異端児だらけの遊撃隊   作:緋寺

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最後の作戦会議

 昼食後、最後の訓練の前に会議室に集められる。最終決戦に向けて、最後の作戦会議となる。

 明日は朝から会議をするまでもなく準備をして出撃となると思われるため、今のうちに全て話しておくとのこと。物部司令も帰投はしていないので、この会議に参加している。

 

 主な説明は、明日の出撃メンバーだ。おおよそ予想はついていて、前々回の戦い、『雲』撃破の時と似たようなものであろう。私、陽炎は本隊。太陽の姫撃破を狙う、M型異端児のみで構成された部隊となるだろう。今回違うのは、そこに村雨とミコトが加わることだ。

 

「今回も大掛かりな部隊で出撃してもらう。先に言っちまうが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からね」

 

 当然騒つく。そんなことをしたら、この鎮守府は誰が守るというのだ。全艦娘出撃なんてしたら、ここに残るのは人間のみ。私達なら容易に倒せるであろう、深海棲艦の駆逐艦1体でも近海に現れたら、抵抗すら出来ずに蹂躙されかねない。

 しかし、静まれと手を挙げた後、明日の段取りを丁寧に話してくれる。

 

「まずそっちの方を話しておく。アンタ達全員が出撃した後、この鎮守府は空になるだろう。だが、その前に()()()()()が決まった。まぁ援軍と言うほどのものではないかもしれないが、鎮守府防衛のために動いてくれる」

「少数精鋭ってことかしら」

「ああ、来るのは元帥と大和だからね」

 

 陸奥さんの言葉への返答に耳を疑った。ここであの大和さんが、鎮守府の防衛に力を貸してくれるという。なんでも今日の午前中に連絡があり、それが決まったらしい。

 

 伊58の件で行なわれた小坂鎮守府の取調べ(征圧)が昨日のうちに終了したため、大和さんに若干の余裕が出来たとのこと。そのため、こちらに援軍として参加してもらえることが決定した。

 本当なら部隊に組み込むことも視野に入れていたのだが、どうしても1つだけ懸念している問題点があった。それが、大和さんが()()()()()()()()()である。払拭したとはいえ、元々崇拝していた邪神(太陽の姫)そのものを見てしまった場合、その存在に魅入られてしまう可能性を危惧されたのだ。それを言い出したのは他ならぬ大和さん本人だとか。

 最悪を想定した場合、どうしてもその要因は排除したいところ。だが、その教団に関わることなのだから手を貸したい。そう考えた結果が、鎮守府防衛の任に就くことだった。

 

「明日早朝に元帥と大和がここに来る。敵本陣が突然鎮守府に現れることは無いだろうから、大和1人でも何とかなるって話だよ」

「流石は大本営直属の大戦艦……大ボス以外にはそれで済んじゃうのね」

 

 実際、大和さんの力は尋常ではないらしい。陸奥さんや霧島さんですら、勝てるかわからないという程である。ネルソンさんは言うまでもない。相手が誰であろうと負ける気がしていないし。

 

「あと、もう1人増員が決定した」

「そちらも鎮守府防衛なのかしら」

「いや、部隊に加わってもらう。そろそろ到着すると思うが……」

 

 と話しているうちに、しーちゃんが工廠から連絡を受けたようで退出。その増員とやらは、たった1人でこの鎮守府に向かってきていたらしい。表から入らず、工廠から入ろうとする辺り、如何にも艦娘と言ったところ。

 その後すぐ、しーちゃんが戻ってくる。その後ろには見覚えのある顔。水浸しになっていた身体を拭きつつ、会議室に姿を現したのは、()()()の伊58である。

 

「えっ!?」

 

 思わず声を上げてしまった。増員として来るとは正直考えていなかった者だ。

 

「先日は、ご迷惑おかけしました。改めて、その謝罪をさせてほしかったので、ゴーヤは今この場に馳せ参じました」

 

 最初は『黄昏』の抜け殻を盗み出そうとしたことについての謝罪。あの時はボロボロの精神状態であったため、そんな言葉すらも紡ぐことが出来なかった。帰投する直前まで、メンタルケアということでここの潜水艦隊と交流していたが、今はその時よりも顔色は良くなっているし、少しだけでも前向きになっているような表情をしている。

 

「ゴーヤがやったことは取り返しのつかないことだったから、せめてもの罪滅ぼしで、この作戦に参加させてほしいでち。潜水艦が足りないっていうのは、この前にみんなから聞いていたから……だから、ゴーヤが志願したでち!」

 

 沈没船に接近するための戦力を追加したいというのはあった。うちの鎮守府には潜水艦がいないため、増員は今いる4人に奮闘してもらうしか無かったのだが、ここに来て1人でも増えてくれるのはありがたい。

 伊58は(くだん)の小坂鎮守府では切り捨てられる寸前の状態だったようだが、練度としてはかなり高い部類に入るとのこと。実力至上主義であったが故に、それだけの練度にまで達していたのだろう。だが、休みなく働けば誰だってポテンシャルは落ちていく。丸一日近くをじっくり休むことが出来たおかげで、伊58は本来の強さを取り戻していたわけだ。

 

「潜水艦が増えることは願ってもないことだ。元帥もこれを許可したんだから、アタシが断る義理はない。それに、ここまでやる気満々でいるのに、その気持ちを無下にすることもアタシにゃ出来なかった」

 

 最初は()()()()()()()()()()()()と勘繰ったらしいが、伊58からはそのような意思は感じない。悲惨な環境から脱し、明るい未来を手に入れるため、ここでケジメをつけに来たのだ。

 その思いを無下にするわけにはいかない。むしろココで断ったら、伊58は余計に落ち込んでしまう。せっかく前向きになれたのだから、その意思は尊重したい。

 

「ここで話を戻す。明日の最終決戦に臨む部隊編成を発表する」

 

 全員出撃と銘打っている以上、ここからは呼ばれる順番である。その中でも、部隊が完全に固定されているところもあるし、緊張感はそこまで高いものではない。

 

「まずは潜水艦隊。伊13を旗艦とし、随伴に伊14、U-511、UIT-25、そして伊58の5名とする。アンタ達の任務は、沈没船への接近、および依代の少女の()()になる」

 

 破壊ではなく救出。つまり、沈没船から引きずり出し、海の上への運ぶことが目的。沈没船から離した時点で死んでしまう可能性だってあるのだが、そうなってしまったらもう仕方ないと判断。そもそもは依代の破壊が目的であったので、そこは妥協になる。

 ある意味、苦肉の策ではあった。太陽の姫をどうにかしなくては、赤い海は最後まで拡がり切ってしまい、陸の人間にすら悪影響を及ぼしかねない。むしろ深海棲艦が強化された状態で上陸し侵略してしまうことの方が問題だ。

 

「アタシの憶測だが、影である太陽の姫がいる限り、依代も死ぬことはない。普通は生きていけない深海に鎮座しているんだ。何かしらの護りが依代には施されているだろうさ。だから、その依代自体を引き揚げてやんな」

「了解……です。潜水艦隊は、依代を沈没船から奪取することを目的とします」

「依代本人に抵抗される可能性もあるよね。そうなったらちょっと力尽くになるけど」

 

 私が潜水出来ればそんなこと考える必要が無いのだが、対となる者の割にはそういうところは深海棲艦とは違う。女神(母さん)の力で一時的に潜水能力は手に入れていたが、あくまでもそれは復活後の浮上のためであり、その加護が終わってからはやはり無理になっていた。

 だからここは潜水艦に頼るしかない。海上以上に危険な任務になると思うが、みんなやる気満々。特に新規参入の伊58は、特に意気込みが違った。

 

「まさかまた盗人みたいな仕事とは思わなかったけど、そういう意味ではゴーヤは慣れてるから」

「すまないね。別に意趣返しとかそういう理由は無いんだ。今の潜水艦の任務がこの一番重要なものってだけさね」

「わかってるでち。今度はちゃんといい理由で奪取するでち。義賊だよね義賊」

 

 果たしてそれがあっているかはさておき、やることは依代の奪取。潜水艦隊には大きな期待が寄せられる。

 

「改めて、自己紹介するでち。潜水艦、伊58。呼びづらいと思うから、ゴーヤって呼んでほしいでち」

「もしくはでっち」

「ウィーちゃんそれは出来ればやめてほしいでち……」

 

 伊58あらためゴーヤ。伊13(ヒトミ)といい伊14(イヨ)といい、潜水艦は語呂合わせの方向が強い。確かに数字で呼び合うのはいい気分ではないか。

 

「じゃあ、続きを発表していく。とはいえ、皆おおよそ見当が付いているとは思うがね。多少は入れ替えがあるから心して聞いておくれ」

 

 ここからは作戦会議再開。最終決戦に向けての部隊編成の発表。

 

「潜水艦隊を補佐する対潜部隊は、前回と同じとする。旗艦は五十鈴。随伴は龍田、大鷹、占守、大東、そして松輪。松輪はM型異端児だから本隊に入れるべきかとは思ったが、やはり対潜部隊だからこそ力を発揮出来るだろう」

「は、はいっ……わかりました。まつわ、がんばります」

 

 囮作戦というのも考えられていた松輪の存在。新たに覚醒し、M型の同期値が跳ね上がった松輪は、以前の沖波のように太陽の姫からその存在が狙われる可能性が高かった。

 だが、今は松輪以上に狙われるであろう存在、ミコトが加わったことで、松輪をわざわざ危険に晒す理由も無くなる。それ故に、松輪は通常通り対潜部隊へ。それでも狙われるようであれば、M型異端児の本隊が松輪を護ったりすればいいだけ。

 

「次は本隊。太陽の姫にぶつかってもらう。これは皆予想がついていると思うが、旗艦は陽炎、随伴は沖波、村雨、衣笠、磯波、そしてミコト」

「はぁい! お母さんを助けるよ!」

 

 わかりやすくM型異端児が纏まった本隊。太陽の姫に唯一有効だと考えられているM型異端児の攻撃を一箇所に集める方針は変わらない。以前はそこに松輪を加える予定だったが、そこにミコトが加わることでより強固な布陣に。

 とはいえ、まさか私が旗艦になるとは思わなかった。いつもどおり衣笠さんを中心に置くのかと思っていたが。

 

「本隊を補佐する別働隊。旗艦は陸奥、随伴は長門、霧島、夕立、萩風、木曾。アンタ達はその場で動き回ってもらうことになるだろう。太陽の姫の動きに合わせて、臨機応変に対応してもらいたい。いわゆる遊撃隊ってヤツだ」

「好き勝手暴れていいっぽい?」

「そういうことじゃないが、まぁ近しいことだ。防衛線を引っ掻き回して、本隊が太陽の姫と戦いやすいようにしてやりな。行けそうなら、一緒に攻撃してもいい」

 

 こちらは一斉射を兼ね備えた戦艦全部乗せ。私達の行動をゴリ押しで倒すための補佐をしてくれる。本隊と組み合わせて、ある意味連合艦隊と言える。

 

「防衛線を突き崩すための、強襲部隊。支援艦隊はここに入ってもらう。旗艦はネルソン、随伴はサウスダコタ、プリンツ・オイゲン、アクィラ、イントレピッド、アトランタ。第二艦隊として、旗艦阿賀野、随伴に隼鷹、天城、五月雨、菊月、初月。この連合艦隊で突撃してもらう」

「よかろう。我がNelson Touchで全てを突き崩す。任せてもらおうか」

「え、えぇっ、阿賀野が旗艦!?」

「良いではないか。貴様は余が認めた名誉Nelson Touch構成員。期待しているぞ!」

 

 ネルソンタッチを有する支援艦隊と、我が鎮守府の空母隊が組み、私達の邪魔をする防衛線を全て破壊し尽くすのが目的である強襲部隊。前回もそれで道を拓いてくれている実績があるので頼もしい。

 阿賀野さんもそれがあるから旗艦を任せられたのだと思う。いざという時にメンバー入れ替えのネルソンタッチを繰り出す可能性が無いとは言えない。

 

「最後は新規の陸上防衛部隊だ。赤い海が陸に限りなく近付いているからね。いざという時のために、陸に近い位置で防衛が必要だと判断した」

 

 最悪の場合、戦闘中に拡がり終わり、赤い海が陸に辿り着いてしまう可能性すらある。そうなった場合、太陽の姫云々関係なしに、深海棲艦が陸を侵略するという脅威が考えられた。

 それを未然に防ぐために、先んじて陸を守る部隊を編成しておくということになった。確かにそれは必要だと思う。残った者全員を注ぎ込むのは、やはり陸の平和が艦娘にとって一番大事だからか。

 

「今呼ばれなかった者は、全員そちらを頼む。陸から徐々に防衛線の方に近付くようにしてくれりゃいい。加古と神州丸に任せる」

「あーい了解。陸を守るのもあたしらの仕事だからねぇ」

「了解であります。諜報部隊は仕事が終わっているでありますからな」

 

 これで全員の配分が完了。誰も文句無しの配置。

 

「これが最後の作戦会議になることを祈る。明日で全部終わらせるよ」

 

 

 

 これを本当に最後の戦いにしたい。ここまで来てまだまだ謎が残っている太陽の姫だが、これで終わらせるために、私達は奮闘する。

 




部隊編成は終了。これであとは戦うだけです。新たな仲間、ゴーヤも、潜水艦隊として力を発揮してくれることでしょう。



支援絵を戴きました。ここに掲載させていただきます。

【挿絵表示】

https://www.pixiv.net/artworks/89417879
MMD静画のアイキャッチ風神州丸。フードが特徴的だけど、脱いでる姿がとても可愛い。リンク先には同じ特務艦同士で仲のいいあの子との掛け合いがあるのでどうぞ。
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