異端児だらけの遊撃隊   作:緋寺

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その魂が

 太陽の姫との戦いが続く。奴は巫女であった者の技をも全て有しており、沖波の扱う『空』の回避も見せつけた。さらには夕立、沖波、村雨、萩風の同時攻撃すらも、水柱と異常な回避性能、さらには360度全方位への艦載機で全て対処してしまった。

 未だにあちらは無傷。それに対してこちらは艦載機をどうにかしたものの、その時の爆風に巻き込まれて吹っ飛ばされてしまった。一番近くにいた夕立と村雨は酷くは無いが火傷を負い、全自動防衛が働いて夕立を守った衣笠さんや、村雨を救うために動いた萩風も、爆風によって軽傷。致命傷は免れたが、ついにこちらに消耗が見え始めてしまった。

 

「ったた、でもまだ大丈夫っぽい! ありがとうガサさん」

「どういたしまして。陽炎、自分の身は」

「自分で守れる! クールタイムも終わってるよ!」

 

 ここからは衣笠さんも前衛に。全自動防衛によって、その場で守るべきものを固定化せずにその場その場で切り替えていく方向にしたようだ。

 衣笠さんだってこの場で成長している。守る対象を全体に拡げつつ、その場で最も危険な者に対して無意識のうちに選択出来るようになっていた。それ故に、あの瞬間、私、陽炎を守っていた衣笠さんが気付けば夕立を守っていた。

 

「でも、これは結構しんどいね。対象が……11人か。ま、どうにかするわ」

 

 自分を度外視する弱点はもう一旦置いておくことにして、残り11人を全て守り切ると言い切った。勿論、私達は自衛だってする。それでも太陽の姫の力が上回ることがあるだろう。そうなった場合、衣笠さんがさらに守ってくれることで、より命の安全性を高めていく。

 

「全部の回避が出来るのは理解出来たけれど、さてどうしようかしらね」

 

 そんな状況でも誰も折れることはない。突破方法を模索し、攻撃を続けている。駆逐艦の攻防を見届けた直後、今度は霧島さんが前に飛び出した。

 

「っし、俺も行く。磯波、ちゃんと見ておけよ!」

「了解です。もう少し、もう少しのはずです」

 

 霧島さんと同時に木曾さんも飛び出す。先程までは近付いたとはいえ砲撃での攻撃だったため、『空』の回避もされたしそもそも艦載機で迎撃された。

 だが、今度は霧島さんと木曾さんによる同時の完全近接戦闘。凶悪な兵器である霧島さんの鋏と、鋭利な刃である木曾さんの軍刀、どちらも砲撃以上に一撃必殺を狙った武器だ。

 

 さらに、木曾さんが磯波に指示。磯波の観察力に頼り、あらゆる攻撃を喰らわせることで挙動を確認し、何処で何をやっているかを判断してもらっていた。

 ここに菊月がいれば『心眼』という手段もあったのだが、それは無い物強請りだ。だからこそ、『心眼』の域に達しようとしている磯波に、それを引き継いでもらう。

 

「懲リヌ者達ダ。貴様ラノ手ハ、我ニハ届カヌ。届カセヌ」

 

 先程と同様に、追加の艦載機が周りを飛び交った。もう艦載機とすら言えない、近距離戦闘用の兵器にしか見えなかった。遠距離には砲撃、近距離には艦載機、さらにどちらにも牽制と防衛で水柱。

 先程の夕立や村雨の状況を見ていたからこそ、その艦載機に対しての行動は前以て考えていたようだ。考えていたと言っても、殆ど力業ではあるのだが。

 

「近くに来てんなら、全部ぶった斬ってやるよ!」

「同感ね。なら私は、全て捻り潰してあげるわ!」

 

 特攻を仕掛けてくる艦載機を斬り払っていく木曾さんと、鋏で潰していく霧島さん。その勢いは一切止まらず、艦載機の爆発すらも気にせずに、太陽の姫に突撃。

 砲撃ならば、この艦載機の特攻で一旦撤退を考えるだろうが、この2人はそういうことを考えない力押し。それが近接戦闘。

 

「勇気ハ買オウ。ダガ、ソレハ無謀ダ。考エタ上デソノ選択ヲシタトイウノナラ、貴様ハ群ヲ抜イテ愚カデアルトイウコトカ」

「愚かで結構。無謀で結構。これが先に進むための行動になるのなら、私は艦隊の頭脳として最善の選択をしたと自信を持って言えるわ」

「ソウカ。ナラバソノ無謀サヲ認メヨウ」

 

 しかし、霧島さんの鋏も木曾さんの軍刀も届くことなく、結局は水柱が阻む。かなり強引に乗り越えようとしたが、一斉射を食い止めるレベルの水柱が連打されたため、霧島さんの突破力ですらそのままかち上げられる羽目に。

 こうなってしまうと、次に来るのは主砲だ。何処にあるかもわからない主砲が、今の2人に対して照準を合わせたのだろう。空中では何も出来ないため、誰かの防衛が必要。

 

「木曾」

「ガサさん!」

 

 衣笠さんの全自動防衛は木曾さんを選択。水柱の上まで跳んでおり、木曾さんの襟首を掴みながら、主砲が()()()()()()光背に向かって砲撃。

 しかし、霧島さんは無防備に……と思いきや、鋏を既に変形させて盾に。さらには、自分の後ろに何かしら合図を送っていた。その後ろにいたのは、先程まで一斉射に参加していたミコト。

 

「陽炎! 貴女も!」

 

 身を挺して隙を作ろうとしていた霧島さんの声に、クールタイムも終わっている私は『蜃気楼』を発動。周囲の時間がゆっくりと流れ、私と太陽の姫だけが通常の移動となる無意識の狭間へ。

 

 合図と同時にミコトが必死の形相で霧島さんの後ろから主砲を放とうとし、衣笠さんが空中で砲撃中。木曾さんは軍刀ではなく魚雷を放っていた。かなりの至近距離ではあるが、海中ではなくダイレクトに魚雷をぶつけることが出来れば、また今までとは違う動きが見えるかもしれない。

 対する太陽の姫は、それをしっかりと確認した後、悠々と回避行動をしていた。これだけゆっくりに見えていれば、どんな攻撃でも避けられるだろう。私がそうであるように。

 避けながらも光背の一部が輝き、砲撃まで放たれていた。撃つ瞬間がある程度ゆっくり見えているため、それがどうなっているのかがようやく判明する。これは『蜃気楼』が無ければ一生わからなかったかもしれない。

 

「やっぱりステルスだったんだ」

 

 放たれる瞬間だけ、チラリと()()()()()()()()が確認出来た。無意識の狭間で無ければわからないくらいの一瞬である。

 浮かんでいることも驚きなのだが、私達には見えないように細工されているのも大概である。如何にも太陽の姫と言わんばかりに、光の屈折などを利用したステルスと考えればいいか。そうする理由はわからないが。

 

 僅か数秒の神の時間。これを使った後は再びクールタイムに入ってしまうが、この貴重なタイミングを有意義に使うために、私は全力を出す。

 

「対トナル者ヨ、我ニハ見エテイルゾ」

 

 この無意識の狭間でも当たり前のようにこちらに振り向いた。やることをやったから次は私だと言わんばかりである。

 

「見えているからどうなのさ」

「貴様ヲ打チ砕クノミ」

 

 背中の艤装の拳が僅かに動いた。これもこの無意識の狭間だからこそわかった一瞬。菊月だったらこの一瞬を無意識の狭間で無くとも視認出来てしまうのだろうが、私にはこの神の時間を使うことでしか判断出来ない。

 その拳が動いたことにより、海中に何かが放たれた。海中故にそれが何かはわかりづらかったが、この状況下で出せるものといえば、それはもう魚雷以外に考えられない。つまり、あの拳が私達で言う魚雷発射管なのだろう。

 

「やらせないっつーの」

 

 それに対し、魚雷を撃ち抜くために砲撃。砲撃だって放った瞬間に遅くなるため、狙い撃つのはかなり難しくなるのだが、ある程度は方向性を決められる。

 しかし、奴の魚雷は一味も二味も違った。

 この無意識の狭間でも、()()()()()()()()()()()()()。つまり、とんでもなく速い。火力を持たない代わりに、異常な速度でこちらの真下に向かって駆け抜けていく。回避は出来たものの、真横で爆発されて足を取られかけた。

 

「そっか、それがタネ。そりゃわからないわけだ。()()()()()()()()()()()()()()

 

 あの時、『黄昏』に分霊をしていたときの雷撃は、こんな速度では無かった。普通の雷撃であり、潜水艦が視認出来るくらいにまでに普通となっていた。

 おそらく、遠退けば遠退く程にその速度は落ちていくのだろうが、眼前に太陽の姫がいる場合はこの速度。確実に誰も回避出来ない。

 火力が無いだけマシなのだが、その代わりに爆発したときの水柱に防衛能力があるというのはインチキにも程がある。

 

「っし、まずは全部わかった」

 

 そもそも見えない主砲に、そう見えない魚雷発射管。深海棲艦からも逸脱した姿なのはまさに邪神なのだろうが、やはり兵装そのものはこの世界に降り立ったことによって、この世の(ことわり)に縛られることになっているようだ。

 とはいえ、その性能は完全に逸脱しているのは言うまでも無い。普通ならばこんなもの対策しようが無かった。魚雷が爆発する前に破壊したとしても、そのときの水柱はおそらく同じ効果。

 

「っ……こっちはタイムアップか」

 

 そして私は『蜃気楼』のリミット。ここからはまたクールタイムに入る。

 

 ミコトの砲撃も木曾さんの雷撃も軽々と避けられ、見えない主砲から放たれた砲撃は霧島さんに向かっていたものの、霧島さんは鋏を変形させた盾でどうにかその方向を逸らしたことで致命傷は回避。それでも艤装の破損は回避出来ず、砲撃能力に支障が出る程に。鋏もヒビが入ったような状態。

 

「見えない主砲と見えないくらい速い魚雷がある! 艤装の腕が魚雷発射管!」

 

 わかった情報はすぐに全員に開示。それがわかったところでそれを対処出来るかはわからないが、何処に兵装があるかがわかれば、ある程度の戦略は立てられるようになる。

 

「そうか、だからあの拳に違和感があったんだ。でも見えないくらいに速い魚雷なんて、どうすれば……」

 

 磯波も水柱が立った瞬間の拳の動きに何か感じるものがあったようだが、それを確認した瞬間には既に魚雷は真下に来ており、水柱を上げているというのだから対処法に困る。

 如何に『心眼』と言えど、視認した瞬間には全てが終わっているというのなら、それは予測する以外に回避方法がない。もしくは全員が無意識の狭間に入るか。それが出来れば苦労はしない。

 

「んなもん、決まってんだろ。まずはあの腕をぶった斬る。そうすりゃ水柱は無くなるんだよな」

「あれが魚雷発射管だと言うのなら、それしかないかと……。でも、近付く時にはまたあの魚雷です。跳んでも避けられない水柱ですし」

「だからって、諦めるわけ無いよなぁ!」

 

 そうだ。タネがわかってそれがどうやっても対処出来ないくらいのインチキであっても、諦めるわけにはいかないのだ。幸いにもまだ誰も命を失っていない。それに、誰も折れていないのだ。

 こちらには人数差という決定的な有利がある。あちらは神とはいえ、こちらは頭脳が12個もあるのだ。

 

 考えろ。徹底的に考えろ。私達は、成長出来る人間だ。

 

「愚カナ人ノ子ヨ。マダ諦メヌカ」

「当たり前だろうが。この世界が終わっちまう以上、俺達に諦めるなんてことは無いんだ。お前をぶっ倒して、艦娘としての矜恃を全うしてやる」

「ソウカ」

 

 木曾さんの足下から水柱。無意識の狭間でないときは、あの拳が動いたかも視認出来なかった。あちら側でも一瞬と思える程なのに、通常の速度ではわからないのも当然か。磯波はよくアレが見えているものだ。菊月ならもっと見えていたか。

 

「っくそっ」

「マズハ貴様ニシヨウ。貴様ヲ手折リ、見セシメトシテヤロウ」

 

 さらにはその周囲にも水柱を何本も立ち昇らせ、全自動防衛すらも妨害。木曾さんを完全に孤立させてしまった。

 クールタイムでなければ今すぐ私が動くのだが、困ったことに今は『蜃気楼』が使えない状態。救うことも出来ない。

 

「イヨイヨモッテ、死ヌガヨイ」

 

 見えない主砲を全て木曾さんに集中させ、持てる兵装を全て木曾さんに傾けて、確実に殺すために神の全力を放ってしまった。

 対する木曾さんはかち上げられて空中。回避しようがない。この状態で回避出来るのは夕立だけ。

 

「俺が、この程度でっ、やられるかよ!」

 

 しかし、木曾さんも只者ではない。真正面からその砲撃を見据えたかと思ったら、空中で踏ん張りが利かないというのにもかかわらず、思い切り軍刀を振り払った。

 

 その一撃には、魂が乗っていた。

 

 太陽の姫の砲撃は木曾さんに届く前に斬り裂かれ、木曾さんに直撃することなく真後ろへ。

 代わりに軍刀は砕け散ってしまったものの、これを無傷で回避したことは木曾さんにしか出来ない。

 

「……人ノ子ハソコマデ成長スルノカ。侮レヌモノトハ思ッテイタガ、ソウカ、ソウカ」

 

 能面の奥の瞳が、楽しそうに歪んだ。

 

 

 

 木曾さんのその魂が、私の中の鼓動をより強めた。

 

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