洋琴を奏でる少女の鬼   作:本好きの海

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今更鬼滅は出遅れ感あるけど、前からあった構想なので思い切って投稿してみました。評価、感想、お気に入りなどの数がふるえば続編も投稿しますね。原稿はストックあるので。


❄︎序章❄︎

しんしんと粉雪の振る季節。

 

清らかささえ感じさせる純白が街を覆い、日の沈みきった空を闇が覆う。漆黒に浮かんだたった一つのまあるい光は地上を包み、その静かな月明かりは凛と佇む少女を映し出していた。

 

降り積もったばかりの粉雪を櫛でそのまま梳いたかのようなその髪は雪の精霊か何かかと見紛うほど美しい。

透き通るような肌は静寂をまとう月光に照らされて今にも消えそうな少女の儚さを醸し出す。

柔らかく染まる紅色の瞳は純白の睫毛に縁取られ、切なげに伏せられていた。

 

まだあどけないと言える年齢だろうに、その幻想的で神秘的な姿はそれをまるで思わせない。見る者全てが少女の優雅な所作一つに魅せられた。

ゆっくりとゆっくりと流麗な足取りで少女が向かう先には白い雪に黒く映える大きな洋琴。

その小さな体が椅子に収まり、細い指先は鍵盤に触れんとする。

 

少女がそれを奏でたその瞬間から全ての観客がその壮麗な音色に引き込まれた。

 

***

 

鬼舞辻無惨は苛立っていた。

 

東京府近辺の地図を忌々しげに眺めながら鬼特有の長い爪をカツカツとならす。事の発端は東京府付近の雑魚鬼どもがある時期を境に激減したことだ。普通なら、別に減ったなら増やせばいいと思うが、増やしても何故かその地域だけ鬼たちが定着しないのだ。いつの間にかいなくなっている。

 

原因を調べようと何匹かの視界を覗いては見たものの、鬼殺の剣士はおろか、怪しいものは特に写っておらず、不可解な事件として片付ける他なかった。しかしそれにしても数が減りすぎだ。こうも被害状況が酷いと鬼殺隊以外の第三者の介入を疑う。千年以上生きてきてこんな事例はなかったし、まさか鬼にのみ感染するような病が横行しているわけでもあるまい。

ただただ原因がわからない。

 

特定の雑魚鬼の視界を集中的に監視する試みも行ってはみたのだが、更に謎が深まっただけだった。ほんの少し視界がぼやけたと思ったらいつの間にか雑魚鬼の呪いの気配が切れているのだ。呪いの気配が切れたとき、すなわちこちらが向こうを感知できなくなったとき。それは大体がその雑魚鬼が死んだことを示す。

そう、なんの前触れもなく視界がぼやけたと思ったらいつの間にか死んでいるのだ。これ以上に不気味なことはない。

視界がぼやける直前までその鬼は特に何もなくピンピンしていた。なんなら数時間前には元気にムシャムシャと人間を貪っていたくらいだ。藤の花に近づいたわけではないし、そもそも雑魚鬼とはいえ藤の花を近づけたくらいで死ぬほど鬼は柔ではない。

 

生き物として人間より遥かに優れているはずの鬼がこうもバタバタ死んでは落ち着いていられない。鬼舞辻は生来臆病な男であった。

 

彼は数人の末席の配下たちに付近の調査を命じ、犯人がいるようであれば首を持ってこいと言って血を与えた。

しかし折角己の血を与えてやったにもかかわらず、部下たちは一人として帰ってくることはなかった。彼は未来の世ではパワハラ上司と揶揄されるような人物である。物事がこうもうまくいかないことに腹を立て、配下の者にでも当たり散らすだろうことが容易に想像できるが、彼はそうしなかった。何故か。それは彼がこの現象の不可解さに恐れをなしたからであった。

 

彼は見てしまったのだ。その光景を。

 

それなりに実力のある配下を送り込み、四六時中監視していたというのに、ふとした瞬間に気付いてみれば通信が切れている。その鬼を別の鬼の視点で捉えれば、なんとその鬼の体に徐々に霜が張って行くのが見えるではないか。しかも霜が張っている速度はそう速いものでもないというのに、その鬼は終始無抵抗のまま霜に包まれていった。全身に霜が張り終えたかと思えば、氷の結晶と化したその肉体がパンッと弾けるように粉々に砕けて跡形もなく胡散した。降り積もった雪が春には消えて無くなるように。まるで元から存在していなかったかのように鬼の体は消え去った。

それを見た視点の鬼が目の前の惨状に恐怖を抱き、逃走するまでにそう時間はかからなかった。しかし、どういうわけか逃げ出そうとしていた鬼はだんだんと歩調を緩め、終いには立ち止まってしまったではないか。もうその時点で結末が予想できた鬼舞辻は見たくもないとばかりに通信を切った。

前の雑魚鬼の時もそうだった。一度危険を察知した鬼はその何かから逃げようとするのだが、最終的に自分から立ち止まってしまい、結果死ぬ。

なんだ、何が起きている。

訳がわからない。

 

もっと強い配下を調査に出すことも考えたが、無駄に藪を突いて貴重な戦力を失いたくはない。幸い、藪の中の蛇は藪から動く気配はなかった。

小心者な彼はこの地域の付近を危険区域として決して近づかないことに決めたのだった。

 




ピアノで血鬼術…ふわぁ綺麗(コナミ)


序章だから短いけどここで切ります。次回予告みたいなものかな。

感想いつでも待ってます。
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