思いません?
白露編
私は白露型の一番艦。私の妹たちには優秀な子が大勢いる。特に時雨、夕立の二人は私達姉妹どころか駆逐艦という枠で見て最強候補に上げられる程だ。……だからこそ、私は彼女達より上にいないといけない。常に一番じゃないとダメなんだ。
「よーし、白露がいっちばーん!」
今日の出撃でも、私は時雨より多くの武勲を立ててMVPを獲得した。よし、これで時雨にも負けてないね私!
「白露。ちょっと戦い方危ないよ。少し気を付けたほうがいいよ」
「平気平気。お姉ちゃんがそんなヘマするわけないでしょ、大丈夫だって」
時雨に心配されるけど問題はない。だって私はお姉ちゃん。一番艦なんだから。
出撃が終わって鎮守府に帰ってからも私は色んな一番になっていく。司令官の所に行くのも、入渠から出る時間も、艤装のチェックの時間も、あたしが一番。勿論勉強だってあたしが一番。妹達を寝かしつけてから寝るから寝るのは一番遅いけど、早起きも一番。全部、あたしが一番なんだ。
その日もあたしは妹達の前を歩きながら一番に階段を降りていく。よーし、今日も司令官の所に行くのいっちばーん。
「白露、危ないっぽい。ちょっと落ち着くっぽい」
「だーいじょうぶ。こんなんでこけたりなんてはしないって」
そう言ってあたしはどんどん階段を降りて行って、降りきった後、妹達に余裕を見せようと上を見上げた時。
「あ……れ……?」
不意に視界が傾く。慌てて何かに捕まろうとして……手は虚空を掴んだまま、あたしの視界は真っ黒になった。
「……あれ?」
気が付いたあたしが見上げているのは見覚えのない天井だった。あれ、あたしどうしてこんなところに?
「お、起きたんかいな白露」
横を向いてみるとそこに居たのは黒潮だった。……あれ、なんで黒潮がここにいるの?
「白露、覚えとるか? 今日、突然倒れたんやで。で、医務室に連れ込まれてさっきまで寝とったんや。時雨達がえらい心配しとったわ」
黒潮の言葉に辺りを見渡してみると、そこは医務室だった。そっか、そう言えばあたしは倒れたんだっけ……でも、なんで黒潮がいるの?
「ねぇ、なんで黒潮がここにいるの? 時雨達は?」
「ちょっと医務室に用事があったんやけど、白露が運ばれたてきたから起きるまで様子見とこう思ったんや。時雨たちは出撃や遠征があったし、そうやなくても皆目に見えて狼狽しとったからな。心配しすぎるのが近くにおったら逆効果やで」
その光景がなんとなく目に浮かんできて、あたしは苦笑する。あーでも、情けないなぁ。一番になるどころかこんな失敗しちゃって、お姉ちゃん失格だよ。
「……で、白露。あんた、何をそんな一番に拘って無茶しとるんや?」
突然の言葉にあたしは黒潮の顔を見る。その顔はどこか呆れたような……そんな表情だった。
「時雨達に聞いたけど、白露、なんでもかんでも一番に拘わっとるんやって? 戦いでも無茶しとるし、倒れる直前かてけっこう無茶な階段の降り方しとって、時雨達心配や言うとった。他の子達から聞いた話の中でも鎮守府の中でも何かにつけて一番に拘っとるみたいやん。どないしたんや一体?」
「別におかしくはないでしょ。白露は一番艦なんだから一番なの」
もう、黒潮ったら変な事言ってきて……って、なんかため息つかれたんだけど。
「あんなぁ、先生から聞いたけど……白露、極度の疲労やって。自分で気づいとったんかは知らんけど、睡眠時間は短い。短時間で食事をするから消化も悪い。戦闘も無茶する。……生活態度聞いた先生が呆れとったで。目の下にも隈できとるし……」
う……改めてそう言われると確かに健康に良いとはとても言えない生活してるなぁ。でも、仕方ないじゃん。白露が一番にならないとダメなんだから。
「……なぁ白露、ちょうどええ機会や。ウチにちょっと相談せえへんか? ウチかて三番艦や。妹から相談受け取ったりしてるから、なんか役に立てるかもしれへんで」
「もう、何言ってるのよ黒潮は。白露は別に相談するような事なんてないよ」
相談……なんてできるわけないじゃん。
「……なぁ白露。自分でどう思っとるんか知らんけど、時雨達はめっちゃ心配しとったで。……どうせ白露の事や、お姉ちゃんだから妹達には相談できん。とか思っとるような内容やないんか? せやから一度ウチに相談しとき。ウチのほうがまだ相談しやすいやろ」
「だからぁ、別に相談するような事じゃないってば」
「じゃぁ理由だけでも教えてや。どうせウチに言わんでも時雨達が追及してくるで」
そう言われるとあたしも反論ができなくて……仕方ないなぁ。
「……黒潮、あたし……一番艦だけど、改二もなくてさ。時雨や夕立は白露型どころか駆逐艦の枠で最強レベルだし……妹達も皆強いと思う。だから、一番艦である白露が一番じゃなきゃ恰好が付かないじゃん。白露は一番艦、皆のお姉ちゃん。だから、白露がいっつも一番じゃないとダメなんだよ」
「だから、相談するような事なんてないの。わかる?」
「……はぁ~」
理由を話したらため息つかれたんだけど……失礼じゃない? 失礼だよね。
「もう、これやから長女っちゅうんは……。白露、その考えを否定はせえへんけど、せめて体調管理はちゃんとせなアカンで。実際こうして倒れとるんやから自分でもわかるやろ?」
「う……」
それに関しては反論できない。次からは注意しないとまた同じ事しそうだし。
「それと……白露、誰か甘えられる人はおらんのか? ズーッとそうして一番意識して気張ったまんまやったら、結局また倒れるで」
「ん~……」
急にそんな事言われてもなぁ……。
「……はぁ。これやからホンマ長女っちゅうんは……。わかったわ、白露、ウチに甘ええな」
「へ? どゆこと?」
黒潮の突然の提案にあたしの頭の上に?マークが飛び交う。
「言った通りの意味や。どうせ妹達に甘えられんし、他の艦種の人達にも中々甘えられんのやろ? なら事情知っとるウチが適任やん。時雨達には適当に誤魔化しといたるから、白露も話合わせてな。……まぁ、いきなり言われたかてわけわからんと思うけど」
「……いやでもさ。流石にいきなり甘えろって言われても……ねぇ」
「別に深く考えなくてええわ。……取り敢えず先生からは最低でも一週間は白露は出撃、演習、遠征せんように言われとるから、その間ウチの部屋に遊びに来てくれたわええから。それで様子見るからな」
……黒潮ってこんな強引な子だったんだ。今まであんまり知らなかったけど……、まいっか。取りあえず一週間、言うことを聞いておこう。変に拒否して時雨達に話されたら心配させちゃうしなぁ……。