による新形態。

初めてやったことだけど上手く行った....。

そう安心していると、頭の中で愛羽さんがおずおずと声を発する。

 

『なぁ...融合したのは良いけど、なんか股辺りにぶら下がっている気がするんだけど....。』

 

...私の股下に生えている男のアレのことだろうか。

魚のような怪人の能力で生えた器官。

確かに最近はコレにも慣れてきて排泄の時などもスムーズに済ませられているが、本来女性には生えていない物だ。

愛羽さんが戸惑っても仕方がない。

すると、舞羽さんがその言葉に返答する。

 

『...えーと、お姉ちゃん。そこは結構デリケートな話になるから、今はやめよっか?ね?』

 

「....別に気を遣わないで良いですよ。というか、逆にやりづらいし....。」

 

身体を共有しているというのに、今更だ。

それに、あからさまに気を遣われていると思うとちょっと気まずい。

言うならちゃんと言って欲しい。

 

すると、愛羽さんは一通り笑うと言葉を口から紡ぎ出した。

 

『まっ、チ〇コのことなんざどうでもいいわ。今一番大事なのは....』

 

彼女の言葉と共に、私の意思に反して口が開いた。

えっ、ちょっ....!

 

「世界の終わりに、やっと私達の見せ場ってのがやってきたってことよ!!」

 

そう言うと、背後に鎌が現れる。

それを握ると、空を蹴った。

身体の主導権を奪われた!?

やっぱり滅茶苦茶な人だ....私の身体なんだけど!!

 

そう思っていると、今度は舞羽さんの声が頭を響く。

 

『だ、大丈夫です!怪我とかしないように私もコントロールしますから!!』

 

そう言われても安心できないんだけど...。

そう思っていると、目の前の黒い武者と肉迫する。

黒い武者は刀を振りかざし、こちらを切り裂こうとする。

 

「おっそ~い!愛羽、止まって見えるゾ☆」

 

そう言うと、相手の腕に鎌を引っかけて引くことで刀を持っている腕を切り落とす。

そのまま流れるような所作で股下から頭にかけて切り上げて一刀両断する。

しかしそれにしてもなんだ今の気持ちの悪い話し方....。

 

『さ、最近、お姉ちゃん素の口調で話しすぎて、配信の時にしていた喋り方忘れちゃったんです....。それで必死に思い出そうとしているんですよ....。』

 

...身体を失ってもまだ配信のこと引き摺っているのか...。

正直、私からしてみればありのままの方が滅茶苦茶だけど親しみやすいんじゃないかと思う。

圧倒的にぶりっ子が似合っていない。

それなら舞羽さんがやった方が良いんじゃないだろうか?

そう思わずにいられなかった。

 

「....テメェ、今誰が自分の身体を動かしてんのか分かってんのか?」

 

...どうやら愛羽さんに考えている事が伝わっているらしい。

これでは下手なこと考えれば私の身体を危険に晒しかねない。

今更ながら柚月に返還したい気分になった。

 

現在の自分の状況に憂鬱になっていると、まだかなりの数の鎧武者が迫っているのが見える。

牽制くらいはした方が良いだろう。

お願い....カムラン!!

 

<code...KamRam>

 

私がそう念じると、杖が光って足元に様々な形の剣が数多出現する。

それを見て、私の口元はニヤリと不敵に笑った。

 

「へぇ~、面白れぇ。舞羽!!」

 

『うん!』

 

愛羽さんの言葉に元気よく頷く舞羽さん。

その瞬間、私の身体は迫りくる武者たちに腕を翳す。

すると、地面に突き刺さっていた剣が虚空に浮かび切っ先を彼らに向けた。

そして腕を降ろすと剣が勢いよく射出される。

 

愛羽さんと舞羽さんの複合魔法。

愛羽さんの物体を引き寄せる魔法のベクトルを舞羽さんの軌道変化の魔法で変えることで遠距離攻撃を可能にしているんだ。

 

刀剣たちは空中を泳ぐかのように飛び回る。

武者たちを避けて、祭壇へと殺到する刀剣たち。

しかし、武者たちは身体を液状化にすると敢えて自分から刀へと当たりに行く。

動きが鈍くなる鎧武者たち。

だが、ずるりと身体から刀剣を引き抜くとまた動き出す。

後ろを見ると、一刀両断したはずの鎧武者がズルズルと液状になって集まっていき、また切り裂かれる前の姿で現れる。

 

どんなに突き刺しても真っ二つにしても今みたいに再生するんだとしたら、必然的に消耗戦になる。

私達魔法少女は魔法を使うたびに魔力を使う。

消耗戦になると不利なのはこっちだ。

 

「そんな....キリがない.....ってえっ?」

 

自分の意思に従って口が動いた。

どういうことだ?

今身体の主導権を握っていたのは愛羽さんのはず....。

 

『あぁ。いや良い事思いついたから変わった。』

 

「い、良い事って何ですか....?」

 

頭に響く彼女の言葉に疑問符を浮かべると、愛羽さんは返答した。

 

『...私達は、あの光の柱を破壊する為に来たんだ。そうだろ?』

 

「えぇ...そうですけど。」

 

今更何を言うのか。

私は柚月の傍には居られない。

だからこそ、今ここに居るのだ。

それ以外になんだと言うのか?

 

そう思っていると、舞羽さんは声を出す。

 

『もしかしてお姉ちゃん....!』

 

舞羽さんの言葉を聞いて、ニヤリと笑みを浮かべる愛羽さん。

 

『そっ、つまりは態々あんな面倒くさい奴の相手なんかしなくてもいいってわけだ。私たちの勝利条件はあのダセェ祭壇をぶっ壊すこと。』

 

「でも、敵はそう簡単に接近も許してくれない。それに.....。」

 

彼らはどういう理屈か知らないが身体を液状化させる。

その速さは武者の姿の時の比ではない程に素早い。

さっきのように遠距離から祭壇を撃ち抜こうとしても軌道上に移動して妨害してくる。

 

それに、接近で破壊しようとしても彼らは液状で近づき、実体化して刀を振るだろう。

これ幸いと刀で袋叩きにしようとするかもしれない。

 

『最後まで聞けって。私と舞羽の魔法であの武者共をみんな纏めて上空へと引き寄せる。その間にお前が祭壇に肉迫しろ。良いな?』

 

『でも、お姉ちゃん!あの数でしかも形が変わる相手だよ!?私は魔法の軌道を変えるだけだから良いけど、お姉ちゃんの魔力が....』

 

悲痛な声を出す舞羽さん。

すると、愛羽さんは不機嫌な様子で答える。

 

『はぁ?舞羽、何要らない心配してくれっちゃってんの?そんなのいらないって....それに、このまま奴らに付き合っていたら消耗戦になる。そうだろ?』

 

『そうだけど....。』

 

愛羽さんの言葉を聞いても心配そうな声で渋る舞羽さん。

姉のことを心配しているのだろう。

...だが、愛羽さんの言う通りそのくらいしなくては祭壇を破壊することは出来ない。

それなら....。

 

「...愛羽さんの案で行こう。」

 

『晶ちゃん!でも!!』

 

私の言葉を聞いて、慌てた様子で声を発する舞羽さん。

その声を聞いて、補うように私は口を開いた。

 

「ただ!....愛羽さんに負担がかからないように、早急に祭壇を破壊する。それで、いい?」

 

『...晶ちゃん。....分かった。お願い!』

 

舞羽さんは了承したのか私に頼み込む。

すると、愛羽さんは上機嫌に声を張り上げる。

 

『じゃ、決まった所だし....さっさと終わらせますかぁ!!』

 

 

そう言った瞬間、黒武者達がまるで見えない手に両手で掴まれたように一纏めになる。

そして持ち上げられるように上空へと浮かび上がる。

逃れようとジタバタと藻掻く黒武者達。

一部は液状になるも、一瞬脳内で愛羽さんが息を荒くした瞬間、ギュッと固まったように空中を漂う。

 

『...ッ、晶さん!今です!!』

 

舞羽さんがそう私に告げる。

その声を聞いた瞬間、跳ねるように地面を蹴った。

 

『ッ...つぅ....余計に動きやがって.....チッ......。』

 

地面を駆けている間も、愛羽さんの苦悶の声が聞こえてくる。

ちらりと上を見れば、黒武者は一つの液体となって上空からなんとか私の方へと向かおうとしている。

 

地面を飛ぶように駆けて、祭壇まであと7歩。

このままいければ....!!

すると、頭の中で愛羽さんが声を張り上げた。

 

『上!!』

 

その声を聞いて咄嗟に上を見る。

すると、黒いスライム上に変化した黒武者。

彼らの身体がブクブクと膨れている。

彼らの身体には黒い刀がこちらに剣先を向けているのが半透明の身体から見えた。

 

まずい。

直感で分かる。

このままでは、やられる。

剣先は、私の方へと向いている。

もしかすれば、発射しようとしているのか。

....なら、その前に祭壇を壊すまで!

 

<Reinforcement>

 

「っあぁぁぁああああぁああああ!!!!」

 

ありったけの魔力で脚力を強化。

底上げした脚力で、地面を力いっぱいに蹴った。

頭から滑り込むように祭壇との距離を詰める。

自分の後ろの地面にパンパンと言う弾ける音と共に刀が突き刺さっていく。

 

祭壇まであと5歩、4歩....3歩。

遂には自分の横に刀が突き刺さる。

このままでは刀が私に突き刺さるのは時間の問題だ。

...だけど。

 

「私が到達する方が....早い!!!」

 

杖を刀に変える。

そして、咄嗟に構えた。

私の....九条流の基礎。

生まれついた時から叩き込まれていた動作は、決して私を裏切ることなく自然に行う事が出来た。

何万回も降ってきたこの一撃、太刀筋が乱れることはあり得ない。

全身全霊の踏み込み。

その力を全て振り下ろす刀にッ!!

 

「九条流剣技.....」

 

パンと頭上で弾ける様な音がした。

刀が発射されたのだろう。

だけど....私の、勝ちだ!

 

「____唯閃っ!!!」

 

瞬間、祭壇を通過する。

そして晶は首を横に傾ける。

その直後に頬を掠り、彼女の目の前の地面に突き刺さる刀。

切り傷と共に、一瞬の脱力感が襲うも晶の残心を崩すことすら叶わない。

 

彼女の背後には両断された祭壇。

斬られた祭壇は崩れて地面に散乱する。

そして紫の光は下部分から掻き消えるように消失した。

後に残るのは上空からはらはらと粉雪のように降る紫の粒子。

 

こうして、一つ術式の要は潰された。

 

 

 

 

 

 

「相性が....悪いわね。」

 

琴乃は歯噛みする。

光の柱の一つ。

既に他の三つの柱は光を失っていた。

残りはここ一つ。

しかし、そんな中....琴乃と祭壇の間には黒い武者と、現代兵器に身を包んだ武装集団が居た。

 

「当たり前です。...ここはこの土地でも最も大きな龍脈の一つ。ここだけはなんとしても守り切らなくてはいけない。そして...貴方の対策だって出来ているのです。」

 

そう言うと、彼らは銃を構える。

そして司令官と思しき男が手を降ろすと発砲し始める。

 

「ッ!」

 

琴乃は目の前を手で払う。

すると、目の前を白い靄が包み込む。

そして琴乃に向けて殺到した銃弾は霞に阻まれると力なく地面に落ちていく。

 

防ぐことが出来た。

そう安堵した瞬間、右の方から殺気を感じる。

目を咄嗟に向けると、液状化した黒武者が地面を這うようにしていつの間にか距離を縮めていた。

 

「ッ、案山子ちゃん!!」

 

そう言うと杖が光り、彼女と実体化して刀を振り下ろさんとする黒武者の間から案山子が地面から生えてくる。

刀に接触すると、案山子はグジュグジュと刀身へとまるで喰われるかのように飲み込まれていく。

 

(これは....あの時の、幹部の人と同じ刀.....!)

 

見覚えのある光景から、目の前の異形の持つ力が以前戦闘した人物と同一の物であると確信する。

それと同時に、脂汗が浮き出る。

あの人と同一の力、であるなら彼女の霞もなんなく切り裂けるだろう。

 

(それなら爆発させれば....ッ!!)

 

そう思考していると、視界の隅から発砲音。

見れば、武装集団は散開して自分を取り囲むように移動する。

そして集団は銃器を構えると、琴乃目掛けて発砲する。

 

「ッ!通らないっ!!」

 

自分の周囲に手を翳す。

全方位に立ち込める霞。

霞に阻まれる弾丸。

しかし、その瞬間...液状化していた黒武者達が琴乃の四方に現れると、刀を構えて突撃する。

 

下半身を液状化しているだけあって、その接近速度はさっきとは桁違いだ。

刀は霞に突き刺さると、刀身に霞が飲み込まれてその部分に人一人入れるだけの穴が出来てしまう。

あと数歩分連中が踏み込めば突きが自分に当たってしまう。

 

(ッ....しょうがない!)

 

「行って!かぼちゃさん!」

 

<Vandrende sjel>

 

杖を振り上げると四方にジャックオーランタンが現れる。

浮遊したジャックオーランタンは突きを放とうとする黒武者目掛けて飛んでいく。

そして刀身が触れる前に爆発した。

 

響く爆音と立ち込める砂ぼこり。

空中を舞い、地面へと投げ出される琴乃。

爆破した距離が至近距離出会った分、自分自身も爆風で吹き飛ばされてしまったのだ。

地面を転がっただけあって身体のあちこちが痛む。

 

しかし、ここで倒れているわけには....。

そう思った瞬間....砂煙を穿つように刀がこちらに高速で飛んでくる。

 

「ッ!!?」

 

(そんな....霞で防ぐ?でも、あの刀に霞は通用しない!!ならっ...避けるしか....。)

 

なんとか立ち上がって後方に飛びのこうとするも、間に合わない。

終わりかと思った、その瞬間。

凄まじい風とエンジン音と共に、お腹を誰かに抱えあげられる。

それは大型のバイク。

ヘルメットを付けた人物が琴乃を抱きかかえているのだ。

 

バイクは素早い機動で飛来する刀を避けると、その場で止まり、琴乃を降ろした。

そしてその人物はバイクから降りると、ヘルメットを外すと、こちらに口を開く。

 

「よぉ、大人魔法少女。こんな連中と遊ぶくらいなら俺と夜のドライブデートでもしないか?」

 

そう言ってくる男に、彼女は返答する。

 

「...助けてくれたところ悪いんだけど、私愛する旦那と息子が居るの。ごめんなさい。」

 

そう言うと、男は肩を竦める。

 

「なんだよ人妻かよ....。...それなら、そこの出世頭、お前が俺とランデブーしてくんねぇか?この際、男でも我慢してやるよ。」

 

「...葛木構成員。貴方如きがこんな所に何の用です。」

 

相手側は男を見て名前を呼ぶ。

もしや敵側....?

それならなんで助けてくれたのだろうか....。

そう思い、身構えると彼はこちらを見て笑う。

 

「そんな警戒しなくても俺とアンタの目的は同じだ。あの祭壇を破壊する...。」

 

「そ、そう.....。」

 

思えばここに居るということはあの祭壇を壊すか守るか。

このどちらかの目的を持った人物である可能性が高いのだ。

誰かは分からないが、なんにせよ私の味方が増えたのである。

 

「....出来るとお思いですか?貴方風情に。」

 

部隊の隊長らしい男はそう言って冷笑する。

そんな相手を見て、葛木と呼ばれた男も冷笑し返した。

 

「ごちゃごちゃとうるせぇんだよ傀儡が。どうせ自我なんか持ち得てないんだから、人間の振りなんかしてんじゃねぇよ。それに.....。」

 

そして、懐からナイフを取り出す。

そのナイフを相手に向けた。

 

「それを言うなら元素材班のお前だってそうだろ?」

 

「....構え。」

 

隊長格であろう人物は返事することなく、そう呟く。

すると武装集団たちは銃器を琴乃たちに向ける。

そして黒武者達も下半身を液状化させた。

彼らは刀を持っておらず、爆発を受けたにも関わらず五体満足で立っていた。

 

それを見ると、男は琴乃に声を掛ける。

 

「....アンタは祭壇だけを狙って攻撃を仕掛ければいい。後は俺がやる。」

 

「でも...あの黒い武者は.....」

 

そう言う私に彼は被せるようにすぐ返答した。

 

「だけど、アンタはあの黒いのとは相性が悪い。...だろ?俺は相性が良いんだよ。それに、既に一つ柱を壊してきている。そこにも黒武者が居た。そして俺はここに居る。...それで納得してくれないか?」

 

そう言って譲らない彼。

...本人が言うなら信じよう。

事実、私はあの黒い武者との相性が致命的に悪い。

爆破して効いておらず、案山子を使ったとしても液状化して抜け出してしまうだろう。

現状の救いは、刀を持っていない彼らに霞を貫く術はないと言う点一つだけ。

それなら....既に交戦したという彼に任せる方が良いのかもしれない。

 

「...了解したわ。かぼちゃさん!」

 

そして背後にジャックオーランタンを5体展開する。

琴乃が祭壇に杖を向けると、彼らは祭壇に向かって水を得た魚のように迫っていく。

それと同時に、男も走りだす。

 

「一斉掃射!!」

 

隊長と思しき人物がそう言うと、連中は銃弾を放つ。

すると、彼は口元に笑みを浮かべると口を動かす。

 

「....泡沫の光、照り返し絶えず崩れ行け自壊新星。」

 

そう言って頭の上にナイフを持っていく。

そして終の句をぼそりと呟いた。

 

「<Gott ist tot>」

 

その言葉を呟いた瞬間、不意にナイフが七色に輝く。

その光は飛んできている銃弾を反射して、黒武者を照らす。

その様を目にすると、男はおもむろにナイフを自分の腕に突き刺した。

 

彼の腕の肉が裂けて、吹き出す血液。

すると、ナイフの光が当たっていた銃弾、そしてその反射光に照らされていた黒い武者が裂けて血を拭き出し地面へと倒れて落ちる。

銃弾も黒武者も例外なく避けた部分からは彼の傷口と同じように肉が見えている。

黒武者はまだしも、銃弾が裂けたとしても内側から肉が現れるわけがない。

異様としか言えない光景だった。

だが、再生もせず動けなくなっている黒武者を見て、琴乃は思考を切り替える。

 

(でも、これで黒い武者は動けなくなった。これならかぼちゃさんを防げるものは、いない!)

 

「各自祭壇の保護を.....!」

 

「そうはいかない。」

 

そう言うと、手元からビー玉のような物を取り出す。

そしておもむろにそれを武装集団の方に投げる。

咄嗟に撃ち抜く。

すると、撃ち抜いた方向に膨大な水流がビー玉から噴き出す。

それはまるでそこだけ海原を切り取ったかのような様相。

 

「なっ!こ、これは.....!」

 

「わだつみの会って所が作った<一滴の潮騒>...っていう武器らしいぜ。これでも色んな所にちょっかい出しているんでね。」

 

そう言って得意げに笑う男。

彼を見て、隊長格と思われる人物は悔し気に声を張り上げた。

 

「一介の構成員風情がッ!...ボスの懐刀である俺にっ!!!」

 

「可哀想だなアンタ。そう思わせられてるなんてさ。」

 

水流は目の前から武装集団を洗い流すかのように薙ぎ払う。

そして残るのは濡れた大地に、祭壇まで到着してぴったりとくっつくジャックオーランタン。

琴乃はその様を見て、安堵の溜息を吐いた。

良かった....これで自分のやるべき責務を果たすことが出来たと。

 

「...弾けて。」

 

その直後に、爆発音と共に辺りを巻き上がった砂ぼこりが包み込んだ。

これで、最後の柱が壊された。

 

 

 

 

 

 

「....柚月ちゃんに大口、叩いた...けど、アレって.....」

 

「...絶えず不浄を吐きし、魑魅魍魎の母。イェソドの一人が取り込まれているのもあって、見るに耐えんな。」

 

塔の中腹。

そこの広間にて、マリアと信女は足を止める。

目の前には様々な怪人が混じり合ったような姿の蜘蛛のような肉の塊。

それは腹に存在している縦割れの口から黒い液体を絶えることなく外へと吹きかけている。

周囲には飛沫から口や目などの身体の一部がピーピーと虫のような声を上げながら、肉腫蜘蛛に群がりくっついている。

そしてその肉腫蜘蛛には空っぽの愛羽の身体が取り込まれている。

 

「...アレを見るに、あの黒い液体は怪人を生み出すみたい。どうする?」

 

信女は飛び散って体の一部と化している飛沫を見て、マリアにそう問いかける。

するとマリアは信女を見ることなく、ただ笑みを浮かべて答えた。

 

「愚問、聞くまでもなかろう。彼方へと魔の手を伸ばそうとするのであるなら、看過できるはずもない!!」

 

「....だよねっ!」

 

そんなマリアの様子を見て、信女も笑う。

そしてマリアはメイスを持ち、信女はチェーンソーを稼働させる。

けたたましい程の稼働音が耳をつんざく。

すると、相手の肉腫蜘蛛も液体を吐くのをやめて二人の方向を向いた。

正面から見れば、醜悪さが際立つ。

そして何よりも虚ろな目をしている愛羽も。

 

それを見据えると信女は左、マリアは右へと走り出す。

 

「「「「っtっ、つpじあjぁあきじょあじゃいあああああ!!!」」」」

 

そんな二人に対してまるで威嚇するかのように肉腫蜘蛛を構成している怪人たちが唸りを上げる。

唸りなど気にするものぞとばかりに、走りながらも信女は手を伸ばす。

 

<sträng>

 

伸ばした手に魔法陣が展開される。

そしてそこから紐状の魔力が現れる。

紐状の魔力は肉腫に巻き付く。

それを手繰り寄せるように手を動かすことで、信女は上空へと飛び上がる。

 

すると、肉腫の身体の一部がびくりと動いた。

 

「敵性体右手より飛来。迎撃シークエンス:逆縞陰陽」

 

そう言うと、身体の一部である魚型の怪人の一部。

そこから液体が噴き出す。

....その光景が彼女には見えた。

 

「ッ!!」

 

<sträng>

 

紐を別の足に絡ませて力一杯引っ張った。

そうすることで横に急速に移動する。

彼女の元居た場所目掛けて吹きかけられる。

信女の魔法である未来視。

それによって事前に避けることが出来たのだ。

 

「攻めあぐねているな契約者よ!!偏在せよ我が光!!」

 

左手に回り込んでいたマリアは手元に魔力弾を数個出現させる。

そして掌の魔力弾を放ると、それをメイスで次々と打ち込んでいく。

撃ち出された魔力弾は肉腫蜘蛛へと迫っていく。

すると、また肉腫蜘蛛の身体の一部が脈動した。

 

「左手から魔力反応。防護シークエンス:Decapoda」

 

愛羽がそう言葉を呟くと、魔力弾の着弾点に蟹の甲殻のような物が皮膚から浮かび出てくる。

魔力弾は甲殻を砕くも、異形自体にダメージを与えられてはいない。

そしてすかさず愛羽は二の句を継ぐ。

 

「左右の敵性体。最適攻撃を検索。排除:精槍」

 

すると異形の身体から烏賊の触手が飛び出す。

そして先から白い液体のような物を放出した。

 

「...、見えたッ!!マリア...左方向に後方へ跳んで!」

 

「了解した!」

 

飛ばした白い液体は地面に着弾する。

信女は魔法で見えた光景を元に、液体を回避する。

マリアは信女に口頭で伝えられた情報から、後方に跳ぶが飛沫が左腕に着く。

すると刺すような鋭い痛みを感じる。

見ると白いオタマジャクシのような物が腕に突き刺さっており、血が滲み出ていた。

 

それを見ると、マリアは信女に目を合わせる。

 

「...これは、ティファレトに一度聞いた怪人の攻撃....。」

 

「...だとすれば、見た目からしても、今までの怪人を...合体させたってところ、かな...。」

 

今までの攻撃を防ぐ時の蟹の装甲、そして魚から噴き出す液体。

そして肉腫に絡まる様に見える怪人の身体の一部分。

もし、全ての怪人の能力を持っているとしたら、一筋縄ではいかないことは明白だ。

 

「だが、翻れば...今までの怪人の攻撃を知っていれば、避けることはわけない!然りであろう?」

 

「...いいね。確かに。なら私が前に出る。」

 

信女は前に出る。

自分は未来を読む能力がある。

それに....どちらにせよ自分は長くない。

そう考えると、自然と足が前に出ていたのだ。

 

そんな彼女を神妙な顔で見るマリア。

そして口を開いた。

 

「....汝がそう言うのであればそうしよう。」

 

その言葉を聞いて、信女は走りだす。

そしてマリアは空中を浮かび上がる。

 

「空中勢力対処:acidgarbage 地上勢力掃討:hornet」

 

すると、空中へと飛び上がったマリアに対してヘドロの塊を撃ち出す。

それをなんとか避けると、光弾を放ちながらも相手に迫る。

地上を走る信女も飛んできた針をチェーンソーで弾くと、滑り込むようにスライディングする。

そして通りすがりに相手の足を一本切断する。

 

「「「fjあああsあkあgあbあ!!!」」」

 

「左前脚を切断。地上敵性体、腹部下を通過中。」

 

叫び藻掻く身体とは裏腹に愛羽は冷静に被害状況を口にする。

動きがこれで鈍くなった。

 

(取った...!)

 

そう確信するマリア。

振り上げるメイス。

魔力弾は甲殻を砕き、砕けた攻撃へとメイスを振り下ろそうとする。

しかし、肉腫蜘蛛はもう一本の足がぐにゃりと捻り潰れるのも厭わずに無理やり身体の向きを変える。

そして、彼女のメイスの振り下ろし先に愛羽の身体を差し出す。

 

「ッッ!?」

 

例え怪人に取り込まれていたとしても、仲間の身体だ。

振り下ろすのを躊躇してしまう。

降下しながらも愛羽と目が合う。

すると愛羽はゆっくりと言葉を告げた。

 

「....敵性体に隙。攻性シークエンス:Ariadne」

 

その言葉を口にすると、腹部の縦割れの口から糸を吐く。

糸は彼女の身体に当たる。

衝撃で吹き飛ばされて地面を転がった。

 

「ッ、腕が...動かない....!」

 

メイスを持った右腕と胴体に糸がきつく巻き付いており、動かせない。

左手で取ろうとしても粘着力が強く、糸が硬いために取ることが出来ない。

 

「マリア!ッ!?」

 

マリアに視線を向けた瞬間、ある未来が見えた。

胸を抑えて苦し気にしている自分。

これは....なんで、何が原因で....。

 

戸惑った瞬間、耳元からピーピーと声が聞こえる。

 

(何が...つぅ....!)

 

信女は戸惑うも、その瞬間に目元に何か異物が入ろうとするので目を閉じる。

するとか細く背中を這うような気持ちの悪い音を出しながら顔中を何か小さな物が蠢いているのを感じる。

 

(これは一体....っ、まさか!!)

 

戦う前に見た、あの異形の出す飛沫が形成されていた動く体の一部。

それは愛羽さんだけでなく足にもアブラムシのように群がっていた。

その足を切り離したのだ。

切り離した際に、足についていた奴らが自分の身体に付着してもおかしくない。

 

それらはピーピーと鳴きながら、顔から首へと移動する。

その感触は羽虫がうじゃうじゃと顔を這いまわるかのよう。

悪寒が走る。

 

「ッ、いやぁ!!」

 

首元の叩くとぐしゃりと何か潰した感触と共に生暖かい物が流れる感触。

すると、さっきまで動いていた連中は一瞬動きを止めると、沸き立つように声を上げた。

 

「「「「gyayaygygaygyygagyaaaa!!!!!」」」」

 

声にならないような叫び。

しかし、その叫びには抗議と怒りの意思が込められていた。

 

さっきよりも素早く胴体の方へ連中は移動する。

そして、服の中にまで入ると刺すような鋭い痛みと共に、ジクジクした熱っぽい感覚が胸元の敏感な所を襲う。

 

「これは.....っ!」

 

そして胸元に吸い付く感覚。

ぞわっと虫唾が走る。

取ろうと目を開けた瞬間、視界に異形が体勢を変えているのが写る。

 

「っ.....!」

 

脳裏に過るのは息を荒くして胸を抑える自分。

直後、愛羽は言葉を吐いた。

 

「...迎撃シークエンス:逆縞陰陽」

 

その言葉と共に、異形の身体からフグのような魚怪人の一部が顔を出す。

そしてそのフグのような面から体液を吐きかけた。

退避しようと信女は後方に跳ぶ。

しかし、その吐き方は最初の水鉄砲のように一直線な吐き方ではなく、ホースの先を潰したかのような撒き散らし方。

避けようとしても飛沫が顔や体、口の中に掛かる。

 

飛沫のかかった部分が熱い、口の中に苦い味が広がる。

何か分からないが、何かされた。

相手の攻撃が分からない以上、立て直さないと。

 

(幸い、相手は片足を失ってて動きがトロい。...それに...マリアが.....!)

 

信女の視線の先には、メイスを腕ごと胴体に糸で絡められて、使う事が出来なくなっているマリアの姿。

チェーンソーを少し当ててあの糸を切ってあげないと....

そう思って彼女の方へ後退する。

 

「マリア!だいじょう...っぅぅ.....!?」

 

彼女の近くに飛びのき、駆け寄ろうとした瞬間に鼓動が一瞬速くなり、不整脈で息が苦しくなる。

 

(そんなっ...最近は調子よかったのに..ここで....なの...?)

 

胸を抑え、自身の持病かと思う信女。

しかしその息苦しさと共に、身体が熱くなっていきその熱は股の方に移動していく。

そして目の前が真っ白くなると、それが収まると共に股下に何かふにふにと柔らかい異物の感覚。

これは....もしかして.....

異常な倦怠感と異物感に戸惑いながらも、股を触る。

 

(...これは、男性器....。この息苦しさも、倦怠感も敵の能力...か....。)

 

話には一度聞いていた性転換能力。

しかし、信女が実際に交戦した相手ではない。

まさか....身体的変化がここまで体力を消耗させるだなんて...想像も出来なかった。

 

何とか立とうとするも、膝を突く。

そして胸を抑える。

性的衝動は薄い。

でも、異常な身体変化に体力がついて行っていない。

身体が重い、呼吸がしにくい。

自分の身体の弱さがこんな時に、自分の足を引っ張るなんて....。

 

「我が契約者!どうした!!なぁ!?...返事をしろ!信女っ!!!」

 

胸を抑えて、膝を突く信女を深刻な顔で呼ぶマリア。

顔を上げると、そんなマリアに微笑みかける。

 

「..は、あはは...ちょっ..と、待ってて....。あぐっ....。」

 

そう言ってチェーンソーを持ってなんとか立ち上がり、彼女に歩み寄ろうとした瞬間、彼女の身体が跳ねる。

股辺りを何かに舐められている。

きっと服の中に入り込んでいた虫のような異形だろう。

身体の一部に小さな足が生えたビジュアルだったからこそ、口の部分に足が生えた個体も居るのだろう。

他の個体も胸元に赤子のように吸い付いている。

何故か胸が熱く、張り出している。

それによって余計に体力を削られる。

 

手を突っ込み、引っぺがし潰そうとしてもなにやら特殊な液でも出しているのかがっちりと癒着しており、無理やりはがせば皮膚自体が剥がれるだろう。

 

二人の魔法少女。

そのどちらも本領を発揮することが難しくなっている。

ただ前足が片方ない異形は、それを見てあざ笑うように揺れているのだった。

 

 

 

 

 

 

塔をただずっと登って行った。

私の為に離れることを決めた晶、中腹で見た異形を引き受けると言ってくれた二人。

それに、リンカリオンを起動してくれたアイリスさんや愛羽さんや舞羽ちゃん、みんなのお陰で今自分はここに立っている。

 

アイリスさんに頼まれたこと。

私達の世界を守る為にも....アレクサンドル・エィロヒムを止める。

絶対に....!

 

塔を登ること暫く、遂に最上階へとたどり着く。

周囲は開かれた庭園のように自然豊かであり、上空には逆さまになった樹形図のような魔法陣が空中に浮いている。

そこには磔のように舞羽ちゃんの身体が縛り付けられていた。

 

そして、最も目を引くのは喫茶店のテラス席のような白塗りの植物の意匠が施されたテーブルとイス。

そこに腰を据えて、ゆったりと高そうなティーセットでティータイムを楽しんでいる金髪の男。

彼は柚月に目を向けると、柔和に笑った。

 

「やはり...来たか。」

 

そう言うと、立ち上がる。

そしてティーポットを手に取る。

 

「貴方は.....。」

 

「ここまで来るのに、疲れたろう?お茶でも飲んで落ち着き給え。...少し待っていなさい、お茶を淹れなおそう。この茶葉も良いが....私はこっちの方が好みでね。」

 

そう言って陶器を自分の方に寄せて、蓋を開けて茶葉を取り出す。

そして置いてあった空のティーポッドに茶葉を淹れる。

その所作は慣れたもので、彼の様子は落ち着き払っている。

 

自分と敵対する人間が現れた。

しかもその来訪を予感していたにも関わらず、この落ち着きよう。

その様子は柚月の目には不気味に写った。

まるで、私が何をしても変わらないと言外に示しているかのようであった。

 

「...私は、貴方を倒しに来ました。そんなのはいりません。」

 

私はただ彼を真っ直ぐに見据えて言葉を口から紡ぐ。

すると、彼は私の言葉を聞いてただ溜息を吐いた。

 

「...そうか、残念だ。」

 

そう言うと、テーブルのティーセットも全てテーブルクロスをなぎ倒すようにして地面にぶちまける。

さっきまで丁重に扱っていたのが嘘のように、乱雑に積み上がっていたティーセットを台無しにした。

破片が地面に散らばる。

それを踏み砕きながら、一歩前に踏み出した。

 

「私は、ゆっくりと終わりの瞬間を過ごそうと思っていたのだが...。」

 

「...終わりませんよ。...私が終わらせない。」

 

彼の言葉を聞いて、すぐさま言葉が衝いて出た。

しかし、アレクサンドルもすぐに私の言葉に返答した。

 

「いや、終わるよ。誰が何をしようとも、もう二度と...我々が日の出を拝むことはない。」

 

そう言ってただ立っているアレクサンドル。

対照的に私は拳を構えていた。

しかし、立っているだけの彼からは今までで味わったことのない程の気迫を感じる。

ごくりと生唾を飲む。

 

一陣の風が吹く、塔の屋上。

風に植物たちは揺られ、カサカサと耳心地の良い音を響かせる中。

世界を救う為に.....今、少女は敵と対峙する。

 




性転換が別の意味で足を引っ張る展開が書きたかったンゴ...
病弱な子が急激なふたなり化に耐えられるわけないだろいい加減にしろっ!!
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