妖怪の山は洋城の夢を見る   作:Humanity

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前回のあらすじ

青い星、白い閃光。
希望の光かそれとも——


出来ることならばDarksouls3よりDarkeater midirのボス戦bgmも共にお楽しみくださいませ♪



黒い閃光

 

パシュウゥ——

 

妖怪の山の中腹。異変の元凶とされる洋城から空へ向かって、流れ星を思わせる一条の光と青い星が撃ちあがった。玄武の沢や紅魔館、人里や永遠亭からも確認されたその星についで、彼らは妖怪の山の下方すなわち玄武の沢方面から城塞を目掛けて疾る白い閃光を目にする。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

引き金に指を掛けて、星が上がるのを今か今かと待ち続けていたフランドールはまだ陽が出ているにも関わらず眩いばかりに爛々と輝く星を見てその双眼を輝かせる。

 

 

「上がったぞ!!」

 

 

誰とは知れないが河童の一人がすぐさま声を上げた。

それとほぼ同時にフランドールがそばに立っているツナギの河童へ聞く。

 

 

「やってよろしくて…っ!?」

 

 

話し方こそ気をつけているものの、口角が上がっており声も上がり調子だ。

 

 

「勿論です、撃ちましょうッ!」

 

 

ツナギの河童もまた彼女に影響されてか、もしくはその胸に秘めていながらこれまでお首にも出さなかった感情を露わにして早口で言った。

 

 

「いっけえぇぇぇぇっ!!!!」

 

 

フランドールがその手にあるトリガーを引いた。すると魔力を溜め込んで青白く発光していた円形の充填装置が発光を失い、その代わりに皿型アンテナ状の砲口に彫り込まれた魔法陣が起動し中心から花が開くように光が行き渡って全体が青白く発光する。そして次の瞬間、溜め込まれた膨大な魔力が一気に魔力炉を通過して耳鳴りに似た甲高い音を出しながら衝撃波と共に白い魔力の奔流を放出した。

 

余談を許して欲しい。

パチュリーがこの砲台の担当を辞退した要因とはこの砲口にあるのだ。魔導性の高い金属は錬金術を用いなければ精製出来ず、それらは魔力炉に大量に消費してしまったために砲口の魔法陣だけは鉄製の皿型アンテナに掘り込んだのである。結果として魔力の抵抗が大きくなり必要な魔力量が増大したのであった。魔法陣の起動が遅いのはこれに起因する。

 

斯くして放たれた巨大で且つ極めて強力な奔流は砲台の魔力炉が赤熱する程の負荷をかけつつも一直線に城塞へ向かい、その下の山肌ごと抉り取るようにして城壁へ激突する。

現代のトーチカに例えても過言ではないほどの分厚い城壁はしかし石をも溶かすほどの高熱を伴って奔る魔力の塊を前に()()し、直撃を受けなかった部分も衝撃のあまり爆発するようにして吹き飛んでいく。

 

 

「キタキタキタキタ!!!来たぞっ!パチュリー、結界を強めてくれっ!!」

 

「分かってるわ、じゃないと人すら塵になるわよ。」

 

 

パチュリーを中心に小さいながらも強力な結界を張り、彼女を囲うようにしてその小さな範囲に逃げ込んだ城塞内の五人。既に攻撃を始めていた洋城の騎士たちは結界に攻撃を阻まれながら、城壁を突き破った奔流の直撃を受けて声もなく光に消える。

 

 

「これで教会に——」

 

 

当たる、と魔理沙が口にしてまさに言葉の通りになるはずであったその時。

 

黒い影(イレギュラー)が飛来した。

 

直視すれば目を潰されかねないほどの光の中にあってさえクッキリと見えたその()は教会と奔流の間に割り込んだのである。

 

 

「——なぁっ!!?」

 

 

その()は石をも沸騰させるほどの奔流を物ともせずに大きな()を広げそれを盾にあろう事かその白い閃光を押し返す。この所業は尋常ではない。なにしろその光は紅魔館が妹の、出せる限りに限界まで放出し溜め込ませた全力である。それは幻想郷で最大級の力の塊なのだ。

 

しかしそれが妨げられ、押し返されているのだ。

 

長くは照射し続けられない魔力炉がついに溶け出してしまった。その時点で既に全魔力を放出し終えていたのであったが、皆の目はその力の塊を一身に受け止め切ってみせた()に釘付けとなる。

 

 

「…ハァ——」

 

 

溜め息を吐いてその()が降り立った。

 

ヒトガタをしているのだ、その闇は。両袖が裂け二対の翼膜があるように見える黒い上衣、黒紫色の鎖帷子と甲冑を着けて腰にひどく古びた太刀を佩いている。黒く長い髪を後ろで纏めているがそれは毛先がチリチリと燻っており、魔力の奔流の影響を少なくとも受けたらしかった。ばさりと翼のように上衣を払うと魔力の奔流に打たれて砕けたらしい黒紫色の結晶片がきらきらと光を反射させて幻想的に振り落とされる。

 

 

「……」

 

 

もの言わぬそれは紫色に淡く光る目を結界の中で立ち竦む五人に向け、すぐに興味を失ったようにして崩れ去った城壁の向こうを睨む。そうしてやっと五人は彼がヒトではないことを知ったのだ。

 

 

「——…鱗?」

 

 

後頭部から右頬までを覆うのは皮膚ではない。黒紫色の結晶と鱗である。それにいち早く気づいたのはレミリアであった。

 

しかしその呟きに彼は触れず、左手を鯉口へ右手を柄に添えるとその太刀を抜き放った。緩慢な動きではあるものの手出しは許さないという言外の圧力をひしひしと感じる五人は動けない。その手にある異様な太刀もまたその圧力に拍車を掛ける。

 

 

(あんな刀…知らないわ。けれどあれは…不味い——ッ!)

 

 

紫はその黒い刀身を見て刃先が首に当てられているという光景を幻視した。すぐさま現実と幻覚の境目(スキマ)を強めてその脳裏に焼きついた様から意識を切り離す事に成功するも、その禍々しい刀身から目が離せない。

 

刀身の反り、重々しい鍔の拵えをみればそれがかなり古いものであると理解できるだろう。外界における戦国の終わりを迎えた時期からはその装いはそれまでの質素なものとは打って変わって華美になったからである。また刀身の反りも平安末期から鎌倉室町、安土桃山、江戸と時代を追うごとに緩やかな直線状へと変遷したからだ。無論、戦闘における使用法や使用者の変化があったため打刀へと主流を変えたのであるがこれは割愛する。

しかし異質であるのはなによりもかの刀身。切っ先から半分のあたりまでならば流麗な黒い刀身であるが、それより(のち)から根本は綻びた糸のように又は老木の根のようになっており更には度重なり高熱に晒されたのか煤が付着しているのだ。鞘なくば脆くも砕け散ってしまうであろうが、鞘もまた一筋の深い罅割れが見て取れる。

 

上衣から落ちる結晶片に似た、こちらは黒く暗い火の粉が刀身の綻びた箇所から散る。

 

 

「……無礼な。」

 

 

ぼそりと呟かれたその言葉の意味を考えて理解するよりも先に、彼はその右手で抜刀した鋒をそのまま下に向け左手は柄頭に添えるなどかなり独特の構えをとった。それは不意打ちや読み合いによる戦闘を前提にしたものではない。下からの斬り上げにのみに特化した構えであると言えよう。

 

その鋭い視線の方には玄武の沢がある。

 

この事実だけでも彼の言葉の意味を察せるであろう。

 

 

「——!!、やめ…なさいッ!」

 

 

レミリアである。その手にグングニルを錬成して両の手で構え穂先をかの男に向けた。恐怖もしくは怒りから僅かに震えている。

 

しかし彼は止まらない。柄頭に添えた左手から突如として炎が溢れ出し、途轍もない勢いでそれを刀身に沿って地面へと吹き付ける——否、刀身を()()()()()のだ。当てられる業火に応じて綻びから出る暗い火の粉の量も倍に増していく。

 

 

「やめろ…ッ!やめろ!!やめろ!!!———やめて」

 

 

歯を食いしばり運命の槍を振りかぶったレミリアを魔理沙と霊夢が二人掛かりで押さえ込み、結界の中へと留めさせた。

 

 

「やめなさいッ!私は!」

 

「だめだレミリア!アイツに敵うわけがないぞ!ここに居るんだ!」

 

「あんたね、あっちにはメイドも置いたんでしょ?大丈夫よ、きっと。」

 

「違う!違う!違う!!!私はあの子を…——」

 

「レミィ、落ち着きなさい!」

 

 

暗い火の粉が勢いを増しついには爆炎となって吹き荒れる。洋城の空けられた穴や門からまるで火砕流のように流れ出し周囲の森や地形や生きる者全てを黒い炎に巻き込んで燃やしていく様は地獄ですらも可愛く見える事であろう。

 

 

「————ハァァァァァアッ!」

 

 

刹那、刀身の綻びが黒い閃光を発した。

正確には黒炎の縁取りがある白い光なのであるが、それは玄武の沢で煌めいていた白い閃光とは似つかぬものでむしろ対照的であったためにそう表現する。

 

そしていつのまにか振るわれていた斬り上げは、黒く暗く白い光線を伴った。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

やった

 

成功した

 

そんな単純な思考は突如として現れた闇に打ち消され、深淵のような絶望に塗りつぶされた。そこに居る誰もが正気を失っていた。これは夢に違いないと叫び訴えて目を逸らそうと試みたが不思議なことにその闇から、発せられる業火から、火山から流れる溶岩か何かの如く広がる黒炎から目を逸らせなかった。

 

ただ立ち尽くしたのだ。

あれは何か、我々は死ぬのかなどという思考は誰一人として持たなかったいや持ち得なかった。

 

ただ一人、にとりだけは()()()()

抜き放たれた力を、それを繰る闇の存在を。

 

解き放たれた光線が地を走り一直線に玄武の沢へと駈け下る。やけにゆっくりと見えたにとりはしかしピクリとも動けない身体が情けなかった。このままいけば自分にこの罰は下るのだと分かっていても足は全く動かないのだ。そうして呆然としていたにとりは強い衝撃と共に光線の射線から押し出された。

 

咲夜は思わず目を奪われたその非現実的な光景からあの光線が間近に迫った時になってようやく正気を取り戻した。彼女はすぐに側に立っていたフランドールの手を取ると懐中時計を左手に取り出し能力を起動させる。色味を失って止まった時間の中で色を失っていないフランドールの手を離さないようにしながら光線からできる限り離れ、そしてもう一度時計を操作した。

再び色味を取り戻したと同時に目の前を光線が横切り——ツナギの河童が、光線を追って地を裂く黒い爆発の中に消えるのを彼らは見たのだった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

紅魔館の門番はこの時珍しく目が覚めていた。留守にする館の安全を任されたのだからそれが当然やも知れないが、彼女の普段を知るものならば耳を疑うことだろう。しかしその門番——紅 美鈴——は自分のみを紅魔館に残すとした主人(レミリア)に対しその故は尋ねなかったものの、何かが起こるらしいと察したのである。そのために普段ならばあり得ないほどの張り詰めた緊張感をもって警戒を洋城に対して行なっていたのだった。

 

青い星と白い閃光はここからもよく見えていた。事前にあの白い閃光はフランドールが携わる物だと知っていた彼女はその光景に思わず感嘆を漏らす。

 

 

「おぉ、あれが妹様の…うぅん見事だなぁ。」

 

 

洋城に衝突し、地面を抉りながら城壁の石を破壊していく。重い破砕音が微かに聞こえるのに耳を澄ませていたが、美鈴は突然異質な気配を感じ取った。こればかりは流石と言える。

 

 

「狂気も感じ取れないし妹様にはいい経験になるだろうな———!!」

 

 

後に彼女が語るに曰く「それは幻想郷では感じることのない『気』だった」という。なぜならば——

 

 

「——これは……大量に人間を殺した匂い(強者)ですね…。」

 

 

その証拠に、彼女の目の前——とはいえ遠方であるが——ではフランドールのほぼ全力に等しいほどの魔力の奔流を受け止め押し返したのである。只者ではない、と彼女は判断した。

 

 

「あれだな——ぁッ!?」

 

 

城壁にぽっかりと空いた穴に降り立った「気」の主はこの距離では美鈴からは黒い点にしかなっていないのであるが。しかし彼女は確かに感じ取ったのであった。

 

 

(睨まれた………っ?それとも…いやどちらにせよ此処からでも感じ取れるほどの殺気だ…!)

 

 

感じ取った美鈴はやはりあの姿から目を離せなくなった。そうしているうちに得物を取ったのか圧力がより一層高まり、また洋城が炎に、黒炎に包まれてそれらが流れ出し妖怪の山自体を黒い炎で覆っていく。

 

 

「なん…ですか、あれは…っ!」

 

 

そして黒い点から、先の白い閃光とは似ていながら正反対な黒い閃光が瞬き——強い殺気を感じた美鈴は直感的に自らの「気」を集め、意識して一拍遅らせた上でそれを体の正面へと壁をイメージして掌を叩き出した。

 

 

「——〜〜〜〜ッ!!」

 

 

瞬く間に白い光と黒い爆炎に視界を潰された美鈴であったが「気」で作り出された壁はその禍々しい光線の当たる瞬間に作られたことで光線を弾いて(魔法パリィして)その射線を上方へ、それも館へは当たらない位置へとずらすことに成功したのであった。

 

 

「——………え?」

 

 

なお彼女自身は巻き込まれすらせず、背後の館にも傷一つなく、さらには天高くまで遠ざかった光線と目の前のそれが疾ったあとらしい爆発痕が洋城から玄武の沢さらに紅魔館へと緩やかなくの字に曲がっていることを確認して、出す言葉もなくただ

 

 

「——は?」

 

 

呆けたという。

 

彼女の目の前では返す刀で十字を描くように再度放たれた光線が、玄武の沢で交じっていた。

 

 





ダクソ3プレイヤーなら皆さん一度は見、また惚れたことでしょう。ミディールビーム、薪の王総辞職ビーム、ゴジラビーム。斯く言う私もその一人です。拙作をお読みの方々の一部にとっては待望の描写だったかもしれませんね。
(ていうか、全然進んでない…!)

——前回分の評価者様——

ヅウォーカァ様、Ace9677様、ハス(ろーたす)様、わけみたま様、カーニハル様、柿鰹様、寝てはいけない様、大鴉ノ巣様、地雷二等兵様、池ポチャ様評価ありがとうございます。

また赤頭巾様、誤字報告をくださってありがとうございます。とても助かります。
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