あれから司令官から聞いた話によると、司令官も別に私が嫌いというわけじゃなかった。自分がクズだと言われている事から、自分が私の提督として申し訳ないから転属の話を付けていたみたい。
……普段の私ならそんな話を聞いたら絶対にクズって怒鳴りつけてたけど……あの時の私はそれどころじゃなかった。話を聞き終わってからは、ただごめんなさいと、私には貴方以外司令官になって欲しくないと。彼に抱き着き、泣きながら叫ぶことしかできなかった。……今でも思い返すと顔から火が出そうなぐらい恥ずかしいし、司令官も、私がクズと言っても温かい眼差しを向けられちゃうし……あーもう恥ずかしい!
結局、転属に関しては正式に白紙に戻り、司令官から平謝りされたけど。元々悪いのは私だし、司令官も悪意があってやったわけじゃないから、もうこの話は終わりにした。と言うかさせた。それより、今は黒潮を探さないと。絶対に殴らないと気が済まない。……あいつのあんな誘導尋問みたいなやり方さえなければあんな恥ずかしい思いしなくて済んだのに!
そう思いながら黒潮を探していると、ちょうど廊下の向こうから歩いてきているのが見えた。……見つけた!
「く~ろ~し~お~!」
一気に走り出し、握りしめた拳を叩き込む! 絶対に外さないわよ!
「おわ! ちょ、霞落ち着いて! 落ち着いてえな!」
何か言ってるけど問答無用! 一気に駆け寄ってそのまま……!
「おわあ! 危ないで!」
チッ、避けられたか。じゃぁ次こそ!
「霞、ホンマ落ち着いてえな。こんなところで暴れたらあかんで」
「うるさい! あんたの……あんたのせいで私はあんな恥ずかしい姿を!」
「……でもなぁ霞。うちがあそこでああせえへんかったら、異動しとったんやないんか?」
その言葉に私は思わず体を止めてしまう。くっ……痛いところを……。
「なぁ霞。そらぁやり方は悪かったと思うで? でも、あそこで素直にならへんで転属しとったら、絶対に霞は後悔しとったやろ。ウチらは戦争しとるからいつ死ぬかわからんし、司令はんかて人間や、突然階段から落ちて死にました。なんて事が絶対にない。なんてワケやないんやで。そないな事になってからやと遅いねんで?」
「う……それはそう……だけど……」
「やろ? やから、やり方が悪かったんは謝るけど、殴るんは勘弁してーや。な? お願いや」
そう言ってお願いと言わんばかりに手を合わせる黒潮を見て……はぁ、もういいや。黒潮のおかげで助かったのは事実だし……。
「……わかったわよ。でも、次は許さないからね?」
「そりゃ、もうこんな事せえへんでもええやろから、もうやらんて。ほな、ウチはこれで失礼するで」
そう言うと黒潮はそそくさと廊下を歩いて行った。……まったく、本当に酷い目にあったわ……。でも、うん。ありがとうね、黒潮。
「……てな事があったんや。いやぁ、あん時の霞はホンマ怖かったで」
私の頭を撫でながら喋る黒潮の話の内容に私はため息を出すしかなかった。何やってるのよあの二人は。
「まったく……素直にならない霞も霞だけど、司令も司令よね。ちょっと話し合いすれば解決するのに……」
「せやねぇ。ホンマ、話し合いは大切やで」
「……と言うか黒潮。最近霞が私にあんたの事聞きに来たりしてるのって、それが原因じゃないの? 不知火や親潮の所にも来てるみたいよ」
「へ? マジかいな ……もー、文句あるならウチに直接言えばええのに、なんやろなぁ」
……こいつ、ワザと言ってるのかしら? あの霞の性格から考えるとあんたへのお礼をするための情報を集めてるってところでしょう。文句があるなら最初の時みたいに殴りかかってるでしょうに。
「なんや陽炎? なんか言いたいん?」
「べーつーにー。それより、手が止まってるわよ」
「あ、ごめんな陽炎。堪忍してえな」
私の催促に嫌な顔一つせずに答えてくれる黒潮。ああ、やっぱり気持ちいい……もうこのまま寝ちゃおう……。