真剣でKUKIに恋しなさい!   作:chemi

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22話『水上体育祭1』

 

 6月末日の今日、予定通り川神学園の行事が海辺にて行われようとしていた。砂浜は水着に着替えた生徒達で溢れており皆一様にテンションが高くなっている。

今日の最高気温は30度を超すとも言われており、その予報通り空は快晴、何一つ遮られることのない太陽は輝きをより一層増して降り注いでいるようにも見える。外回りに出かけるサラリーマンには気の毒なこの天候も生徒達にとってはなんら気にする必要もなく、むしろ歓迎すべきものであった。

 その浜辺では男子生徒の大半が鼻息を荒くさせながら女生徒達に熱視線を送っており、そういう視線に敏感な彼女たちは罵声を浴びるかと思いきや、意外と堂々としていたりする。また一部のクラスでは男子生徒が男子生徒にねっとりとした視線を浴びせたりもしているが、これは例外であろう。

 しかし健全な男子生徒であればボディラインの強調される水着に反応するなというほうが酷であろう。体育でも既にプールの授業が行われていたが、当然男子と女子は別々でありこういう機会でもない限り彼女達の水着姿を拝む事はできない。貴重なこの機会を逃してなるものか。それが男子生徒の想いであった。そしてこの機会を授けてくれた学長に感謝するのである。逆に女子生徒からはエロジジイと心の中で罵られる。

 それがこの欲望渦巻く水上体育祭である。そして、それを表す1シーンが早速始まっていた。

 

「ちょっと島津ッ! アタイの方じっと見るのやめてくんない系!!」

「誰がヤマンバなんぞ見るかッ! 俺様はお姉様方を見てたんだよ! そしたらお前が視界に入ってきたんだろうがッ! 早くそこをどけ! 俺様の目が汚れるわ!」

「ちょ……この筋肉ゴリラまじ失礼しちゃう系なんですけど! そう言いながら粗末なアレおったててるのが見え見えなんですけどッ!」

「お前なんか見てたらいつも元気なマイサンもひなびるわ! って、あれは清楚先輩ッ!?」

 

 という岳人と羽黒の言い合いがあったり、

 

「(ウヒヒ……ダミーのカメラは没収されたがこれは予想済み。本命は水中に隠してあるほうだ。これで女子達のあられもない姿を収めまくってやるぜ! 狙うはポロリ! 今年の学園女子のレベルは過去最高。特に3年は次々に入ってきた転入生でヤバいからな。高3ともなれば大人の体と大差ねぇ。あのたわわに実った果実がポロリ、そこに滴る海水で瑞々しさが……う、あー、~~~ッふん…………やべぇやべぇ想像だけでいっちまうとこだった。んでんで、タメで言えば弁慶の写真は絶対だろ! 欲しがる奴は山のようにいる。でも九鬼の目が怖いんだよなー。紋様の写真とかはアイツが買い占めるから数を確保しておきたいけど、どっちも会長の関係者だからな。下手したら魍魎の宴の存続すら危ぶまれる。まぁだからってイモひけねぇ! 俺はアイツらに最高のズリネタをやらなきゃいけねえんだ! それが……そう! この童帝たる俺の使命! 学園の皇帝にだって屈しやしねぇ! ……多分、きっと……そうあってほしい。……会長もなんか欲しい物とかねぇのかな? あの人を引き込めれば学園を取り込んだも同じとなり、そうなりゃ女子更衣室だろうがどこだろうが俺の好きにできるのに! いや待てよ……次の選挙で俺が生徒会長になれば……ふむふむ、ぐへへ、これはやるしかねえ)」

「征士郎様、水中より3台のカメラを没収してまいりました。いかがないさますか?」

「ヒュームか、ご苦労。持ち主がわかっているならそのまま返してやれ。ついでに脅すことも忘れるな。撮っていいのは皆にとって良い思い出となるものだけだ。行事が終わったのち確認させてもらうとも伝えておけ」

 

 と気づかないうちに計画が潰えていたり、

 

「ヘイ、李! お前なんでスクール水着? この前買い物行った時水着新調したじゃん」

「体育祭は動き回るんですからビキニでは色々危険でしょう」

「なんだよーせっかく色気ムンムンのやつ一緒に探してやったのに……着ねえんじゃ意味ねーだろ」

「それはそうですが……」

「(まぁ布面積のかなり少ないものを選んでやったからな。いつかは着る機会もあるだろ……そんときが楽しみだな)」

 

 と静初がステイシーの玩具にされたり、

 

「紋様あぁ―ッ!! くそっ紋様の御姿が見えん。どこにおられるんだ?」

「おい」

「うるさいッ! 俺は今紋様のすくーる水着姿を拝むことに忙しいんだ。あとにしてくれ!」

「ほぅ……紋様のお姿ねぇ。ハゲ、てめえの罪を数える時間だぜ」

「ッ!!? あずみがなぜここに!? 英雄は何してるんだ!」

「英雄様は柔軟してるところだよ。それからお前の目的である紋様は征士郎様と一緒だ」

「くっ……入れ違いだとッ! 探しに来たことが仇になったか!」

「さあてお前はしばらくアタイに付き合ってもらうぜ」

「おい……その手にあるものはなんだ? おい、近寄るな! 俺は紋様をこの目に焼き付けねばならんのだ!」

 

 とロリコンが捕らわれたりしていた。

 開会式まではまだ少し時間があるようである。それまでは海へ入り一足先に夏を味わう者、どこから持ってきたのかビーチボールで遊ぶ者など各自が思い思いの時間を過ごしていた。

 征士郎はそんな生徒達を木陰に設置されたビーチチェアに腰をおろしながら眺めている。その彼の後ろでは紋白とステイシー、シェイラがいた。紋白はスクール水着。ステイシーとシェイラはビキニを着用している。

 

「く、くすぐったいぞ」

「紋様我慢ですよ、我慢―。ちゃんと日焼け止め塗っておかないと後が大変なんですから」

「そうですよー。せっかくこんなきめ細かい肌してるんですからケアしておかないと。にしても羨ましいです。こんなスベスベ肌―」

 

 紋白は遂にくすぐったさが限界にきたのか笑い声をあげた。2人は従者であるが、ケアをするその姿は妹を可愛がる姉のようでもある。どこぞのロリコンが見ていれば歓喜の雄たけびをあげていたかもしれないが、今はあずみに拉致されその姿は確認できない。

 そして静初はというと座っている征士郎の隣に立ち、先ほどドリンクを運んできたときに使ったお盆を両手で抱えていた。メイド服であればその姿も似合っていただろうが、今は頭のブリムも外した水着姿であるため違和感がある。しかし、そのアンバランス感が夏を感じさせてもいた。

 

「征士郎様も日焼け止めをお塗りしますね」

「俺は特に気にしないんだがな……」

「いけません。どうぞ楽にしていてください」

 

 征士郎はその言葉に素直に従う。静初はクリームを手にとるとそれを少し温めて、彼の体へと塗っていった。そしてその彼女の手が彼の顔へと向かう。その手つきは慣れたもので彼も目を閉じてそれが終わるのをじっと待っていた。

 そちらを見つめる者達がいる。そのうちの一人、燕が百代へ話しかけた。

 

「ああいうところ見ちゃうと征士郎君も良いとこのお坊ちゃんだなって思っちゃうね」

「とまどう様子なく李さんのそれを受け入れてるからな。私だったら絶対イタズラしたくなるな」

「意図的に日焼け止め塗らないとことか作って文字にしたり?」

「単純に○とかでも征士郎がそうなってると思うと間抜けで笑えないか?」

「ふふっ確かに。でもその前にモモちゃんがメイドさんってのが想像できないね」

「そんなことないだろっ! ご主人様に尽くしちゃうにゃん」

 

 その他にも2年の男子達がいた。岳人が思いの丈をぶちまける。

 

「紋様と替わりたい! あのお姉様二人に挟まれて俺様もぬりぬりされたい! あれ絶対胸あたってるだろ!? あぁ! あんなに密着されて……なんで俺様は九鬼の人間じゃねぇんだ」

 

 そんな岳人の隣にいた友人は険しい顔をしたまま。その友人の名を大串スグルといい二次元命を公言している男である。

 

「惑わされるな。三次元なぞ所詮クソだ。あんな派手なビキニを着る女共などビッチに違いないだろ」

「馬鹿野郎! たとえそうだったとしても関係ねえ。あの胸を好き勝手できるならな! でももしもだ! もしもあの容姿でビッチでなかったらどうだ!? 反則じゃねぇか! 俺様はそれを知って優しくリードできる自信がねえ」

「心配するな。お前がその立場に立てる可能性は限りなく0に近い」

「つまり0じゃねえってことか!?」

「どれだけポジティブなんだお前は……」

 

 

 ◇

 

 

 開会式が無事終わり、生徒達は競技を進めるべく移動を始める。そんな中、Sクラスに入ったばかりの大和は義経と弁慶に声を掛けていた。

 

「これからよろしくね」

「こちらこそよろしく頼む」

「既にだらけ部でよろしくしてるけど、こっちでもよろしく」

 

 大和はSクラスに入ってまだ2日目であるが中々馴染んでいた。そこで彼は義経が妙に嬉しそうにしていることに気づく。チラリと弁慶の方へと視線を飛ばした。

 それに気付いた弁慶がこっそり耳打ちをする。

 

「与一がちゃんと行事に参加してくれてることが主は嬉しいんだ」

「ああ、なるほど。与一ってこういう行事もなんか理由つけて休みそうだもんな」

「休むなんて言ったら力づくでも連れてくるつもりだったけど意外にね。大和も一肌脱いでくれたんだって? 与一が兄貴兄貴って妙に慕ってたよ? 何したの?」

「い、いや特には……というかベン・ケーさん? そんなに近寄られると困るんですが」

「ふふっ主をご機嫌にしてくれたお礼だよ。これより先はもっと好感度を上げる必要があります」

「あれだけ餌付けしてるのにまだ足りないと?」

 

 その義経はというと与一の姿を見つけて駆け寄っていた。彼はうざったそうにしながらも彼女の会話の相手となっている。どうやら体育祭優勝しようと発破をかけているらしい。

 

「義経って本当に与一のことを気にかけてるんだな」

「手のかかる子ほど可愛いって言うじゃないか。あれだよあれ」

「なるほど……」

 

 大和は弁慶の言葉に納得しながら、身近にいる手のかかる子を想像した。姉さん、キャップ、ワン子、京、岳人、クリスとよく考えたら、風間ファミリーのほとんどが手のかかる子という事実に気づく。ツッコミ担当の常識人であるモロはいいとしても、まゆっちも改善されつつあるとはいえ相当である。

 その中でも天然お嬢様であるクリスは群を抜いており、京らと一緒に甘やかしてしまうのもそのせいかと納得した。

 そして大和は同時に思うところがあった。弁慶もその手のかかる子に該当するのではと。

 弁慶は少し凸凹感のある主従を見ながらふと口を開く。

 

「そういえば大和ってロリコンなの?」

「話が唐突すぎるだろ。そして答えはNOだ。というかそれ……誰から聞いた?」

「あそこでおしとやかに談笑している先輩」

 

 弁慶はそう言って人差し指をある方向へと向けた。そこには燕と会話する清楚の姿があった。大和はそれを見て瞬時に悟る。あの仲吉でのことを弁慶に話したのかと。

 

「あの馬鹿王様かッ! って今は清楚先輩の方だから怒るに怒れない! でもこれ機会逃すとそのままうやむやになる気がする」

 

 そこへ現れる同志。

 

「ロリコニアへようこそッ!! 歓迎するぜ大和」

「どっから湧いて出たんだ井上。あと俺はノーと言ったはずだが?」

「照れんなよ。俺達はただ無垢なる存在を愛でたいだけ。そうだろブラザー?」

「川神って人の話を聞かない人間が多すぎると思うんだ」

「年増のスクール水着は目に毒だ。女神はここに降臨してる。探そうぜ俺達のユートピア」

 

 弁慶は一つため息をつく。

 

「井上はさっきまであずみに絞られてたのに懲りないなぁ。大和も将来こうなると思うと心配だ……」

「だから俺はノーだと言ってるだろ! そして肩を組もうとするな井上! 同類だと思われるだろうが!」

「分かるぜ。最初は確かに抵抗があるかもしれん。だが案ずるな……お前には仲間がいる。そう! 俺だ!」

「なに少年漫画風にカッコよく言ってんだよ! 中身がめちゃくちゃカッコ悪いんだよ!」

 

 そこへ中途半端に会話を聞いていた与一がやってきた。その後ろには義経もいる。

 

「どうしたんだ兄貴? ッ! もしや組織の連中が動き出したのか!? フッ水臭いぜ。兄貴と俺はもはや一蓮托生。俺には奴らから与えられた力がある。普通に生きてえと願ってもそれを許さないのがこの力だ。だったらこの忌み嫌われた力、兄貴に向かう悪意を払いのけるために使うぜ! 兄貴は俺に一言言ってくれりゃあいい。敵を……滅せよとな」

「与一は時々何を言ってるかよく分からない。でも! 与一が直江君のことを慕っているのはよくわかった。直江君は凄い。義経は尊敬する!」

 

 いよいよカオスとなり始めた空間で、弁慶は川神水を飲み始めた。それにツッコむ大和。

 

「この状況で人を肴にして川神水を飲むな! そして井上は肩組もうとするなって言ってんだろ! 与一も敵はいないからそのゴツイ弓をしまえ! 義経は……義経はうん、ありがとう」

 

 そんな大和を救いだしたのは女神の一声。振り向いたその先には紋白の姿があった。彼は一刻も早くその場を離れたいがため走り寄っていったが、その行動がさらなるロリコン疑惑を深める要因ともなる。ちなみに真性のロリコンは紋白の姿を拝むことはできたが近づくことはできなかった。なぜなら、気づいたときには首から下が砂浜に埋まっていたからだった。そしてハゲの生首となった状態ではあったが、準は紋白のスクール水着を見れたことで感無量といった様子である。

 その後、皆が散り散りとなり生首状態で放置された準は退屈していた小雪に発見された。しかし安堵したのは束の間、彼女は何を思ったかスイカの代わりとしてロリコン割りを始め、準は盛大に肝を冷やすことになった。

 水上体育祭は未だ始まったばかりである。

 




HPの方で人気投票始まりましたね。誰に入れたらいいんだあああ!
迷う……というか改めてみるとヒロインの数が凄いことに。1位はiPhoneステッカーや抱き枕になるみたいだけど、美しい麗子さんがとっちゃったら誰得? 熟女好き? いや、クラウディオかっ!?
私も投票するんで誰が1位の座を射止めるのか皆さんで楽しみましょう。

というわけで季節的にもピッタリな熱闘川神夏の陣始めます。

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