絶対絶望少女メルル   作:プレイズ

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(非)日常編2

寄宿舎の探索を終えた私達は、とりあえず校舎に戻る事にしました。

ちなみに校舎の外には他にも通路があったものの、『keep out』と書かれた門で塞がれていて先に進むことは出来ませんでした。

これがモノクマの言っていた、現時点では封鎖されている場所という事なのでしょう。

いずれ日が経てば解放されて行けるようになるんでしょうか?

「で、次はどこへ行くのエクス君?」

「まだついてくる気か?」

「もちろん。君を1人で行かせるわけにいかないし」

「…ちっ」

私の主張を聞いてまた舌打ちをするエクス君。

どうやら彼は私と一緒に回るのが不満なようです。

でも、私としては今言った通り彼を1人で回らせるのは嫌なので、申し訳ないけど我慢してもらいましょう。

しばらく校舎内を歩いて彼が向かったのは、1階の食堂でした。

ここでは後で探索が終わったら皆で落ち合う事になっています。

しかし、今はまだ皆探索中なのでがらんとしていますね。

「あっ、メルルちゃん。……とエクス君か」

食堂の中には先客がいて、トトリ先生が厨房を調べていました。

私の姿を目にとめると微笑んだ先生でしたが、隣にいるエクス君に気付くとハイライトをすっと消した目になりました。

「あ、せ、先生。食堂を調べていたんですね」

「うん。……メルルちゃんは何で彼と一緒にいるの?」

「こいつが勝手についてきてんだよ。1人で回らせるわけにはいかないとかでな」

私が答える前にエクス君が回答しました。

相変わらずぶっきらぼうな言い方ですが、今のトトリ先生にそういう物言いはやめた方が……。

「へえ……メルルちゃんも放っておいたらいいのに」

「い、いえ、そういうわけにもいかないかなーって」

「優しいなあメルルちゃんは。私だったら放置プレイしちゃうと思うけど」

「あ、あはは」

先生はやはりまださっきの事を根に持っているようです。

エクス君、早く謝った方がいいのでは…?

「うほわーっ!お肉発見ーっ!」

その時、不意に陽気な声が耳をつんざいてきました。

そちらを見ると、冷蔵庫の中を漁る人影があります。

あれは、フィリスさん……?

「わーっ、お肉がこんなに!美味しそう」

「もう、フィリスちゃんさっきから食べ物ばっかり調べてる」

冷蔵庫の中にお肉を見つけて目を輝かせるフィリスさん。

それを見たトトリ先生が呆れたようにため息をつきます。

どうやら先生はフィリスさんと一緒に回っているみたいですね。

「だってここには美味しそうな食材が一杯あるんだよ…!食べたら絶対美味しいよ!」

「まあ確かにどれも美味しそうだけどね」

「でしょでしょ?あー早くご飯の時間にならないかなー」

まだ夕食時間前ですが、フィリスさんは早くも食事の事を考えているようです。

さては彼女、食べ物に目がないな…?

「フィリスさんはお肉好きなんですか?」

「あ、メルルちゃんいたんだ?うん、大好きだよ!私はお肉を食べてる時間が1番幸せなんだ~」

声をかけるまで私の存在にすら気付いていなかったんですか。

彼女の食材探しの探究心は我を忘れてしまうレベルのようです……。

「メルルちゃんは何か好きな食べ物はある?」

「私ですか?そうですね、私は何といってもキノコですかね」

フィリスさんの問いに即答する私。

そう、何を隠そう私の大好物はキノコですから!

「キノコの事なら私は何でもわかりますよ。大好きなので」

「へ~~?じゃあこのキノコとかは?」

「あ、それはコガネタケですね。黄色い粉に覆われていますから」

「ふーん、ならこっちの大きいキノコは?」

「それはオオイチョウタケです。大きいサイズの物だと30センチを越える物もあるんですよ」

おお、どうやらここには多種多彩なキノコが取り揃えられているみたいです。

私にとってはまさに夢のような環境……!

「こっちはカバイロツルタケです!汁物に入れると良い出汁が取れるんですよ」

「凄い!メルルちゃんはキノコ博士だね~」

「ああ、メルルちゃんまで食材のとりこに……」

お肉に沸き立っていたフィリスさんに続き、キノコに夢中になる私を見てトトリ先生が呆れたようにぼやきます。

おっと、ちょっと夢中になりすぎちゃいました。

そろそろ探索を再開しないと――。

「…………」

ふと、奥を見るとエクス君が無言で食堂を立ち去ろうとしていました。

まさか、私がキノコに気を取られている隙に逃げるつもりですか!?

「…………」

「あっ、急に走り出した…!ちょっと、逃がさないよエクス君!」

好機とばかりに食堂のドアの先へ駆けだしていくエクス君。

私はそうはさせじと急いで彼を追いかけます。

 

「行っちゃった……。それにしても随分楽しそうだなーメルルちゃん」

 

 

「はあ、はあ……」

「ぜえぜえ……つ、捕まえたよエクス君」

どうにか追いついた私はエクス君の腕をがっしりと掴みます。

これでもう逃げられませんよ!

「どんだけしつこいんだよ……10分は走り回ったぞ」

「ふふん、私こう見えてもスタミナはある方だからね」

伊達にアールズで各地を踏破してませんよ。

この程度の追いかけっこならお安い御用です。

「くそ、しょうがない。もう諦めるから腕を放せ」

「えー、そう言ってまた逃げる気なんじゃないの?だからしばらくは拘束したままで巡回させてもらいます」

「ちっ……」

あ、今舌打ちした!

って事はほんとに逃げる気だったんだ。

そうはいきません。しばらく腕を絡ませたままで探索しましょう。

「ってあれ?ここは……」

かれこれ廊下を走り合った私達はいつの間にか階段を駆け上がって2階にやってきていました。

ここは学校の校舎なので、当然2階もあるわけですね。

廊下の前方には教室がいくつかあります。

少し歩くと、頭上に【図書室】と書かれた表札が掲げられていました。

エクス君を連れた私は早速扉を開けて中に入ってみます。

すると、中にはソフィーさんとアーシャさんがいました。

「お2人とも図書室を探索中ですか?」

「あ、メルルちゃんとエクス君。うん、今アーシャさんと調べてる所だよ」

本を手に取って閲覧中のソフィーさんが微笑んで言いました。

彼女はここにある書籍類を色々調べているようです。

本を読むソフィーさんはなかなか様になっているというか、本人の雰囲気に合っていますね。

「ここにはかなりの本が集められているみたいだね。本棚の数も多いし、図書室の面積自体も広いみたい」

彼女に言われて室内を見渡してみると、確かに通常の学校の図書室にしては広々としたスペースが取られています。

蔵書の数からいって、結構本格的な造りの図書室みたいです。

「高度な事が書かれている物を読むと勉強になるね」

同じく書籍を読んでいたアーシャさんが呟くように言いました。

彼女が閲覧しているのは、どうやら薬草関係の本のようですね。

「ここには私の知らない薬草の事が載っているわ。傷への使い方も初心者向けから熟練者向けまで幅広くカバーしているみたい」

「へ~、薬草も一杯種類があって奥が深そうですね」

「ええ。薬士をしている関係上色んな薬草を扱ってきたけど、まだまだ知らない事がたくさんあるの」

ふふ、と興味ありげに微笑んでアーシャさんは本のページを手繰っていきます。

2人とも知的そうだから、両者本を読む姿が様になってますね。

どれ、私も何か読んでみようかな?

「本か。俺はあまり興味がないな」

「えー、エクス君読書は大事だよ?本は知性の宝庫なんだから」

書物に関心が無さそうなエクス君を見て、ソフィーさんが勿体ないと言いたげに呟きます。

「俺はそういうインテリっぽい趣味はないんでね」

「それは機会の損失だね。何か1冊でもいいから読んでみたらどうかな?世界が変わるよ」

ソフィーさんは本棚から1冊見繕うと、エクス君に提示しました。

「これなんてどうかな」

彼女が手に持っているのはかなり分厚い本です。

『不思議な本の錬金術士11~コルちゃん人形が出来るまで~』

何やら意味深なタイトルがつけられたそれは長編小説のようですね。

ページ数は辞書並みかも。

「遠慮させてもらう。見ただけで頭痛がしそうだ」

「そっか……面白いから読んでほしかったんだけどな~」

あえなくエクス君に断られてしまい、残念そうに彼女は本を本棚にしまいます。

いったいどんな内容の本なのか、気になるような怖いような……。

とりあえず図書室の探索を程ほどに終えた私達は、読書中の2人を邪魔しないようにひっそりとドアから退室したのでした。

 

 

図書室を後にした私達は、隣にあった部屋に行ってみました。

そこにあったのは倉庫。

中には色々な道具や雑貨類が収められていました。

「あら、メルルじゃないの」

倉庫の中にはミミさんがいました。

「へえ、エクスと一緒なんてどういう風の吹き回しかしら」

「彼が1人で探索しようとしてたから私が一緒に回ってあげる事にしたんです」

「だから余計なお世話だっての」

相変わらず私の同行に不満そうなエクス君。

しかし関係ありません。私がそうしたいからしているんですもん。

「ふふ、お2人はなかなか楽しそうに探索していますね」

くすり、とミミさんが笑みを零す声がして振り返ると、そこにいたのはミミさんではなくプラフタさんでした。

「何だプラフタさんですか。てっきりミミさんが言ったものだと」

「私はこっちよ。声が似てるからって間違われちゃたまらないわ」

「どうやら私達の声は本当に似ているようですね。勘違いされたのはこれで何回目でしょうか」

可笑しそうに笑ってプラフタさんが言います。

既に私の前にも何人かから間違われているようですね。

そりゃだってこれだけ瓜二つなら、ねえ?

「お2人は何で一緒に回られているんですか?」

「声が似ているのもあって、彼女と少しお話したいなと思いまして。話してみてわかりましたが、なかなか素敵な方ですねミミさんは」

「そ、そりゃどうも。私も貴女は多くの知識を持っていて素敵だと思うわ」

褒められたからか少し照れ隠ししてミミさんが言います。

「まあ、500年生きてきていますからね」

「えっ…?ご、500年……?」

「彼女、何と500年以上前の生まれらしいのよ。にわかには信じがたい事だけど」

な、何と…!

って事はお歳が500歳を越えてるって事ですか!?

見た目にはとてもそうは見えませんが……。

「ふふ、まあ途中までの数百年は本の状態でしたからね。最初の人間状態からまず私は魂を移す形で本を宿主にする形に移行しました。それから本の状態で数百年過ごし、そこからソフィーによって人形に魂を移されました。さらに数年経ってから再びソフィーの助力により、今の人間の身体になったわけです。人間の身体になるまでは、年を取っても身体は老化しない状態だったので、今は年齢にそぐわない外見でいられるというわけですよ」

は、はあ……。

人間の状態から本に魂を移して、本の状態でずっと数百年いて、さらにそこから魂を移されて人形の状態でしばらく過ごしていたと…?

そしてその後人間の身体の状態になった……。ミミさんの言う通り、にわかにはとても信じがたい事ですね。

「ふん、何もそこまで驚く事じゃないだろう」

「えっ?」

呆気にとられる私にエクス君が言います。

「お前達お得意の錬金術の力を使えば話は別だ。妖術に通ずる錬金術ならば、魂を別の身体に移したりする事など朝飯前。それで寿命を長くして生き長らえてきたと考えれば、あり得ない話じゃない」

「そ、そうか。確かに錬金術の力を使えば可能かも」

……でも、いくら錬金術の力でも次元が違うというか、とんでもない事をやっていると思うよ?

まあホムンクルスのチムちゃんが実際にいるわけだからあり得ない話じゃないのは確かだけど。

でも、実際の人間の魂を別の無機物媒体に移すなんて、私には考えもつかない所行だよ。

「ふふ、エクス。貴方は錬金術士ではないようですが、錬金術に理解があるようですね」

「まあそういう物があるという知識はあるからな。驚きはしないさ」

おやっ?エクス君はそっちの方面では素人かと思ってたけど、意外に知ってたりするのかな?

私なんて錬金術士なのに話の内容が突拍子すぎてびっくりしちゃったよ。

「ところでここは倉庫らしいが。中にはどんな物があるんだ?」

エクス君が室内を見渡してミミさん達に訊きます。

「そうね、ざっと見てみたけど、わかりやすく言えば“武器”になり得る物が多いわ」

「武器?」

違和感のある単語に私は首を傾げます。

普通、倉庫にそんな物が置いてあるんでしょうか?

「例えば砲丸とか槍とか剣とかが置かれていたわよ。ほら、あそこにあるでしょ」

ミミさんが指さした先を見ると、確かにケージの中に砲丸がいくつか置かれています。

さらに、槍や剣、ナイフ、ノコギリ、チェーンソーといった危なめの物まで展示されていました。

「こ、これは…!何でこんな危険な物がここに」

「おそらく“コロシアイ”で使えるようにモノクマが整えておいたのでしょう。そうとしか考えられません」

プラフタさんが険しい顔つきで言います。

そうか、これもモノクマの仕業か。

こんな危ない物を取り揃えて、私達にコロシアイをさせようって腹ですね。

「こんな危ない場所は封鎖するべきですよ。でなきゃ万が一誰かがこの中の物を使って行為に及びかねないですし……!」

「うぷぷ、それは認められないよ!」

「「「「!」」」」

突然、床下からモノクマが飛び出してきて登場しました。

もう何回もあったので慣れましたが、普通に登場出来ないんですかねこのクマは。

「認められないって、どういう事…?」

「校舎内の設備を勝手に封鎖なんて駄目だからね!危険な物が置いてあろうとあくまで出入りは自由。コロシアイのスムーズな遂行のために、それを阻害するようなルールを勝手に作るのは認めないよ」

「くっ…何を勝手な……!」

「ま、別にいいわ。ここに凶器があろうが皆がコロシアイに手を染めなければいい話だし」

「ちょ、ミミさん……!?」

「そうですね。私達が自分達で自制すればいい話です。どの道私達のモラルにかかっているわけですから」

ミミさん、そしてプラフタさんが相次いで頷きます。

モノクマの言う事を飲むって言うんですか…?

たしかに私達が自制すればいい話ですけど、それを全員がちゃんと出来るのかな……。

一抹の不安を抱きつつ、私はモノクマの示したルールに反抗する事は出来ませんでした。

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