異端児だらけの遊撃隊 作:緋寺
午前中は霧島さんとの訓練に勤しんでいた私、陽炎。沖波とのコンビプレーはそれだけでも磨かれていき、霧島さんに掠らせることくらいは出来るようになっていた。それまでに沖波共々ボッコボコにされたのは言うまでもなく、身体の至るところがペイント塗れ。防空訓練のときよりはまだマシというレベルではあるものの、似たようなものにされた。
訓練も終わり工廠に戻ると、何やら騒がしかった。誰かが怪我しただとか、新しい艤装が出来たとかそういうのでは無さそう。どちらかといえば倉庫を片付けているような慌ただしさ。
「何かあったの?」
「あ、お帰りー……って、また派手にやられたねぇ」
近場にいた夕張さんに聞いてみると、何と午後から支援艦隊が鎮守府にやってくるらしい。そのために、艤装を置く場所を作っているのだそうだ。
昨日のレ級の件を大本営に報告した結果、トントン拍子に支援艦隊が援軍として来てくれる運びになったらしい。知性を持つレ級なんていう例外は、増えてもらっても困るため、早急に片付けなければならないと判断されたようだ。
そしてその支援艦隊というのが、かなりの大型の部隊らしい。つまり、戦艦や空母の混成部隊である。私達の鎮守府は、どう頑張っても戦艦2人に空母3人。空母も2人は軽空母であり、大鷹は少し性質の違う護衛空母である。全く足りないとは言わないものの、力及ばずとなる可能性も確実にある状況のため、そういう形の援軍は実にありがたい。
「大型艦ということは、艤装も大きいということだからね。別に片付いていないわけじゃないけど、ちゃんと別個に置いておかなくちゃいけないし。それでこんなにバタバタしてるってわけよ」
「なるほどなぁ。どんな人が来るか楽しみだね」
「艤装弄らせてもらえるかなー。ここにはいないような人達が来るらしくてさぁ、すっごい楽しみなんだよねー」
整備は出来るかもしれないが、改造は無理だと思う。
それがどんな人かは知らないが、まずは仲良くなりたいものだ。せっかくの仲間なのだし、ギスギスした状態で戦いたくない。諜報部隊の時くらいにフランクならいいのだが。
そして午後。支援艦隊到着。相変わらず大型のトレーラーが鎮守府の外に到着したようで、次々と艤装が搬入されてくる。予想通り、私達のものとは違う大きな艤装ばかりだ。1つは陸奥さんのものと同じほどに大きい。
出迎えは空城司令としーちゃんだが、私達は野次馬根性で遠目からそれを眺めていた。支援艦隊受け入れのために午後は少しバタバタしており、訓練もそれが終わってからという話になっていたからだ。諜報部隊の時以上に、今回の援軍にはみんな興味津々で、ほぼ全員がその姿を一目見ようと集まっている。無論、私も例外ではない。
「まさか、アンタが来てくれるとはね」
「知性を持つレ級と聞いちゃ黙っちゃおれんさ。俺にも一枚噛ませてくれ」
空城司令と話をしているのは、あちらの司令官。
「で、そいつが噂の?」
「ああ、うちの秘書艦だ」
「
呉内司令の隣にいた外国の人も艦娘のようである。挨拶は母国語であり、人名は若干
「相手が相手だ。うちの精鋭を連れてきた」
「そいつはありがたい。ということは、あの子もいるのかい」
「ああ、一番張り切ってるだろうよ。おう、こっちだ」
その後ろからゾロゾロと現れる呉内艦隊の面々は、その誰もが外国の人である。艤装の影響で変化したわけでは無い、私達の国の人間とは別物の顔立ちのお姉さん達ばかり。
あととにかくスタイルがいい。というか美形。ビックリするほど形が違う。同じ人間なのか疑問に思えるほど。同性でもドキッとしてしまう人達ばかりである。
「レ級の1体や2体ならこれで押し潰せるだろう。こちらには何度か戦った経験もある」
「さすが、レ級との交戦経験がある部隊ってだけでも心強いもんだ」
確かに、経験が多い部隊が手伝ってくれるというのは助かる。私達よりも確実に手慣れているだろうし、知性を持っているにしても根本的な部分は同じはずなので、最初から多少は有利に戦えるだろう。そうでなくても、経験を活かして立ち回ることが出来るはずだ。
「今日明日でここの環境と艦娘に慣れてくれりゃいい。こっちにも慣れる時間がいるだろうさ。その間に作戦会議をしたいもんだが」
「問題ない。俺もそのつもりでここに来たからな。南方棲戦姫……だったか、そいつの巣を壊すまでは協力しようじゃないか。あまり長居しすぎるのも考えちゃいないがな」
司令同士が話している最中、その部隊の艦娘達の視線がこちらに向いた。私は確実に目が合っただろう。
そこでニンマリと笑った1人がのっしのっしとこちらへやってくる。司令官の側にいなくてはいけないとかそういう考えはまるで無く、ここに到着してしまえば個人プレーのようだ。
「貴様達がここの艦娘か。これからよろしく頼むぞ」
「うん、よろしく。えっと貴女は……」
「ああ、すまない。自己紹介がまだだったな。余は
聞き慣れない単語があったものの、名前はわかった。何というかいろいろと規格外な感じがする。特に一人称。
このネルソンさんの行動がきっかけになって、他の艦娘達もゾロゾロとこちらへ。呉内司令は呆れ顔だったが、好きにしろと言わんばかりに空城司令としーちゃんに連れられて鎮守府の中に入って行った。
作戦会議も確かに必要だが、艦娘同士の交流も大事だ。第一印象もあるし、短い間だが寝食を共にする仲間になるのだ。ここでまずしっかりとお互いを知っておくのがいい。
だからどちらの司令も止めなかったし、ここに置いて自分達だけで話をしている。アクィラさんは秘書艦という立場上、呉内司令について行ったが、結構名残惜しそうにしていた。こちらに来たいとウズウズしているようにすら見えたし。
「秘書艦はアクィラだが、艦隊旗艦は余が務めている。我が必殺の
「それをやるには私らが必要だろ。お前が威張ってどうすんだ」
次、ネルソンさんに悪態をつくのはまた変わった髪の色をした戦艦の人。これは確実に染めてるだろっていう色合いだが、沖波や夕張さんのような例もあるので断言は出来ない。しかり、頭に星が描かれているとなると、さすがに自分でやったとしか思えない。
「
「私ですが、何か御用?」
ちょうど霧島さんもどんな仲間が増えるかと見に来ていたため、名指しで呼び出されて表に出てくる。喧嘩を売られているわけではないので険悪な雰囲気というわけではないのだが、少し警戒して。
その顔を見たサウスダコタさんは、上から下まで舐めるように眺めた後、子供のような笑みを浮かべて手を差し出した。
「深海にガチの格闘戦を仕掛けたと聞いて、いつか会いたいと思っていた! キリシマ、是非ともアタシのトモダチになってくれ!」
「え、ええ、仲間だもの、それくらいならいくらでも」
「Thanks! 見ろネルソン、キリシマはいいヤツだ!」
「
あの霧島さんが押されている。前向きな者は多くいても、あそこまで押せ押せな人はいなかったかも。悪く言えば一切弁えない人。良く言えば分け隔てない友好関係を築き上げる人。
ネルソンさんもサウスダコタさんも物凄くクセの強い戦艦の人であることがよくわかる。だが、レ級との交戦経験もあるという猛者だ。何というか、佇まい、オーラが違う。
「次は私ね。
次、この中でも特に豊満な女性、イントレピッドさん。アクィラさんと同じく空母。ネルソンさんやサウスダコタさんと違い、かなり柔らかい雰囲気である。うちの天城さんもそうだが、空母というのはこう、包み込むような母性があるような気がする。空
「私は
「学友ってヤツだな」
「そういう子と同じところで戦えるって、素敵よね」
なるほど、私と沖波のような関係か。あちらは艦種すら違うが、同じ国の出身ということならそういうこともあり得るのかもしれない。
「あともう1人同郷がいるのよ。ほらアト、こっち来なさいな」
「……防空巡洋艦、
今までの人達とは打って変わって物静か。もうこれはダウナーと言ってもいいくらいである。見ただけで人付き合いが得意ではないと態度で示しているようだった。
防空巡洋艦と名乗ったので、初月と同じような性能を物凄く特化した存在なのかもしれない。だからだろう、早速反応したのは初月。
「防空巡洋艦……! 僕の上位種みたいなものが海外にいるとは聞いていたが、まさか会えるとは思わなかった。初月だ。よろしく頼む」
「……防空駆逐艦のハツヅキ。あたしのお仲間か」
「ああ、是非学ばせてほしい。レ級の膨大な艦載機を全て墜としたいんだ」
初月があそこまで前に出て行くのもなかなか無い。アトランタさんも既に何処か嫌そうな雰囲気を出していたが、こういう場に出てきているのだから諦めてもらおう。
「そして、シンガーリは私! 重巡
「我々の中では一番古株だ。ここの文化にも詳しい」
最後はまた飛び抜けて明るい重巡の人、プリンツ・オイゲンさん。長いのでプリンツと呼ぶのが一般的のようだが、こちらの言葉で王子様的なニュアンスらしく、本人としては複雑なようである。とはいえノリがいいので簡単に受け入れた模様。
「ここにアクィラを加えた6人が支援艦隊として所属させてもらう。よろしく頼むぞ貴様達!」
2人しかいない戦艦枠にネルソンさんとサウスダコタさん、2人がかりても圧倒されかけた空母枠にアクィラさんとイントレピッドさん、それでも足りないと防空枠にアトランタさん、そして小回りの利く火力増強としての重巡枠にプリンツさん。本当に足りないところを補強してくれる援軍である。
レ級の異常すぎる性能を上から叩き潰すため、そしてそのまま南方棲戦姫まで押し潰すため、ここまでの戦力を整えてくれた。大本営と呉内司令に感謝である。
支援艦隊の人達は、早速与えられた部屋に荷物を置いたあと、空城司令からこの鎮守府での戦いについてのレクチャーを受けており、その後からはまた私達といろいろと交流することになる。
あのテンションを見ている限り、支援艦隊の人達とはすぐに仲良くなれそうだった。アトランタさんだけは物凄く引き気味だったものの、どうせすぐ染まる。初月が早速懐いているし。
「なんか、すごい人達だったね」
「ね。歴戦の猛者って感じがあったよ」
午後の訓練開始前に沖波と話す。話題は専ら、あの支援艦隊の人達一色。同じように準備してくれている霧島さんもその話題に乗っかってきた。
「いきなり友達になってくれは驚いたわ……」
「あはは、でも気は合いそうなんじゃないかな」
「多分。でもあの子は頭で考える前に手が出るようなタイプでしょう。私が手綱を握った方がいいかしらね」
霧島さんも結構近いぞと言いそうになって、それを喉で止めることに成功。危なかった。
考えた結果、最後は直感みたいなところがある霧島さんとは、サウスダコタさんはかなり相性が良さそうに思えるのだが。
「また実力は見せてもらいましょう。まだ時間はあるんだもの。外の部隊と連携をするのなら、力を見せ合う必要はあるわけだし」
「だね。どれくらいなのか楽しみだよ」
おそらく明日くらいに演習なりすることになるだろう。外の部隊と一戦交えるなんて初めてのことだし、私がそこに参加するかはわからないが楽しみである。
支援艦隊なのに駆逐艦いないじゃないかという意見は野暮なので見逃してください。名前は支援ですが、別働隊みたいなものです。