しあわせハンター   作:ぽぽりんご

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第1話 馬鹿は強い

「8-4-2、騎馬」

 

 私は、恐れず前に出た。

 軍儀の代表選考会、決勝戦。

 この国の棋士なら誰もが夢見る舞台、それに向けての最後の戦い。

 

 相対するは、対照的な二人。

 

 片や、齢十四の小娘。くすんだ金髪に、小さな体。足が不自由なため労役にもつけず、ろくな食料すらもらえず、骨と皮だけが残っている。貫禄もへったくれもない。

 

 その対局者は、老人と呼んで差し支えない年齢の男性。でっぷりと太り、散々に贅沢な生活をしてきたであろうことが窺える。彼は、現役の世界王者らしい。なんでも、今まで開催された世界大会で全て優勝しているのだとか。つまり、最強の打ち手ということになっている。

 今日までは。

 

 

 ぽたり、と汗が落ちる。

 世界王者の彼が、先ほどからダラダラと垂れ流しているのだ。

 対する私は、涼しい顔をしているというのに。

 これでは、どちらが王者か分かったものではない。

 

「──盤面に集中してないよね。なぜ生きている、って顔に書いてあるけど。まずは目の前の騎馬に対処すべきじゃない?」

 

 いつまでも打ってこない彼に痺れを切らし、私は声を掛けた。

 まだ中盤。いくらでも打つ手はある。騎馬を弓で迎え撃っても良いし、左辺を捨てて中央を取っても良い。それすら、見えないのか。

 

「どうしてこんなことに? それも、どうでもいいんじゃない? もう始まっちゃったんだから、考えても無駄だと思う」

 

 打開策を考えているのであればいつまで待ってもいいが、相手の考えているのは至極どうでもいい事ばかり。待っても意味が無い。さっさと次の手を打てと、相手を急かす。

 

「なぜ、考えが読めるのかって? 見れば分かるよ。鏡でも用意しようか? 打つ気が無いのなら、死ねばいいと思う」

 

 敵は、あたふたと汗を拭いながら、盤面に目を落とした。

 

 私は、相手の呼吸音に耳を傾ける。

 乱れが激しい。混乱が三割。

 

 心臓の鼓動が聞こえる。

 不必要なほどに早い。恐怖と不安が五割。

 

 相手の顔を見る。

 発汗。目が泳いでいる。焦りが二割。

 

 

 これは、駄目かもしれない。

 こいつは、逃げることしか考えていない。

 互いの命を懸けた一局。()()から、逃れられるはずもないのに。

 

 彼は、どうしようもないほどの小物だった。

 この程度の愚物に、あの子は殺されたのか。

 自分の命すら懸けられない奴に。許せない。許せるはずがない。

 

 

「……7-3-1、(ヒョウ)

 

 散々に時間を使って打った手は、平凡と言えるものだった。

 苦し紛れの一手。苦しみを先送りするだけの一手。その手を打てなかったからこそ、悩んでいたのではないのか。

 

「7-2-1、忍」

 

 即座に私は手を返す。

 盤上に残った、わずかな駒の繋がり。それを容赦なく断ち切る。

 これで左辺は死んだ。それどころか、中央も崩壊寸前だ。

 もう、王は守れない。守れないのなら、死ぬ前に私を殺すしかない。

 こいつが生き残るには、私に向かってくるしかないのだ。

 

 

 だというのに。

 

「7-1-1、砦」

 

 

 ──ああ、こいつは駄目だ。

 

 私は、呆れて物も言えなくなった。

 この後に及んで、無駄な時間稼ぎ。いたずらに兵の命を散らすばかり。

 これでは、私の王……(スイ)に、手が届くはずもない。

 

 こいつには、私の前に立つ資格がない。

 私を殺す力がない。

 

 まがりなりにも、世界王者だろう? 

 なら、その力を見せろ。

 私を殺してみせろ。

 

 

 それが出来ないというのなら。

 

 

 ──お前が死ね。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 東ゴルトー共和国は、ヨルビアン大陸南東、バルサ諸島の東端に位置する国だ。

 一言で表現するなら、究極のクソ国家である。

 

 国民の平等を(うた)っているのだが、この国の平等という概念は、他国のそれとは(いささ)か意味合いが異なるらしい。

 従順に労働に勤しむ者には、奴隷として生きる権利を。

 そうでない者は、権力者のおもちゃとして弄ばれる権利を。

 そして権力者の子として生まれた者は、贅沢三昧で成人病にかかり早死にする権利が総統閣下より与えられる。

 山よりも起伏に富んだ、素晴らしい平等である。

 

 

 そんなウンコ オブ ウンコな汚物国家ではあるが、外面は多少気にするらしく、国威の発揚に力を入れている。世界大会などで好成績を収めれば、そこそこのお金と、ちょっとした地位が貰えるのだ。奴隷やおもちゃが人権を得られる、貴重な機会である。

 私のように世界大会四連覇なんて偉業を達成してしまうと、もはや国の英雄だ。軍儀というマイナーイメージのある競技だが、実は野球よりも競技人口が多く、注目度もそれなりらしい。世界大会で優勝する前は、暗くて狭い部屋に監禁されていたが、今では召使い付きの広い家に住んでいる。

 正直広さは要らないのだが、召使い付きというのは良い。諸般の事情により私は足が動かないので、一人暮らしは厳しいものがあった。召使いが一人いるだけで、生活がずいぶんと楽になる。

 

 

 コンコン、と。

 

 ドアをノックする音が響き、私はそちらに意識を向けた。

 噂をすれば、なんとやら。その召使いさんがきたようだ。最初はメイドさんを期待していたのだが、あいにくと初老の男性だ。召使いというより執事といった雰囲気である。私も一応うら若き女性なのでこの采配はどうかと思ったが、彼は有能だったので今は満足している。

 

「スイ様、お客様がいらっしゃいました」

「──ああ、やっとか。ずいぶん遅い登場だな? 日付を間違えたかと思ったぞ」

 

 召使いの言葉に、私はやや呆れた声を返した。

 客人を迎えるのが本日唯一の用事だったのだが、予定の時間から大きくずれている。午前中に着くはずが、窓から差し込む光は夕日の赤。寝坊とか、そういうレベルではない。どういうことなの。

 

「申し訳ありません。盲目の方なので、誘導に手間取ったようで」

「……まさか、歩いて来たのか? 車は?」

「途中でガソリンが切れたため、置いてきました。長官の視察に燃料を回した結果、こちらへの配給に遅れが生じているのだとか」

「なんだそれは。完璧な計画配給が聞いて呆れるぞ」

「体制への批判は御法度ですよ。失敗はなかったことになるので、完璧な計画なのです」

「それは批判ではないのか?」

「滅相もない」

 

 無駄のない配給がされているはずだが、どうやら私の客人の輸送は「無駄」というカテゴリに含められてしまったらしい。

 少々腹は立ったが、怒っても仕方がない。私は人気取りのパンダであって、権力者ではない。体制を批判する権利など与えられていないのだ。

 私は、この件を無かったことにした。

 

 

 何のトラブルもなく我が家にお招きしたお客様は、これから私の弟子となる予定の少女だ。

 齢は十三。まだ子供だが、こと軍儀においては比類なき発想を見せる。

 盲目というハンデを背負いながらも、既に腕前は高段者クラス。天才と呼ぶに相応しい。

 名を、コムギという。

 

 段位認定試験すらすっとばしてプロリーグに参戦させて良いレベルなのだが、彼女は軍儀の伝統とやらに(つまず)き、いまだアマチュア大会での入賞経験すらなかった。

 この国で軍儀の公式大会に出場するためには、四段以上のプロ棋士に弟子入りしなければならないのだ。まったくもって意味不明な制度だが、我が国の伝統は人命よりも重いのでどうにもならない。

 コムギは師匠を探し続けたが、盲目の子供を弟子に取ろうなどという奇特な人間はいなかった。だから私の目に留まるまで、彼女は誰にも認められずに燻っている。

 

 度し難い愚かさだ。

 危うく、天才が日の目を見ないまま消えていくところだった。人類にとって、大きな損失である。まだ子供だが、この子は間違いなく天才……天才……? 天才、のはず……。

 

「いや~~~もう、本当にありがとうございます! ワダす、軍儀しか取り柄が無いのに大会にも出られず、本当に、どうすたものかと!」

 

 目の前に連れられてきたコムギを見て、私の考えが揺らいだ。

 棋譜を見る限り、冷静で広い視野を持つ天才のはずだが。

 鼻水を垂らしながらあたふたするその姿は、なんというか。率直に言えば。

 

「……馬鹿っぽい、な?」

「よく言われるます」

 

 ええー? なんかの間違いじゃないの。

 そう思ったが、丸一日掛けて歩いてきた客人に対して「勘違いだったのでお引き取りください」とは言いづらい。弟子になる予定だったとはいえ、まだ彼女は弟子ではなく、客人である。

 

「……とりあえず、一局打とうか」

 

 私は、問題を先送りにした。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 どうやら、彼女は天才で間違いなかったらしい。

 馬鹿っぽい雰囲気も、軍儀を打ち始めると一変した。盤上に全神経を集中させる様子は、歴戦の猛者を思わせる。

 そういえば、私に軍儀を教えてくれた天才少女も、普段の言動は馬鹿っぽかった。

 天才となんとかは紙一重、という奴だろうか。

 

「ん、問題ないな。君なら、すぐにでもプロリーグで活躍できるだろう。とはいえ色々と手続きは必要だから、参加は来期からになるだろうが」

 

 私は、彼女に太鼓判を押す。

 対局後の検討にも、十分ついて来られる。

 悪手と思えた手も意図があって打ったもので、経験不足から来る失敗にすぎないことがわかった。

 経験さえ積めば、プロリーグで活躍どころか、タイトル戦で上位も狙えるのではないだろうか。恐ろしいまでの天才である。

 

「あの」

「うん?」

 

 コムギに声を掛けられ、私は顔を上げる。

 急に雰囲気が変わったと思ったら、彼女は盤面から目を離していた。

 盤を見る時と、そうでない時。コムギは別人のようになる。

 

「スイ様、ですよね?」

「そうだが。名乗っていなかったか?」

「ずいぶんお変わりになられたな、と思いますて。昔、テレビで見ていた……や、この場合聞いていたんだすけど。その頃と、雰囲気がちがくて……」

「周りがうるさいのさ、王者らしく振る舞えとな。注文が多くて嫌になる」

 

 目下の者にへりくだった喋りをすると、権威が保てないとか言われるのである。

 その程度で保てなくなる権威など、ケツを拭いた後の紙より役に立たないと思うのだが、彼らにとっては大事なものらしい。

 

「ほんでも。国内王者になる前とは、やっぱり違うなと」

「──ああ、そういう」

 

 彼女の言葉を聞いて、私は納得した。

 それは、確かに違うだろう。

 

「ずいぶん前の話だな? そんな昔だと、録画記録も残っていないだろう」

「テレビの生中継を聞いていますた。いやー、この方お強いなと! スイ様の対局は全部聞くようにしていたんです。本当に、尊敬出来る方だなと思って、中継された対戦は全部!」

 

 コムギが、やや興奮した様子で詰め寄ってくる。

 そう言われて、悪い気はしない。

 尊敬。そうだ。スイは、とても素晴らしい人だった。

 

「そうだろう? 私も、本当にそう思うよ」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 コムギの指導は、楽だった。

 どう指導したものかと頭を悩ませていたのが馬鹿みたいだ。

 私が三手も示せば、それだけで裏に隠された意図に気づいてくれる。

 

「なるほど。いや~~~、凄いですますな! 気づいた頃にはもう間に合いません。や、最初から対処するにしてもこれは……?」

 

 コムギが、ブツブツと呟き始める。

 集中モードだ。こうなった彼女に、外部の声は届かない。

 

 いくらかの時間を掛けて、コムギは答えを出せたらしい。

 持ち駒の表面を指でなぞりながら、彼女は次の一手を示した。

 

「7-4-1、大筒」

 

 素晴らしい答えだ。

 右辺の半分を切り捨てて、中央への橋頭堡を確保する。この短い時間で活路を開くとは驚かされる。

 彼女の視野の広さは、私よりも上だった。コムギと戦う時には、注意しなければならない。

 

「それだと右辺が死んでしまうが、大丈夫か?」

「大丈夫です。どれだけ右辺が乱れても、中央に浸食してくる前に敵の王を詰めます。右辺に切れ込まれる一手目で、敵の狙いに気づけさえすれば」

「対応を見た敵が、右辺への攻めを止めたらどうする?」

「2-5-2、中将。睨み合いの形になりますが、砲を打てた分こちらが一手得なので、悪くないかと」

「確かに、優勢を保てたな」

 

 

 歓喜のあまり、私は思わず笑みをこぼした。

 やはり、コムギは天才だ。

 ようやく出会えた、二人目の天才。甲乙付けがたい。

 

 コムギなら、きっと私を──

 

「……ん」

 

 興奮したのがいけなかったのか。

 くらり、と。世界が反転した。

 

 思わず床に手を突き、地面の方向を確認する。

 目眩だ。最近多い。

 足が不自由な私は「転ぶ」という分かりやすい失敗をしないため、今まで隠し通せていたが。

 さすがに、もう無理かもしれない。

 

「あ、申し訳ありません! 疲れただすか? お休みになられてくだしい」

「……ああ、すまない。そうさせて貰う」

 

 私の状態は、盲目のコムギですら察せられるレベルで悪いらしい。

 大人しく、彼女の言うことを聞くことにする。

 

 

 召使いにお願いして部屋まで運んでもらい、ベッドに横たわった。

 目眩は、まだ続いている。頭痛が酷い。自分の心臓の音がうるさい。無理矢理動かされて、悲鳴を上げているのだろうか。

 

 私の体は、もう限界だった。

 とうの昔に活動限界を迎えているのを、欺し欺しやってきただけだ。長くは持たない。

 八年もったと考えると、予想より長生き出来た方ではあるが。

 

 だが、まだ死ねない。

 まだ私は、負けていない。

 このまま死んでは、今まで生きた意味がない。

 彼女に合わせる顔がない。

 

 

 コムギは、間に合うだろうか? 

 私を倒せるとしたら、彼女を置いて他はない。

 ()()()()なら、あいつがいい。

 

 だが、まだ足りない。足りないのだ。

 今のコムギでは、私は満足できない。

 私を、私たちを殺す者は、最強の打ち手でなければならない。

 

 だから、早く。

 最強の打ち手を、育てないと。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 コムギが、王位のタイトルを獲得した。

 プロになってから、わずか半年での出来事だ。

 

 ようやく家族に仕送りできたコムギは、感動のあまり泣き出してしまった。

 タイトルを取った時にも泣かなかったのに、送金手続きをしたら泣き出すなんてどうしたのかと困惑してしまった。

 

「弟子が栄誉を得たんだ。師匠として、何かお祝いしないといけないな……ん? これで一気に七段まで上がるから、もう弟子ではなくなるのか?」

 

 とすると、もう教育できなくなるが。

 まぁいい。コムギの成長は目を見張る物がある。既に私の手助けなど不要だろう。

 むしろ、私が師匠のままだと、コムギと戦っても手の内を読めてしまう。ここらが潮時だ。

 

「タイトル獲得……兼、卒業祝いだ。何か、欲しいものはあるか?」

 

 私の言葉に、コムギは言葉を詰まらせる。

 今考えている、という風ではない。事前に考えてはいたけれど、言い出しにくいことなのだろうか? 

 

 私は、コムギの言葉を待つ。

 たっぷり十秒ほど迷った末に、コムギはこう切り出してきた。

 

 

「──師匠との、本気の対局を」

「……そうか」

 

 それは、ある意味私の望み通りではあるのだけれど。

 まだ駄目だ。早すぎる。今戦ったら、きっとコムギは孤孤狸固(ココリコ)を仕掛けてくるだろう。王位戦で見せた新戦法。たしかに面白い手だが、結果は見えていた。事前の検討通りに手を打ち、相手を死路に追いやって終了だ。戦いにすらならない。

 

「それは、駄目だな」

 

 私は、言葉を選びながら続けた。

 

「軍儀王、一度負ければただの人、という言葉がある……だが、お互いこんな体だ。お前も私も、ただの人になんてなれない」

 

 だから、負ければ死ぬしかない。

 

「お互いの命を懸けた一局だ、それなりに、ふさわしい場所でないとな」

「命なんて、そんな」

「お前は、命を懸けていないのか?」

 

 私の言葉に、彼女は息を詰まらせた。

 ある意味、コムギは私の同類だ。彼女の持つ覚悟なんて、私には透けて見える。

 

「わかるさ。一応、弟子のことだしな。そも、この業界で生きている人間は、多かれ少なかれ己の魂を懸けて打っている。中には、相手を暗殺してでも……なんて奴すらいる。これは冗談じゃないぞ? 実際にあった出来事だ。みんな、自分の命が惜しい。卑怯な手を使う奴だっているさ」

 

 コムギは無言のまま、ただ私の言葉を聞いていた。

 返答を待つ間に、私は彼女に渡すものを見繕う。プレゼントを渡すまでが、今日のタイムリミット。

 

「……お祝いの品は、これでいいかな? 前回の世界大会で優勝した時、副賞としてもらった盤だ。私はあと六つ同じ物を持っているから、使わない。お前が使え。自分で同じ物を手に入れるまでは」

 

 返答は、なかった。

 まだ考えているようだが、時間切れ。

 対局は、また今度。次の機会に。

 

 

 私は、テーブルの上にある呼び鈴を鳴らした。

 コムギの送迎だ。弟子でなくなった以上、私の家に置いておくわけにはいかない。

 とはいえ、彼女の生家に返す事も出来ない。ここ、首都ペイジンとコムギの家は、100km以上離れている。車も無しに、対局のたび往復できる距離ではない。劣悪な環境に身を置いては、いかに彼女といえど強くはなれない。彼女には、家と召使いが必要だ。車は無理だが、それぐらいであればすぐに用意できる。

 

「弟子でなくなった以上、試合でお前と当たることもあるだろう。当たるとしたら、最速で来年の名人戦……いや。年末の、代表選考会かな?」

「年末……」

「家族を養いたいのなら。家族と共に過ごす権利を得るためには、ここで優勝して世界大会に出るのが一番てっとり早い。お前にとって、喉から手が出るほど欲しい星のはずだ」

 

 戦いの舞台としては相応しい。

 そして、コムギには時間が必要だ。己の牙を磨くための時間が。

 でなければ、コムギの全身全霊を味わえない。

 私の体も、あと数ヶ月程度であればもつだろう。

 

 だから。

 

 その時こそ──

 

 

「全力で、戦おう」

 

 

 全力で、殺し合おう。

 

 

 

 

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