どうも変だ。
そう感じたのは放課後の寮に帰ってからのことだった。先程から妙な視線を感じる。今思えば、教室、廊下、屋外、食堂、いずれもそうだった。珍しい動物を見る視線ならば何度も浴びた。だが、これは少し違う。なんと言えば良いのか、そう、まるで拒絶されるようなそんなものだった。
はて、と首をかしげつつも、身に覚えがない以上どうすることもできない。しばらく様子を見ようと遅い夕食を求めて部屋を出た。気がつけば時計の短針が8の字を過ぎている。オルコットさんとの一件の後、リーブス先生にそれはそれ、あれはあれと授業をふけた罰を頂いたのだ。一夏達に先に済ますよう伝えておいたのは正解だった。
カレーライス位は残っているだろうと、エレベータに向かう。窓から見える空は既に暗く、廊下のオレンジの灯が足下の絨毯を柔らかく照らしていた。エレベータ前に少女が居る、そう気づいた時にはその少女も私に気づいていた。その少女は、セシリア・オルコット嬢だった。彼女は私の姿を認めると、これでもかと言わんばかりに不機嫌そうな雰囲気を放ち始める。彼女は同じ7階のようだ。ラッキーセブンとはもう呼ぶまい。
「あら、ここでなにしていらっしゃるのかしら。これはエレベーターという人類の文明ですわよ。早く檻にお戻りになったら如何かしら。この極東の猿」
不機嫌どころではなかった。
先程までなら部屋が檻ならあんたは犬だ、と言い返したであろうが、もはやそういう気にもなれない。不用意なことを口にせぬよう、唇をきつく結ぶ。だが、はいそうですかと階段を使うのも負けたようで癪に障ったから、意地でこのまま乗る事にした。
「猿と乗るのが嫌なら階段をお薦めするよ。ダイエットにも良いんじゃないかな」という私の精一杯の皮肉に、「歩くと知恵が上がるそうですわよ、貴方こそ階段をお使いになったら?猿から類人猿位には進化出来るのでは無くって?もっとも進化するほど頭の余裕は無さそうですけれど」と、言いたい放題だった。
エレベーターがちんっと扉を開いた。
「「……」」
私たちの牽制に臆したのか、扉がすぐ閉じ始める。やむなく私が手を入れ、扉に設けられた挟まれ防止用のドアスイッチを押さえた。
「「……」」
エレベーターがぶーんと低い音を立てている。早く乗って下さいと言っているような音に聞こえた。
「早く乗れば?」
「……どういうおつもり?」
「レディー・ファースト」
「なにを今更、白々しい」
「なら俺は先に乗って俺だけ下りるけど」
彼女は一睨みすると、ふんっとそのままずかずかと乗り込んだ。私もそれに続く。エレベーターの動作音だけが響き、フロア表示灯が次第に小さくなっていった。
こういう時は互いに距離を取りそうな物だがな、とあくまで扉の前に陣取る彼女を見て内心苦笑した。もっともそれに張り合う私も大概だ。彼女の横顔を見る。相変わらず眉を寄せ、眼と口をきつく結んでいた。
何かを言うべきだろうか、だがなにを言う。彼女は決闘の相手だ。今更詫びなど入れられないし、入れたところで意味が無い。決闘は行われるのだ。
扉が開いた。
「今度の決闘、意外な物をお見せするよ。楽しみにしていてくれ」
意味が分からない、と彼女は訝しげに私を見上げる。それを別れの挨拶にし彼女と別れた。その時である。数名の少女が彼女に走り寄り、またどこからか言い争う声が聞こえた。
「オルコットさん大丈夫? 何かされなかった?」
「駄目だよ1人で乗るなんて」
「あんな奴、消えれば良いのに」
一体何のことですの、と戸惑う彼女の問いに、その少女らは私を睨み付けて答えた。諍いの声が食堂に響く。
……そういう事か。
食堂の隅に並ぶ白い1本足のテーブル。そのテーブルをベージュのクロスが彩っていた。窓から見える樹木がその葉で朝日を揺らす。私はコーヒーを口に含みつつ、篠ノ之さんと一夏を正面に見た。この違和感は何だろうか。周囲から注がれる視線か、それともこの場に3人しか居ない事か。
「真! お前、そんな事を言ったのか!」
彼女、篠ノ之さんの剣幕で朝食をのせたお盆が揺れた。一夏も険しい顔をしている。そして周囲の生徒が胡散臭い顔で私たちを見ていた。私はコーヒーカップを静かに置いた。
「あぁ、2人とは事が済むまで会わない事にしたんだ」
昨夜、私は鷹月さんと布仏さんの2人に授業以外で会うのは控えよう、と伝えた。2組の皆には寮のメールで伝えた。篠ノ之さんに2人が居ない事を問いただされ、そして彼女の怒りをかった。
「何故だ! 説明しろ! あの2人がどれ程心配したと思っている!」
篠ノ之さんが両の手をテーブルに叩きつけ身を乗り出してきた。つり上がった目を見る。彼女の怒号はこれが2回目だ。だがこの間のとは比較にならないほど、堪える。
「落ち着けよ箒。そんなんじゃ答えようにも答えられないって」
隣に座る一夏が彼女の肩に手を置いて窘めるが、その目は返答次第では容赦しないと雄弁に物語っていた。私は自分を落ち着かせる為にもうひとくちコーヒーを飲み2人に噂だよ、と伝えた。
オルコットさんとの一件は噂として学園中に広まった。それ自体がそういう物であるように人から人へ形を変え、私の悪意だけが強調された。そして、私を知る人達とそうで無い人達との諍いになってしまったのだ。
「昨晩の事だよ。ウチのクラスの相川さん、一夏は知ってるな? 彼女と他所のクラスの生徒が言い争いをしていたんだよ。俺をかばう、かばわないで、ね」
篠ノ之さんには思いも寄らない事だったようだ。狼狽して後ずさった。その声はとても小さくうわずっていた。
「な、なんだそれは、あれはオルコットと真の問題だろう……」
「噂ってのは厄介なんだよ。尾ひれ背びれが付きどう変化するか予想が付かない。誰もが真実を知ろうとする訳じゃ無い。しかも俺は男だ。それだけで悪い方に傾くには十分さ」
私は軽く自嘲気味につり上がった自分の目を指さした。篠ノ之さんが唇と握り手をきつく結んでいた。彼女の気性ならさぞ悔しく思うだろう。私とてそうだ。2組の2人に告げた時の彼女らの表情は今思い出しても辛い。だがこればっかりはどうにもならない。一夏は納得してくれたようで表情を緩めた。だが彼女は更に深いところへ落ちたようだった。
「どうしてそうなってしまうんだ! 真! お前は悔しくないのか! 理不尽にも程がある!」
悔しくない訳あるか、と私は言った。
「でもな箒。俺は彼女ら同士をこんな事で争わせたくないんだよ。悪化すれば行き着く先は碌なもんじゃ無い。箒なら分かるだろ? それに俺らは、俺は、元々異端だ。それに戻るだけさ。なんてことない」
そんなこと私は納得出来ない、と彼女が言った。俯いて体を震わせていた。
「納得出来なくてもいい、ただ理解してくれ」
だから箒も俺に構うな、そう伝えきる前に彼女は感情を爆発させた。
「ふざけるな! 納得も理解もできるか! 私は嫌だからな! そんなこと認められるか!」
私は静かに見上げ彼女を見た。彼女は顔を歪ませ苦しそうだった。どうしてこうなってしまうのだろう。彼女をこうさせないようにしたのに。結局こうさせてしまった。私も彼女にこれ以上言う事が出来なかった。
そんな私を見かねたのか、今まで黙っていた一夏が口を開いた。
「真、俺も男だ。そういうのは良く分かる。けどな箒には逆効果だぜ。こうなったら梃子でも動かない意地を張るぞ、箒は」
一夏は笑いながら彼女を指さした。唇をきつく結んで私を見下ろす篠ノ之さんの目には、確固たる決意の炎が灯っていた。もう腹を括るしか無いらしい。私は残りのコーヒーを飲み干すと、彼女に助けてくれと言った。彼女は馬鹿者と、ようやく笑ってくれた。
セシリア・オルコット、この名で調べて真っ先に知れたのがグラビアだった。代表候補ともなるとアイドルの真似事もするらしい。まぁイメージ戦略という奴だろう。人間見た目が9割ならば仕方あるまい。ただ、いずれの写真も憮然としてたのは失笑を禁じ得なかった。かえって年相応の少女に見え、親しみを感じたのは私だけでは無いだろう。
次にオルコット家。彼女の家の事は色々分かった。彼女の家は王室とも縁のある正真正銘の貴族だった。そして彼女の身内の事も。その記事には事故とかいてあったが真相は不明らしい。この事に関してはあまり探りを入れる気にならなかった。
そして、イギリス代表候補、第3世代ISブルー・ティアーズパイロット。エリート中のエリートだ。彼女は強い。見つかったライブラリーは僅かだったが、彼女の強さを知るには十分だった。頭に血が上ったとは言えとんでも無い相手に喧嘩をふっかけたものだと思う。
だが私にも引けない理由ができた。そうだな、王道の物語(スタンダード)も悪くは無いが意外性があれば観客(オーディエンス)も盛り上がる。彼女にもそれを知って貰うとしよう。
「あの、箒さん? そろそろ機嫌直して頂けると助かるのですが」
「もくもくもくもくもく」
決闘までもう日が無い。今すぐにでもISを動かしたいところだが訓練用ISには限りがあり予約をしなければ使えない。そして当日まで予約が埋まっていた。ならばISを知る事と自身の訓練を行うしか無い。訓練はどうとでもなる。問題はISの知識だ。残念な事だが町の書店に"猿でも分かるIS! 基本編"と言った書籍は無い。自力で覚える必要がある。
「えーと……」
「……もくもく、ゴク」
だが私はISの授業が遅れている。入学が急遽決まった為それなりの準備しか出来ていないのだ。参考書は流し読み程度である。メカニズムは社会人時代に携わった事もあり、ある程度心得があった。しかし運用、操縦に関してはお手上げ状態だ。正直なところ篠ノ之さんの手助けは有難いのだが―
味噌汁の椀を口に当てて含む。ご飯茶碗に持ち替え鮭をつつく。終始眉をひそめたまま、むっすりしている。にべもない。知っているはずの穏やかな朝食が今はもう思い出せない。あの後とりあえず朝食を、と食べ始めたまでは良いのだが、少しずつ立腹具合を増されたようで、今では口を利くどころか眼さえ合わして貰えない。篠ノ之箒、ご機嫌のほど推して知るべし。
一夏は一夏で、おい真。箒の機嫌損ねやがって。どうしてくれるんだ。ISを教えて貰う算段が台無しじゃねーか、このバカ真。と先程から何度も眼だけで文句を言っている。コイツとは短い付き合いだが大体あっているだろう。というかバカとはなんだバカとは。一夏にバカとは言われたくない。そもそも一夏には1人で来いと伝えておいたのだ。にもかかわらずヘラヘラと締まりの無い顔で彼女を連れてきやがって。少しは責任を感じやがれバカ一夏。
そうしたら一夏が、箒が無理矢理付いてきたんだと、さも俺のせいじゃないみたいな事をやはり眼でぬかしやがった。なんて言いぐさだ。女の子を盾にするなんて男の風上にも置けない。ヘタレにも程がある。先日の土下座もおおかたその辺りが理由だろう。底が知れるわ。
箒はただの幼なじみだ。そういう関係じゃ無い。それに二股掛けてる真にとやかく言われる筋合いはねぇと、不愉快極まる眼を向けてきた。同棲している女の子つかまえて何でも無いとか、コイツ頭に蛆が沸いている。間違いない。それに誰が二股だ。彼女らは気の良い親しい友人だ。その物言いは彼女らに失敬だ。恥知らずが。
最後に一夏は両手の平を上に向け、ふふんと、いちいちしゃくに障る眼をしやがった。おれ知ってるんだぜ、静寐を覗いてビンタされ、往来で土下座したってな。しかも本音に助けて貰ったとか。情けなすぎて涙出てくるぜ。このエロヘタレ。
………………………………。
………………………………。
一夏は静かに箸をおいた。
俺が置いたフォークはかしゃん、と鳴いた。
「表出やがれこのバカ一夏! そのヘタレた性根たたき直してやる!」
「しゃらくせぇ! 返り討ちだこのエロまこ大王!」
どさくさに紛れ静寐とか、本音とか、馴れ馴れしいにも程があるわ。俺とてまだ彼女を鷹月と呼んでいるのに。こ、このやろう。
一夏の胸ぐら掴み上げ、忌々しくも私も掴み上げられていたその時である。突然、食堂がざわついた。寮長の千冬さんが来たのかと思ったが、違う。近づく足音の主は、もう少し小柄で、どこかリスを連想させる人懐っこい顔で、そして私に懐かしいと思わせた。
「優子さん?」
「久しぶり、真」
白井優子。会社員時代に、ここIS学園で交友を持った人だ。学園では2年生になると主に技術面で外部のIS企業と関わりを持つ事がある。彼女もその1人で、社の技術主任の渡辺さんと共に数度ISの改造調整をした。もっとも大した技術を持たなかった私は雑用程度だったが、強面の渡辺さんの間に入り彼女とはよく話した。
快活で外を走り回る元気な少女だった彼女は、朱に染めた唇と、ほのかな香の匂いを漂わせ、静かに佇んでいた。ほんの数ヶ月ぶりの再会であったが思いのほか長いものであったらしい。彼女の喉元にある赤いリボンが揺れ、それが3年生だと教えてくれた。そして操縦課主席を証す金色の校章が襟に光る。
素知らぬ顔で食事を続けていた篠ノ之さんもその顔を上げる。取っ組み合う一夏と眼が合った。
「思った以上に元気で安心した。取り越し苦労だったかな」
楚々と笑う彼女を見て、慌てて組み合う手を放す。随分と恥ずかしいところを見られてしまったようだ。最近自分がおかしいのは何故だろうか。騒ぐ、慌てるまったく自分らしくない。
私は白井さんに篠ノ之さんと一夏を、2人に白井さんを簡単に紹介すると、テーブルに招いた。私の隣に座る彼女は決闘の噂を聞き、心配して様子を見に来てくれたのだった。彼女によると噂は昨日のうちに高学年の楓寮にまで及んだそうだ。その尾ひれ背びれ具合は相当なもので、オルコットさんに暴行を働いたと言う噂まであったらしい。だが複数の生徒が、主に私と面識がある人達が誤解を解いて回ってくれた。もちろん白井さんもその1人だった。
私は言葉を失った。彼女らの懇意をどのように受け止めて良いか分からなかった。そんな思いが顔に出ていたのだろう、優しい表情でこう言ってくれた。
「深く考えず素直に感謝しておきなさい。皆もやっと真に何か出来たって喜んでるから。もっとも未だ顔すら見せない事にはお冠だけどね。私も含めて」
「事が済み次第、楓までご挨拶に伺います……」
私は頭を下げる以外の術を知らなかった。
白井さんの近況を聞き、私もまた近況を話す。ルームメイトがどうしたの、会社の人がああしたこうした。取り留めのない内容だった。だがそんな些細な事が何故か心に染みた。気がつけば彼女が私を見つめている。何ですかと聞くと彼女は笑った。
「真は随分変わったね」
彼女曰く随分の変わり様らしい。その言葉に反応したのは意外にも篠ノ之さんでそれほど違いますか、と身を乗り出してきた。初対面の人と話すより興味が勝ったのだろう。話題に不穏な空気が漂い始め、居心地が悪くなる。
白井さんがテーブルに肘を載せ手を組んで宙を見ながら答えた。
「うん、とても驚いた。あの真が織斑君ととっくみあいして怒鳴っているなんて我が目を疑ったわ。初めて会った時は良く言えば大人っぽい、悪く言えば可愛げが無い。私たちがどんなにちょっかい出しても、愛想笑い程度で笑ったり怒ったりなんてしなかったんだから。卒業した先輩方々に教えたら驚くわよー」
今しがた自覚した事であり、自分でも折り合いが付いていない事を言及され、気恥ずかしさを覚えた。篠ノ之さんはぽかんと呆けた顔で私を見ている。自然と右手が頬を掻いた。
今まで黙っていた一夏が口を開いたと思うと「お前むっつりだったのか」と暴言を吐いた。白井さんは「自制心の塊が正しいかな」と実に徳が高い回答をしてくれた。
私は一夏を睨む。
「後で覚えておけよ、一夏……」
「聞こえねー」
そんな私を見て白井さんはにまりと笑った。
「そういえば、唯一反応した話題というか人が居たよね、まぁこれは伏せておいてあげようかな。ねーまこと♪」
彼女は私の左頬を突きながら悪戯っぽく笑う。当時、千冬さんの事で良くからかわれた。敬愛はしていますが、そういうのじゃありませんと、何度言ったか分からない。その度に彼女らははしゃぎ、また繰り返すのだ。前言撤回だ。彼女は変わっていない大人っぽくなったのは気のせいだ。
口をへの字に結ぶ私を見て彼女は笑って席を立った。
「真、そろそろ戻るけどこっちは心配しなくて良いからね。みんなあなたの事分かってるから」
必ず挨拶に行きますと私が言うと、彼女はよろしい、と言った。そして私の頬に唇を当て、足早に立ち去った。
篠ノ之さんと一夏の視線が痛い。
「真、お前一体何人いるのだ……」
咎めるような彼女に私は慌てて釈明した。
「違うって。彼女は親しくて優しい友人、先輩か。そう言うのじゃ無い」と私が言うと、一夏が「ならさっきのキスは何だよ」と言った。「頬にキスぐらいなんて事無いだろ」と私が言うと篠ノ之さんの視線が氷のように冷たくなった。足の踏み付き具合が悪くなったような気がする。
「言っておくけど、頬にキスなら去年さんざんされたぞ。優子さ、白井先輩の同期に外国の人が居るんだ。彼女は挨拶代わりにしてきたからな」と私が言えば、篠ノ之さんは「白井先輩はその唐人ではないだろう」と、しかめ面だった。私は「感化されたんじゃ無いか」と答えた。
何故か徐々に機嫌が悪くなる彼女に、尻込みをする。どうやら2人は白井さんが私に好意を持っていると思っているらしい。それは無い。残念ながらそれは無いのだ。
だから私は「去年、彼女の理想を聞いたことがある。非常に立派なものだった。少なくとも俺は合致しない」と言った。そしてあろう事か一夏は「真、お前鈍すぎだろ」と、とうてい看過出来ない事を言いやがったのだ。相川さんの一件を棚に上げて、よくもまぁいけしゃあしゃあと。だから「俺が鈍いかどうかは知らないけど、仮にそうだったとしても一夏にだけは言われたくないわ。この朴念仁」と言い返した。
一夏はふらりと立ち上がりこう言った。
「真、ちょっと表出ろ」
私も立ち上がり言い返した。
「良いだろう、さっきの決着つけてやる」
首と指を鳴らす一夏と私に、篠ノ之さんは目頭を押さえながらこう言った。
「2人とも、馬に蹴られて地獄に落ちろ」
「「こいつと一緒にするな、箒」」
一夏と声が重なる。ハモるという言葉がこれ程呪わしいとは知らなかった。
セシリア編ですが本格登場するのはもう少し後です。