洋琴を奏でる少女の鬼 作:本好きの海
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音階のシャープの話数分けが分かりにくいかなと思ったので思い切って変更しました。章分けにオクターブを使っています。
なんの因果か、『レ』の音を表す『RE』が『繰り返す』の意味も持っているんですよね。
やっぱり運命とは繰り返す物なのでしょう。
そうだ。
あの日もそうだった。
あたしが死んだ日、
人生の晴れ舞台となるはずだった日の前日。
友人の、あたしたちの家に火が放たれた。
豪邸と言えるほど大きな家だというのに火はあっという間に燃え広がり、あたしたちに迫った。
肺が弱く、体力もなかったあたしは燃え盛る火の海に取り残されてしまった。見えない目では逃げ道だって分かりはしない。心優しい友人はあたしを助けようと必死だった。
『お願い…!⬛︎⬛︎だけでも逃げて!!』
煙で咳き込みながら声を裏返して叫んだ。
『無理だよ!置いていけない!』
涙混じりの彼女の声はもはや悲鳴の様だった。
『このままじゃ二人とも死んじゃう…!だから…』
彼女があたしを助けようとするのは分かっていた。だからあたしは嘘をついた。
『だから、先に逃げて助けを呼んできて!
…必ず、必ず生きて待ってるから…!』
『ッでも!』
『早く!』
煙を吸い込んで朦朧とする中、力を振り絞って友人を突き飛ばした。その時だった。
尻餅をついた友人と、這い蹲ったあたしの間に大きな音と共に何かが落ちてきた。
『…シャンデリアが!』
幸い双方怪我はなかったが、もはや火の玉と化したそれによって両者の道は完全に分かたれてしまった。
気が動転してしまいそうなほどの衝撃が走った。だが意外にも決断は早かった。
『絶対に助けを呼んでくるからっ、だからそれまで死んじゃだめだよ!』
葛藤に震える友人の叫びを聞きながら、あたしは自分の中で何かが冷めていくのを感じた。
あたしを、本当に大事に思ってくれた、大切な人。あの優しい友人なら必ず助けを呼んでくれるだろう。
でも、それはきっと…
———間に合わない。
頭の中の冷静な部分は嫌でも理解していた。
嗚呼、なんてついていない人生なんだろう。
諦観と共に自嘲する。
憧れるあの人のような、素敵なピアノを弾きたい。あたしのピアノで多くの人の心を動かしたい———そんな夢を抱いて努力してきた。
明日は大事な舞台だった。
夢への第一歩となるはずだった。
悔しい。悔しい。悔しい悔しい悔しい!
もしも神や仏がいるのなら、なぜあたしがこんなにも不遇な目に遭ってしまうのだろう。
神はあたしに普通の人が享受できる幸せすら下さらなかったのに、そればかりか全てを奪おうというのか。
なんで、どうして。やめて。
どうしてあたしから奪うの?
私にはもうピアノしかないのに。
もっと世界を知りたかった。
もっとピアノが弾きたかった。
たった一つの夢を叶えたかった。
光を通さなくなったはずのあたしの目には、轟々と燃える炎が焼き付いていた。
***
カチリと、最後のピースが嵌る音がした。
全てを、思い出した。
ああ、そうか。これが『あたし』の死に様か。
なんの皮肉だ。酷いなんてものじゃない。
今まさに『私』も同じ結末を迎えようとしている。
あたしは、私はどこまでも太陽に、火に呪われていた。
まただ。また私は、夢の一つも叶えられないのか…?
なんの因果だったにせよ、折角二度目の生を与えられて、再びピアノに出会うことができた。友達だってできた。世界を知れた。
なのに、また、失うことになる。
「…いやだ」
肺を蹂躙する重く垂れ込むような煙にゲホゲホと咽せながら足を引き摺った。
感覚はすでに朧で、目の前は真っ暗だった。何も見えない暗闇で、それでも不思議とピアノが何処にあるのかはわかった。
私はそれに縋り付くように座り込み…
私のすべての思いを音にのせた。
イメージ参考: “IF”
『苦しい。苦しい。それでも生きたい。
———安らかに眠れなくていい』
上記の曲はとても美しい歌ですので良ければ検索してみてください。ボーカロイドだからといって馬鹿にできる物ではありません。
後々友人のルーツについても書きますので、それを読んだ後でもう一度この話を読み返してみてください。友人の気持ちになって考えると、違うものが見えてくるでしょう。
次回、無惨様登場!主人公の明日はどっちだ!?(唐突なシリアス脱却)