項羽の解放はひとまずうまくいった。現在はマープルが、これからのことについて粘り強く説得している最中である。
転入までの時間もまだ残されている。
(マープルならばうまくやるだろう)
征士郎は漠然とそんな予感がしていた。
「川神百代に匹敵するか……早めに手を打っておいてよかったな」
故意に人を傷つけるような性格ではなさそうだったが、その力は目覚めたばかりであっても相当であった。あのヒュームが赤子ではないと凶暴な笑みを見せながら表現した程なのだ。
もし川神百代とぶつかりでもしていたら、川神市半壊などというシャレにならない事態も容易に予想ができた。
しかし同時に、百代と対等に渡り合える相手ができたと思えば、それはそれで幸運でもある。姉である揚羽が武から離れてしまったせいで欲求不満を抱え込んでいた武神だ。喜んで歓迎してくれるだろう。
李が征士郎の言葉を拾う。
「項羽は目覚めたばかり。それに加え武器がなかった分、こちらに有利でした」
「目覚めた瞬間、姉さん、ヒューム、クラウディオ、さらにメフィストフェレスを使用したマープルに、義経らクローン組が構えている四面楚歌だったからな。怯みながらもよく戦っていた」
暴れる項羽に対してヒュームが四面楚歌云々と呟いたとき、涙目になっているように見えたのは気のせいだったのだろうか。どちらにせよ学園に通う際には、出来る限りフォローしてやろうと征士郎は思った。
そして、新しい出会いとなる始業式が明日に迫っていた。
◇
一台の黒塗りの車がゆったりと川神学園へ向けて進んでいた。
4月。高校3年になる征士郎にとっては新入生を迎える出会いの春である。
窓から通り過ぎる桜の木が見えた。まるでこれからのことを祝福しているかのように、淡いピンクの花びらを満開に咲かせている。その傍を歩くグループは2年生だろう。仲良さそうに談笑をしながら歩いていた。
そしてその前を歩くのはおそらく1年生。遠くから川神学園へ入学してきたのかもしれない。その顔は不安と期待の両方が混じり合っている。
(思い出に残る学園生活を送らせてやらねば)
征士郎はその姿を見て決意を新たにする。彼の服装は黒のスーツに、ワインレッドのネクタイ、そして胸ポケットには純白のポケットチーフがあしらってあった。
身だしなみは完璧である。なぜなら征士郎以上に張り切っていた局や李が10分以上もかけ、隅々までチェックを行ったからだ。生徒会長としての晴れ舞台でもある。無様な姿をさらさせるわけにはいかないということらしい。
専属に反対していた局も今では李を評価し、信頼もしている。だからこそ、着替えの際には2人で征士郎の周りをぐるぐると見回り、鏡越しに彼を見たりと――とにかく、その表情は真剣であったのだ。
(主役はこれから迎える新入生なのだが……)
征士郎はそう思っていたが口には出さない。つい先日にあった卒業式の日に同じことがあり、そのことを口に出してえらい目にあったからだ。母にとってはいつまでも子が主役であるのだろう。
加えて李に聞いたところによると、征士郎は黒という他の小物と合わせやすい色であるため、ネクタイにシャツ、ポケットチーフなど選び甲斐があり、それが楽しいらしい。
ちなみに英雄の服装チェックは征士郎の前に完了済みであった。
(母さんと李が仲良いのは見ていて嬉しいものだ)
だが、さすがに最終チェックの段階で納得いかないという表情を作り始めたのには、征士郎も焦った。
話を戻して車内。その李はというといつも通りのメイド服である。
「李も川神学園の制服を着たらどうだ? きっと似合うと思うぞ」
征士郎は窓から目を離し、隣に座る李へと話をふった。20代に突入したとはいえ間違いなく似合うだろう。
しかし、李は自分の制服姿を想像して、顔を赤くしながら答える。
「恥ずかしくて今更着られません。似合っているとも思えませんし、こう見えても20歳を超えているのですよ?」
「李なら大抵の服を着こなせられると思うがな。なぁクラウディオ?」
征士郎は運転手を務めているクラウディオに声をかけた。
クラウディオはこうやって、時々登下校の運転手をかってでるときがある。李は少し恐縮していたが、彼自身短い時間でも年若い主人や弟子と会話するのが楽しみでもあった。
そのクラウディオは温和な笑みを浮かべ、ハンドルを緩やかにきる。
「もちろんです。若いうちにしかできない服装もありますからね。李ももし着る気が起きたなら、私が用意してさしあげますよ」
「クラウ爺まで……でも着ません」
李は相当抵抗があるらしい。
しかし抵抗されると、さらに見てみたくなるのが人の性。
「だが真面目な我が従者は、俺が命令すれば必ず着る」
「もちろんです。しかし、征士郎様は嫌がっている従者にそのようなことをなさる方ではありません」
きっぱりとそう言いきった李。
全くその通りであった。そのため、征士郎はふむと頷くだけで言い返すことができなかった。
そのやりとりを聞いていたクラウディオが笑う。
「征士郎様の負けですね」
「俺も父さんくらいの強引さを持つべきか?」
「征士郎様はそのままでも十分魅力的かと。……あちらに川神百代への挑戦者がいるようです。見物なされますか?」
車は多馬大橋に差しかかったところであった。
川神百代(かわかみ・ももよ)。征士郎と同じ川神学園3年で、クラスはF。上を目指せる頭はあるが、本人はそれよりも気楽な方を選びそのクラスにいる。
長い黒髪に挑発的な瞳。グラマラスな肉体。美少女として一級品であるが、その強さゆえに男からは敬遠されている。その結果、女に走る傾向がある。
学園一の人気者で有名人。征士郎とは揚羽を通じて知り合い、それ以来交流が続いていた。しかし、高校に入ってからはより絡んでくるようになった。その理由も分かっている。
「よい。どうせあとから教室にでも来るだろう。李に会いにな」
高校一年時から、李は征士郎の専属として入学したため百代に目を付けられたのだ。と言っても別に悪い意味ではない。
百代は強くて可愛い李と仲良くなりたいだけであり、それは李にとっても有難いことであった。なぜなら百代を通して多くの友人ができたからである。
車がその傍を通り過ぎる頃には挑戦者は星と化していた。同時に周りの野次馬が歓声をあげる。
□
車が川神学園の近くで止まる。その停車も征士郎に僅かの揺れも感じさせない見事なものだった。クラウディオが先に車を降りすぐさま扉を開く。
「いってらっしゃいませ」
「ご苦労、行ってくる」
征士郎はカバンを受け取り、ぐるりと周りを見渡す。登校してきた1年生の中には、執事の存在を初めて見たのか目を丸くしている。
その隣を通り過ぎる在校生が征士郎に挨拶し、その者が通り過ぎるとまた別の生徒が彼に声を掛け、その後も続く挨拶の連続に全て応えながら下駄箱を目指す。その間、李は静かに3歩後ろを歩いていた。
そんな李も、彼女に挨拶を行ってくる生徒にはしっかりと挨拶を返している。
向かう先はもちろん3-S。李の期末の成績は京極と並んでの3位。この征士郎、李という並びは、1年のときから1度も変わりがない。
京極彦一(きょうごく・ひこいち)。文学硬派で知られるイケメンで言霊を扱えるという変わった技能の持ち主である。服装はいつも和服で、小学からの付き合いがある征士郎ですら洋服を着ているところを見たことがない。
また本人はどうでもいいと思っているが、エレガンテ・クアットロと呼ばれる川神学園のイケメン四天王の一人とされている。
余談だが、征士郎は生徒会長になった時点でそこから脱退させられた。そして、繰り上がりで源忠勝という下級生の一人が選出。征士郎には生徒会長という一種の特別枠でくくった方がよい、というのが女生徒たちの意見であった。
Sクラスに荷物を置き級友に挨拶を告げると、征士郎は李を伴いまた外へ出る。
新入生は勝手がわからないことも多いため、生徒の何人かに有志として入学係を任せていたのでその様子見であった。
「天から美少女登場―!」
先を歩く征士郎の頭上からそんな声が響いてきた。そして文字通り、美少女が天から降ってくる。登校している生徒たちもこの奇抜な登場にざわめいた。こんなことができるのは学園広しと言えど百代だけだ。正確に言えばあと2人いるが今は省く。
征士郎が軽くため息をつく。
「お前はもう少し普通に登場できんのか? いや……これがお前の普通か」
「おいおい……随分な言い草だな、征士郎。そして李さん、おはよう。会いたかった」
百代はムッとした表情をつくったかと思えば、すぐさまニッコリと笑って李の手をとった。
李も既に2年の付き合いになるため、その対応に慣れたものである。
「おはようございます、百代。そして征士郎様にもご挨拶を」
「セイシロウクン、オハヨー」
「なんだ、その機械じみた抑揚のない挨拶は。だがまぁ……おはよう百代」
しっかりと挨拶を返されるとさすがの百代もそのままにしておけないのか、もう一度挨拶をし直した。
それを李が褒めると百代は彼女に頬ずりする。
「征士郎、私に李さんくれないか?」
「お前のところには鉄心殿の門下生がいるだろう。それをお付きにでもしろ」
「アホ! 私は美少女のメイドさんが欲しいんだよ!」
「ならば、弟分を女装でもさせて侍らせてはどうだ?」
百代の弟分とは直江大和のことである。学園内に留まらず外にまで人脈をもつ顔の広い男であり、知略に長けていることから軍師の渾名で呼ばれることもある。
その顔は征士郎と同じく母親似で、女装がよく似合いそうであった。
「それも……アリだ! だがそれはそれ! これはこれ! ……李さんは罪な女だ。私を狂わせる」
「お前が勝手に狂ってるだけだから安心しろ。腕利きの医者を紹介してやる」
「冷静にツッコむなよ! 今良い所なんだから! って李さんに笑われたじゃないか!」
見れば、李はクスリと笑っている。
征士郎はその姿を見て内心嬉しく思っていたし、百代に感謝もしていた。
「そう騒ぐな。飴をやるからさっさと教室へ行け」
征士郎はそう言うと李が取りだした飴玉を百代へ差し出す。
「私は子供か! まぁもらっておくが。そしていつか李さんももらっていく」
「毎度毎度懲りない奴だ。だが目の付けどころは素晴らしいな。李はやらんが飴玉はもう一つやろう」
李が飴玉を転がす百代に話しかける。
「百代、また後ほどお話しましょう」
「もちろんだとも! それじゃあまたあとで、李さん! 征士郎はいなくてもいいぞ」
それだけ言い残すと、百代は前を歩く女生徒にちょっかいをかけていた。
征士郎はその姿を見て、百代の将来が心配になった。
「落ち着きがない奴だ」
「ああいうところも百代の良いところかと」
「そうかもしれないな。あれにも一応感謝はしているさ」
征士郎の言葉に李は首をかしげたが、さっさと歩いていく主にその意味を尋ねることができなかった。
◇
「直江、そいつは国から直々に帯刀許可をもらっている奴だ。だから警備員を呼ぶ必要はない」
征士郎は携帯を取り出した大和にそう言い放ち、一人でテンパる新入生に声をかける。
「ようこそ川神学園へ。君が黛由紀江だな?」
「ど……どどっどどど、どうして……わた、わたわたたたたたっ」
今にも百に及ぶ突きを放ってきそうな掛け声である。
「俺はここの生徒会長、九鬼征士郎だ。新入生の顔と名前、簡単なプロフィールくらい頭に入ってる」
「せい、せせ生徒会長!? ははは、はじめましゅて……ああ、わたわたたわたし――」
「李。とりあえずこの子を落ち着かせてあげてくれ」
ショート寸前といった様子の新入生に同性である李をあてがう。
黛由紀江(まゆずみ・ゆきえ)。黒髪をうなじ辺りで2つに束ね、物静かな印象をうける。その所作は美しく、見る者が見ればすぐにわかる気品も備えていた。父は剣聖と呼ばれ、娘である彼女もその才能を受け継いでおり、九鬼の情報によれば武道四天王の一人を倒したともある。彼女の扱う武器は、今も大事そうに抱えられている刀である。
大和が2人の様子を見ていた征士郎に問いかける。
「生徒会長、彼女ってもしかして凄い子?」
大和の目がきらりと光った。もしそうなら、知り合っておいた方がいいとでも考えているのだろう。
「剣聖黛十一段の名くらい知ってるだろ? 彼女はそこの娘だ。俺が見たところ今年の1年の中では2番目に凄いだろうな」
「マジ!? ですか?」
同時に大和は思う。剣聖の娘で2番なら、1番の子はどれだけ凄いのかと。
「信じる信じないはお前の自由だ」
「そんな子がどうしてあんな態度を……」
大和も少し離れた場所にいる2人を見る。一応話がついたのか彼女らが戻って来る。
「李、ご苦労」
「いえ私はいくつかギャグを言っただけです」
「そうか。お前のギャグには沈静効果もあるということだな。わかった」
「全然嬉しくありません!」
李は明らかにテンションが下がっていた。
ギャグに沈静効果、本来とは逆の効果を発揮しているのではないだろうか。
しかし、李は打たれ強いとでも言えばいいのか。ギャグと逆で何か閃いたらしく、またテンションが回復していた。
征士郎はそんな可愛い従者に癒されていると、どこからともなくツッコミが入る。
『まずギャグで笑いとろうとするのが、至難の業だと思うんよー』
その声の方向には由紀江が一人いるだけ。
大和がおもむろ口を開く。
「って普通に喋れるんかい!」
『いやいや。これまゆっちが喋ってるんじゃなくてオイラだから』
「は?」
視線の先には、由紀江の掌に乗った馬のストラップ。意匠も凝っており、作り手の真心が感じられる一品だった。
『オラの名前は松風。職業九十九神、兼まゆっちの友達。以後よろしく』
それに続いて由紀江がブツブツと喋っていたが、聞き取れない。大和は突然の出来事に、反応に困っているようだ。
そして由紀江の呟きが終わったところで、彼女は正面に立つ3人を見渡し――。
「生徒会長、対象がなんかプルプル震えてます」
「人間の体はあそこまで小刻みに震えられるものなのか」
「声をかけてあげてはいかがでしょう?」
それも束の間、由紀江はガバリと頭を下げ謝罪すると目にも止らぬスピードで姿を消す。それに合わせて征士郎が声を張り上げる。
「李!」
「御意!」
まさに阿吽の呼吸。李も姿をくらましたかと思えば、由紀江を抱えて征士郎の前へと姿を現した。
由紀江は未だ混乱の中のようで、「あわわ、あわわ」と目を回している。そんな彼女の頭を李がなだめるようによしよしと撫でた。
「黛、そう慌てるな。俺はお前がストラップと会話しようが、その松風とやらに神が宿っていようが気にはせん。大事なのはお前が有能だということだ」
九鬼の情報網は甘くない。この程度のことなら既にわかっていたことだ。
征士郎の言葉に由紀江は驚くと、今度はドスの利いた表情を作った。傍から見れば彼を思い切り睨みつけているようだった。
「わ、わた私が有能なんて! とと、とんでもない。友達一人作れない私が、有能なんてありえません。むしろ私なんて……私なんて……」
『まゆっち、そんな卑屈になるなよ! まゆっちは有能だぜ! 炊事洗濯掃除は完璧。一家に一人とは、まゆっちのことだ!』
また一人コントを始める由紀江。
「俺が指摘したのはその部分ではないが……まぁできるに越したことはない。そこでだ、黛」
真剣な声色。由紀江は自然と黙り込んだ。怖がることも不気味に思うこともなく、かといって侮ることもなく、ただ一人の人間として黛由紀江を、自分を見ている――そう思った。そして、この先に続く言葉を聞けば何かが変わってしまう気がした。
変えたくて、変わりたくて、あの場所を飛びだしてきた。しかし現実はそう簡単ではなく、他人と上手くコミュニケーションをとることができない。気づけばいつものように松風と会話しているだけ。
由紀江は昨日島津寮へ入ったものの。1日は引っ越しの粗品を渡すシミュレーションをやっていたら夜が来てしまい、粗品は結局各自の部屋の前に置くに留まり、しっかりと挨拶できたのは寮母のみ。それもテンパリ気味で自身も何を言ったのか覚えていない。ただ寮母の困った顔だけが印象に残っている。
入学式の朝も寮の誰とも会話することがなかった。入学係の腕章をつけた先輩は同じ寮であるにも関わらず、自分のことを知らなかった。顔すら会わせてないから当然である。
(やっぱり駄目です)
何度そう考えたかわからない。その度に自身を叱咤してきた。変わると決めたのだからと。
明るい希望はいつの間にか消え去り、代わりに暗闇に自分しかいないイメージが湧きたつ。後ろを振り返れば、幼い自分がぽつんと立っていた。
それを振り払おうとした由紀江に再度声が掛けられる。
「黛! そんな暗い顔をするな。そして俺の話を聞け」
自信に満ち溢れている生徒会長。そして混乱している自分を今もなだめようとしてくれている李と呼ばれるメイド。
ばっと桜の花びらが舞う。征士郎の銀髪が風に揺れ、九鬼の証であるバツ印が由紀江の目に止る。その姿は堂々としており、まるで一枚の絵画にできそうな光景だった。
九鬼へ来い――。
肌が泡立つような感覚が走った。たったその一言でだ。
九鬼の噂は実家のある北陸でもよく聞いていたし、ニュースにもなっていた。そして実際にその一人と会ってわかったことがあった。
魅せられるのだ。その声に。瞳に。笑みに。態度に。雰囲気に。
征士郎がチラリと視線を移動してまた笑う。
「黛の固い表情はどこかの誰かを思い起こさせるな」
「こほん。征士郎様、今そのお話はどうでもよいかと」
李がわざとらしく咳払いをし、征士郎は苦笑した。
「あ、ああの……」
「おっと、すまんな。で、どうだ? お前の力を民のために役立てるつもりはないか?」
「お、お話が大きすぎて……」
由紀江はただ友達がほしいだけだった。それがいきなり民のためにと言われても反応しづらい。
李が由紀江のフォローへ回る。
「征士郎様、会っていきなりそれでは、大抵の方はこうなるかと」
「ふむ。確かにそうだな……許せ黛。だが、それだけの力がお前にはあるということは覚えておけ」
由紀江ははいと返事をするが、その声に力はない。そんな彼女を放っておけない人がいる。
「もし……何かお困りがあるようでしたら、打ち明けてみてはどうでしょう? 九鬼と関係なく、征士郎様は生徒会長でもあらせられます。相談するのも悪くないと思いますが?」
生徒会長。それは生徒の長を指す。つまり学園の頂点であり生徒からの人気も高いということだ。思い起こせば中学の生徒会長も気さくで人気が高く、友達も多かったことを由紀江は覚えている。
しかし、そんな生徒会長ですら由紀江に対してはとても遠慮していた。
(でもこの人なら、もしかすると……)
由紀江はごくりと唾を飲み込み、意を決して思いを言葉にする。
まゆっちって、九鬼のメイド服似合うと思う。束ねた髪を解いてもらって、その手には刀を常備で。
6.23 修正