異端児だらけの遊撃隊   作:緋寺

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信頼を得るため

 対潜部隊に参加するために援軍として来た五十鈴さんと龍田さんだが、うちの対潜部隊である海防艦達とは仲良く出来ていそうだった。

 最初は警戒していた松輪も、途中からは普通に接することが出来る様になり、午前の残された時間を子供達と遊ぶことで親交を深めている。海防艦の保護者である大鷹も、今の段階では信用出来ると判断したようだ。

 

「正直嘗めてたわ……本当に体力無尽蔵かしらね……」

「本当に元気ねぇ。うちの海防艦はここまでじゃないわね〜」

 

 もう昼食という段階で遊びはおしまいとなったのだが、五十鈴さんもゼエゼエと息を切らしている程になっていた。逆に龍田さんは涼しげな顔であるが、疲れが無いとは言わない。

 私、陽炎も下半身強化のために参加させてもらったが、それなりに遊び相手をしているもののまだまだ疲れが溜まる。鍛えられていることが実感も出来るが。

 

「ここに配属されてから、ずっと遊んでますから。艦娘として鍛え続けられているようなものですよ。遊びの中とはいえ、この子達はおそらく、並のスタミナではないでしょうね」

 

 それにある程度ついていけている大鷹も正直ちょっと怖い。現に、今の大鷹は疲れは見せているものの、息が整うのがかなり早い。毎日子供達の面倒を見ているからこそ、同じようにスタミナを得てしまったか。

 

「お勉強はちゃんとしてるの〜?」

「勿論。戦いが終わった後に自立出来るように、最低限のことは全てしていますよ。年相応の学力はみんな持っています」

「それなら心配要らないわね〜」

 

 龍田さんが率先して聞いてくる辺り、あちらの鎮守府でも率先して海防艦を育てているのだと思う。この2人は大鷹と同じような立ち位置なのかもしれない。

 

 こうやって見ている感じでは、この2人はスパイとかそういう感じはしないように見える。やはり疑ってかかるのは良くない。万が一のことがあった場合は、その時に動けばいいだろう。流石に戦場で後ろから撃ってくるようなことは無いだろうし。

 今は信頼出来る仲間だ。対潜部隊は潜水艦を沈没船まで突き通すために重要な戦力なのだから、頼らなくては今回の戦いに勝ち目は無くなる。実力者なのはわかるのだから、しっかり頼らせてもらおう。

 

 

 

 午後からは援軍との演習。というかサウスダコタさんが霧島さんと戦う約束をしていたため、その流れで今の実力をお互いに見せ合うということになった。

 前回の支援艦隊の時から時間も経っているので、お互いに練度がさらに上がっている。今の実力をお互いに頭に入れた状態で、明日に臨みたいところだ。

 

「本当に1対1(タイマン)を挑んでくるとは思っていなかったわ……」

「前にそう約束しただろ。楽しませてもらった!」

 

 いの一番に霧島さんとの演習を楽しんでいたサウスダコタさん。午後になるや否や、霧島さんを引っ張ってまずやらせろ今やらせろと駄々を捏ねたため、渋々一番最初の演習に駆り出された。霧島さんも自分から約束を振った手前、その要求を否定することが出来ない。

 その結果、みんなが見守る中、1対1の演習が繰り広げられた。私は次にやるからと海の上に引っ張り出されて、審判紛いなことまでやらされる羽目に。他の者達は陸やら工廠やらでまったり眺めているような状態。

 

 そして、その戦闘がまさかの殴り合いである。霧島さんは艤装を変形させた鋏で、サウスダコタさんは手に持つマストで、砲撃を挟みつつの近接戦闘。荒っぽさが尋常では無かった。

 正直、艦娘同士とは思えない壮絶な戦闘を見せつけられた。当然ながら、近接戦闘で怪我をしないように、艤装側にもリミッターはかけられており、霧島さんの鋏に挟まれても折れたりはしないし、マストで貫くことなんて以ての外。それでも、お互いに大分消耗する程には続いていた。

 

 結果、お互いギリギリのところまで行ったのだが、僅差でサウスダコタさんが勝利。判定したのが私なのだが、どちらかに贔屓目に見るとかはしていない。ちゃんと見て、思った通りのことを言ったまで。

 霧島さんもかなり悔しそうにしていたのが印象的だった。これはもう好敵手(ライバル)と言っても過言では無いだろう。この2人は顔を合わせれば演習を望むような仲になっていると思われる。

 

「っし、次はカゲローだ! と、言いたいところだが、少し休憩したい。キリシマが粘ってきたからな」

「貴女がしつこいだけでしょうに。でも休憩は賛成。私もここまでやり合うことになるとは思わなかったし」

「というわけで、カゲローの技とやらは後から見せてもらうからな。逃げるんじゃないぞ!」

 

 逃げないから安心してほしい。いろいろな人に見てもらって、私も技を洗練させていきたいのだから。マストを振るわれるのはちょっと怖いが、近接戦闘にも対応出来るようになれば、より回避出来るようになるはずだ。

 そういう意味では、今までに受けたことのない攻撃は一通り受けておきたい。今更ながら、木曾さんの軍刀による攻撃も演習に使ってもらった方が良かったかもしれない。

 

「なら1つ提案があるんだけれど」

 

 ここで一歩前に出てきたのは五十鈴さん。工廠に待機していたのだが、演習終了を見計らってこちらに来ていたようだ。霧島さんとサウスダコタさんが休憩と言わなくても、何やらやりたいことがあるみたい。

 

「一度五十鈴と龍田の力、見てみてほしいわね。言っちゃ悪いけど、ほら、ここに来るの初めてじゃない。どんなものか、見てもらった方が早いわよね?」

「そうね〜。それに、とっても重要なポジションにつくって聞いているし、ここでの信頼は得ておきたいわよね〜」

 

 続けて龍田さんもこちらへ。五十鈴さんも龍田さんも、当然ながらこの鎮守府は初めてだ。外部の外部からやってきた艦娘ということで、いろんな意味でも実力は未知数。なるほど確かに、ここでどれほどのモノかは知っておいてもいいかもしれない。

 そうなると対潜訓練になるのだろうか。この鎮守府の対潜訓練といえば、大鷹が操る潜水艦ラジコンへの爆雷投下になるわけだが。

 

「じゃあ、その相手、イヨ達がやろっか!」

「ぎゃあ!?」

 

 すると今度は海中からイヨが姿を現した。あまりにも突然のことであり、完全なノーマークだったので大きく驚いてしまった。潜水艦慣れしていないのだから、いきなり真下からというのは勘弁してほしい。

 

 私達が演習をするというのを余所に、潜水艦隊の4人は交流を深めるために海中に潜っていたらしい。それでも海上の声がある程度聞こえるのは、艤装のスペックなんだとか。やはり海上艦とはそもそもの造りが違うようである。

 で、五十鈴さんと龍田さんの言葉が聞こえたため、いきなり浮上してきたわけだ。イヨの後からは同じような勢いでウィーが頭を出し、その後ゆっくりとヒトミとユーが浮き上がってくる。

 次々と上がってこられてまた声を上げそうになったが、そこはどうにか耐えた。

 

「対潜部隊の()とか知っておきたいの。イヨ達の避け方とかもあるしさ」

 

 潜水艦というのはそういうもののようだ。当然潜水艦だけで出撃することもあるだろうが、海上艦と連携を取りながらの出撃も普通にある。特にヒトミとイヨは諜報部隊。そういったことも多いのだとか。

 そうなった時、仲間の爆雷投下の癖とかをちゃんと知っておけば、見えないところからの攻撃も誰のものかがわかりやすいというものである。観察力が普通では無いイヨだからこその発言。

 

「あたしとユーちゃんも今日来たばっかりの新人だしさ、実力知っといてほしいんだよねー」

「それ言ったらイヨ達もつい最近来たばっかりなんだけどね」

「気にしなーい気にしなーい。だからさ、演習やろやろ」

 

 ウィーも軽いノリでイヨの案に賛成。これも確かに今知っておいてもいいかもしれないことだ。

 ヒトミとイヨの時は調査がメインだったため、そこまで重くは見ていなかった。しかし今回は強行偵察。戦闘もしっかり加味した力を知っておきたいというのはある。

 

「一度司令に聞いてみたらいいんじゃないかな。対潜部隊ってなると、子供達にも出てもらうことにもなるし、準備もいるでしょ」

「確かにそうね。ちゃんとした状態でやりましょ」

 

 ということで、対潜部隊と潜水艦隊の対決という演習が執り行われることになった。2人の司令もそれは見ておいて損はないと快く了承。むしろ対潜部隊の力を見るために、自分達もギャラリーとして交ざるとまで言い出した。

 

 

 

 そして本番。休憩中の霧島さんとサウスダコタさんもギャラリーに加わり、私も少し退いた場所から見物させてもらうことになった。海の上には対潜部隊のみ。そして私達には見えない海中に潜水艦隊がスタンバイ。

 遠目に見ることになるのであちらの会話とかは聞こえないものの、表情などは確認出来る。五十鈴さんと龍田さんは、海防艦の子供達にいろいろと説明をしながら今回の演習を勝利に導こうとしていた。

 

「秋雲から見て、あの2人どうよ」

 

 私と一緒に演習を眺めているのは秋雲。諜報部隊の一員として、五十鈴さんと龍田さんの動向を確認するために今回の演習も観察している。

 

「んー……普通に信用出来るかな。というか、疑うところが無い。違和感が何にもないし、自然体であんな感じだよあの2人」

 

 私の質問に軽く考える素振りをした後、そう答えた。

 現に今、大鷹もその場にいるのだが、何の警戒もなく2人と接している。それと一番敏感であろう松輪もだ。それだけでも信用に値する。

 

「まぁ、疑うならあの2人じゃなくて、その上の人だわね。何にも知らされずにここに援軍に来てくれてるけど、実は提督が秘密裏に何かしてるーとかね。それも呉内提督が押さえてると思うけどさ」

 

 それは確かに考えられる。思惑があるのはこの場にいない者というのはよくある話だ。なら、今ここで警戒しても仕方ないか。そういうのは司令達に丸投げ。

 

 そうこうしている内に演習が開始される。普段のラジコンを使った訓練とは違う、相手も人という対潜攻撃なのだが、うちの子供達は全く臆さず爆雷を投下していた。それも、無闇矢鱈と投げるわけでは無い。五十鈴さんや龍田さんの指示を的確に守っての攻撃。

 いつもは大鷹を中心とした対潜部隊になっているのだが、今回は対潜特化の軽巡洋艦という新たな司令塔を手に入れているため、より洗練された動きに見える。

 

「すごいねあれ。対潜訓練の時とは動きが違うよ」

 

 言ってしまえば実戦の時とも違った。

 

「でも、うちの潜水艦も一味違うよ。調査任務では数の暴力で後れを取ったけど、結構いろんな死線くぐってるからね」

 

 それだけ的確な対潜攻撃をしていても、当たったという判定は一向に発生していない。6人の攻撃を、私からは見えない4人の潜水艦は全て回避している。

 

 ヒトミとイヨもそうだが、呉内司令が連れてきたウィーとユーも相当な手練れだった。言い方は悪いが、ちょこまかと動きつつ、嫌なタイミングを狙って魚雷を真下から発射。しかもちゃっかり指揮をしている五十鈴さんや龍田さん、大鷹を優先的に狙っている。

 厄介な相手を海中から的確に判断し、4人がかりの集中攻撃で確実に倒していく作戦のようだ。上から見ていても、四方八方から集中狙いしているのがすぐにわかった。

 

「多分指揮してるの、うちのヒトミだろうね。攻撃がやたらねちっこい」

「なんかわかる気がする」

「イヨはどちらかと言わずとも雑だからね。いっぱい撃てば1つは当たるだろ精神。でもヒトミはなんていうか、魚雷を節約したいんじゃないかってくらい慎重で、1つを確実に当てていく感じ」

 

 そういうところでも性格というのは出るようだ。そしてそれは、今回からの新人、ウィーとユーにも当て嵌まりそう。

 

「お、それでも凄いね。五十鈴さん、ガツガツに狙っていってる」

「うん、あれは正直真似出来ないかも」

 

 そんな潜水艦の猛攻も物ともせず、指揮を執る五十鈴さんが一気に前に出た。足下が爆発しようがお構いなし。自分にダメージが入らないようにちゃんと調整した後、魚雷を放った瞬間を狙うかのように爆雷を投下。

 それが渾身の一撃になったか、小さな爆発音の後、それにやられたであろうイヨがプカリと浮かんできた。ご丁寧に白旗まで掲げて。

 

 それで火がついたか、海防艦の子供達も一斉に猛攻を仕掛けた。ギャラリーにはわからない戦いではあるものの、これが勝負を決める行動となったのはすぐにわかった。

 合間に魚雷によって占守と大東が痛手を負ったものの、それを他の者がしっかりとカバーし、海中から白旗を掲げた潜水艦達がプカプカ浮かび上がってきていた。

 最後の1人であるヒトミも浮かび上がってきたところで、演習終了。対潜部隊の勝利である。

 

「人数差はあったけど、それでも凄い手際だった気がする」

「いやぁ、ありゃ凄いわ。流石は対潜のために来た人達。こりゃ期待出来るね」

 

 私もこれには納得した。相当な実力者が来てくれたことに、素直に喜んだ。これは信頼出来る。

 今回の任務、対潜部隊も重要と聞いているが、あの部隊なら確実に行ける。潜水艦隊を沈没船まで導くことが出来るだろう。

 




無条件先制対潜の2人に加え、ほぼ確実に先制対潜する4人を相手に、結構粘った潜水艦隊も相当な実力者なのは言うまでもない。
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