IS Heroes   作:D1198

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一夏視点です。


五反田の家

 6月最初の日曜日、晴れ。いや雲が少々。梅雨入りはしたけれどもまだ雨らしい雨はまだ無い。

 

 俺は久しぶりにIS学園の外に出た。大体3週間ぶりだろうか。ここんとこ訓練や訓練や、あぁ訓練や……ドンパチやらでそれどころでは無かったからである。

 

 3週間ぶりの家は少し空気が淀んでいて、埃っぽかったけどやっぱり家だった。匂いというか、そういう落ち着いた気分になった。家ってのはそう言うところなのだろう。

 

 あの阿保にそう言ったら、実はそう深い意味は無かったんだけど、家ってのは記憶が詰まっているからかもな、と真顔で答えられて少し困った。

 

『You Lose!』

 

 目の前の画面に文字が映った、ゆーるーず? なんだそれ……

 

「おわっ! きたねぇ! 最後ハイパーモードで削り殺すの無しだろ~」

「ぼーっとしてるからだろー♪」

 

 俺の正当な抗議に弾が締まらない顔で笑う……むかつく。

 

 俺たちが興ずるのはTVゲーム"IS/VS"で、その名の通りISを題材にした3Dの対戦格闘ゲームだ。発売月で100万本売れた超名作。そしてここは中学時代からの友人である弾、五反田弾の家。家の様子を見たついでに遊びに来た。

 

 弾は相変わらずだった。赤いロンゲ、黒いバンダナ、黒いシャツにジーンズ。6畳の洋間で本棚には漫画、教科書の類いは無く、まぁ学校におきっぱなのだろう。黒い袋に入ったギターが部屋の隅に立てかけられていた。何も変わっていない。それが嬉しいのだけれど、何故か違和感を感じた。そう、目の前の画面を介してみているような、そんな感じだった。

 

「えぇい! もう一回だ!」と機体変更。

「おぅ、返り討ちだ……テンペストIIはレギュ違反だっ!」弾の抗議に渋々戻す。

 

 真は昨日今日泊まりで前に居た会社に行っている。何でもそこの社長が神の手とかゴッドハンドとか言う人で凄い技術者なんだそうだ。因みに会社の事を聞くと阿保はベラベラと長いのでもう聞かない。自分の事もあれぐらい話せば良い、と言う訳にはいかないのが辛いところだ。その辺は割愛。

 

 手元の十時レバーとボタンの音がガチャガチャと手元と隣から聞こえる。選んだ機体は白の打鉄だった。ブレードが強いから、そんだけ。因みに第3世代機のデータは勿論無いので白式は無い。弾の赤いリヴァイヴにブレードで攻撃、EPを40%まで削る。おわっと焦る弾の声が聞こえた。

 

「ゲームなら圧勝なんだけどなー」

 

 なんか言ったか? と、ガチャる弾になんでもねぇと答えた。そういえば弾(だん)って弾(たま)だよな……気合い入ってきた。この一戦なんとしてでもブレードで制する!

 

「で?」

「折角の気合いに水刺すんじゃねぇ……で、なにがだよ」

 

 弾の会話フリにがコントローラがガチャガチャと合いの手を入れる。

 

「だから女の園の話だよ、良い思いしてるんだろ?」

「だからしてねーっつの、何度言えば分かるんだよ」

「嘘付け、お前のメール見てるだけでも楽園じゃねえか。なにそのヘヴン。招待券無いの?」

「ねぇよバカ」

 

 俺が通う特殊国立高等学校"IS学園"は、IS(インフィニット・ストラトス)を学ぶところだ。この女性にしか使えない筈の超兵器を男が使えてしまった。俺ともう1人の阿保、蒼月真がである。その為、俺ら以外全て女の環境で絶賛寮生活中だ。

 

 正直に言えば、真が居て助かる。俺1人だけだったらと思うと……想像すら出来ない。まぁ、あいつは直ぐ調子に乗るからそんな事は断じて言わないけどな。弾がやっぱりガチャりながら、そーいえばと言った。

 

「もう1人男が居たな、どんなやつだよ」

「阿保だ」

 

 弾は何故か面食らったように俺の顔を見た。なんだか、お前がそういう風に言うなんて珍しいな、と言っている感じがする。本当だから仕方ないだろ。証拠なら幾らでもあるんだぜ。

 

「目付き悪いし、暗いし、湿っぽいし、陰険、エロいし、すぐ暴力振るうし。そうそう、俺が1組で、そいつ2組なんだけどよ、ウチのクラスの娘に一目惚れしてさ、その娘には好きな奴が居て、身を引くとか格好いい事言ってるけど未練たらたらなんだ」

「……どんな奴だよソイツ、つか不良か?」

「おう、不良学生で鈍感だ」

「……鈍感?」

 

「同じクラスの娘に好かれてるんだけど、気づくのに一ヶ月半も掛ってさ、阿保だろ?」

「その娘の趣味が悪いのか、お前の言っている事が的を外しているのか、よく分かんねー……が、お前に鈍感とか言われるなんて余程なんだな」

「おう、余程の阿保だ。幾ら―」

 

 幾ら記憶が無いからって―俺は慌てて口つぐんだ。あれは言えない。対抗戦の後に聞いた真の真実。自分の記憶が無く、生きた証が無い。そう言って立ち去ろうとした、あいつを俺は引き留めた。

 

 考えてみれば、真みたいな奴は初めてだった。今まで誰かと全力で向かい合った事があっただろうか。下らない事で意地を張り、殴り合った事なんてあっただろうか。弾とですらそんな事は無かった。ISで怒突き合いが出来る奴なんて他に居るか?……気づいたら、打鉄のEPはゼロ、負けていた。

 

「幾ら、なんだ?」

「なんでもねぇよ」

「まぁなんだな、今度は連れてこいよ。意外と面白そうな奴だし、その2番目」

「弾」

 

 俺は何故かカチンときた。

 

「なんだ?」

「2番目って言うんじゃねぇ」

 

 本当は、あいつと共にある事を失いたくなかったのかもしれない。

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