黒潮お姉ちゃんシリーズ外伝   作:雨宮季弥99

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外伝 不知火編
外伝 不知火編


「黒潮。こんな感じでしょうか?」

 

「おお、ええやん不知火。ええ笑顔や」

 

 いつもの自室での黒潮との笑顔の練習。今日は黒潮に笑顔を褒められました。

 

「いやぁ、あれからけっこう練習してきたけど、これならもうウチが付き合わんでもええかもしれんなぁ」

 

「そんな事はありません。黒潮にはこれからも練習に付き合って貰いたいです」

 

「まぁ、不知火がそう言うなら付き合うけど」

 

 そんな事を話していると、ふと黒潮が何かに気づいたように少しだけ目を見開きました。

 

「そういや、不知火には改二の話が来とるって聞いたけど、ホンマなん?」

 

「ええ。陽炎に次いでですが、やっと改二の準備ができたとの事です」

 

「そうなんかぁ。おめでとーやなぁ不知火」

 

 そう言って黒潮が浮かべる笑顔はやっぱり素敵で、不知火の笑顔ではまだまだ及ばないのを実感します。

 

「……そう言えば黒潮。貴女は陽炎の改二のお祝いに彼女に別でお祝いをあげたんでしたね」

 

「え、なんで不知火知っとるん? 話した覚えないで」

 

 不思議そうに首を傾げる黒潮に事情を説明します。

 

「前に陽炎の部屋に行ったときに陽炎がブローチを身に着けたまま部屋から出てきたので聞きました。陽炎が自分で買うにしてはあまりに高そうでしたし」

 

「あ~……なるほどなぁ。そやで、あれ、ウチが贈ったもんや。いやー、あれは高かったなぁ」

 

 そう言えば最近黒潮は妙にお金の出費を抑えるようにしてましたが、それが原因だったんですか。確かにあれは素人目に見ても大変高価なものに見えましたし……。

 

(……陽炎だけ、あんな高価なものを……)

 

 そう思ったとき、不知火の胸に痛みが走りました。それは以前陽炎が黒潮を連れて行った時の痛みによく似ていて……それよりも圧倒的に痛くて……。

 

「……黒潮。不知火にも何か贈ってくれませんか? 陽炎だけなんて不公平です」

 

「へ? ……まぁ、不知火が欲しい言うなら贈るんはええけど……今、ウチ金欠やから大したもんは贈れへんで」

 

「別にお金がかかってたら良いわけじゃありませんから……」

 

「うーん、でも特別な贈り物を安もんで済ませるのもなぁ……」

 

 両腕を組んで悩む黒潮。別に、本当にお金がかかってる必要はないんですけど。……あ、そうだ。

 

「ちょっと待っててください」

 

 そう言って立ち上がると、不知火は机の引き出しからデジカメを取り出しました。充電は……まだ残ってる。容量も大丈夫。

 

「黒潮。少し外に付き合ってもらっていいですか?」

 

「ん? ええけど、どこ行くん?」

 

「不知火のお気に入りの場所です」

 

 不知火は黒潮の手を取ると部屋を出て、お気に入りの場所に足を運びます。そこは鎮守府の花壇で、そこにはある花が自生しています。

 

「黒潮、ちょっとここに座って貰えますか?」

 

「ここ?」

 

 黒潮に座ってもらった場所には花が咲いています。それはドクダミの花……不知火の改二の予定日の誕生花です。

 

「んー……もうちょっと右に……そう、そこです」

 

 デジカメを覗きながら黒潮に位置の微調整をしてもらって……ここです。

 

「黒潮。笑顔を浮かべてください。不知火が改二になる事への喜びを、笑顔で表現してください」

 

「……不知火、今すっごく恥ずかしいこと要求されとるんやけど」

 

「いいじゃないですか。可愛い姉のおねだりですよ?」

 

「まぁ、そうやねんけどな……。ちょっと待ってな」

 

 そう言うと黒潮は後ろを向いて、顔を手で揉んだりしたと思うと『行くでー』と言ってきたのでカメラを構えます。

 

「不知火、改二おめでとう」

 

 そう言ってこちらを振り向いた黒潮の笑顔は……ハッ! 一瞬心を奪われました。急いで撮らないと!

 

 慌ててカメラを構え、連続でシャッターを押します。そして撮れた写真を確認して……うん、我ながら満足のいく写真が取れました。……危なかった。一声かけられてなかったら放心していて写真を撮り逃してました。

 

「不知火~、撮れたんかぁ?」

 

「ええ。撮れました……黒潮。折角ですし、お姉ちゃんって呼んでくれませんか?」

 

「後から注文せんといてぇな。まぁええわ。行くでー」

 

 

 

 

「不知火お姉ちゃん。改二おめでとう」

 

 

 

 

 ……ダメです、なんて破壊力ですか。黒潮が可愛いとは思っていましたがここまで来るとは……。

 

「黒潮」

 

「ん~? なに? 不知火おねえちゃ……へ?」

 

 気づいた時には不知火の目の前には笑顔のまま困惑している黒潮がいて。そして不知火は……黒潮にキスしてました。

 

「……」

 

「……」

 

 しばらくの間互いに無言で……それから不知火は自分のした事に気づいて、慌てて離れました。

 

(し、不知火はなにを!? 黒潮に……ききき……キスを!?)

 

「……不知火、ウチは流石に姉妹艦で姉妹姦は認められんで」

 

「ちちちち、ちが、ちがいま……ちょ、ちょっとま、待って……」

 

 深呼吸。深呼吸。ともかく深呼吸して……スーハースーハー……よし、落ち着きました。

 

「……黒潮。さっきのは姉妹愛の表現です。欧米では常識です。だからノーカンです。ノーカンなんです」

 

「……せやねぇ。ビスマルクはんとかプリンツはんにようしとるし……そやね、そうしとこうか」

 

「そうしてください……。でも、それだけ不知火は黒潮が好きだということは……わかってもらえたら嬉しいです」

 

「それは大丈夫やで。不知火は姉妹思いの優しいお姉ちゃんや。それはようわかっとるからな」

 

 そう言って黒潮がまた笑顔を浮かべて……クッ、ダメですダメ。ここで欲望に負けてはダメです。絶対にダメです。

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