洋琴を奏でる少女の鬼 作:本好きの海
胡蝶姉妹たちとの関係をちょっとだけ挟みます。
蝶屋敷のでのほのぼの日常書いてみたかったんですが、物語の方が進まないということでカットです。必要なところは後々回想で入れます。
評価、感想の方よろしく頼むぜ!
マジでモチベーション命だから!
閑話 : Andante
幸せの道は、ずっとずっと遠くまで続いてるんだって思い込んでいた。
破壊されて初めてその幸福が薄い硝子の上に乗っていたものだと気づく。
そして自分たちが救われたようにまだ破壊されていない誰かの幸福を、強くなって守りたいと思った。
そう、約束した。
『鬼を倒そう。一体でも多く、二人で。』
『私たちと同じ思いを他の人にはさせない。』
***
「それでカナエもしのぶもそんなに修行頑張ってるんですね。」
「うん」
「でも無理はダメですよ!体壊したら元も子もないですから!」
「ウフフ、分かってるわよ。ありがとう。」
私が庭で剣の修行に勤しんでいると、縁側に座るおさげの少女が笑いながら言葉を交わす。
私と妹が両親を鬼に殺されてここに引き取られてから暫く経つ。
私の修行風景を眺める彼女は、今この屋敷を、診療所をまとめてくれている女の子だ。妹のしのぶと同い年で、なにかと私たち姉妹にも世話を焼いてくれる。
「マリアは診療の方は終わったの?」
「はい。今朝急に運ばれてきた剣士さんがなかなかの重傷だったんですけど、どうにか一命は取り止めましたから。」
「…早朝にバタバタしてたのはそういうことだったのね…。そっか!だから今そんなに眠そうなのね」
「なんとかなってホッとしましたからね。
あと、剣士さん達が仕事するのは夜が明けるまでですもん。早朝に運ばれてきてくれなければ手遅れでした。今はしのぶちゃんが診てくれてます。」
「…そう」
それを聞いて私は少し安心した。
妹のしのぶはまだまだ体の成長が追いついておらず、鬼を狩るための修行にはついて来れなかった。そのせいで荒んでいた時期もあって、とても心配だったのだ。
でも、しのぶも今できることを見つけつつあるらしい。
「しのぶは飲み込みが早いんですよ!薬の調合とか治療の手順とかすぐに覚えちゃうんです!人員足りないからすごく助かってて…」
「……」
こういうことを聞いていると、しのぶには他の道があるのではと思う。鬼狩りにはならず、医療を学ぶことで多くの人を救う道が。
そしてそれを願ってしまう私もいた。誰だって大切な人に死んでほしくなんかない。
鬼を狩る血生臭い道なんかより、しのぶには普通の女の子みたいに普通の人生を歩んで普通の幸せを手に入れて欲しいと思ってしまう。
「それでね、しのぶが言うんですよ。『私こっちの道の方が向いてるかも知れない』って」
「…!それって……」
もしかしたらそういう道を考えてくれたのかも知れない。
こんなことを知られたらしのぶには怒られちゃうかも知れないけど、それでもしのぶに鬼狩りを諦めてもらうことを期待してしまう。
「医療方面の技術を使えばもっと効率的に鬼を倒せる道が開けるかも知れないんだって!」
「……」
ねえしのぶ、姉さんやっぱりあなたが心配です。
***
私には姉が二人いる。
一人はカナエ姉さん。
大らかで優しい実の姉。
もう一人は血は繋がってないけど、とても大切な人。
私に医療を教えてくれた。戦う武器を、希望をくれた人。
彼女の溌剌な笑顔はいつも私の中の淀んだ気持ちを吹き飛ばしてくれる。
同い年だけど本当に姉のような人で、でも偶にちょっぴり子供っぽいところもあって、私はそんな彼女が大好きだった。
私が今こうして前を向いてられるのも全部二人の姉さんたちのおかげだ。
この診療所は私たちが引き取られてきたときは出来てから間もなくて、所々で整備をしていた。パタパタと忙しそうにする大人たちの真ん中で指揮を取っていた女の子を初めて見たときは本当に驚いた。だって私と同じくらいの子があれこれ大人たちに指示を出しているんだもの。
私たち姉妹が慣れない生活の中、いろいろ教えてくれたのは姉さんだ。姉さんは本当に物知りでなんでも知っていた。
ただ、鬼のことはあんまり知らなかったらしくて、隠になったばかりの男の子に根掘り葉掘り聞いてその子を困らせていた。生来好奇心の強い性格らしい。
隠や剣士になった人の多くは大切な人を鬼に殺されている。だからこういうのはあまりずけずけと聞いてはいけないんだよと教えるとションボリして池のほとりに蹲っていた。池から顔を出した鯉に驚いて池に落ちた。かわいい。
隠の男の子も悪気がないのは分かっていたのか、ずぶ濡れの姉さんを見て笑いながら気にしてないよと言っていた。
姉さんはいろんな人と仲が良くって、姉さんがそこにいるだけで周りの人はたちまち笑顔になる。
どんなに気分が落ち込んでも、姉さんと話すだけでとても気分が軽くなるのだ。
ここの人たちはみんな姉さんのことが好きだったし、とっても感謝していた。怪我で死んでしまう剣士が激減したのも姉さんのおかげだ。
だから、この診療所、私たち姉妹で『蝶屋敷』と決めたこの屋敷を姉さんが去ることになったのは本当に寂しかった。
『ここも軌道に乗ったのでそろそろ皆さんに任せようと思います。ここの皆はよくやってくれてますし、大丈夫ですよ。それにしのぶがいます! なーに、一生会えなくなるわけじゃないんですし、ちょくちょく顔も出しますよ。だから…』
いつもの明るい笑顔を浮かべて姉さんはそう言った。
でも寂しいものは寂しい。半年くらいの間だったけど、一緒に過ごして本当にたくさん思い出を作ったのだ。ずっと一緒にいた姉さんと明日からは暫く会えなくなると思うと…
『泣か…ない、で、ください』
(姉さんも泣いてるじゃないですか。お互い様です。)
結局私たちはその後もらい泣きしたカナエ姉さんと三人で散々泣いた。
『またすぐに手紙書くからねー!』
そう言って手を振りながら隠の少年に背負われていく姉さんを見えなくなるまで見送った。
それがつい昨日。
そして今日。
いつも元気よくおはようを言いに来てくれる姉さんはいないのかと少しセンチになっていると、蝶屋敷お付きの鴉が一通の手紙を持ってきた。
『カナエとしのぶへ
最近寒くなってきましたね
こういう時期はお祭りをして気分を盛り上げるに限ります
二人とも、前にお話ししたことある洋琴って覚えてますか
私がよく弾いていた提琴をでっかくして、鍵盤をつけた感じの楽器です
来月に千代田区のお店で洋琴の演奏をすることになったので是非見に来ませんか
お返事待ってます
追伸
手紙の郵便、鴉くんにお願いしていいって鬼殺隊の頭領の人から許可出たから、たくさんお手紙出せます
やったね!』
…なんだかお別れで落ち込んでた割には結構すぐに会えちゃうみたいです私たち。
主人公のセリフがフラグ立てまくりなんだよなあ…