「マモ。奴の反応はあるか」
「まだ動いていません。これで7時間経過です」
マモはパソコンをつつきながら、ターゲットの動向を探っていた。動向も何も数時間動いてないんだけどな。
パソコンの光が眼鏡に反射し、どこか怪しい感じがマモに現れていた。
「そうか。監視が長引いているから疲れたろ
。これ飲めよ」
「ありがとうございます…ってこれモンエナですよね。普通ここはリポDとか元気ハツラツオロナミンCとかじゃないんすか」
「それしか無いんだよ。我慢しろ」
「そうですか…リポDならまだ元気でるんだけどなぁ」
お前はいつも一言多いんだよ。
といってやりたかったがそんな事で体力、そしてチームの仲を悪くする訳にはいかない。
「芹沢さん。『T』ってどんな奴なんでしょうね」
トールの言葉は俺も気になっていた。
あの日、初めて知った未知の存在をこうやって監視しているんだからな。
数日前。
俺達は雇われ主である中田の元を訪れていた。
「君たちに来てもらったのは他でもない。とある生き物の駆除をしてもらいたい」
「へー、なんすか?また宇宙人ですか。それともUMA?」
そう言いながら
俺が「マモ」と呼んでいる人物はスマホをつつきながら、ゲームをしていた。
コイツはアイドルオタク。しかも二次元のだ。
好きなキャラクターのグッズは毎回買ってる上に、課金額も相当らしい。
これが原因で親から勘当されたマモを俺が拾ったってわけだ。
「ええ…困りますよ。こないだも殺人蝶の
マモに続いて喋るのは
チーム内で「トール」というあだ名がついている。
あだ名は如何にも強そうだが、元サラリーマンの平凡な男だ。
脱サラし店を始めたところあえなく閉店。
そのまま多額の借金を抱え、この仕事へと就くことになった。
「江宮君。事態はかなり深刻なのだよ。研究所から逃亡した『T』は今は小さいが数日の内に巨大化し、街を飲み込むぞ」
「『T』ってなんですかぁ?」
のんきに返事する女の声。
このチームの紅一点とも言える存在
コイツは普通に杏葉って呼んでるがな。
杏葉はホストに通い詰め、ナンバーワンホストに貢ぎまくるどころか、そのホストを連れ出し、ラブホで相手の精力が尽き果てるほどヤっている。
ホストはこの一件から店を辞めちまい、その店には多大な影響があった。まっ、人気ナンバーワンがいなくなってしまえば店の看板も無くなるわけだ。
しかも店を経営していたのが地元の暴力団組織。ヤクザどもに捕まった結果、金を払うか身体を売るか迫られたところコイツは
「お金払いますよ〜」
と即答した大物だ。
ただし、当然彼女に金はなく、借金をしたのだが。
その後俺らと出会い、今に至る。
「『T』は研究所から逃げ出した存在だ」
「いや、それは知ってんだよ。イニシャルじゃなにも分かんないだろ」
「確かに教えるのは簡単だ。しかし、その名前を聞いてしまえば君たちは気が緩むだろう。その結果、この任務は失敗に終わってしまうかもしれない。なので今後逃げ出した存在は『T』と呼ぶこととする」
なるほど。それは合理的だな。
だが下に見られている感じは払拭出来ていない。『T』の正体を明かせば俺達が働かなくなるとでも思っているのだろうか。『T』と呼ばれる限り、俺達は下に見続けられる。
「…」
「それで『T』はどこにいるんだ」
「S市だ。もっとも住人はとっくにS市からいなくなっているがね。避難命令は既に出してある」
「あー。どうせ避難させた理由はお得意の
『地下に溜まった危険な天然ガスとか、不発弾が見つかったから』
でしょ?毎回これで言い訳つくのがホント不思議ですわ」
俺も薄々感じていた事。
それをマモは単刀直入に言う。
中田は顔は平然としているものの、腹の中は煮えくり返っているだろう。ざまぁ見ろ。
「…ともかく。君たちに与えられた任務は『Tの監視と排除』だ。装備もこちらから支給する。終了日時は未定。『T』の行動は読めん。気を抜くなよ」
「マジすか!俺、今週担当のイベ始まるのに」
「私も推しのライブがあるんですけどぉ」
「…」
「君たちは少々自由すぎるな」
俺が言うのもなんだが少々どころじゃないだろ。
まぁこういう奴らだ。俺達はウルトラマンに出てくるような防衛隊じゃない。
あくまで金の為に働く強欲な面々だ。
世界の平和なんて知ったこっちゃねぇの。
「それでは君たち五人の検討を祈っているよ」
そう言って中田は俺達から姿を消した。
「さてと早速準備するぞ。リュウ、弾薬の数は?」
「…」
リュウはスマホの画面を俺に見せてきた。
『先程確認したところやはり足りないですね(´・ω・`) 補給でどこまで貰えるか気になりますけど(-ω-?)』
「分かった。後は任せろ」
『了解です。(`・ω・´)ゞビシッ!!』
そうだ。リュウの説明がまだだったな。
チームの仲間からは「リュウ」と呼ばれている。
コイツは格闘技の達人といっても良いほどの実力を持っている。
ある時、リュウは大事な試合で不正を疑われた。しかしリュウは何故か口を開かず、それを弁明しなかった。
大会運営はリュウが不正を認めたとしてと判断。試合に負けた上、資格を剥奪されたリュウはそのまま格闘技界から姿を消した。
その時、俺がコイツをスカウトすることになった。
最初は無口な奴だと思っていたんだが、コイツにスマホを持たせるや否や、人間とは思えない指の速度で俺にLINEを送ってきた。
『初めまして!遠藤竜二と申します!よろしくお願いします!(*・ω・)*_ _)ペコリ』
「…お前、無口じゃなかったのか」
『ヤダなぁ(;´Д`) 俺、人前に出るとあがっちゃって喋れないんですよ。そのせいで格闘技界から追い出されちゃうし…(´;ω;`)』
「お前の事情は分かった。ウチで働く以上、知っておいて欲しい事がある。正義感とかそういうじゃ俺達は働かない。全ての動機は金だ。金が欲しくってやってんだ」
『承知しています。俺、兄弟を養う為なら何でもします。養う為金がいるんです。』
「OKだ…よろしく頼むぜ、竜二」
俺達のチームに竜二という心強い仲間が増えたのだった。
「それじゃS市で野営するからな。各員万全の準備で現地集合しろよ」
「うぃーす」
「わ、わかりましたっ!」
「了解です〜」
『OKです!』
バラバラでイマイチ締まらねぇと思ったのもこないだの事。
今はこうして『T』の動向を探っている。
俺達のチームの仕事は未知の生物や、研究所から逃げ出した実験体。そして地球外生命体を
俺も一度死にかけた。
しかし、成功すれば多額の報酬が支払われる。俺はもう借金を返しているが、この仕事を辞める気はない。
社会人に戻ろうにしてもこれだけの額と比較すれば貰える給料がちっぽけに見えてしまうからだ。
そういった意味では俺も異常者かもしれないな。
「トーくん、『T』は田中のTじゃないの〜。MMもそう思うでしょー」
「なんで田中って野郎が実験台にされてんだよ。オカシイって。トールも言ってやれよ」
「そうだよ、杏葉ちゃん。MMの言う通りだって」
やる事もないので適当な話題で時間を潰していた。
杏葉はトールのトーくんと呼ぶし、MMは宮本真守の略だそうだ。
MMは絶対呼びずれぇだろうし、トーくんって完全にカードゲームのアレだろ。
しかも俺以外の奴らは皆マモのことをMMって言うんだよ。
そっちの方がいいずれぇって言ったらコイツらそんな事無いって反論するのよ…
「うわぁ!?」
突然の地響き。その衝撃が俺達に襲いかかった。そして、マモのパソコンからけたたましい警報音が鳴り響く。
「…!!芹沢さん!」
「動きやがったか」
『どうします!?Σ(゚Д゚;≡;゚д゚』
「お前ら、装備の準備をしろ。…『T』の
「…イエッサー!」
「何だか燃えてきたねー」
『俺たちの力見せてやりましょう!( *˙ω˙*)و グッ!』
「…ああ」
深夜2時。
漆黒の闇を駆け抜け、俺が率いる
「あのデカいのが」
「『T』…!」
「いくぞ、お前ら!」
そうだ。俺達は
生きるぞ。その金で俺達は生きるんだ。
「あの姿…どこかで…」
街のビルを破壊しながら動く、ソレは記憶の奥底に何か眠っているような感じがした。
黒く、貝のようではあるが、海にいるわけでは無い…。
クソ、歯がゆい。
「あれって…タニシか…!?」
タニシ。その言葉を聞いて思い出した。
俺の幼少期の記憶、爺ちゃんの田んぼでよく見かけたあの黒い奴だ。
「なんでこんなに大きくなってるんですかぁ〜」
「分かんねぇよ…」
「『T』はタニシのイニシャルって事だったんですね」
トールがふと呟いた瞬間。俺達の間に笑いが巻き起こる。
「…フフッ〜」
「こんなやつの事を危険な『T』とか言ってたのかよwww腹抱えて笑えるわwwwサイズ通りジャンボタニシじゃねぇかwww」
『(´º∀º`)ファーʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬʬ』
「…フフフ、ハハハハハハハ!」
俺も高らかに声を上げて笑う。
俺が考えていた見下すとか見下さないアホらしくなってきた。この場では笑うのが『正解』なのだ。
「こんな奴に恐怖を抱いていたのかぁ!?片腹痛いぜ!お前達、こんな奴ぶっ殺して、パーッとやろうぜ。全部俺の奢りだ!」
「マジですか!?」
「芹沢さぁんの奢りなら楽しみだなぁ〜」
「本当にいいんですか!?」
『楽しみです!٩(๑❛ᴗ❛๑)۶』
そう。俺達はチーム。
金の為に働くチームなんだ。
こんな所で止まる訳にはいかない。
今回のお題主は『タニシノハナシ』でお題を出してくれた友人。
お題は『ジャンボタニシ』。無類のタニシ好きかよと思いました。
作品のモチーフはこの作品を書く数日前に友人達と一気見した『仮面ライダーアマゾンズ season1』です。
お題を出した友人いわく「ジャンボタニシでお題を出せば巨大怪獣物書くやろ」とのことでした。僕はまんまと書きました。