黒潮お姉ちゃんシリーズ外伝   作:雨宮季弥99

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外伝 親潮ポッキーゲーム編
外伝 親潮ポッキーゲーム編


(どうしましょう……どうしましょう……)

 

 私、親潮は今黒潮さんの部屋の前に立っています。陽炎姉さんに聞いたところ、黒潮さんは今部屋にいるとのことです。ですから、部屋をノックして入ればいいんです。いいんですけど……。

 

(ああ、恥ずかしい……い、言えるでしょうか? ポッキーゲームをしようなんて……)

 

 そう、私は黒潮さんとポッキーゲームをしたいと思っています。以前黒潮さんとはキスをした事がありますが、私はもっと黒潮さんと親密になりたいのです。勿論、姉妹的な意味でです。同性愛ではありません、ありません……が。

 

(ビ、ビスマルクさんやアイオワさんは欧米ではスキンシップの一環だと言ってましたけど……やっぱり恥ずかしい……で、でも、やはり親密になるには時にこうした直接的な行動も……!)

 

 そうだ、前にキスした時は陽炎姉さんや不知火姉さんの力添えがあったからなんだから、今回は……今回は自力でやってみせます! 幸い、口実もありますから……さぁ、今こそ扉を!

 

 そう決心し、扉をノックしようとしたとき、ふいに扉が開き、私の手は黒潮さんの顔面に当たってしまいました。

 

「あいたあ!」

 

「く、黒潮さん!? ごめんなさい!」

 

 顔面を抑え、蹲る黒潮さんに私は慌てて謝ります。声をかけてきます。ま、まさかこんなタイミングで扉が開かれるなんて……いや、ダメです。こんなことで挫けるわけにはいきません!

 

「アタタ……漫才でもこんなタイミングよくならんで……で、なんか用なんかいな?」

 

「は、はい! 黒潮さん! 今お時間はありますか?」

 

「ん~? まぁ、時間はあるけど、どうかしたん? まぁ、取りあえず部屋入ってえな」

 

「し、失礼します」

 

 黒潮さんの後に続いて部屋の中に入ると、黒潮さんは不思議そうに私を見上げてきました。

 

「で、何の用なん?」

 

「えっと……えーっと……く、黒潮さん! ポッキーゲームしましょう!」

 

「……え?」

 

 う、黒潮さんが困惑してる……で、でもだめです、ここで私の勢いが弱まると黒潮さんを押し切れません! 足柄さんが言ってました、女は度胸と勢いだって!

 

「お、お願いします黒潮さん! ポッキーゲームしてください! してください!」

 

 手に持ったポッキーを黒潮さんの目前に出しつつ、その手を握って何回も言います。

 

「ちょ、待って。待ってえな親潮! そんなん急に言われても……」

 

「お願いです黒潮さん! 黒潮さん!」

 

「ちょ、待ちい! 待ちいや!」

 

 困惑する黒潮さんを押し切ろうと、何回も何回もお願いしていると、黒潮さんは大きくため息をついた。

 

「あーもう、やったる。やったるから、落ちつきいや」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 やりました。黒潮さんの説得に成功です。後は、このままポッキーゲームをすれば……!

 

「では、お願いします」

 

 ポッキーを一本取り出し、チョコのついている方を黒潮さんに向けて咥えます。

 

「んじゃ……あむ」

 

 よし、黒潮さんも咥えてくれました。それじゃぁこのまま齧って、齧って……。

 

 互いがポッキーを齧る乾いた音だけが部屋の中に響きます。あとちょっと、ちょっと……。

 

「……アッ」

 

 不意にひと際大きい音がして、ポッキーが折れてしまいました。

 

「あ、折れたわ。じゃぁ、これで終わり……」

 

「ま、まだあります! ありますから!」

 

 慌てて離れようとした黒潮さんを引き留めて、新しいポッキーを出すと、黒潮さんは微妙にめんどくさそうな顔になりましたが、私はめげません!

 

「……しゃあないなぁ……あむ」

 

 再びポッキーを咥え、ゲームを始めますが、またしてもポッキーが途中で折れてしまいました。

 

「はい、これも折れたからこれでおしまい……」

 

「ま、まだです! まだあります!」

 

 慌てて次のポッキーを取り出して、黒潮さんに咥えてもらいますが、やはり途中でポッキーは折れて、折れて、折れて……そして。

 

「こ、これが最後……の一本……です」

 

 こ、これでダメだったら……どうしよう。折角の黒潮さんとスキンシップのできる口実が……。

 

 震える手をなんとか抑えながらも私はポッキーを咥えて黒潮さんのほうを向きます。すると黒潮さんは小さくため息をついてポッキーを咥えました。

 

 そのまま二人で齧っていきます。慎重に……慎重に……しんちょ……!?

 

 震える体のせいか、途中でポッキーが折れました。そんな……そん……。

 

「……」

 

 黒潮さんも少し折れたポッキーを見つめたと思うと、自分の分のポッキーを口の中に入れ、そして……私の口に残ってるポッキーを咥えてきました。

 

「んん!?」

 

 驚く私をよそに、黒潮さんはポッキーを齧っていき、そして私の唇に黒潮さんの唇が……!?

 

「んん! んー!」

 

 その喜びに浸る間もなく、黒潮さんは私の頬を手で挟んだと思うと、そのまま思い切り唇を押し付けてきました。

 

「んー! んーんー!」

 

 困惑する私をよそに黒潮さんはそのままキスをしてキスをして……ああ、心臓が! 心臓が持たないです! 心臓が! 心臓がぁ……。

 

「……プハッ。どうや、満足したか親潮?」

 

「ふひゃ……ひゃぁい……」

 

 ろ……呂律が回らない……顔が……体が熱くて、心臓が高鳴って……。

 

「……あんな、親潮。そらコミュニケーションを否定するつもりはないけどなぁ……あんま軽々しくキスするんはどうかと思うんや。そらまぁ、欧米ではそうかもしれへんけど、ウチらは日本生まれやし、キスつうんは好きな相手にするもんやとウチは思うんや。そらまぁ、否定はせえへんけど、あんま軽々しくは……って、親潮?」

 

 黒潮さんが何か色々言ってますけど……それは音として入ってきても、声とにして認識できず……私は、顔も耳も体も全部がとても熱くなるのを感じながら……意識を手放していました。

 

 

 

 

 

「……って事があったんや。陽炎、ウチどないしたらええんやろ?」

 

「……正直私に振られても困るんだけど」

 

 珍しく黒潮から相談がある。と言われたので彼女の部屋で話を聞いてみたら……うん、コメントに困るわね、これ。

 

「ウチはなぁ、別にキスするのが嫌と言わへんよ。でもなぁ、やっぱりキスっていうんは、恋人とか、旦那様とか、そう言うのにするべきやと思うんや。そらまぁ、頬とかおでことかならまだわかるで。でも、あんま軽々しく唇にキスするもんやないんや。せやのに親潮はポッキーゲームしようって言いだして、あまつさえ恥ずかしさでぶっ倒れるとか……でも、無理に止めるんもあれやし……ホンマ、どうすればええんやろうか?」

 

「う~~ん」

 

 どう答えたものかしらね。黒潮の言うことも最もなんだけど、ぶっちゃけ私も黒潮に割とキスしてるから、親潮の気持ちもよくわかるのよねぇ。でも、黒潮が嫌がって……はないけど、抵抗感のあることを無理にやるように言うのもあれだし。

 

「取り敢えず……親潮には私からもあんまりキスをねだる様なしないように言っておくわ。親潮もちょっと真面目な部分が暴走しちゃっただけだと思うし」

 

「せやなぁ。大方誰ぞに変なこと吹き込まれただけやとは思うけど……しっかし、これで陽炎、不知火、親潮の三人にキスされてもうたけど、まさか他の妹からもされたりはせえへんよなぁ」

 

「……そんなのまで私は知らないわよ」

 

 基本的にはないとは思う。いくら軍人はその生活環境から同性愛者が生まれやすいって言っても私の黒潮への感情はあくまで姉妹愛の延長。不知火も親潮もそうだろうし、妹達も同性愛者ではない……んだけど、姉妹愛の延長でのキス……はありえなくないわよねぇ。

 

(おまけに、こいつは妹達からの信頼も厚いし、何かがきっかけで……ってのはあるかもしれないわね……不知火と親潮に釘は刺しておくとして、妹達の様子も見ておきましょうか)

 

 このまま他の妹達までやりだして黒潮がキスは禁止って言いだしたら私までできなるなるもの。本当、注意しとかないと。

 

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