異端児だらけの遊撃隊   作:緋寺

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陽炎の世界

 みんなの魂に触れ、私、陽炎は選ばれし者としての力がさらなるステップへと向かった。太陽の姫が常時発動している『蜃気楼』をも超える光速の一撃を得たことと、それだけやってもクールタイムが不要になったこと。

 ここまでは私個人の力だが、それ以上に大きな、とても大きな力を得た。私がこの場に存在するだけで、海域にいる仲間達が強化されるという赤い海と真逆であり同等の力。今までの力の差を埋め、一気に勝ち目を掴み取る最後の力だ。

 

「貴様ガ()()()ニ辿リ着クノハ、自明ノ理デアッタカ。小賢シイ!」

 

 対する太陽の姫も、私の覚醒に応じて更に力を増す。今や、赤い深海棲艦と呼称していた時とはまるで違う日が沈んだように昏い蒼に染まり、光背が禍々しく歪んだまさに邪神と言うべき姿へと変貌していた。あちらもここで全てを終わらせるつもりで奥の手を出してきたようだ。

 だが、そんな姿になろうが、今まで以上の力を出そうが、私達には関係ない。魂は燃え上がり、今までにないくらいに昂っている。負ける気がしない。

 

 この力は、おそらく今だけの産物だろう。太陽の姫を倒すために、みんなの心が一つになっている今だからこそ起きた奇跡の力だ。今やらずしていつやるというのだ。

 

「行くよみんな! 最後の戦いだ!」

 

 先陣を切るのはやはり私だ。一歩踏み出し、光の速さで突撃。蒼く染まったことでそれにすら対応出来るようになっていたとしても、私がやれることはこれだけだ。

 周囲の時間が止まったかのような空間に没入し、太陽の姫に一気に近付く。この空間では誰も動かない。太陽の姫すらも。だが、その能面の奥の瞳はしっかりと見据えていた。完全な対応は出来ずとも、私が向かってきているということは勘付いている。

 

「まずは私。これが終わりの始まり!」

 

 顔面に向けて3発放ち、即座にそこから離脱。撃った瞬間に弾はそこに止まり、時が動き出した瞬間に本来の速度を取り戻す。

 クールタイムは無くなったものの、何度も連続使用が出来るほど簡単に制御が出来るほど使いこなせているわけでもない。一度使ったら少し間を空けた方がいい。それに、一度の使用時間は体感3秒程度。その間にやれることをやるイメージで。

 

「小癪! 我ニ二度モ三度モ同ジ技ガ通用スルト思ッテイルノカ!」

 

 もう冷静になるつもりもないようだ。荒げた声はそのままに、着弾する寸前に手に持つ棒で強引に打ち払う。もう余裕なんてものも無く、光速にはついていくのでいっぱいいっぱいと見える。

 それでも追い付けている辺り凄まじいと感じてしまった。私もあちらも太陽の姫。同等の力を持っていておかしくはない。個人技だけでいうのなら、奴は私と対等になってもおかしくない。

 

 だからこそ、私には仲間がいる。私だけと対等ならば、1人でも増えればその分押し込める。その仲間が、今や大量にいるのだ。

 

「漲る! 漲るぞ! 陸奥、我々は守護者の力を!」

「ええ、鎮守府だけじゃ収まらない、世界を守る力を!」

 

 私の一撃を皮切りとして、まず動き出したのは長門さんと陸奥さんである。2人同時に伊良湖さんの技を使い瞬時に移動し、太陽の姫を挟み撃ちにする位置へ。そこから間宮さんの技による瞬間砲撃。キレも良く、疲労を感じさせない渾身の砲撃が放たれた。

 普通なら回避なんて出来ない。全く別の方向から同時に何発も放たれているようなもの。気付けば艤装が破壊されているような速さだ。しかし、太陽の姫はそれすらも見てから回避するだけの力を持っている。同じ力を持っているのだから、嫌というほど理解出来る。

 

「何故懲リヌ! 貴様ラハ無力デアルコトガワカッテイルダロウ!」

 

 当然ながらそれは回避し、さらには水柱で長門さんと陸奥さんの足下を崩す。常套手段でありながらもその精度はやたら上がっており、踏ん張りが利かなくなる。

 だが、強化されている2人はそこからも違う。即座にまた高速移動でバックステップ。クールタイムなんてもう必要ない。後のことを考えていないというのもあるが、強化によって全てのスペックが上がっているのだから、それこそ2人の師匠(間宮さんと伊良湖さん)と同じくらいにまでやり切ることが出来るだろう。

 

「無力なら、もうとっくにやられてるわ! でも、私達はまだやられていない!」

 

 すかさず突撃していたのは霧島さんである。私の光に照らされたことにより、先程吹っ飛ばされた時に蓄積された疲労とダメージは消え、破壊された艤装は修復されるわけではないものの、主砲は十全に使えるようになっていた。

 こちらは長門さんや陸奥さんとは違い、遠距離からの砲撃。今までならば、これは水柱で防いでいる。今回も当然のようにその手段を取った。

 

 しかし、太陽の姫の思惑は外れる。霧島さんの砲撃はその水柱を()()()()()。まるで、ミコトが放った砲撃の如く、太陽の姫の力に食い止められることもなく。

 

「ナッ……」

「あら、これは都合がいいわね。これも陽炎の使徒の力ってことかしら!」

 

 水柱に阻まれなくなったということは、さらにこちらの手数が増えるということに他ならない。今まで水柱の壁に止められ続けていた一斉射も、先程のように近付く必要が無くなったわけだ。

 

「対トナル者ノ力……! 貴様ガ()()()()()()()()()()()()!」

 

 なるほど、そういうことか。M型異端児は、外の存在である邪神を排除するため、世界に選ばれし者だ。故に、太陽の姫の水柱を霧散することが出来るし、奴に唯一ダメージを与えることが出来る存在。

 その世界が、私にその選択を一任してくれているのか。ここにいる仲間達は、私に選ばれし者。()()()()()()()()()()という解釈になる。

 

 つまり、今の仲間達は、疑似的にだが全員がM型異端児扱いになったわけだ。深海棲艦に選ばれたD型異端児も、通常の艦娘達も、この空間にいれば全員漏れなく太陽の姫の天敵となる。

 

「だったら、夕立も今だけは選ばれし者っぽい? ゲロ様に選ばれたから、夕立の攻撃も効くってことだよね?」

 

 戦うことに関しては理解力が段違いな夕立が、既に跳んだ後だった。奴の回避性能はむしろ前より上がっているというのに、それをも上回る速度が出ていた。

 その時、チラリと私の方に視線が来たように見えた。まるで、攻撃を合わせてくれと言わんばかりの期待した瞳。

 いいだろう、ここからは全員と連携だ。夕立がそうしたいと望むなら、それを最高最善の形で叶えてあげよう。目でその意思を返すと、ニンマリと笑みを浮かべた。

 

 光速の世界へ。全てが止まって見える空間で、夕立のやりたいことを判断して太陽の姫の行動を予測する。

 正面から突っ込む夕立をサポートするため、太陽の姫は回避しながらも主砲を夕立に放つ。空中でも回避するという夕立ならではの特性を理解して、それすらも考慮したカウンターを入れるつもりだ。それは許さない。

 

「夕立は狙わせないよ」

 

 放とうとして一瞬だけ姿を現している主砲に数発砲撃を入れ、夕立への照準をあらぬ方向にズラす。ここでタイムアップ。もう少し時間があれば夕立の安全を確保しつつ私からも攻撃が出来るのだが、いくら選ばれし者の力といえども、私自身が人間なのだから無理は出来ないか。

 

「ヌゥ……!」

「ナイスゲロ様! 夕立の求めてた連携っぽい!」

 

 通常の流れに戻った瞬間、太陽の姫の砲撃は夕立とは関係ないところに飛んでいき、夕立の砲撃は的確に太陽の姫の胸へと向かう。

 それすらもギリギリのところで手に持つ棒で弾き飛ばしてしまったが、ここにいる全員が選ばれし者となった今、奴としては全てを回避しなくてはいけない必殺の一撃。

 

「攻撃の手は止めない! 本当に漲ってるんだから!」

「勿論です。私はこれ以上無いくらいに昂ってるんですから!」

 

 続いて村雨と萩風による突撃。もう2人で行動して一緒に攻撃するのが当たり前のようなコンビとなっているのが嬉しい。

 そもそもM型異端児である村雨はさておき、()()()()()()()()という状況が萩風を余計に強くしていた。正しい方向に向かった駆逐水鬼と言っても過言では無いような気がして複雑な気分だが、今までに無いくらいイキイキと立ち向かう様は見ていて気持ちいいくらいだった。

 

 それなら、私もその隣にいよう。3人同時の攻撃ならば、回避方向が大きく制限出来る。またもや光速の世界へ入り、萩風の隣へ。村雨と萩風の攻撃を回避した先を狙って砲撃を置いてくる。

 これはある意味、松輪の力を借りているようなもの。回避しつつ、最も危険なところに攻撃を置いておくというアレ。砲撃が放った瞬間にそこに止まるという性質を活かした、それこそ選ばれし者の力総動員の必殺技。

 

「サセヌ!」

 

 私の動きを予測し始めているのか、回避後に私の置いてきた砲撃を弾き飛ばした。

 もうあちらもなりふり構っていられないようだ。今までここまで動き回ることはしていない。邪神として、小さき者を見下ろすかのように悠々と動いていたが、そんな余裕なんてもう与えない。

 

「貴様ラハ、ココデ滅ビルノダ! 抵抗ナド無駄デアルコトヲ、思イ知レ!」

 

 回避直後に全方位に向けての全力攻撃。艦載機がこれでもかという程に発艦され、さらには魚雷発射の兆候。水柱で戦場を荒らし、超低空飛行の艦載機により全員殲滅を狙った回避不可能な範囲攻撃。

 

 そう、それは今までならだ。今は違う。

 

「ネルソンタッチ! 行くぞぉ!」

 

 長門さんを先頭に、陸奥さんとミコトが縦に並んだ突撃、模倣ネルソンタッチにより、その猛烈な攻撃の中を真っ直ぐ突っ込んでいった。いや、これは3人だけの突撃では無い。突如足下に来た太陽の姫の魚雷は、先んじて放たれていた木曾さんの魚雷によって意図しない場所で爆破されている。

 ネルソンタッチによる直進さえ邪魔されなければいいのだから、その真正面の魚雷だけをどうにかしてしまえばいい。そう考えるなら、予測も何もなく、突撃よりも早く魚雷を放っておけばどうにかなる。

 

「俺が道を拓く! 頼んだぜ!」

 

 先に水柱が立ち昇ってしまえば、それはネルソンタッチによる前方向への猛烈な砲撃で全て霧散していくのみ。この猛攻はいくら太陽の姫でも止められやしない。

 

「小賢シイゾ、愚カナ人ノ子ヨ! ソノヨウナ無謀ナ突撃デ、我ヲ滅スルコトガ出来ルトデモ!」

「無論、思っちゃいない。だが、貴様を丸裸にすることは出来る!」

 

 絶対に当たる距離まで近付いても、当たり前のように避けるのが太陽の姫だ。しかし、選ばれし者による猛攻はこんなことでは終わらない。

 全てにおいてこちらがスペックアップしていることで、回避にも余裕が無くなってきている。

 

「ミコト、行け!」

「りょーかい! 一斉射ぁ!」

 

 ネルソンタッチから1人だけ外れ、奴の眼前で一斉射の構え。たった1人でも、真正面に向けて乱射することで簡単には回避出来ない弾幕となる。

 

「ソノ程度デ!」

 

 その乱射をも回避しながら、ミコトに向けて艦載機が群れを成して襲いかかる。その速度も今まで以上。全力でミコトを排除しようと射撃や爆撃まで織り交ぜてたった1人を集中砲火。

 だが、そうしたことが間違いであることに太陽の姫は気付いていない。一箇所に集めたということは、その分処理もしやすいということ。こちらには、1人を守ることに関しては追随を許さない守護者がいる。

 

「随分と焦っていてくれてありがたいわ」

 

 その群れは全て、衣笠さんの手により破壊された。スペックアップにより守護者の力も大きく上昇している。殆ど一瞬と言える程の時間で、その全てを撃墜してしまった。

 代わりに艦載機からの射撃から自分を守り切ることは出来ておらず、致命傷とまでは行かないまでも傷を負ってしまっていた。衣笠さんとしても相当無茶をしていたようだ。

 

「ここ!」

 

 衣笠さんの陰から、沖波の砲撃が飛んできていた。ミコトの一斉射を回避し、艦載機による妨害もし、そこまで予測に予測を重ねた沖波の一撃。たった1発でも、致命傷を狙った渾身の1発。

 

「タカガ一撃ヲ、我ガ避ケラレヌト思ウカ!」

「避けさせません」

 

 そこに重ねていた磯波。太陽の姫の回避方向までも見越した『屈折』を狙っていた。見てから避けられるにしても、それでも回避しきれずに防御をしたその攻撃には、太陽の姫としても警戒は怠っていなかった。曲がるところまで加味して回避を大きめに取っている。

 ならばとここで光速の世界へ。沖波の砲撃に磯波の砲撃がぶつかる瞬間で時間は止まる。このままでは曲がった先でも当たらない。

 

 ならば、()()()()()()()

 

「ナ……ニ……!?」

 

 曲がった後の砲撃を、私の砲撃でもう一度曲げた。二段階の『屈折』ならば、もう避けられない。私が直接狙うのは避けられていたかも知れないが、避けたと思っていた攻撃なら警戒を少しだけでも解く。

 故に、この『屈折』は太陽の姫の胸に直撃した。選ばれし者の一撃により、貫くことは出来ずとも明確なダメージが入る。そして、動きが止まった。

 

「今!」

 

 もうあの回避は出来まい。次の一撃をトドメとしたい。

 

 

 

 合図と同時に、ここにいる全員が太陽の姫に向けて攻撃を放った。主砲と魚雷が一斉に向かっていき、そして回避する間もなく、太陽の姫はその攻撃に呑み込まれていった。

 




支援絵を戴きました。ここに掲載させていただきます。

【挿絵表示】

https://www.pixiv.net/artworks/89757440
MMD静画のアイキャッチ風イントレピッド。呉内司令の支援艦隊の中で最も母性溢れる女性。特訓を手伝ってくれたり、眠れない夜にホットミルクを淹れてくれたりといろいろやってくれましたね。リンク先にはブレイクタイムのお誘いがあるのでどうぞ。


【挿絵表示】

https://www.pixiv.net/artworks/89773304
MMD静画のアイキャッチ風伊13&伊14。今頃海中で激戦を繰り広げているであろう2人。この潜水艦姉妹は活躍してくれることでしょう。でも調子に乗って痛い目を見るイヨもあったり。ヒトミの容赦無い様子はリンク先にありますのでどうぞ。
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