あれから黒潮にお礼を言って別れた不知火は自室で早速プリントアウトした写真を眺めます。
(不知火……不知火だけが知ってる笑顔。不知火だけに向けられた笑顔)
写真の中の黒潮の笑顔は不知火だけのもの。陽炎にも、司令官にも、他の姉妹にも向けられていない、不知火だけのもの。そして……。
(……ファーストキス……取ってしまいましたね)
指先で自分の唇を軽くなぞり、黒潮の唇を思い出します。柔らかった……。
(……あのやり取りだけで、不知火には最高の贈り物になりました。この思い出はきっと……忘れません。例えこれから先何があっても……絶対に)
そこでふと、不知火は黒潮と共に写っている花……ドクダミの花言葉を思い出します。その花言葉は……。
白い追憶。
「……で、黒潮はなんで不知火とキスしてたの? 黒潮は姉妹艦で姉妹姦は許容できないんじゃなかったっけ?」
眉間に皺が寄っているのを自覚しながら黒潮に聞くと、黒潮はぽかん……と口を開いたまま、呆けた顔をした。
「……いや、陽炎。なんで知っとるん?」
「質問に質問で返さない。……青葉さんからの情報よ。記事には絶対にさせないように手は打っておいたからそこは心配しないで」
もし記事にしようものなら陽炎型総出で潰すって脅したからね。あれだけ脅せば記事にはしないでしょう。
「マジかー……。うーん、不知火曰く、あれは姉妹の愛情の表現やからノーカンやって」
ほほう、それは良いこと聞いたわ。
「それじゃぁこれもノーカンね。不知火がやったんだから私がやっても問題ないでしょ」
そう言うと、私は黒潮の両手首を掴んでそのまま有無を言わさずキスをした。あ、やっぱり柔らかいし、黒潮の熱が伝わってきて、今更ながら心臓が高鳴る。
「……ウチ、ファーストキスもセカンドキスも姉に取られてもうた」
「……ノーカンなんでしょ? それとも本気で嫌だった? ……それだったら……ごめんなさい」
そう言って申し訳なさそうに黒潮を見ると、黒潮は首を横に振る。
「姉妹の愛情表現やし、嫌なわけないんやけど、やっぱちょっと複雑な気分にはなるで……。てか陽炎、その表情は卑怯や。そんな顔されたら怒られへん」
そう言う黒潮の表情はとても困った表情で、私の罪悪感を沸かせるには十分すぎた。
「……だって、黒潮が本気で嫌だったら私も嫌だもん」
「だから、嫌なわけやないんやって。ほら、もう手放してな。怒っとらんから」
私が手を放すと黒潮は私を抱きしめて、ヨシヨシと背中を撫でてくる。
「怒っとらんけど、あんませんとってな、お願いやで」
「……はーい」
……もう、そもそも不知火にあっさりキスされた黒潮が悪いのに。なんで私が悪いみたいに……いやまぁ、悪いのは認めるけど。それじゃぁ不知火にキスされたりなんかしないでよ、もー。