外伝 白露編2
「今回のMVPは夕立か。よく頑張ったな」
「ありがとうっぽい~!」
提督の執務室で夕立がもろ手を上げて喜んでる。うんうん、流石この白露の妹だよ。今回の出撃は大変なものだったから、私がMVPを取れなかったのは悔しいけど、夕立が取れたのは素直に嬉しい。
「ぽい~、白露。夕立頑張ったっぽい~」
「うんうん。流石この白露の妹だよ夕立。よ~し、今回はあたしからもご褒美をあげるよ。何かほしいのってある?」
「本当!? え~っと、それじゃぁ~……それじゃぁ~……」
あれ、なんだろう。こう直感ですぐに言ってくると思ったのに、妙に悩んじゃってるな。
「……それじゃぁ、今日一日、白露は夕立のものになってほしいっぽい!」
「……はぇ?」
あまりに予想外の、よくわからない夕立の言葉に、あたしは変な声を上げることしかできなかった。
「んふ~……ぽい~ぽい~」
あれから提督室を後にしたあたし達だけど、さっきからずーっと夕立はあたしの腕にしがみ付いて頬ずりしてくる。ようは今日一日甘えたいって事だったらしくて、いいよって答えたらこうしてあたしの腕を掴んで離さなくなっちゃったけど。ま、いっか。妹のこういう行動に付き合ってあげるのも、一番のあたしなら当然だよね。
「夕立、間宮さんで何か甘い物でも食べようか」
「そうするっぽい」
夕立も承諾してくれたのであたしたちは間宮まで足を運んだ。あたしたちを見た間宮さんにはちょっと笑われちゃったけど、無事にアイスを注文したあたし達は隣同士で座ってアイスを頬張る。
「ん~……やっぱり間宮さんのアイスは最高だよ~」
はぁ~……これだけで今日一日頑張ろうって気持ちになれるのってスゴイよね。まぁ、今日の出撃はもうないんだけど。
「白露、白露」
「んー?」
呼ばれて顔を向けてみると、夕立が大きく口を開けてた。んーと、これはアーンなのかな? 同じ味のアイスだけどなぁ。
「はい、アーン」
「アーン」
あたしが差し出したスプーンを夕立はうれしそうに咥え、アイスを食べる。髪の毛がまるで犬の耳みたいに動いてるけど、どうやって動いてるんだろ?
「白露、白露。もう一回してほしいっぽい!」
「ダメだよ。あたしが食べる分がなくなっちゃうじゃん」
「むぅ~。じゃぁ、夕立のアイス食べていいから、アーンして欲しいっぽい!」
それ、アイスの味が同じだから変わらないと思うんだけど。
「お? なんや白露。夕立と漫才でもしとるんか?」
「あ、黒潮」
「む……!」
声の下方向を向くと、そこには黒潮と不知火がそれぞれアイスを持って立っていた。二人もアイス食べに来たんだ。
「黒潮、こっち座って一緒に食べようよ」
「ええでー。不知火もそれでええか?」
「……ええ、まぁ……」
ん? なんだろ、不知火はなんかいやそうな感じしてるし、夕立もさっきから黒潮を睨んでるし。
「そういや、白露は最近調子がいいって話聞いたで。改二になってからバリバリ活躍しとるそうやな、ウチも嬉しいで」
「えっへへ。ありがと黒潮。黒潮にそう言ってもらえると嬉しいよ。これも黒潮のおかげだもん」
「いやいや、白露の努力の賜物やで、ウチはなんもしとらんわ」
そんなことないんだけどなぁ。少なくともあの時黒潮に甘えてなかったら、あたし体壊したりしてたかもしれないし。
「……白露!」
「ん? わわ!?」
いきなり夕立があたしの腕を掴んできた。ちょっ、どうしたのさ夕立?
「……夕立、もう白露はウチの部屋に遊びには来とらんで。そんな警戒せんでも白露を取っていったりなんかせえへんって」
「信用できないっぽい! 黒潮に白露が取られたのは事実っぽい!」
いやいや、あたし別に黒潮に取ってかれたりとかしてないよ!?
「……不知火も夕立の意見に賛成です。黒潮は姉妹だけでなく白露まで手籠めにしようとしましたから、あまり一緒にいるのは好ましくありません」
「いや、手籠めもなんもせえへんって。つーか姉妹を手籠めにした記憶もないで」
黒潮はそう言って否定するけど、夕立も不知火も不機嫌な感じが消えない。
「もー。夕立も不知火も心配しすぎだよぉ。確かにあたしは黒潮に甘えたけど、本当にもう黒潮の部屋に遊びに行ったりはしてないんだよぉ」
「ムー……」
「……」
うわ、二人とも全然信用してくれてないよぉ。
「アハハ……アイス食べたらウチらお暇するわ」
「あ……う、うん。ごめんね」
苦笑いを浮かべたまま黒潮はアイスを食べると、不知火に連れていかれる形で席を立ってしまった。あーあ、もっと話したかったのになぁ。
「……白露! アイス食べ終わっから夕立の部屋に行くっぽい!」
「へ? おわ、ちょっ……ちょっとおお」
いつの間にか立ち上がって夕立に腕を捕まれてそのまま引っ張られていく。な、なになに!? なんでこうなっちゃったのお?