結局三人の勢いに押されてこの一週間で黒潮に甘えてた事情を話すことになって……あーもう、落ち着いて考えたらあたしも何やってるんだろうなぁ。そりゃ突然黒潮に抱き着いたりしたら皆面食らうじゃない、もう……。
「そう……だったんだね。僕達……白露をそんなに苦しめて……」
「夕立……悲しいっぽい……」
「はあぁぁぁ。何やってるのよ黒潮あんたはぁ」
陽炎の言葉に隣の黒潮が苦笑してる。向こうはまぁ問題なさそうだけど……どうしよう。お姉ちゃんの威厳が台無しになっちゃったなぁ……。
「僕は……僕は……僕は……」
「ぽい……ぽい……」
「って、ちょっと二人ともどこ行くの?」
覚束ない足取りで何か小声で呟きながら時雨と夕立が後ろを向いて歩きだしたから慌てて止めたら……二人と死んだ魚のような眼になってた。うっわ、こわ!
「……明石さんに改に戻して貰ってくるよ……。白露を苦しませる力なんて……」
「夕立も同じっぽい……」
「ちょ! 二人とも何言ってるの!」
とんでもない事を言い出しでまた歩き出そうとした二人の腕を掴んで強引に止める。すると……二人の目から一気に涙が溢れて零れ落ちていく。
「だって……白露が苦しむなら……お姉ちゃんが苦しむなら……こんな力いらないよ……嫌だよ。お姉ちゃんが苦しむのは……」
「そうっぽい……お姉ちゃんを苦しませたくなんて……ないっぽい」
え、ええー。なにこの状況……どうすればいいのさ。
「何やってるのよ白露。あんたお姉ちゃんなんだから、二人にちゃんと自分の気持ちを伝えなさいよ」
困惑するあたしの後ろから陽炎の声が聞こえる。……そうだ、あたしはお姉ちゃんなんだ。ここでしっかりしないと。
一回深呼吸をして……そしてあたしは二人を抱きしめた。
「白露……?」
「ぽい……?」
「駄目だよ二人とも。改に戻すなんて、絶対ダメ。あたしが許さない」
「でも、……それじゃぁ白露が……」
「白露が苦しむぐらいなら……こんな力いらないっぽい」
そんな事をいう二人を、もっと力を込めて抱きしめる。あたしの感情が、想いが、伝わるように。
「駄目だよ。だって、確かに悔しいけど、お姉ちゃんは嬉しいんだよ。二人が改二になって、強くなって……本当に嬉しいんだよ。なのにお姉ちゃんのせいでそれを捨てさせるなんてできないよ。……許せるわけないよ」
「……無茶な戦い方をしたのは謝るから。体調管理ができなかったのも謝るから……。力を捨てるなんて言わないで。そんなのをしてもお姉ちゃんは嬉しくない。悲しいよ」
「でも! でも……白露をそれで苦しませたんだよ……?」
「そうっぽい……」
あーもう、なんで二人ともこんなにお姉ちゃん想いなのさ。もっと我儘になってくれるほうが良いのに。
「だったらさ、お姉ちゃんを支えてよ。あたしにいつか改二になる日が来るまで。その力で支えてちょうだい……。ね?」
「……うん……うん。わかったよ……お姉ちゃん」
「夕立も……わかったぽい~」
二人の腕があたしの背中に回って、三人で抱きしめあって……。あたしの目からもいつの間にか涙が零れて……。あたしたちはそのまま抱きしめあって泣き続けた。……妹達に支えて欲しいだなんて……陽炎の話を聞いてなかったら言えなかっただろうなぁ。ありがとうね、黒潮。
「な~陽炎。機嫌直してえや」
「ふん、他所のお姉ちゃんを甘やかしてる黒潮なんて知らない。白露型にでもなれば?」
「そりゃないで陽炎」
今、私達は私の部屋にいる。で、私は黒潮に背中を向けながらスネてる。理由なんて簡単。黒潮が白露を甘やかしてたからだ。
事情を聞いた後の時雨と夕立の暴走を止めて、白露達が自分達に部屋帰った後、私は自分の部屋に直行し、こうしてスネてる。黒潮が何か言ってるけど知-らない。
「大体、なんであんたが白露を甘やかすのよ。白露だってバカじゃないんだから、ある程度の限度の見極めぐらいできるわよ」
「いやぁ、そりゃそうかもしれへんけどなぁ……医務室で話しとるうちに陽炎と被って見えてきて放っておけんくなったんや」
何よそれ、私がそんなヘマするほど抜けてるって事?
「時雨や夕立の話をするときの白露……寂しそうやったんや。妹達が遠くに行って寂しいんやって……口には出さへんかったし、白露自身も気づいとるんかわからんけど、そう感じ取るように見えたんや。……陽炎も、陽炎の改二が来る前に浜風や磯風が新しい改造が来た時にはそう感じ取るように見えたんや。やから、それが被ってしもうてなぁ」
ぐ……痛いところ突くわね。確かに、あの時は妹達のほうが私よりも先に新しい改造が施されるようになったって聞いて、そういう気持ちにならなかったって言ったら嘘にはなるけど……。
「せやからどーにも放っておけんかったんや。……長女ちゅうんはただでさえ妹の世話に他の艦種との調整やらに忙しいからなぁ。ちょっとの気晴らしになってくれればええかなぁって思ったんやけど……まさかあんな行き成り抱き着くぐらいになるとは思わんかったんや」
……あんた、散々私甘やかしてきて、不知火や浜風も懐いてる自分がそういう能力が低いわけないでしょうが……もう、仕方ないわね。
「……まったく、良いわよもう、許してあげる」
「ホンマか、ありがとうなぁ陽炎」
私の言葉に喜ぶ黒潮を、私は思い切り抱きしめ、肩に顔を埋める。
「おわ、ちょっ、陽炎もいきなり抱き着かんといてえな。びっくりするやん」
「知らない。黙って甘やかしなさい」
困惑する黒潮に遠慮なんてせず、私は黒潮に思いきり甘える。白露、あんたに渡すなんて事絶対にしないからね。