「よしなさい、ソフィー!」
モノクマに向けて杖を構えた白コートの女性の前に、別の女性が立ちはだかりました。
「!どいてよ、プラフタ……!」
「待ちなさい。得体の知れない相手に不用意に攻撃を仕掛けるのは危険です」
両手を広げて彼女はモノクマの前を塞ぐ形で静止をかけます。
「実際に先程自爆したにもかかわらず、こうして何食わぬ顔で元通りになって出てきているのですから」
「……!たしかに、それはそうだけど」
「うぷぷ、賢明な判断だね。そのまま攻撃してたら“校則違反”で強制処分にするところだったよ」
口元に両手をあててモノクマが笑いました。
「強制処分ですって…?」
「さっき渡した生徒手帳、モノパッドを見てちょーだい」
モノクマはモノパッドという生徒手帳を取り出してみせます。
これはさっき投げ渡された物です。
カバンから取り出してみると、勝手に電源が入っていました。
「これは……」
見ると画面には校則という文字が表示されています。
『校則8:学園長であるモノクマへの暴力は固く禁じます』
モノパッドの説明文にはそう書かれていました。
『生徒が校則に違反した場合、強制処分となります』
『強制処分とは……つまり“殺処分”を意味します』
「な……!」
「さ、殺処分って……」
「うぷぷ」
「な、何言ってるんですか?殺処分って、どうやってするっていうんですか?」
エスカさんが少々動揺した様にモノクマに問いかけました。
「まあ方法は色々あるけどね。例えば――」
すると両手を広げてモノクマが声高に叫びました。
「射殺せ!グングニルの……槍ッ!」
ヒュン!
ヒュン!
ヒュバ!!
ザシュザシュザシュ!!!
不意に周囲から何かが飛来してきました。
そしてそれはモノクマに突き刺さりました。
一瞬にして、彼の全身が多数の刃で貫かれたのです。
それは長い棒状の“槍”でした。
複数の長い槍がモノクマの身体を貫通しています。
「ヒッ……!」
「な、何ですか、これ……!?」
突然の凄惨な事態に私含めて皆さんが驚きます。
いきなりどこからともなく鋭い槍が飛んで来て、モノクマを突き刺し殺したんですから。
貫かれたモノクマはピクリとも動きません。
「………」
「し、死んだの……?」
「そんなわけ、ないじゃーん!」
「うわっ!?」
不意に足下から声がしたかと思えば、床下からモノクマが飛び出してきました。
高くジャンプして登場したモノクマは、私達の再び目の前に降臨してみせます。
「うぷぷ、ボクはスペアがたくさんいるからね。さっきも言ったけどこの程度じゃ死なないよ」
「だ、だってさっき貫かれて……」
槍に串刺しにされたモノクマの方を見ると、確かにまだ串刺しにされたままです。
しかし、それとは別に私達の目の前にもモノクマが鎮座しています。
つまり、このモノクマの言う通り、スペアがいくつもいるという事なのでしょう。
「あなた不死身ってわけ……?」
「まあそう言ってもいいかもね」
「今のあの槍はいったい……」
「あれは校則違反者を殺処分するための仕掛けの一つだよ。ちなみに仕掛けはあれだけじゃなく他にも一杯あるからね。せいぜい軽率に校則違反しないように気をつける事だよ」
モノクマはピンピンした様子で不敵に笑んでみせます。
新しいスペアの身体は全くダメージの影響はないようです。
「く……あなたは私達にコロシアイをさせてどうしようっていうの?」
「うぷぷ、この希望ヶ峰学園はお前らにコロシアイをさせるために作られた学園だからね。いわば最高のエンターテイメントなのさ」
「な……エンターテイメントって」
「誰かがそれを見て楽しむっていうんですか?」
キッとした顔でステラさんがモノクマに問いかけました。
「さあ?それはわからないよ。とにかくお前ら16人にはコロシアイをしてもらわないとね」
はぐらかすようにモノクマは両手をひらひらと振ります。
「今回のコロシアイは殺し方は問わないよ。銃殺、刺殺、撲殺、毒殺……etc。何でもお好きな殺り方で殺しちゃっていいからね」
「な、何なのよ、それ……!」
ミミさんが困惑しつつも憤った様子でモノクマに言い寄ります。
「うぷぷ、それと。ただ殺すだけじゃ駄目だからね」
詰め寄るミミさんを無視して、モノクマがモノパッドを見せて説明します。
『校則2:学園内で殺人が起きた場合、全員参加による学級裁判が行われます』
『校則3:学級裁判で正しいクロが指摘できれば、殺人を犯したクロだけがおしおきされます』
『校則4:学級裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は、クロ以外の生徒であるシロ全員がおしおきされます』
『校則5:クロが勝利した場合は希望ヶ峰学園から卒業し、外の世界に出る事ができます』
『校則6:シロが勝ち続けた場合は、最後の2人になった時点でコロシアイは終了です』
「このルールの通り、ただ殺すだけでは駄目なの。殺した後に開かれる学級裁判を乗り切らなければならないの」
「学級裁判……?」
「誰かを殺した者をクロ、それ以外の者をシロとするわけ。殺人後はクロとその他全員のシロに分かれて討論する形で学級裁判を行うの。それでクロが勝てばクロだけが卒業でそれ以外のシロ全員がおしおきされる。シロが勝った場合はクロだけがおしおきされて、それ以外のシロ達は学園生活を続ける。そういうルールなの」
モノクマの説明に、私達は呆気にとられます。
学級裁判?それに――。
「あの、おしおきって何ですか?」
エスカさんがモノクマに尋ねました。
「おしおきっていうのは、簡単に言えば“処刑”だよ」
「え…?」
「例えば火あぶりだったり、鞭打ちだったり、水攻めだったり。苦しみを伴って殺される刑罰だね」
「な……」
質問したエスカさんが絶句します。
おしおきって、つまりは拷問じゃないですか!?
「そんな真似をして、ただで済むと思っているのか!?そして俺達がそれに従うとでも?」
ロジーさんがエスカさんを後ろ手に庇うように進み出ました。
「うぷぷ、お前らに拒否なんて許されないよ。学級裁判で降された決定は絶対。従わなければ校則違反でどの道強制処分されるからね」
すごまれても全く意に介さずモノクマは言って見せます。
「ああ、それと。お前らはほとんどが“錬金術”っていう能力を持ってるみたいだけど」
くるりと振り返ってこちらに向き直るモノクマ。
モノクマの口から不意に錬金術という単語が出て、私はおやっと思いました。
「そんな都合のいい力をほいほい使われたら困るんだよね。だから、ちょっと制限させてもらうよ」
「……?」
私が疑問を浮かべていると、モノクマが手を上に掲げて言いました。
「錬金術の力を部分的に使用不可とせよーー!」
次の瞬間、モノクマの手の先に握られていたライトから光が放たれました。
それは強烈な光となって私達を襲い――。
「う、ま、眩しい……!」
「ま、また変な光ーー!?」
「くっ、何なの、これ……!」
光を見てしまった私は眩しさに目を細めました。
同時にくらりと目眩がします。
数秒して光が収まった時、どうにか立っているのがやっとでした。
「これでお前らはしばらく錬金術とそれに付随する技が使えないはずだよ」
「何ですって…?」
「な、何言ってるの?そんなわけないよ」
ロロナさんが試しに杖をかざして技を行使しようとしました。
「エンゼルフルハーート……!」
ロロナさん得意のエンゼルフルハート。
しかし、彼女が技を放っても杖の先からは何も出ませんでした。
「え……?お、おかしいな。エ、エンゼルフルハート…!」
再びロロナさんが技を打ちます。
ですが、やはり何も起こりません。
「う、うそ……技が出せない、、!」
「うぷぷ。お前らの錬金術に関する記憶を一部忘却させたからね。これでしばらくの間その不思議な力は使えないよ」
まさか、錬金術の力が使えない……?
私も試しに技を放ってみましたが、ロロナさん同様に何も起こせませんでした。
「記憶を忘却させたですって…?どうしてそんな事が……」
「それは教えられないよ」
また両手を口元にやってモノクマが笑みを浮かべます。
「ま、説明はこんなところかな。後はそのモノパッドに色々書いてあるから、ざっと目を通して見ておいてよ」
「ちょっと……!あなたにはまだ訊きたい事がたくさん」
「うぷぷ、じゃひとまずボクは退散するよ。ここでの楽しいコロシアイ生活頑張ってね~」
教卓の上から軽くジャンプすると、モノクマは台の裏側へと消えていきました。