その夢に彩りを   作:野兎改二

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続きです


序章3

 中学に入学してから二ヶ月ほど過ぎた。中学生活にも慣れてゆき、友好関係もまずまずと言ったところだろう、それなりに不満のない日常を送っていた。

 朝はいつも通り、ランニングを終えてから登校の準備をし、通学路へと向かった。

 

 いつもとなにも変わらない道筋を通り、大きな車道のある道に出たところで、この時間に会うには珍しい人物と会った。

 

「よっ 千尋」

 

 そいつは、制服である学ランを着崩し、ポケットに片方の手を突っ込み、もう片方の手を軽く上げこちらに歩いてきた。

 

「おい凪、そんなカッコで横に並ぶな、同類だと思われるだろ」

 

「そんなことよりも、今日は丸山さんはいないんだな」

 

 凪は辺りを見回すそぶりをしてそう呟く。

 

「いる訳ないだろ、なんでそんなこと聞くんだ」

 

 話によると、一部の男子から人気のあるらしい丸山さんがどこの骨ともわからん男と毎日一緒に登校してる、という噂が流れてるらしい。どこの骨て。

 

「それでなにか、その男が俺だって?他にもたくさん男はいるだろう」

 

「丸山さんは普段、男と喋ることはないらしいからな、そんな中彼女と縁がある悪友が身近にいると来たもんだ、そりゃ気になるのもおかしな話じゃないだろう?」

 

 いやはや、こいつはなにを言ってるんだ。確かに登校中に丸山さんと会うことはあるが、これと言って親しいわけでもないというのに。

 

「そもそも、いいんだよ俺はそういうの、今は部活が忙しいし」

 

「お前本当サッカー好きだな、だけどもっと別のことにも興味持ってた方がいいと思うぜ」

 

「余計お世話だ」

 

 そんなこんなしているうちに学校につき、下駄箱で上履きに履き替える。一年の教室は一階にあり、靴を履き替えてすぐのところに教室があるのでささっと自分のクラスの教室に入る。クラスの面々はいつも通り、気怠そうな奴や騒がしいもの、寝たふりをしてる人など様々だ。

 俺もそれらに倣い、自分の席に着いたのち本を読みふける。

意外かと思われがちだが、俺は小説を読むのが好きなのだ。昔は漫画ばかり読んでいたが今は自分の想像力によっていろんな見方ができる小説の方に面白みを感じ、よく本屋などに寄っていたりする。

 

 俺の得意教科の話はともかく、担任の教師が教室に入ってきた瞬間にざわついていた教室が一気に鎮まり、朝礼のため席を立つ、今日も一日が始まった。

 

 とは言え俺は授業中、寝てるか外を見て黄昏てるかなので特筆する点は特になく、ただただ時間が過ぎていくのを待つだけだった。  

 学校で授業を受けている間はとても長く感じ、退屈で仕方がない。

 

 ようやく6限もある授業から解放され、終礼が終わるや否や部室へ向かうために教室を出ようとしたところ…

 

「おい、文月」

 

 さっさと教室を出ようとしていたところを担任の教師に呼び止められてしまった。うちの担任はこの年寄りばかりの教師の中でも若い方で、かなりフレンドリーな先生だ。

 

「はい? なんでしょうか」

 

「お前、図書委員だったろ、さっき伝え忘れてたんだが図書室に集合だとよ」

 

 ああ、またか。

 

 さっきも言った通り俺は読書家な方なので図書委員だったりする。まあこの役割だからなにが優位かと言われてもこれと言って無いのだが。

 図書委員では本の整理をするために定期的に集まることがある、今回もそのための集まりだろう。

 

 図書室は校舎の二階にあるので、校舎端にある階段を使い駆け上がる。廊下を真っ直ぐに歩くと校舎の内側に図書室の引き扉があるので、できるだけ音を立てないようにそろりと扉を開ける。

 …まだ誰も来てないのか?

 図書室の奥の方を見ても誰も見当たらない。まだ早過ぎたのかと思っていると

 

「だーれだ」

 

 急に背後から目を塞がれたと思ったら、耳下にかすれた声が囁かれて少しむずっとした。

 

「その声は…丸山か」

 

「正解♪」

 

 比較的小さいであろう手から目を解放された俺は驚きからか少しのけぞりながらその少女の正面を捉える。

 

「なにやってんだよ、ていうか丸山も図書委員か?」

 

「も、ってことは千尋くんもなんだ、知らなかったよ」

 

 あんなことをしておいて飄々としている丸山。俺は気恥ずかしさからか流れてくる冷や汗を学ランの袖で拭う。全く、あざとい奴め。

 そんなことはともかく。確かに今までも何回かはこの委員会の集まりはあったが丸山を見かけたことはなかった。

 

「俺は本が好きだからな、ならこの役を選ぶのもおかしくはないだろう」

 

「へー、なんか意外だね、いつ何時もサッカーのことばっかりだと思ってた」

 

「まあ本を読むとは言っても暇つぶしといえばそうだし」

 

 まあ元々は授業中暇で初めた読書だ、あながち間違ってはない。

 

「私も本読むのは好きな方だよ?」

 

「とてもそうは見えないが」

 

「どうゆう意味だ!?」

 

 軽くからかってやると大きめなシャウトをかます丸山。図書室なんだから静かにな。

 

「こら、静かにしなさい」

 

 運悪く来てしまった図書室を管理している教師に見つかり注意を受けてしまう。

 

「うぅ〜、すみません…」

 

 見るからに凹んでいて反省しているご様子。

 

「ざまぁ」

 

 俺は更ににいじってやるとさ流石に怒ったのか、頬を赤くしむすっとする丸山。表情豊かだな。

 

「もうっ、千尋くんのいじわる」

 

 プンスカしている丸山を適当に流して、先生のもとへ指示を仰ぎに行く。

 

 俺は言われた通り返却された本を整理しながら、今日も部活遅れて行ったら面倒な先輩たちに嫌味なこと言われるんだろうなと思いにふけていた。

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 




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