妖怪の山は洋城の夢を見る   作:Humanity

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前回のあらすじ

かわわっぱがひらめいた



洋城の影

 

もう明日の早朝には天狗の遠征隊が出るらしいという頃。博麗神社の母屋には異変解決の協力者たちがその顔を合わせていた。

 

紅魔の主——レミリア・スカーレット——とその従者——十六夜 咲夜——をはじめとして河童勢からは代理人として姫海堂 はたてが立てられて、それに魔理沙や霊夢、紫の六人である。

なぜ河童の代理人に烏天狗である筈のはたてが立てられたのか疑問に思われるやもしれないが、それだけ「情報」の信頼性を高く持たれているのであろう。決して、「煩くて情報の信頼性もない記者天狗よりはマシ」という理由で選ばれたわけではない。

 

協力者といって幻想郷をあげての大加勢になるかと思いきや、この様であるからかの賢者への同情が多少は湧くものだ。件の賢者が、いつぞやの会合と同じく自ら先鋒を執る。

 

 

「で、集まってもらったわけだけれど…。」

 

「まぁ…少ないわね。あんた人望ないのね、分かってたけど。」

 

「そんな酷いこと…今回は相手が悪かったからでしょう、そうでしょう?ええそのはずよ。だって自分の居場所の危機なのにこんなにも少ないわけないのだから。」

 

 

紫の自問自答は静かな室内に虚しく響いて消えた。

痺れを切らせるようなかたちでレミリアが口を開く。

 

 

「私はそんなことを聞きに来たわけではないのだけど。はやく本題に入りなさい。」

 

 

室内の雰囲気に塞ぎ込んだ紫を放って、霊夢が答える。

 

 

「えぇ、そうね。…とは言ってもさっき言ったように協力者の数が少ないから確認することもそう多くはないわ。まずははたて、河童たちから預かった内容は?」

 

「そうですね…河童の皆さんはどうやら魔理沙さんの八卦炉を大型化したものを用意しているそうです。わたしも見ましたがまぁ、なかなか理解の及ぶものではありませんでした。」

 

 

なんとなくその絵面が脳裏に出来上がっていたらしいレミリアは呆れたようにしている。

 

 

「……パチェから教えてもらって分かってはいたけどホントぶっ飛んでるわね…。要は動かない()に対してマスタースパークを巨大化して撃とうとしてるってことでしょ?」

 

「そういうことですね。そのために森近さんなんかも招集して指導を受けながらやっているようですけど、ただちょっと問題がありまして…。」

 

「…その問題ってなに?」

 

 

言葉を詰まらせたはたては霊夢の問いかけに対して答える形でその問題の内容を明かす。

 

 

「それがですね…回せないんです。」

 

「「回せない?」」

 

「はい、回せないんです。技術的に回すこと自体は簡単なんですが、八卦炉の構造上の問題で想定よりかなり軽量に完成してしまったらしく、回転させると八卦炉が——というより砲口(?)のパラボラアンテナが——揺れてしまって早く狙いを定めることが困難なんだとか。」

 

 

レミリアはなんとなくその八卦炉の状態を伝え聞いて知っているために察したようであるが、霊夢はそうもいかず疑問を呈す。

 

 

「重くすればいいじゃないの…だってミニじゃない八卦炉を作るだけでしょ?」

 

「それが実はそうではなくてですね…八卦炉ってそもそもがその内部を通した魔力を八卦に変換するための装置でして、魔理沙さんのマスタースパークはその変換作業を行わない純粋な魔力の塊をぶつけるものなんです。」

 

「そうなの?」

 

「そうよ。」

 

「そうです。」

 

「…」

 

「で手っ取り早く大きなマスタースパークを作ろうとした結果どうなったかというと、真ん中の八卦炉の炉心と魔力の方向制御装置だけの太くて短い円柱が出来上がるんです。」

 

「でもそれをもっと大きく重くすれば済む話じゃない?」

 

「いえ、そうもいきません。」

 

 

一度言葉を切って茶を口に運んだはたては、喉を潤してから再び話に戻った。

 

 

「それに関連して、他の問題は二つあります。一つは製作と設置所要期間の上限が極端に短いこと。主にこれが原因ですが他にもありまして。」

 

「まぁそれはそうね。」

 

「もう一つは、()()()()()()魔力と()()()()魔力が分かれているために大きくしようとすればそれだけ必要な魔力が膨大になることです。魔道具なので稼働に電力を使っても何の意味もありませんからね。」

 

「あー…、魔理沙じゃ足りないわけ?」

 

「足りないですね。現状のサイズでも魔理沙さんや河童の皆さん曰く細くてか弱いスパークが出るくらいに止まるそうです。」

 

 

壮大な装置に向かって全力で魔力を吐き出した挙句髪の毛のようなスパークが放たれるという場面がこれを聞いた面々の頭をよぎった。なお魔理沙とはたては除くが。

 

 

「…ぷっ」

 

「おい、霊夢!いくらなんでも笑うことはないだろ?!なぁっ!レミリア耐えてるのバレてるからな?肩が笑ってるからな?紫はスキマに逃げるな。」

 

 

魔理沙が顔を若干赤くしながら反応をする。霊夢やレミリアのリアクションに対してはたてや咲夜に関しては苦い顔をしていた。

 

 

「それで話を続けますと…設計上というかマスタースパーク自体の構造上の問題で、方向制御された魔力は球体状の炉心から放射状に出て行くのでその放射幅をさらに抑制するために魔法陣の展開が必要でして。その分の高さもいるわけなんです。」

 

「…魔理沙…あんた…苦労してるわね、なんだかよく分からないけど見直したわ。」

 

「うるせぇな…っ。」

 

「更には細いビーム状に抑制しようとするとその分だけ魔法陣に魔力を取られてしまうのに、放射幅に余裕を持たせると今度はマスタースパーク自体の魔力の密度が低くなり威力が低下するんです。」

 

「……魔理沙……。」

 

「あー!あー!嫌だ聞かせたくないっ!早くその話を終わらせてくれよ、はたて。」

 

「は、はぁ…。その故はよくわかりませんが…まぁそういうわけで回せません。位置も角度も固定砲台になります。製作期間僅か数日の突貫工事で『問題はあるけどとりあえず使える』まで持っていった河童さん達様々ですね。」

 

 

「ただ河童たちが元にしたメーサー砲の足元にも及びませんね」というはたての言葉は「めーさーほー?」という新たな疑問を呼んだがこちらは紫によって遮られた。

 

 

「それで…河童たちはそれの撃つタイミングについてはなんて?」

 

「信号弾を撃ちあげてほしいんだそうです…」

 

 

はたては傍に置いた肩掛け鞄から小さな銃を取り出した。鈍い金色をしており、短い銃身と大きな口それに中折れする機構が特徴的である。

 

 

「これですね。こちらから撃ち出されるのは青で、砲台側で問題が生じて撃てなくなった場合には玄武の沢から赤いほうが撃ち上がります。」

 

「…なるほどね…河童はこんなのを前もって用意してたのねぇ。」

 

「作ったのは九十年くらい前だそうですけどね。」

 

 

一度その信号銃をもとの鞄へと仕舞ったはたては向き直って言った。

 

 

「さて実はもう一つ話し合うべき事柄が河童さんたち関連であるのですが、それよりも先にレミリアさんからのお話を優先しましょう。紅魔館の皆様に関係があるので。」

 

「あらそう。んーなんとなく分かった気がするけど…ならそうさせてもらうわね。」

 

 

次いではたての言葉通りにレミリアが口を開く。

 

 

「それで私達の動きだけど、異変解決の()()()()()()()()()私とパチェの二人だけよ。」

 

 

対して霊夢が聞く。

 

 

「…それだけ?」

 

「そうよ。」

 

「あの魔女が戦闘のために図書館から出張ってくるなんて意外すぎるけど、それ以上に戦闘向きなヤツ居なかったっけ?」

 

「そこは説明するわ、まぁ簡単な話よ。全員が出張ると居館に残るのは妖精メイドだけになるの。それだけは避けたいし、なにより我が紅魔館から件の洋城は見える位置にあるのよ?あの分厚い城塞が、その奥の教会まではっきりとね… 山の上だから高低差は凄いけど。」

 

「つまりこれで消去法的に門番とそこにいるメイドが削られるわけね。でもあんた妹が居るじゃない。そっちはどうするの?」

 

 

これに関しては戦ったこと(EXボス戦)のある魔理沙が苦言を漏らした。

 

 

()()フランが『ここに居ろ』なんて言われてもそんな素直に従うのか?難しいと思うが。」

 

「分かってるわ。だからこそ『()()()()()()()()()』と言ったのよ。ええっとはたてだったかしら?貴女が持ってきているもう一つの河童の案件はそれでしょう?」

 

「えぇその通りですよ。要はその膨大に必要となった魔力を流し込めて且つ、直接的には戦闘に参加しないでいることが()()()()()人物は…失礼ながらフランドール・スカーレットさんしかいないであろうという判断です。」

 

「…苦しいけれど、賢明にして順当な判断と言わざるを得ないわ。フランの『狂気』は鳴りを潜めたけど、能力に関してはまだ操りきれていないもの。破壊するのにかける力の適切な量とその力の方向、位置の精密さがね。ただ——」

 

 

レミリアは側に妹が居るかのようにふと視線を逸らし、しかしすぐに戻して自身の手を組み直して言った。

 

 

「確かに命の取り合いには、今回の洋城異変のような争いにはこの上なく向いた能力かもしれない。私の『運命』は戦いの中では特に不確定になるものだから。でもそれでも殺しに慣れて欲しいなんて望まないし、私達の望みはその能力をここで本来行えるはずのほんの小競り合いを楽しめるようになって欲しいだけ。だからって河童の方に行かせて、戦いから少しでも距離を取らせるのが正しいとは言えないのはわかってるの……。」

 

「…っお嬢様。」

 

「……ごめんなさい、取り乱したわね。」

 

 

唇を噛むようにして俯いたレミリアに代わって彼女の従者が言葉を繋いだ。

 

 

「ただし、いくら洋城からは距離があると言っても安全であるとは言い切れません。なので妹様には私がお側について行きます。河童へその旨の了承をお願いしていただけませんか?」

 

「大丈夫です。なにより河童さんたちの中ではどのように扱えば良いのか、護るならどうするのかと言った問題が話には上がっていましたからきっと喜んでお受けするかと思います。」

 

「そうでしたか、安心しました。」

 

 

ちなみに河童の間では砲台の魔法陣で携わったパチュリーもまた候補に上がっていたが、仔細をここでは省くものの件の砲台の一部構造を理由に「わたしの全力を流し込んでもこの砲台の最大火力は発揮できないわよ」と断ったという。

 

 

「で、本当は信号弾の時点で話すべきだったんですが…こちらが砲台の射線になります。」

 

 

再び鞄から今度は地図と図面の写しを取り出したはたてはそれを広げてみせた。紅魔館から洋城への直線上に玄武の沢近くの射撃地点が赤丸で記されており、城塞と教会をもろとも下から抉るように射角を決めたようである。

 

 

「ただ、城内の詳しい構造は唯一知っているはずのにとりさんが閉し続けているので不明なままです。一応教会を右後ろから撃つ角度みたいですから参考にしていただければと。」

 

「結局はフィーリングだぜ…。」

 

「詳しい資料がないので仕方ないですよ…。まぁ城壁に弾かれでもしない限り撃ち抜けますが出来る限り巻き込むのが良いかと思いまして。」

 

 

その後はフランドールや咲夜は早めに玄武の沢へ移動することや博麗神社方面と紅魔館方面での合流場所を定めた。洋城への侵入はスキマを使用したいとしているが、不慮の事故を想定して洋城周辺の切り通しとしたのであった。また信号弾は魔理沙が持つことなどが決まり、お開きとなった。

 

決戦は、明日始まる。

長い一日になるだろうと

口には出さずとも皆が考えた。

 




 
メーサー。そうあのメーサーです。
ちなみに私はモスラ戦のメーサーマーチが好きなのですが、あなたの好きなメーサーマーチ及びメーサー殺獣光線車はどれですか?

——前回分の評価者様——

Vezasu様、評価ありがとうございます。

■Humanityのかなしみ
そろそろ頭打ちですかね、まぁいいでしょう。

そんなことよりですね。
今年中にはデモンズリメイクをプレイ出来なさそうなんですよぉ……っ!!あぁやだぁ……楽しそうなフロムファンの諸兄姉を羨みながら書いています。(涙目)
もちろん原作はPS3でやりましたがあくまでも「初見」に拘りたいのでYouTubeも見ませんっ!
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