「沈め! 沈め!」
不知火の放った魚雷は寸分たがわず敵の重巡に命中、大きな爆発を立て、敵を沈めました。これで戦闘は終了。こちらは大した被害もありませんね。大戦果です。
「これで今日の出撃目標はクリアしました。鎮守府へ帰還しましょう」
赤城さんの言葉を合図に不知火達は進路を鎮守府へ向けて走ります。今日は皆大した損傷もないですし、入渠も早く済みますね、帰ったらさっそく黒潮に甘えに行きますか。
「不知火、今日は調子よかったね。病み上がりだし大丈夫かなって思ってたけど、心配いらなかったかな」
「ご心配をおかけして申し訳ありません川内さん。不知火はもう万全ですので」
後ろから声をかけてきた川内さんに頭を下げつつ、不知火達は走ります。しかし、言われてみれば確かに今日の不知火は調子が良かったです。
(……黒潮のおかげでしょうか?)
最初に想像していた以上の黒潮の看病。二日目にはもう諦めて全て抵抗せずに受け入れましたが、あれは気持ちよかった……。
(本当、たまには風邪を引くのもいいかもしれませんね)
そんな事を思いつつ不知火は走り続けました。帰ったら、黒潮に今日の戦果を報告して、お礼を言おう。そう、思いながら……。
不知火が風邪をひいてから数日後。彼女の風邪はすっかり治り、黒潮も看病から解放された。だから、今私は黒潮を自分の部屋に連れ込んで甘えている。
「ん~……グリグリ……」
「陽炎、いきなり正座させてきてなんやと思ったら次はお腹に頭擦り付けてくるとか、流石にウチも驚くんやけど……かなり斬新な甘え方やなぁ」
「いいの。不知火の看病の間黒潮に甘えられなかったんだから。その分こうやって甘えても別に良いでしょ」
そう、ここ数日黒潮は不知火の看病にかかりっきりだった。そりゃまぁ、そう頼んだのは私だけど、そのせいで黒潮に甘えるのを自重する羽目になったのも事実なんだから。だから、今日はこうして思い切り甘えた倒すつもりだ。
「しかし、不知火は案外早く治ってくれたなぁ。大したことのない風邪で良かったで」
「本当、良かったわ。肺炎とか拗らせちゃったらシャレにもならないものね」
不知火の風邪が長引けば、こうして黒潮に甘える事ができない日も増えてたもん。不知火を心配する気持ちはもちろんあるけど、それはそれ、これはこれ。
「ん……黒潮、もっと撫でて……」
「了解や、存分に撫でたるからな」
私のおねだりに黒潮は応えて、頭を撫でてくれる。数日ぶりのその感触を、私は心行くまで味わった。