絶対絶望少女メルル   作:プレイズ

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滅茶久しぶりの更新になってしまってすみません。
前回から10ヶ月くらい間が空いてしまいました……。
今回は死体発見から捜査開始までですが、短いです。
久々の更新なのに文章少なくてすみません(^_^;)
※誤字の指摘をしてくださった方ありがとうございました。無闇あたら→無闇矢鱈に直させていただきました(1/22)。


捜査編1

「リディーちゃん!!」

アナウンスが終わった直後、フィリスさんが前方へと駆け出しました。

眼前には床に横たわったリディーさんの姿が。

彼女はまるで眠っているかのようにぴくりとも動きません。

「リディーちゃん!大丈夫!?」

走り寄ったフィリスさんは倒れているリディーさんの上体を抱き起こしました。

そして名を呼びかけて反応を確かめます。

けれど反応は無し。

「リディーちゃん!しっかりしてリディーちゃん!」

声かけと共にフィリスさんは彼女の身体をゆすって意識を起こそうと試みます。

しかし、何度名を呼んでもリディーさんが応答する事はありません。

まるで眠っているかのように目を閉じたまま。

彼女の口からは、唾液のスジが垂れています。

不安の色を濃くしたフィリスさんは、彼女の口元に耳を当てて状態を確認しました。

「なっ……呼吸をしてない……!?」

息が止まっている事に気付き、フィリスさんは慌てて彼女の腕を取って脈を測ります。

「ッ……!」

しばらく確認してから、フィリスさんの目が驚きに見開かれました。

そして苦しげに歪みました。

「フィリスさん、リディーさんは……!」

「……っ…」

視線を私から外して、彼女はゆっくりと首を横に振りました。

「……だめ、もう脈はないみたい」

「そ、そんな…!?」

驚きに目を見開く私。

「で、でもまだ心臓マッサージをすれば……!」

「…ううん、もう身体が……冷たくなってる」

「な……」

フィリスさんはリディーさんの素肌に触れてわかったようです。

既に彼女の身体は体温を失っている事に。

………。

それじゃあ、リディーさんは。

もう……息を引き取った、という事ですか。

 

「何で……何で……リディーが……」

気の抜けたような声でスールさんが言いました。

そして倒れているリディーさんの手を握りながら放心したように呟きます。

「どうして……こんなに冷たいの……?」

目の前の状況が受け入れられないといった様子で、彼女は呆然と動かなくなった姉の姿をただ見つめていました。

 

「いったい何があったのですか!?」

「何だ、今のアナウンスは!ここで何か――」

「え……リ、リディーさん……!?」

アナウンスを聞きつけた他の方々が、次々と遅れて駆けつけてきます。

中で倒れているリディーさんを見つけると、皆驚いて動揺し始めました。

「リディーは……き、気絶してるのですよ、ね…?」

「……いいえ、もう息はありません」

困惑して訊くプラフタさんに対し、アーシャさんが目を伏せて苦しげに呟きました。

「そんな、冗談でしょう……!?」

「馬鹿な……死んでいるというのか…!」

「どうして……リディーさんが、、、!」

彼女が“死んだ”という事実に皆驚きを隠せません。

まさか、現実にコロシアイが起こってしまうなんて。

 

「リ、リディーちゃん……?嘘、だよね?」

ソフィーさんが信じられないといった様子で彼女の死体に近寄ります。

リディーさんは目を閉じた状態で表情を固めたままそこに横たわっています。

膝をついてかがむと、ソフィーさんは彼女の手を軽く取って握りました。

「ッ……!?」

「ソ、ソフィー?どうなのですか、リディーはまだ生きて――」

プラフタさんが困惑しつつもソフィーさんに問いかけます。

しかし既に血の気はなく、身体は冷たくなった状態。

完全に彼女は息を引き取った後でした。

「くっ……!」

苦渋の表情でソフィーさんが唇を噛みます。

それを見たプラフタさんは彼女の“死”を実感して絶句しています。

その傍ではフィリスさんも、愕然とした顔で意識のない彼女を見つめていました。

「ねえ、ねえ起きてよ、リディーちゃん!」

尚も意識を呼び覚まそうと、ゆさゆさと彼女の上体をゆするフィリスさん。

しかし、倒れているリディーさんの身体はピクリとも動きません。

「いやだ!死んじゃ嫌だよ!リディーちゃん!!」

必死の様子で彼女を起こそうとするフィリスさんですが、奮闘もむなしく彼女の意識が戻ることはありませんでした。

 

「うーぷっぷっ!ついについにコロシアイの幕があいたね!待ちくたびれたよ、んもう」

図ったように、保健室の天井からモノクマが降りてきて現われました。

期待に胸を躍らせるように爛漫にモノクマが言います。

「モノクマ…!お前が殺したのか!?」

「はあ?何言ってるのさ。ボクは無闇矢鱈にお前らを殺したりなんかしないよ。校則違反者への処罰と学級裁判での敗者をおしおきする時以外はね」

凄むロジーさんにも全く気圧される事なく、モノクマは生徒手帳を手で示しました。

「ほら、ここにも書いてあるでしょ?【モノクマが殺人に関与する事はありません】って」

「なら、いったい誰が――」

「決まってるじゃん。お前らの中の誰かが殺したんだよ」

その指摘にシンと皆が静まり返りました。

この中の誰かがリディーさんを殺した。モノクマはその事実を突き付けているのです。

「ば、馬鹿な……俺達の中に人殺しがいるというのか?」

「う、嘘です…!私達の誰かがリディーさんを殺したなんて……!」

「そんな事……あってたまるもんですか…!」

私達の中に仲間を殺した殺人犯がいる。

その真実に皆に動揺が走ります。

 

「……何だ、この有り様は」

「あっ、エクス君…!」

その時、皆から遅れてエクス君が保健室のドアから入ってきました。

ようやく姿を見せた彼に私は少しほっとします。

「ちょっと、いったいどこに行ってたの?皆心配してたんだよ」

「食事の時間に遅れてしまってすまないな。個人的に調べ物をしていたせいで間に合わなかったんだ」

意外にも真摯に謝ってくるエクス君。

どうやら時間に遅れた事に対する罪悪感はちゃんと持っているようです。

「それよりも、これはいったいどういう状況だ。さっきモノクマの殺人アナウンスが流れたが……。まさかあの女死んでいるのか?」

「……う、うん。リディーさんはもう――」

 

 

「誰さ……」

不意に、ゾクりとするような冷たい声色が響きました。

振り返ると、スールさんが涙で溢れた目で私達を睨んでいます。

「誰がリディーを殺したのさ!!!!」

鬼気迫る形相で彼女が怒号を発しました。

その叫びは稲妻のように轟き、張り詰めるような圧が全員を硬直させます。

「何で……リディーが殺されなきゃ……、、、ぃ、ぃけ、ない、の」

膝をつき、彼女は両手をついて地面にひれ伏しました。

そして涙を零して嗚咽を漏らし始めました。

いつも一緒に居たお姉さんの突然の死。

それも誰かに殺されたとあっては、無情さに打ちひしがれて憤るのも当然でしょう。

「うぷぷ!感傷に浸るのもいいけどさ、時間もないからさっさと捜査の方を始めてほしいんだよね」

モノクマが張り詰めた空気を無視するように言いました。

「捜査ですって?」

「そ。この後に学級裁判が開かれるのは知ってるよね?」

モノパッドを指し示してモノクマが説明を始めます。

画面には校則が表示されています。

「学園内で殺人が起きた場合、全員参加による学級裁判が行われるんだよ。それぞれが意見を出し合って、誰が被害者を殺したクロかを推理するのが学級裁判」

うぷぷ、と笑ってさらに続けるモノクマ。

「学級裁判で正しいクロを指摘できれば殺人を犯したクロだけがおしおきされる。ただし、正しいクロを指摘できなかった場合はクロ以外の生徒であるシロ全員がおしおきされるからね」

「なっ……!」

「そ、そんな恐ろしい事……したくないよ、、、」

「あ、言っとくけど不参加は認めてないよ?欠席者は問答無用で殺処分にするから」

「ひぃ…!」

モノクマの発言にロロナさんが肩を跳ねさせます。

この後に待つのは、議論によって犯人を割り出す学級裁判。

最終的に指摘する犯人を間違えれば、犯人以外の全員が処刑されるというとんでもないルールです。

「――と言ったところで何だけどさ、今回に限り特例を設けようと思うんだよね」

「え?」

「本来であればお前らが正しいクロを指摘できなかった場合はクロ以外のシロ全員がおしおきなんだけど。ですが今回に限り、正しいクロを指摘できなかった場合は間違ってクロと指摘されたシロだけがおしおきの対象となります!」

「………」

…という事は、つまり……?

「じゃあ他の皆は?」

「当然他のシロ達はおしおきの対象にはなりません!あ、その場合はもちろん本来の正しいクロも無罪放免だよ」

「な……それじゃ、間違って犯人に指名された人だけが無駄死にってわけ?」

「そうでーす」

「何ですかそれ……随分と偏ったルールじゃないですか。まあ、他の皆は助かるっていうのは皆殺しよりはマシですけど」

エスカさんがモノクマに懐疑的な目を向けて言います。

「まあ今回は待ちわびた第1号の殺人だからね。ボクはなかなか行動に移さないお前らには痺れを切らしてたんだ。そんな中で先陣を切ってくれるならこのくらいの要望は聞き入れてやるよ」

「要望?って事は犯人がモノクマにこの条件を要求したって事?」

「ギク!…ま、まあそれは脇に置いといてさ~」

「あ!話を逸らした!って事はそういう事なんだね!」

ソフィーさんが口を滑らせたっぽいモノクマに詰め寄ります。

しかしモノクマは話題を切り替えて高らかに言いました。

「さ、じゃあ時間もないからちゃっちゃと捜査を始めちゃってよね!」

「捜査ですって……?」

「これから学級裁判が開かれるのはもう説明したよね?だけど何も判断材料がない状態じゃ裁判のしようがないでしょ」

再び見本の生徒手帳を見せてモノクマが説明します。

「ここにモノクマファイルが表示されてるから見てみてよ。今回の被害者に関する状況が載ってるからさ」

「これは……」

私は自分の生徒手帳を取り出して確認してみます。

すると、モノクマファイルという名のファイルが表示されており、リディーさんの死体に関する状況が色々と書かれていました。

 

【モノクマファイル1】

被害者名:錬金術士リディー・マーレン。

死体発見場所は西棟2F保健室

死亡推定時刻は午前11時50分頃。

目立った外傷はなし。

 

「11時50分って……まだほんの30分くらい前の事じゃない」

「じゃあ、ついさっきまでリディーさんは生きていたって事ですか?」

モノクマファイルを見たミミさんとロッテさんが呟きます。

 

「でも、ほんとに信じられない……リディーさんが死んだなんて、、、」

「私、今朝も一緒にリディーさんとご飯を作ってたんですよ。それが数時間後にまさか亡くなるなんて」

「こんなのありえない……ありえないよ……!」

ステラさん、エスカさん、ロロナさんが口々に戸惑いの声を上げました。

 

「……皆。困惑してるのはわかるけど、今はまずは捜査を始めようよ」

「フィリスさん」

まだ動揺している人が多い中、フィリスさんが言いました。

「この後学級裁判があるんでしょ?なら、1つでもたくさんの証拠を集めないと。じゃなきゃ裁判を勝ち抜けないよ」

「……!たしかに、今は捜査を進める事が必要かもしれませんね」

「うん、フィリスちゃんの言う通り。裁判でクロに勝つために、そして何より亡くなったリディーちゃんの仇を討つためにも、すぐにでも捜査の方を始めよう」

フィリスさんの意見にロッテさん、ソフィーさんが同意します。

確かに、この後の裁判を優位に進めるためにも今はまずは捜査を優先させるべきでしょう。

 

まずは死体の傍に見張り役として2人待機する事になりました。もし誰も見ていない隙を見計らってクロが死体に細工をしたりしたらまずいからです。

「……私にやらせて」

見張り役をスールさんが真っ先に申し出ました。

彼女は姉の亡骸をそのまま無造作に放置してはおけない様子です。

「じゃあ私も一緒についてようかな。スーちゃんを1人にするわけにはいかないし」

そしてソフィーさんも彼女についていたいと言う事で同伴する事になりました。姉を亡くして心身の衰弱が激しい彼女を1人にしてはおけないという判断のようです。

 

「検死の方は私がするわね。この中で医療に少しでも通じているのは私くらいだから、微力だけどサポートさせてもらうわ」

「わかりました。ではお願いしますねアーシャ」

検死の担当はアーシャさんがする事に。

彼女は医者ではありませんが、薬士という事で多少の医療知識はあるそうで、検死を一任される事になりました。

 

「後の皆さんは、おのおの各自で気になる場所を捜査してみてください。時間がありませんから、手早く行動に移りましょう」

プラフタさんが指示を出し、皆が方々に散っていきます。

私も、気になる所を捜査開始してみましょう。

 

【捜査開始】

さて、ではまずは何から始めましょうか。

私が優先順位を考え始めると、後ろから声がかけられました。

「メルルちゃん、よかったら私と一緒に捜査しない?」

「あ、トトリ先生」

トトリ先生が私の傍に立っていました。

確かに、先生と一緒に捜査した方が心強いですね。

「はい、じゃあ喜んでお願いします」

「うん、協力して手がかりを見つけようね」

私達2人は共同して早速捜査を開始する事にしました。

「この名探偵トトリが、事件を解決に導いちゃうよ」

「は、はあ」

何だか探偵気取りの先生は意気込んでいるようです。

アーシャさんの薬の効果でちょっとハイになってるのかな?

あ、そういえばまださっき先生からもらった薬を飲めていませんね。

後で学級裁判前にでも飲もうかな。


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