終わりのその先へ   作:泡 沫

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....。

....。

その場には沈黙が続いている。

私の中は?でいっぱいだ。

 

いや、普通この流れなら、次の会話はそっちだろ!?

と言うか会話の主導権あげてるんだから話し続けてよ。

と心の中で悪態をついてみる。

 

....。

駄目だ。間が続かない。

 

「あの....

 

 どうして、助けてくれたんですか?」

 

聞いてみる。

もう直接ど直球に聞いてみる。

私の記憶が正しければ、明神阿良也と言う人間は、芝居に生きてる人間だ。こんなめんどくさい事に関わる筈がない。

ましてや私たちは面識のない人間だ。

私は一方的に知ってはいるが。

だが、彼は違う。

だから余計に関わる筈がない。

 

「匂いが不思議だったから。」

 

私の質問に彼はこう返してきた。

 

ぁあ。成る程。

確か、こいつは変態だ。

原作でも匂い云々で夜凪ちゃんにストーカー行為する変態だった。

つまり、私の匂いが独特だから気になって助けたと。

つまり、私の匂いが普通なら見捨てたと。

言外にそう言っているな。こいつ。

まぁそういう人間だとは知っているが。

というか、そもそも匂いってなに!?

私は普通ですけども!?

....

 

「へぇ。そうなんだ。

 でも、ごめん。何いってるか分からない」

 

そう応えておく。

 

つい敬語を外してしまったが、別にいいだろう。

別に怒ってるわけではないよ?

匂い関係無しに助けろや!

とか思ってないよ?

それ故の敬語外しじゃないよ?

 

私の返事を聞いても彼の表情は変わらない。

何を考えているかも分からない。

きっと、勘違いだっと気付いたのだろう。

だって私は普通だから。

そして、無表情でその場から立ち去ろうとする。

 

その彼の背に、加えて、

 

「女の子に匂いがどうとか言っちゃ駄目だよ?」

 

一応戒めておく。

まぁ治らないだろうけど。

 

そう言葉を紡ぎながら、私の思考は過去に飛んでいた。

何故かは分からない。

ただの、匂い繋がりかもしれない。

懐かしい愛しい思い出。

そして、前の世界のあの子を思い出す。

「姉様の匂い大好きです。

優しいお日様の香りです。」

と抱きついてくる愛しい愛しい妹を。

 

その頭に手を当てながら、優しく髪を撫でた思い出。

 

命の軽さが今とは比べものにならない世界。

いつ、誰が命を落とすか分からない世界。

病気で、戦で、呪いで、暗殺で、怪我で、簡単に人が死ぬ世界。

私は妹にいつも精一杯の愛情を注いだ。

こんな世界だから。と。

 

そう少しばかり過去を思い出している私に対して彼は振り返り、

 

「いいね。俺は間違っていなかった。」

 

と返してきた。

 

思考が強制的に現実に引き戻される。

何言ってるんだろう。こいつは。

せっかくあの子を思い出していたのに。

私は本気で混乱した。

そして、少しムッとした。

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明神阿良也は珍しく戸惑っていた。

 

芝居の休憩に夜道を散歩していた。

夜空を見上げる事も今回の芝居では大切だ。

銀河を走る列車。

それはどういったものなのだろう。

考えてもわからない。

喉が渇いた。

コンビニに寄って、飲み物を買う。

その時に1人の女が複数の男に囲まれてる現場に出会った。

正直どうでもいい。

関係ない。

自分はそれどころではない。

そう思って無視しようとしたのに、その中心にいる女の匂いが不思議だった。今までに出会った事のない匂い。

 

気になった。

喰えるかもしれない。

あれを喰ったらどうなるか。

自分の芝居の糧になるかもしれない。

 

そう考えたら、声をかけていた。

 

「その手離しなよ」

 

喧嘩でも負けるつもりはない。

でも自分は役者だ。

こんなとこで暴力沙汰なんて許されない。

大事な舞台も近いのだ。

でも大丈夫。

この程度の奴ら、拳を使う必要もない。

 

「大丈夫?」

 

男達を蹴散らした後、そう声をかけてみる。

 

改めてはっきり見た女は、何というか普通。

匂いも普通。

自分の勘違いだったか?

 

そう逡巡してる自分に女は声をかけてくる。

 

「どうして助けてくれたんですか?」

 

自分でも分からない。

ただ匂いが気になったから。

それだけだ。

それ以上でもそれ以下でもない。

自分が喰えると思ったから。

自分の演技の糧になると思ったから。

 

「匂いが不思議だったから。」

 

正直にそう返した。

別に隠す必要もない。

 

白い目で見られる事も気にしない。

慣れている。 

それに、俺にとっては重要な事だ。

 

「ごめん、何言ってるか分からない」

 

女はそう、返してきた。

 

当たり前だろう。

いきなりこんな事言われてたら誰だって戸惑う。

いや、普通は気味悪がるだろう。

寧ろ、戸惑いながらも普通に返事をしただけこの女は肝が座っていると思う。その視線にも嫌悪感は見られない。

 

 

やはり自分の勘違いだったか....。

そう思い俺はその場から離れようとした。

稽古場に戻らないと。

 

しかし、背後から、

 

「女の子に匂いがどうとか言っちゃ駄目だよ?」

 

と声が降ってくる。

 

その言葉を聞いて俺は目を見開く。

 

....

 

なんだ?

今の慈愛に満ちた声は?

 

なんだ?

愛しい相手を戒める様な今の言葉は?

 

何故だ?

初対面の相手に何故その様な感情が出せる?

 

俺は今、何を相手にしている?

背後には何がいる?

 

まるで、万人に愛を注ぐ聖女の様な....。

 

いや、違う。

もっと深い。

もっと近い。

 

これはまるで、

最愛の妹を笑顔で叱る姉の様な....。

 

そんな親しみがある慈愛。

 

何故だ?何故だ?何故だ?

 

バッ!!!

俺は慌てて振り返る。

 

女と目が合う。

普通だ。

その女からの匂いは相変わらず普通。

ありきたりな有象無象の匂い。

だが間違っていなかった。

俺は確信していた。

 

「いいね。俺は間違っていなかった。」

 

その言葉を聞いて、混乱し、何故か少し怒っている様に見える女の顔を俺は眺め続けた。

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