異端児だらけの遊撃隊 作:緋寺
村雨が改二に改装され、ミコトが鎮守府に加わったその日は終了。夕食の際に仲間達がミコトを鍛え上げると詰め寄り、最終決戦前最後の日となる明日は、出来る限りを詰め込むという形でみんなが同意。ミコトも私、陽炎のためになるとやる気満々である。
この日の夜は、明日のことをしっかり教えるため、ミコトも相部屋で眠ることに。何も言わなくても私の部屋で眠っていたとは思うが、今回は話もあったので都合がいい。
「司令にもちゃんと話をしてあるから、みんなの言うことを聞いて、しっかり鍛えてきなよ」
「うん、大丈夫。お母さんも時間がある時は見ててくれるんだよね」
「そうだね。ミコトが何が出来るかはちゃんと把握しておきたいしね。でも、私がいなくても戦えるようにする訓練でもあるからさ」
あまりにも私にべったり過ぎると、戦場で支障が出る可能性が高い。そのため、いくら陽炎の巫女であっても別々に行動出来るようにしておく必要はあると思う。そういう意味では、明日の訓練はちょうど良い。
鎮守府の仲間達とより仲良く出来るように、私経由ではなくミコト自身で近付いてもらう。私の他にも親友と呼べる間柄の仲間が出来ると最高。今の段階では、午後ずっと演習を繰り広げた村雨や、最初にタッグを組んでからも仲がいい沖波辺りが適任か。
「ちょっと寂しいけど、頑張るよ。出来ればお母さんと一緒に戦いたいけどね」
「あの戦場ではどうなるかわからないからさ。全部やれるに越したことはないよ」
「うん、わかった。お母さんがそう言うなら、僕は従うよ。陽炎の巫女だもん」
ミコトには申し訳ないと思いつつも、こんな私の言うこともニコニコしながら聞いてくれる。こういう夜とかにはしっかり甘えさせるべきかもしれない。
「今日は僕がお母さんを使っていいの?」
「私達は毎日取っ替え引っ替え姉さんを使わせてもらってますから。生まれたばかりのミコトさんが堪能してください」
いつもは添い寝権を賭けて何かしらの勝負をしている3人だったが、今回はミコトにその権利をタダであげている。3人からしても妹のような感覚なのかもしれない。従順というわけではないが、とても聞き分けがいい子なので、こうやって甘やかしたくなるのもわかる。
「ところで……ミコトちゃんはそれで寝るの?」
「うん。これが僕の正しい格好だし、着慣れてるから」
聞いたのは磯波。私達は眠るために当然パジャマだが、ミコトは相変わらずのレオタード姿である。パーカーを脱いでいるため、余計に凄いことになっていた。
「一応これ、寝間着用」
「わざわざ作ってもらったんだ。まぁミコトがそうしたいならいいけどさ。夕立も似たようなことしてるわけだし」
磯波がその手があったかみたいな顔をしたが、流石に止めた方がいいと思う。いくら後遺症で普段着に使っているにしても、慣れ過ぎるのはよろしくない。ミコトとは話が違う。
「寒かったらちゃんと上を着るんだよ」
「大丈夫! お母さんに抱きついたらあったかいから!」
そういう問題ではないのだが、言うが早いか飛び込むように抱きついてくる。子供っぽい言動でも体格は私達と殆ど同じくらいであるため、その勢いに押し込まれてしまった。ベッドの上だからいいけど。
他の3人もこの光景に笑みが溢れる。ミコトのこういう行為は微笑ましいものと感じ取れるようだ。
この後は、明日の段取りを話した後、今までに私の身に降りかかったことを掻い摘んで説明してあげた。子供に読み聞かせをしているような気分だったが、ミコトはそれはそれは楽しそうに話を聞いてくれるので、ついつい話し過ぎてしまった。
辛い過去には泣きそうな顔になり、楽しい過去にはケラケラ笑う。表情豊かな子供に、私達も自然と癒されていった。
翌日、決戦前の最後の日。今日の予定はミコトへの詰め込みのみ。最後の1日もミコトについていてあげていていいかなと考えていたのだが、また少し話が変わる。
「あー、今日も来客だ。物部がそろそろこちらに到着する」
朝食の場でまた空城司令による発表。昨日は颯元帥が直々に来訪したが、今度は諜報部隊の長、物部司令が鎮守府を訪ねてくるという。
物部司令が行動を起こしたということは、裏側で調査をしてくれていた教祖と依代の関係性の調査が終わったということだろう。電話ではなく直接来るという辺り、今回の話は信憑性が高いものだと感じる。
「ようやく決着がつけられるだろうよ。太陽の姫の真相がわかりそうだ」
最終決戦に間に合ってくれてよかった。この調査の結果次第で、太陽の姫をどうするかを考え直す必要が出てくるかもしれない。
とはいえ、ここまでやっておいて許すも許さないも無いのだが。今の奴の目的に正当性があったとしても、私は両親を殺されているわけだし、奴のせいで全てを失ったものが沢山いる。
「まだ時間は早いが、そろそろだとさっき連絡が……」
「提督、物部司令が参られたようです」
話しているうちにしーちゃんが来客を報告した。これがナイスタイミングかはさておき、早々に事を運んでくれるようで何より。
「ということだ。朝飯が終わったら、そのまま会議室に直行しておくれ。急がず、ゆっくり向かってくれればいい」
空城司令は食事もそこそこに、物部司令を迎えに行った。急がなくてもいいとは言っていたものの、待たせるのもどうかと思うので、出来る限り早く終わらせて会議室に向かうことにした。
小一時間ほどして会議室に全員集合。そこには既に物部司令が資料を準備しており、空城司令も先んじて話を聞いていたようで、少し困った顔をしていた。
調査結果が面倒くさい方向に行ったということだろうか。そうだとしたら、明日に迫った最終決戦に支障が出るかもしれない。
「集まりましたね。では、調査結果を報告します。その前に……こちらも颯元帥の話は既に耳に入っています。今回の調査は、颯元帥のところの大和にも協力してもらっているため、信憑性はかなり高いです」
元教団員の大和さんが裏で協力してくれているのなら話が早い。私達の知る限りでは、教団に一番近い位置にいる人が保証してくれているのなら良し。
「結論から言います。やはりあの2人、教祖と思しき男と、沈没船の依代は親子関係でした」
秋雲が似顔絵を描いていた時に口走った一言、親子ではないかという線で調査したところ、それがドンピシャ。教祖が父で、依代が娘だったらしい。
名前は流石に伏せられていたが、この辺りに住んでいた者ではなく、ここよりもそれなりに遠い場所出身なのだそうだ。そのため、調査が少し難航してこんなギリギリになってしまったのだという。
「教祖のことは今は少し置いておきましょう。依代となった少女についてが今回のメインです」
既に死んでいることが確定している教祖については後回しにして、今も生きている可能性がある依代について。
沈没船の中でその存在を持ち、太陽の姫の核とも言える存在である依代が、ああなる前に何者だったのか。
「調べた限り、あの少女は……少し暗い人生だったようです。病弱だったそうで、学校も休みがちだったとか」
当時の同級生に話が聞けたらしく、そのことをツラツラと話してくれた。
なんでも、依代の少女は死には至らないものの前例をあまり見ない不治の病に罹っていたらしい。そのため、定期的に入退院を繰り返し、学校も休みがち。友人も殆どおらず、同級生からも少し距離を置かれていたそうだ。
それだけ聞くと可哀想という感想しか出てこない。それに、この世界に嫌気が差す気持ちもわからなくもなかった。せっかく生まれてきたのに、治らない病に苛まれて人生が真っ暗というのは、どうしても落ち込んでしまうだろう。
「その病を治療するため、両親は奔走していたみたいですね。ここまでは世間的にも知られていることだったそうですが、おそらくその奔走の中で、
不治の病を治すという奇跡のために、本人のみならず家族が一丸となって取り組んでいたが、どうにもこうにも手立てが無い。そこでその少女の父は、事もあろうにオカルトに走ってしまった。
現代医学でどうにもならないから神頼みというのは、なんとなく理解出来る。とはいえ、よりによって頼るのが邪神というのはどうなんだと思うが、それほどまでに少女の父、いわゆる教祖の精神は擦り減っていたということか。
「しかし、依代の少女の父はそこから徐々におかしな道に入ってしまったようです。精神的にも狂い始め、途中から
娘を治すために邪神を崇拝していくにつれ、どんどんそちらがメインとなっていってしまったと。娘では無く邪神の方に傾倒していき、教団を設立、拡張し、ついには世界の裏側に蔓延るように。教祖が
ある意味、教祖は邪神に魅入られてしまっていたのだろう。それこそ、悪いモノに取り憑かれてしまっていたのかもしれない。オカルトが罷り通ってしまったとすら考えられる。
よくもまぁここまで調べられたなと思ったが、一部は憶測な部分もあるという。しかし、あらゆる調査の結果から辿り着いた憶測なので、これはかなり信憑性が高いとのこと。
「教団で稼いだ資金の一部が娘の治療費に充てられていたことは調査済みです。病院の方とも連絡が取れましたので。ですが、依代の少女は父が
出所不明のお金で治療されていると気付いてしまったのだろう。数少ない友人にそれを溢してしまうくらいに、依代の少女も不安だったか。
しかし、そうなるとその少女が客船に乗っていたのは何故かという話になる。ミサが執り行われていた客船ということは、ある意味教団の本拠地。教団のことを知らない少女がそこにいた理由は。
「これは颯元帥の大和から聞いた話ですが、あのミサの直前、教祖は一言『その時が来た』と口にしたそうです」
「その時ってのは、まさか」
「大和は、邪神を降臨させる時だと思ったようですが、私としては
手段が目的になってしまいつつも、やはり娘のことは放っておけない。だから教団の資金を治療費に充てがっていた。
「そして、少女はミサに参加させられた。これも同級生に話していたようです。病気がちで旅行なんて一度も行ったこともなかったのに、突然時間が出来たからと家族旅行に行くと言われたと」
「そりゃあ喜んでついていくだろうね。だが、結果としては裏切られたわけだ」
「そうなりますね。旅行だと思ったら得体の知れない宗教のミサで、父は教祖で」
そんな中で颯元帥の正義執行。少女以外は全員やられ、何故か生き残った少女は沈んでいく船の中であらゆる負の感情に苛まれて、結果依代となった。
「現場を見たわけでは無いですし、残念ながら生き残りは依代を除いていませんから、真相は太陽の姫しかわからないことでしょうが、おそらく邪神の降臨は成功しています。少女の身体を依代にし、その結果生まれたのが太陽の姫。そして、怨念から発生したのが深海棲艦です」
それだけのことが起きれば、依代となってもおかしくは無い。絶望に絶望を上塗りされ、人間を恨み、世界を恨み、何もかもを壊したくなる。その壊れた感情に、
つまり、太陽の姫は崇拝していた邪神そのもの。その余波的なもので生まれたのが深海棲艦であると。ある意味、良くない門が開かれてしまったような感じ。教祖はそれを狙ってやったのかはわからない。真相は闇の中。
何となくだが、それが間違っていないことだと思えた。知らないことなのに、当時私はまだ幼かったのに、それがそうやって生まれたのだと直感的に理解出来た。
太陽の姫が生まれると同時に、世界に選ばれた対となる者である私だからこそ、そういう感情が芽生えたのかも知れない。
「調査結果は以上です。これだけわかったからといって、深海日棲姫を攻略する手段に繋がるかと言われれば何とも言えませんが……」
「いや、充分だ。奴が何者であるかがおおよそ見当がついたってことが大事だよ。よく調べてくれた」
空城司令の激励で、物部司令は少し安堵した表情を浮かべる。直接戦いに繋がる情報では無いかも知れないが、素性がわかっただけでも大きい。
敵は本当の邪神、つまり神だ。アレほどの力を持っていてもおかしくは無い。人間である私達に勝つ術があるかはわからないが、敵がそれだからと言って臆することはしない。そういうわけにはいかないのだ。
いくら神だと言えど、これ以上好き勝手させるわけにはいかないのだから。この世界は、奴のものじゃない。
太陽の姫は邪神。今までは深海棲艦との戦いでしたが、明確に敵は神であるとわかりました。今回の話はオカルト要素がとても強いですね。
支援絵を戴きました。ここに掲載させていただきます。
【挿絵表示】
https://www.pixiv.net/artworks/89340515
MMD静画のアイキャッチ風隼鷹。隼鷹といえばお酒である。この鎮守府の隼鷹も結構呑む人。リンク先に飲みすぎた結果がありますので、是非ご覧下さい。