異端児だらけの遊撃隊   作:緋寺

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神の学び

 ついに始まった太陽の姫との最終決戦だが、こちらの攻撃は全く通らないでいた。挙句、私、陽炎が『蜃気楼』による無意識の狭間に入った瞬間、太陽の姫も同じように動いてきた。

 私は『蜃気楼』で移動している時のみの時間であり、使用後にクールタイムが必要なのだが、太陽の姫はそれを常時発動しているようなもの。それを使って攻撃してくるようなことはしてこないようだが、無意識の狭間を使えばこちらの行動は全て予測出来てしまうため、攻撃が当たらないのも嫌なくらいに理解出来た。

 

「クソッ」

 

 太陽の姫からの攻撃はしっかり避けて、私の『蜃気楼』は終了。隙を見つけることも出来ず、むしろ脅威を理解するだけで終わってしまった。

 いや、これがわかったのは1つ先に進めたと思うべきか。何もわからずに攻撃を続ける方が勝機を失うような行為に等しいかもしれないし。

 

「アイツ、常に『蜃気楼』だ!」

 

 自分のそれが終わった時に、全員に伝わるように叫ぶ。少しわかりづらいかもしれないが、私がやれることは全員に共有済み。超高速移動をしている間にも全てを把握することが出来たことも、防衛線を抜けた後に全員に伝えている。

 

「ということは、全部が遅く見えてるってことでいいのかな」

「そう。今『蜃気楼』で近付こうとしたんだけど、その間にも当たり前のように私と同じ速度で迎撃してきた」

「うわ、それは面倒くさい」

 

 ここからは私がクールタイムに入ってしまうため、衣笠さんの近くへ。全自動防衛でクールタイムが終わるまで守ってもらいたい。

 いくら太陽の姫が『蜃気楼』を常時発動しているようなものでも、全自動防衛はそれをも先回り出来る。しかし、その防衛すらゆっくりと見えてしまっている太陽の姫には、先回りを見た後で対策を取ることすら出来るだろう。

 

「そうだとしても! 我々は止まるわけにはいかん!」

 

 勿論、誰もそれがわかっても怯むことはない。攻撃し続けることで、また太陽の姫の謎が解けるかもしれないのだ。

 長門さんは再度一斉射を放った。あの異常な回避性能というか予測してからの防衛性能が、『蜃気楼』の常時発動であることはわかった。次は謎の防御力を持つ水柱の謎だ。アレを突破出来ない限り、M型異端児以外の攻撃は全て防がれてしまう。

 

「懲リヌモノダナ、愚カナ人ノ子ヨ。貴様ラノ抵抗ハ無駄ダ」

 

 当たり前のようにその砲撃は水柱で全て防御。事前に何かをやっているかと観察するものの、手に持つ棒を振るっていること程度しかわからない。

 そもそも奴は主砲をどう撃っているのかも不明。背中の光背から放たれているようにも見えるのだが、主砲のようなものすら見えない。まさかステルスか何かか。

 

 それを確認するためにも、あらゆる攻撃を仕掛けてどんなことでもいいから知る必要がある。今私達の出来ることは、『影』との戦いで身に付いた新たな技能も込みにした全ての行動。攻撃も防御も全てだ。

 いくら神だと言っても、完全無欠の絶対的存在なわけがない。私の覚醒を阻むことが出来なかったこともあるし、私達に差し向けてきた巫女達を全て撃破してこれたことだって、あちらの想定通りとは言えないだろう。

 ならば、確実につけ込む隙があるはずだ。例えば……と考えるとやはり依代という最大最高の弱点の存在になる。私達には手が届かないのだが。

 

「M型の攻撃は効きそうってことは、それは多分存在そのものが太陽の姫への対策になってるからだよね。だから確実に避けるんだ」

「だろうね。ミコトの攻撃は水柱も使ってない。ってことは、M型の攻撃は水柱も突き破ることが出来るってことで間違いないね」

 

 衣笠さんに守ってもらいつつも状況整理。12人で囲いながら戦えば、例え相手が神であろうと、多少なりは考える時間は取れる。太陽の姫はそうそう全方位での攻撃をしてくることもないため、長門さんのおかげでそれくらいの隙間が出来た。

 これは前の戦いの時から薄々勘付いていたことだ。あの時も衣笠さんの攻撃は回避していたくらいだし、それを徹底している。故に最初はM型異端児のみの部隊が考えられていたくらいだ。

 

「でも、回避性能も異常。常に『蜃気楼』とか正直お手上げね。M型からは『蜃気楼』、それ以外は水柱。水柱使うのにも多分『蜃気楼』は使ってるだろうな。タイミング見計らって防御してるから」

 

 つまりは全て『蜃気楼』が問題。こちらの動きがスローに見えるため、どうやって回避すればいいのかがその場で判断出来る。深海棲艦の親玉なだけあってフィジカルもとんでもなくスタミナ無限大。クールタイムとか全く必要無い。

 

「磯波は何か気付いてるかも」

 

 私と衣笠さんと同じように、磯波も太陽の姫の挙動を常に観察していた。援護射撃を繰り出しながらも、慢心が故の隙や、どうしても対処が出来ない弱点が見えないか。

 今はまだ答えが出せていない段階なのだろう。殆ど睨み付けるような視線で太陽の姫を注視し続けている。

 

「姉さんはそのまま撃ってて!」

「陸奥はどうするつもりだ!」

()()()()、やってみるわ。ミコト! こっちに来て一斉射!」

「は、はぁい!」

 

 ここで陸奥さんは今までにまだ試していないことを実行するため、ミコトを自分の側に招集。M型異端児と通常の艦娘が同時に放った時にどういう反応をするかを試すようだ。

 長門さんと組んだ方が強烈な一斉射になることはわかっていることだが、ミコトも負けてはいない。それこそ、霧島さんと組んで放っていた時と同じくらいの火力を引き出せることだろう。

 

「ミコト、行くわよ! 一斉射、てぇーっ!」

「行くよぉ!」

 

 そして、長門さんの砲撃が水柱に阻まれる中、陸奥さんとミコトによる一斉射が放たれた。ある意味全種類の仲間による同時攻撃。どう動いたとしても、別の攻撃に発展させることが出来そう。

 

「ホウ、アル程度ハ賢イ人ノ子モイルヨウダナ。『黄昏』ヲ使ウトハ」

 

 放った時には、太陽の姫は棒を振るっていた。その瞬間、長門さんと陸奥さんの足下から水柱。ミコトからの砲撃は全て回避。そして、間髪入れずに長門さんと陸奥さんに向けて砲撃。

 やはりM型異端児からは回避に専念し、それ以外には水柱による牽制や防御。M型に水柱を使うことはあるが、砲撃を防ぐためには絶対に使わない。あとは一斉射に対しては水柱を何度も立ち昇らせる必要があるため、何度も何度も爆発している。

 

「姉さん!」

「狼狽えるな! こういう時に使うのだろう!」

 

 戦艦すらも軽々と打ち上げてしまうが、そこは長門さんも陸奥さんも想定はしていた。クールタイムを乗り越えて、ある程度の連続使用が可能となった守護者の力により砲撃を砲撃で弾き返す。

 威力自体は戦艦主砲と変わらないか少し上回っている程度。当然掠るだけでも重傷は免れないのだが、神の一撃と言えどある程度はこの世の(ことわり)に準じている部分もあるようだ。

 

 ならば、あの水柱も何かしらの兵装によって引き起こされているものと考えるのが順当。突然海中で爆発するようなものなのだから、アレの正体は魚雷か。

 だが、それならその威力をそのままぶつけるべきだろう。魚雷自体、駆逐艦でも戦艦並みの力を発揮することが出来る超火力の一撃。それなのに、あの太陽の姫は魚雷を自らの補助にしか使っていない。

 

「アイツ、()()()()()()()()の……?」

 

 これが素直な疑問である。巫子の能力が基本的に回避寄りになっているのは、そもそも太陽の姫の能力がそういう風だからであると考えるのは妥当な線なのでは。

 

「だとしても、魚雷の動きじゃないでしょ。いきなり真下から爆発って」

「『蜃気楼』が常時発動なら、前以て撃つこと出来ると思う。それに、私達よりも魚雷の進む速度がやたら速いとか、好きなタイミングで爆発させられるとか、邪神ならそういうこと出来そうな気がする」

 

 そう考えている内に、仲間達は今の長門さんと陸奥さんの動きで太陽の姫の防御の仕方を考えたようで、M型とD型で組むのが前提になりつつある。

 そもそもM型とD型のコンビである村雨と萩風は心配いらないが、夕立は単独で動くのは難しい。そこで、M型の中でも上位の同期値である沖波と組んだ。木曾さんは先程もやったように磯波とタッグ。霧島さんは殆ど単独のようなものだが、戦艦組は随時ミコトをパートナーにしていく作戦。要所要所でミコトが相方になる。

 

 その間に奴の謎を全て解かなくてはいけない。私のクールタイムもそろそろ終わるため、そこからはまた『蜃気楼』を使いつつ攻め込む。

 

「オキ、同時攻撃しよ。アイツ、全く同じタイミングなら守り方が安定しないっぽい!」

「だね。なら夕立ちゃんに合わせるからガンガン行っちゃって!」

「ぽーい!」

 

 夕立の突撃に合わせて沖波も一緒に突撃。回避性能特化故に、接近しても攻撃は回避出来るとは思う。しかし、基本的には紙一重であるため、戦艦主砲の衝撃波が避けきれないのがネック。そこは沖波の技能である予測を使っていくしかないだろう。

 

「萩風、私達もあっちに合わせよう。4人がかりならどれかが通るはず!」

「いいでしょう。M型である村雨さんの攻撃の方が重要であることを忘れないように」

「勿論。でもアンタの攻撃も当たればダメージになるかもなんだから、気を抜くんじゃないわよ」

「抜いてるわけが無いでしょう。他ならぬ姉さんの前で」

 

 夕立沖波ペアと同時に、村雨萩風ペアも動き出した。方向としては真逆、あちらと挟み撃ちをするように突撃。

 2方向から4人の突撃であり、内2人はM型異端児。これならば誰か1人は通るのでは。

 

「人ノ子ハ成長スルモノデアルコトハ、我モ理解シテイル。イヤ、()()()()()()()()トデモ言オウカ」

 

 4人からの同時攻撃であろうが、太陽の姫の調子は変わらない。今までよりも大きく棒を振るったかと思うと、夕立と萩風の足下から水柱が立ち昇る。嫌でも姿勢を崩されるわけだが、萩風はともかく夕立は一度同じ攻撃を受けているため、この程度では突撃をやめない。

 

「だったら! 夕立がこういうこと出来るって知ってんでしょ!」

 

 足を取られつつも、ここで間宮さんの模倣。瞬間的に数発の砲撃を急所に撃ち込む攻防一体の技。無意識の狭間に入った状態でもそう簡単には回避が出来ないはずだ。

 

「私も、簡単にはやられないわよ!」

 

 そして同時に村雨は伊良湖さんの模倣。瞬間的な連続砲撃に重ねた超高速移動からの一撃。村雨は水柱で足を取られているわけでもないため、十全の力を以て太陽の姫の真後ろに回り込んでいた。

 

「理解シテイル。アア、理解シタノダ。貴様ラハ、()()()()()デ成長シタノダカラナ」

 

 本来なら回避不可能な同時攻撃。私もアレに関しては避けられる気がしない。『蜃気楼』に入ろうとした瞬間には既に撃ち抜かれているだろうし、回避しようとした瞬間には回り込まれているのだ。これがあったから私は巫子から脱することが出来た。

 だが、それは常時『蜃気楼』状態である太陽の姫には関係無かった。最初から撃つ瞬間と移動する瞬間が見えているのだから、回避する方法、処理する方法もすぐに計算出来てしまう。

 

 その結果、太陽の姫の周囲に突如艦載機が発生。360度全ての方向に舞い散り、夕立の瞬間的な連射も村雨の超高速移動も全てを止めてしまった。

 

「ぽっ!?」

 

 特に夕立は艦載機そのものに鳩尾に食い込むように突撃され、明確なダメージとなってしまう。さらには、艦載機が自爆の体勢。こんな至近距離で爆発されたら致命傷になりかねない。

 

「夕立、すぐに助ける」

「ガサさん!?」

 

 と、気付いたら私の隣にいた衣笠さんが夕立の側にいた。全自動防衛が発動し、最も危険な者に対して無意識のうちに反応していたのだ。

 腹に食い込んだ艦載機を掴み上げ、自爆する間もなく範囲外に投げ飛ばす。その瞬間に爆発。かなり大きな火力ではあったが、衣笠さんが即座に対応したおかげで致命傷にはならなかった。しかし、爆風にはどうしても巻き込まれてしまうことになり、2人纏めて吹っ飛ばされる。

 

「村雨さん!」

 

 同じように村雨の足止めをした艦載機を、萩風が主砲を振りかぶって殴り飛ばした。こちらも自爆ギリギリのタイミングだったことで、致命傷は免れたが同じように吹っ飛ばされた。

 

「このっ」

 

 この爆発を利用して、今度は沖波が歯を食いしばりながらも太陽の姫を撃っていた。予測を重ねた結果、仲間を犠牲にするような形になってしまったものの、艦載機の隙間、放った瞬間のラグの時間を狙い、その能面に向かっての砲撃。

 回避を攻撃に転化した、成長によって手に入れた確実に当てる一撃。2方向からの攻撃に3つ目の方向を加えた、本来なら確実に避けられない一撃。

 

「我デ無ケレバ、ソレモ良カッタロウ。ダガ、無意味ダ『空』」

 

 しかし当たらない。常に『蜃気楼』ということは、脱力回避と同じ状態。沖波の砲撃は完全に擦り抜けてしまう。いや、あれは『空』の回避だ。予測された砲撃を上回る予測で紙一重の回避。

 

「そっちも使えるの!?」

「何ヲ言ウ。貴様ラノソレハ、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 沖波の『空』の回避は、深海棲艦化したことにより手に入れた技。しかも巫女、太陽の姫に与えられた技と言っても過言では無い。

 ならば、太陽の姫も同じことが出来るということだった。言ってしまえば、私の脱力回避や『蜃気楼』、沖波の『空』の回避、さらには『雲』の使っていた海中を経由する回避や『黄昏』のノーモーション跳躍なんてことも出来てしまうのでは無いか。それも、巫女よりも精度が高い段階で。

 

「貴様ラノ成長ハ、ヨク見セテモラッタ。愚カナ存在デモ侮レヌ存在デアルコトヲ学ンダ。故ニ我ハ、貴様ラヲ巫女ニシヨウナドトハモウ思ワヌ。イズレ神ヲモ超エル力ヲ持チカネナイ貴様ラハ、ココデ全テ滅ボス」

 

 未だ余裕すら持っている太陽の姫に、絶望感が漂う。だが、誰も諦めない。諦めてなるものか。

 

 

 

 この思いは、仲間達誰もが持っている。その力は、この空間で伝播していく。

 

 また私の中で、何かが鼓動し始めた。

 




支援絵を戴きました。ここに掲載させていただきます。

【挿絵表示】

https://www.pixiv.net/artworks/89673506
MMD静画のアイキャッチ風プリンツ。ネルソンに変な入れ知恵をすることがメインになってる感じがするけど、ネルソンタッチ要員という時点で相当な実力者。リンク先にカッコいいプリンツなどもあるのでどうぞ。

【挿絵表示】

こちらは前作『継ぎ接ぎだらけの中立区』の支援絵になります。詳細はあちらの最終回の方に掲載させていただきます。あちらもよろしくね。
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