異端児だらけの遊撃隊   作:緋寺

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対潜部隊

 強行偵察のための援軍が到着。呉内提督と秘書艦アクィラさん率いる以前の支援艦隊に加え、イヨが望んだ潜水艦と対潜部隊も今回は用意されていた。

 潜水艦の2人、ウィーとユーは呉内司令の鎮守府からの増員なのだが、対潜部隊の2人、五十鈴さんと龍田さんは、呉内司令がまた別の鎮守府から迎え入れた艦娘。その司令は空城司令とも面識は無いのだが、一応呉内司令の保証付き。

 

 到着後、艤装を工廠に搬入し、そのまま今回の作戦の説明へ。その場には私、陽炎も参加させてもらう。また、海底で発見したものの説明が出来るのは、それを見たヒトミとイヨだけなので、この2人も参加。

 潜水艦2人がいることを確認した瞬間、説明会のことを忘れそうになったイヨだったのだが、ヒトミが引っ叩いて事無きを得た。そんな始まり方が空気を弛緩させたのは言うまでもない。

 

「事前に聞いていると思うが、今回は強行偵察だ。太陽の姫、深海日棲姫の本拠地である海域は、近付くだけで酷い数の軍勢が現れる。それを突破して、その場に何があるのかを調査したい」

 

 端的な説明でもわかるくらいの簡単な作戦だ。要は例の海域に行き、群がる敵を全て薙ぎ倒し、中心部に辿り着くのが今回の目的。その時に太陽の姫が現れたら交戦するし、そうで無ければしっかりと調査する。

 で、今回一番重要なのは海上より海中。私達が海上の敵を排除しながら、海中の調査を一気に進めたい。敵の対潜部隊をこちらの海上艦で片付けつつ、こちらの潜水艦隊を邪魔するあちらの潜水艦隊は、こちらの対潜部隊で片付ける。

 

「潜水艦隊はここにいる4人。それを守るために対潜部隊を組む。五十鈴と龍田にはそれに参加してもらいたい。残りのメンバーはこちらで決める」

「了解。そのためにここに来たんだもの。得意分野だから任せてちょうだい」

 

 なんでも、五十鈴さんと龍田さんの所属する鎮守府の周辺は潜水艦が多く出現するらしく、対潜掃討任務というのが頻発するらしい。やはり場所によっていろいろ変わるものである。

 むしろそういう場所出身だからこそ呉内司令が声をかけたのかもしれない。適材適所とは思うが、こうまで必要な人員がいるとは。

 

「イヨ達も潜った状態で対潜って大丈夫なのかな」

「うふふ、勿論よ〜。敵と味方の区別くらい、いくらなんでも出来るわ〜」

 

 混戦状態になると味方にも当ててしまいかねないが、この2人は当然敵味方の判別をしながらが可能だそうだ。

 そういう意味では、こちらから出す対潜部隊の方が不安になりそう。何せ、うちの鎮守府には潜水艦がいないため、混合での戦いなんてやったことがない。撃ち分けとか出来るだろうか。その前にこの2人に教えてもらった方がいいかもしれない。

 

「一応聞いておきたいのだが、その群れはどのような者がいるのだ。我がNelson Touchで葬り去る価値はあるのか」

 

 ネルソンさんからの質問。群れが現れると言われても、それが何者かを先んじて知っておいた方が戦いやすさはあるだろう。あの必殺技は一度使うと艤装に負荷がかかってしまうため、繰り出すタイミングを見計らう必要がある。

 

「陸奥からの報告では、戦艦棲姫とレ級がいることは確認されているね。勿論、それが複数だ」

「ほう、戦艦のPrincessがいるのか。それにレキューも。ならば余が蹴散らしてやろう」

 

 ネルソンタッチは頼もしい。敵の大群も宣言通り蹴散らしてくれるのではと本当に思えるくらいのそれだ。確実に頼ることになるだろう。それにこちらには陸奥さんと霧島さんの一斉射もある。2つの戦艦の猛攻があれば、本拠地に突撃するくらいの道は拓けるはずだ。

 戦艦を露払いに使うようで申し訳ないのだが、敵も大型ならこちらも大型をぶつけるのが確実なのだ。作戦らしい作戦では無いものの、勝率を上げるのはおそらくこれが一番。

 

「それと危惧しているのはもう1つ。本拠地で現れる可能性があるのは深海日棲姫だけじゃない。その巫女である『雲』、今は深海雨雲姫(シンカイアマグモヒメ)と呼称されることになる存在だ」

 

 あちらにも名前が付けられていたか。『雲』だけに雨雲姫。

 

「あの映像に映っていた深海棲艦のことね。砲撃を擦り抜けていた」

 

 その話が出たところでアクィラさんが反応。例の動画は当然全員が確認済みだが、アクィラさんはあの『雲』の動きを特に観察していたらしい。映像で見ても擦り抜けているように見えたそれは、殆ど無敵の回避方法としか考えられない。

 

「アレはカゲローも似たようなこと出来ていただろう。私との演習でかましてくれたな」

「うん、多分似たようなものだと思う」

「ならカゲローが攻略出来れば解決だな。演習だ演習!」

 

 ケラケラ笑っているサウスダコタさんだが、私としてはそう簡単に攻略されても困るし、だからと言って手も足も出ないなんて事になったら『雲』にはまず勝てないしで難しいところ。

 私の技はアクィラさんにも見てもらいたい。鷲の目なら何かしらの弱点を見つけてくれるはずだ。

 

「アレの解析は今日中にやりたいわね。諜報部隊の子達と力を合わせれば、うまく行くかしら」

「お前の目ならやれそうだな。頼んでいいか」

「ええ、任せて。もっと勝てるようにするためには、協力は惜しまないわ」

 

 鷲の目ですら助かるのに、ここで解析にも力を貸してもらえるのは本当にありがたい。見る力だけを鍛え続けたというアクィラさんが、ここでも役に立ってくれる。

 自分で最弱の正規空母なんて言ってしまっていたが、私にとってはアクィラさんが最強だと思う。戦場で強いことも重要だが、裏方で戦えることも重要。

 

「雑な作戦だが、今回は力押しも力押しだ。全力で事に当たってくれ」

 

 説明らしい説明では無かったものの、今回は空城司令が言う通り力押しである。小細工無しの真っ向勝負。あちらから来るものを全て薙ぎ倒して、やらなくてはいけないことをやり通す。

 

 

 

 説明会終了後。演習は午後からとなり、それまでアクィラさんは解析に参加するとのこと。午前中の残った時間で『雲』の弱点を見破ることが出来れば、午後からの演習にもその動きが取り入れられそうだ。私も攻略される可能性が高くなり、より研鑽出来ると思う。

 それ以外の増援の方々は、各々自由にして良しということになった。早速サウスダコタさんは霧島さんを探しに出ていき、他の人達も会議室から出て行く。

 しかし、ここが初めてである追加の4人は、どうしていいものかわからないだろう。となると、私や双子が何かしらのサポートをした方がいい。

 

「いやぁ、潜水艦が来てくれたの本当に助かったよー! 伊14、イヨだよ!」

「……伊13、ヒトミ。来てくれて……助かります」

 

 などと考えている内に、イヨとヒトミは同じ潜水艦であるウィーとユーに接近していた。

 明日はこの4人で潜り、最も重要である沈没船への突撃をしてもらうことになる。短い時間ではあるが、ここで仲良くなってもらい、明日の強行偵察も最高のコンディションでこなしてもらいたい。

 

「UIT-25、ウィーだよ。よろしくねイヨー」

「U-511……ユーです。よろしくお願いします……ヒトミさん……」

 

 やはり性格的にも似通っている気がする。賑やかな方は賑やかな方へ、静かな方は静かな方へと寄っていき、そういう組み合わせを形成。元から仲がいい友人同士なのではという一体感が、話し始めて数秒で出来ていた。ある意味バランスのいい部隊かもしれない。

 

「ああ、そうだ。陽炎、そこの軽巡2人に海防艦を紹介してやっておくれ」

「えっ、あ、うん、了解。でも海防艦ってまさか……」

「今回の対潜部隊、()()()()使()()。紹介がてら大鷹にも伝えておいてくれないかい。そうしたら後は大鷹に任せていい」

 

 さすがに耳を疑った。今度の戦場は激戦区。数回とはいえ調査任務で向かった部隊が、その苛烈な抵抗に本拠地の調査が出来ずに撤退を繰り返しているくらいの場所だ。そんなところにあの子供達を投入すると。

 しかし、この鎮守府で最も対潜攻撃に優れているのは、他ならぬ海防艦達だ。その保護者である大鷹も、空母ながら私達駆逐艦より対潜性能は高い。本気で潜水艦を根絶やしにするレベルでの対潜部隊を組むのなら必要になる戦力。

 

「あの子達だって覚悟して鎮守府に所属している。それに、『雲』の進攻をある程度食い止めた実績もある。大丈夫、あの子達は十分強い」

「まぁ、うん、確かにね。それは私もわかる」

 

 あの子達は強い。鎮守府に接近してきた駆逐水鬼の潜水艦隊も、誰も傷付かずに撃退することが出来ているし、あの『雲』に対してだって臆さずに力を振るった。本番でもあの調子を崩さずに戦えるだけの胆力まで持っているのだ。

 ならば、子供だからと留守番を頼むのではなく、最も必要な場所に投入するのが吉。あの子達が怖がって嫌だと言えばやめるかもしれないが、おそらくそれもない。

 

「それに、あの子達の目を誤魔化すことは出来ないさ」

「えっ、ああ、そういうこと」

 

 あの子達は純粋な心から人の本質を見抜く。もし五十鈴さんと龍田さんに何かあるとしたら、感覚的に警戒をするはずだ。特に松輪。子供達を利用するようで申し訳ないが、スパイかどうかの確認にも使えるわけだ。

 

「じゃあ案内するよ。あの子達は今何処に?」

「いつものように外で遊んでるだろうよ」

「了解。五十鈴さん、龍田さん、対潜部隊を紹介するよ」

 

 私と空城司令の会話を理解してかしてないか、一応素直に私についてきてくれた。私としてはこの2人から悪意というか敵意というかそういうものは感じ取れなかった。

 

 

 

 言われた通り外に来たところ、子供達は相変わらず外で走り回っていた。今回は体力作りを兼ねているためか、沖波や萩風も参加中。既に2人がゼエゼエ言っているところに目を瞑れば、とても和やかな光景である。

 ちょうど休憩中だったらしく、私達が近付いたところで占守と大東がすぐ気付く。視界が広いのか気が散っているのかはわからない。

 

「あー、知らない人がいるっしゅ!」

「ホントだ! すげぇおっぱいデカい姉ちゃん達だ!」

 

 いきなり酷い言い草だが、第一印象はそこまで悪くないと見た。というかこの2人は1発目は大体こんな感じ。怖いもの知らずにとりあえず突撃。

 

「対潜部隊として援軍に来てくれた人達だよ」

「対潜! 占守達と同じっすね!」

「じゃあ、あたいらと一緒に戦うのか!?」

 

 もう2人は五十鈴さんと龍田さんに興味津々である。私の横を擦り抜けて、もう2人にベタベタ触りに行っている。

 一方、警戒心の強い松輪は大鷹の近くから離れず、少し遠目からその様子を眺めていた。怖がっているというよりは、子供ながらの視点で品定めしているような、そんな感じ。

 

「うちにも海防艦はいるから大丈夫よ。ここまで不躾に突っ込んでくる子じゃ無かったけど」

「五十鈴ちゃんは子供の扱い上手なものね〜」

「アンタも意外と慣れてるじゃない」

 

 抱き付いてきた大東を抱き上げる五十鈴さんと、占守を撫でる龍田さん。子供相手の取り扱い方法は心得ているという感じか。

 

「大鷹、司令からの伝言。明日の強行偵察、対潜部隊として海防艦出すって」

「わかりました。そちらの方2人と、私と、この子達で6人ですね。人数的にもちょうどいいです」

 

 私は空城司令から聞いて驚いたものの、大鷹は淡々とその旨を理解していた。さすがは保護者、その戦場でもこの子達が戦えるということをしっかり理解している。

 

「あたい達も戦いに出るんだな!」

「うおー! 燃えるっしゅー!」

 

 その言葉が聞こえたからか、2人は既にやる気満々。既に戦場に出ているくらいの気合が入っている。

 やはり過酷な戦場ですら臆さない。艦娘としての心得も矜持もしっかり持っている。私よりも長い時間、ここで艦娘をやっているだけはあった。相手は歳下の子供だが、そういうところは敬意を表する。

 

「松輪、大丈夫?」

「……はい。まつわも、がんばります」

 

 まだ少し五十鈴さんと龍田さんを警戒しているようだが、対潜部隊としてあの戦場に出ることに対しては恐怖を感じていないようだ。空城司令がこの子達も覚悟していると言っていただけある。

 ここで大鷹が松輪を連れて2人に接近。大鷹だって状況を把握しているので、当然ほんの少しの警戒は持っている。

 

「海防艦の保護者をやってます、大鷹です。明日はよろしくお願いします」

「五十鈴よ。対潜……護衛空母ね。こちらからもよろしくお願いするわ」

「龍田だよ〜。空の目がある対潜部隊はありがたいから、よろしくね〜」

 

 一応好感触か。残り半日で仲良くなってもらって、明日に臨んでもらうことになる。

 

「そっちは大丈夫?」

「や、やっと、息が整ってきた、かな……」

「この子達の、体力、無尽蔵です……」

 

 未だに立ち直れていない沖波と萩風。2人の体力が無いというよりは、子供達の体力が異常というだけのようだ。松輪すらもケロッとしているのだから、日々の積み重ねが凄まじさを物語っている。

 

「なら、今度は五十鈴達が遊んであげましょ。そういう交流も必要でしょ」

「そうね〜。どれくらいの実力か見ておきたいしね〜」

「では、今からもですが、演習の時に対潜訓練を取り入れさせてもらいますね。それで力を見てあげてください」

 

 ここからは大鷹に任せていいだろう。対潜部隊は対潜部隊でまず交流した方がいい。

 

 

 

 海防艦を使うと言われた時は流石に驚いたが、当人達がここまでやる気なら問題ないだろう。危ないのなら、歳上の私達が守ってあげるくらいでなくては。

 




大東の不躾な発言で、沖波が小さく反応したのは言うまでもない。
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