新暦75年5月
機動六課隊舎 訓練シミュレーター
六課視察四日目
ティアナがセフィリアの訓練を受けると心に決めた日
その夜の訓練で早速セフィリアの特別訓練が始まった
セフィリア 「じゃ早速始めたいところだけど、まずは何をするのかを説明しない
とね。」
ティアナ 「宜しくお願いします。」
迷いは吹っ切れたのだろう、ティアナがはっきりと返事を返す
セフィリア 「いい返事だ、やる気は出たみたいだね。
まず初めに、今日からやる訓練が確実に君の身につくかは分から
ない。
素質はあると思うけど、無駄になる可能性もあるから、それは覚悟
しておいて欲しい・・・
ティアナちゃんなら習得できるという自信はあるけどね。」
ティアナ 「はい!」
受けるか受けないかは自分で決めたのだ、ティアナに後悔は無かった
習得出来なかったとしても、この経験が無駄になることは無いという自信もあった
セフィリア 「じゃまずは俺の能力の説明からするね。」
ティアナ 「能力?」
セフィリア 「能力というか技能かな。
あまり知られてはいないけど、俺が[SS]ランク魔導師なのは、
単に魔力保有量が人より多いというだけじゃない。」
ティアナ 「それはどんな技能でしょうか?」
セフィリア 「高町教導官は[魔力の収束]が得意だよね。
それと同じように、俺は[魔力の圧縮]を得意としているんだ。
通常の魔導師より圧縮率がはるかに高いんだ。」
説明がややこしくなるので、セフィリアの[圧縮]は、それを得意とする魔導師を
遥かに凌駕する[超圧縮]と呼べるもので、もはやレア技能と称しても、おかしくは
ないものであるということは伏せておく
ティアナ 「魔力の・・・圧縮率?」
圧縮自体は特に珍しい技能では無いし、自分も弾丸を形成する際に使用している
圧縮率が高いと言われても、正直ピンとこない
セフィリア 「そう、これはやってみた方が早いね。」
セフィリアは、昔自分のことを初めて話した時、クイントにやってもらったことと
同じ方法で説明する
セフィリア 「まずは、ティアナちゃんがいつもやっているのと同じように、
魔力弾を生成してみてくれる。
暴発しないギリギリまで小さく圧縮した形で。」
そう言われてティアナが魔力弾を生成すると、ソフトボール大の魔力弾がティアナの
前に出来る
セフィリア 「じゃ、俺が同じくらいの魔力量で魔力弾を作るね。」
セフィリアも同じように魔力弾を生成し、その大きさがビー玉ほど小さくになる
ティアナ 「うそ・・・」
セフィリア 「実はこれでも全力じゃない。」
ティアナ 「これでまだ全力じゃない・・・」
やはり目の前の人物は、普通の魔導師では無いんだと再認識させられる
スバル達と一緒にいる所を見てると、とてもそうは思えないが・・・
セフィリア 「そして昨日言ったよね、君は多重弾殻射撃を習得している。
君ならもう分かったんじゃない?」
ティアナ 「圧縮がもっと出来るようになれば、もっと強力な魔力弾が
撃てる・・・」
セフィリア 「簡単に言うとそうだね。
多重弾殻射撃は圧縮の技能に通じるものがある。
固めた魔力弾の上に、もう一層の魔力を覆うものだからね。
君は[B]ランクですでにその技能に達している、おそらく
魔力圧縮の素質がある。
圧縮がもっと強力なものになれば、それを応用した別の技も出来る
かもしれない。
しかも圧縮にはもっといい利点もある。なにか分かるかい?」
ティアナ 「・・・・・・・・・
魔力効率の上昇ですか?」
セフィリア 「そう、やっぱりティアナちゃんは頭も良いね。
今までより少ない魔力量で、高い威力の魔力弾を生成することも
出来る。
これは任務の成功率はもちろん、自身の生還率も上げることが
出来るということだ。」
ティアナ 「今までちゃんと考えたことも、きちんと説明されたこともなかった
ですけど、[収束]や[圧縮]って凄く有用なスキルですね・・・」
セフィリア 「そうだね、ただどちらにもデメリットもある。
[収束]は身体そのものに負担が大きい、多用すれば取り返しの
つかない事態を招く危険があるし、そもそもある程度戦闘が
長引いて、戦場に魔力が充満していないと、あまり意味をなさない。
[圧縮]もほんの少しでも力加減を間違えば、暴発して自滅する
可能性がある。
だから約束してほしい、ちゃんと自分の限界を見極めること・・・
君に何かあれば、教えた俺はもちろんなのはちゃんやスバルちゃん
も、それこそ皆が後悔することになる。
ティアナちゃんはもう分かってくれてるよね。」
ティアナ 「はい、絶対に!」
セフィリア 「よし、じゃ始めよう!
今日は最初だから[圧縮]の訓練から入ってコツを掴もう。
明日からは前半を戦闘訓練、後半を[圧縮]の訓練に当てるから
そのつもりで。」
ティアナ 「はい!」
こうしてセフィリアの[ティアナちゃんの為の魔力圧縮技能習得訓練]が開始された
・
・
・
ティアナの訓練が気になり、スバルは夜の訓練の10分間休憩を利用して見に来ていた
スバル 「あれ何やってんだろ?休憩中の遊びかな?」
スバルが見た光景は、セフィリアとティアナが一定距離を離れて座り、
二人の中間点には、オレンジと紫の魔力弾が押し合うように浮いていた
スバル 「ティア何やってるの?」
スバルは休憩中だと判断し、ティアナに話しかけてしまった
その瞬間ティアナの集中力が途切れ、オレンジの魔力弾が消滅し、
オレンジの魔力弾と押し合っていた紫の魔力弾が、ティアナに向かって一直線に
飛んでくる
ティアナ 「っ!」
スバル 「え!」
紫の魔力弾は、ティアナに当たる直前でセフィリアが展開した障壁に弾かれる
いつこのような状況になってもいいように、セフィリアが事前にシールドビットをティアナの近くに飛ばしていたのだ
スバル 「ごめんね、ティア。大丈夫?」
ティアナ 「だ・・・大丈夫よ・・・」
動いてもいなかったはずのティアナだが、息も絶え絶えになっている
セフィリア 「集中してたから時間を忘れてたね。ちょっと休憩しようか。」
ティアナ 「は・・・はい・・・」
こうしてティアナも10分の休憩に入った
スバル 「ティア・・・聞いていい?」
ティアナ 「なによ!?」
息も整い冷静になったティアナにスバルが聞いてみる
スバル 「さっき・・・結局何してたの。」
ティアナ 「訓練よ!」
スバル 「それは分かってるんだけど・・・」
ティアナ 「簡単に言うと魔力弾の押し合いよ。」
スバル 「押し合い?」
ティアナ 「これが上達すると、もっと簡単に強い魔力弾が出来たりするのよ。」
スバル 「へ~、すごいね。」
にわかには信じがたいという感じに返事をするスバルだが、無理もないとティアナは
思う
自分だって半信半疑なのだ、相手がセフィリアじゃ無ければおそらく信じようとも
しなかっただろう
ティアナ 「ま、セフィさん曰く、絶対にそうなる確証があるわけじゃ無いみたい
だけどね・・・」
スバル 「そっか・・・。だ・・大丈夫だよ!セフィ兄が言うんだから!」
ティアナ 「そうね、私も信じているわよ。」
なのはの教導を一時蹴ってまでこの特訓を受けたのだ、最後まで信じぬくと決めていた
もちろん成果がでなかったとしても、誰も恨みなどしないが・・・
セフィリア 「さ、そろそろ再開しようか。」
ティアナ 「はい!」
スバル 「私も戻るよ。ティア、がんばってね。」
ティアナ 「あんたもね!」
セフィリア 「頑張ってねスバルちゃん。」
こうしてスバルも戻り、訓練が再開された
・
・
・
この日の夜の訓練も終了の時間となった
セフィリア 「よし、今日はここまでにしよう。」
ティアナ 「は・・・、は・・い・・・」
ティアナ (この訓練はやばいわね・・・、もう集中力が・・・)
セフィリア達は訓練の終了を告げるため、一旦なのは達の所へ戻る
なのは 「みんな集合~!
セフィさん達も戻ってきたし、今日の訓練は終了ね。」
新人FW全員 「はい!」
なのは 「じゃ隊舎に戻ろうか。」
こうして全員で隊舎に戻る
セフィリア 「ティアナちゃん。」
ティアナ 「はい。」
セフィリア 「部屋に戻ったら、絶対にベットに横になっちゃダメだよ。
すぐ汗を流して、食堂に来ること。」
ティアナ 「えと・・・はい・・・」
ティアナ (どういうこと・・・、食堂でも何かするのかしら?
正直・・・もう限界なんだけど・・・)
セフィリア 「じゃあとでね。」
この時は全く意味が分からなかったティアナだが、シャワーで汗を流したあたりから
何となく理解した
以上に眠たいのだ・・・
魔力を使用する特訓で、精神力を酷使した結果であろうが、尋常じゃなく眠たい
セフィリアの忠告がなかったら、部屋に戻った際にちょっとだけと横になり、
気付いたら朝だったという可能性も、十分にあっただろう
セフィリア 「お、ちゃんと来たね。」
食堂に入ってきたティアナを見たセフィリアが言う
ティアナ 「はい・・・、なんとか・・・」
フェイト 「ティアナ体調が悪いみたいだね、シャマルに診てもらう?」
セフィリアと一緒に食事を取っていたフェイトが、ティアナの心配をする
セフィリア 「ベットで横になっちゃダメな意味、分かってきたみたいだね。」
ティアナ 「はい・・・、もう眠くて眠くて・・・」
セフィリア 「だろうね、ホントは寝かせてあげたいんだけど、
夕食も取らずに寝てしまうと、明日の訓練に差し支えるからね。」
ティアナ 「はい、分かってます・・・、なのでなんとか頑張ってます・・・」
フェイト 「セフィさんと個別訓練しているのは聞いていたけど、そんなに
きついの?」
ティアナ 「身体の方は全く・・・、ただ精神の方がちょっと・・・」
セフィリア 「フェイトちゃんには俺が説明しておくから、早く食べて寝ちゃいな。
明日起きれなくなっちゃうよ。」
ティアナ 「はい・・・、ありがとうございます。」
そういいつつもティアナの食事は、非常にゆっくりとしか進まない
正直食べるのも億劫なのだ
フェイト 「そんなに激しい訓練を?」
セフィリアはフェイトにティアナとの訓練の説明をする
フェイト 「へ~、そんなやり方があるんですね。
でもそのやり方ならセフィさんがいなくなっても、私達で代わりに
相手が出来そうですね。」
セフィリア 「それは止めた方がいいな。」
止められるとは思っていなかったフェイトは、セフィリアにその訳を聞いてみる
フェイト 「どうしてです?」
セフィリア 「思っているほど簡単じゃないんだ。
これは[圧縮]が得意だから出来る訓練なんだ。
フェイトちゃん達でも、自分の魔力弾で相手の魔力弾を相殺する
ことは出来るだろうけど、相手の魔力弾と同じ魔力量と同じ硬度、
同じ力でずっと押し合うことが出来ると思う?
ティアナちゃんは常に全力で押し返そうとしている。
でもそれは常に一定の力じゃない、瞬間瞬間で変わる、それを
見極め常に同じ力で押し返す。
これが結構難しいんだよ。」
フェイト 「そういわれると・・・、確かに・・・難しいですね。」
セフィリア 「でしょ?だから俺がいる間に少しでも教えてあげたくてね。」
話している間にも、ティアナに限界が近づいているようだった
セフィリア 「食べながら寝ちゃいそうだね。」
もうほとんど食べ終わっているようだが、口いっぱいに頬張っている食べ物が全く
減らず、ヒマワリの種を口いっぱいに含んでいるリスのようになっている
頭もかっくんかっくんしている
セフィリア 「部屋まで連れていってあげようかな。
フェイトちゃん一応一緒に来てくれる?
スバルちゃんはまだ起きていると思うけど場所分からないし、
女性の部屋だからさ。」
フェイト 「はい。」
そしてティアナを抱き抱え部屋まで運び、部屋の前でスバルに任せ、
セフィリアとフェイトは食堂に戻っていった
翌日当然のようにティアナはスバルにからかわれることになった
何せ食堂からティアナの部屋まで、お姫様抱っこで運ばれたのだから・・・
食堂に戻ったセフィリアとフェイトは、中断していた食事を続ける
フェイト 「久しぶりですね。二人きりで一緒に食事を食べるの。」
セフィリア 「そうだね、ここに来てからは常に誰かと一緒にいたからね。」
フェイト 「久しぶりで、なんだか嬉しいです。」
セフィリア 「俺も、やっぱりフェイトちゃんと一緒なのが一番落ち着くよ。」
フェイト 「そ・・・そうですか♪」
フェイトは久しぶりの二人きりの時間を堪能していた
フェイト 「どうですか?機動六課は?」
セフィリア 「いい部隊だと思うよ。
部隊内の確執も無くて、みんな仲が良いみたいだしね。
それに実動部隊もバックヤードスタッフも、優秀な人材が多い。」
フェイト 「はやてが選んだメンバーですからね。」
セフィリア 「ま、実動部隊は裏技な感じが否めないけど、それはみんなも
わかっていることだしね。」
フェイト 「そうですね・・・」
セフィリアもフェイトも、苦笑しながら話している
フェイト 「でも一年間だけですから・・・
特別ということで♪」
セフィリア 「そだね。六課の運用期間が終わったらまた遊びに行こうね。
だからそれまでは頑張って。」
フェイト 「本当ですか?」
セフィリア 「うん。
その時は頑張ったご褒美に、なんでも言うこと聞いてあげるよ。」
フェイト 「へ?」
フェイト (なんでも・・・)
なんでもという魅力的な言葉に、様々な思いが頭を駆け巡る
フェイト (頭を撫でてもらう?それとも一緒に寝てもらう?いやもういっそ
結婚!?)
セフィリア 「フェイトちゃん?」
フェイト 「は・・・はい!」
セフィリアによってなんとか正気を取り戻す
セフィリア 「大丈夫?なんか考え込んでたけど?」
フェイト 「あ・・・その・・・すみません。
つい何をお願いしようか考えてしまって。」
セフィリア 「ふふっ。気が早いな~。
時間はあるんだからゆっくり考えるといいよ。」
フェイト 「はい♪」
そしてフェイトはこの日以降、暇を見つけてはお願いを何にしようか考え妄想を巡らせ
てしまい、その度になのは達から[フェイトちゃんなんで変な顔してるの?]と
言われるようになるのだった
・
・
・
六課視察五日目
この日もティアナの夜の訓練は、戦闘訓練から始まった
セフィリア 「さぁ思いっきり攻撃してごらん。」
アマテラスをゲンブフォルムにしたセフィリアが、双剣を構える
チームでの連携やセンターガードとしての訓練は、早朝の訓練でなのはが教導している
なので執務官志望のティアナには今後のことも考え、セフィリアを仮想次元犯罪者
として見立て、一体一で敵と対峙した時の対処の仕方と、隙の突き方を教えることに
したのだった
ティアナには何をしても、どんな卑怯な方法でもいいから、一撃を入れることを
課している
ティアナ 「いきます!」
そしてセフィリアはティアナの全力の攻撃を、なんなく受けていくのであった
・
・
・
セフィリア 「ここまで!よし、10分の休憩の後昨日の続きだ。」
ティアナ 「は・・はい・・・」
息を切らせながらティアナが答える
ティアナ (一発も当たらなかった・・・
身体に当てるとかそういう問題じゃない・・・
障壁にすらかすりもしなかった・・・これが[SS]ランク・・・)
セフィリア 「また余計なこと考え込んでるね?」
セフィリアの言葉に、ティアナの身体がビクッとなる
セフィリア 「ティアナちゃんはまだ発展途上・・・
今から強くなるんだから!焦らない焦らない!」
もはやいつものことのように頭を撫でられる
この頃にはもうティアナは、嫌でも恥ずかしくも無くなっていた
ティアナ 「はい。」
セフィリア 「♪」
ティアナが抵抗しないのをいいことに、セフィリアは頭を撫で続ける
ティアナ 「あの・・・セフィさん?」
セフィリア 「ん?」
ティアナ 「そろそろ・・・」
セフィリア 「あ、ごめんごめん。じゃ始めようか。」
ティアナ (ホント普段と訓練の時じゃまるで別人ね・・・)
そして後半は昨日と同じように、魔力弾での押し合い訓練を行い、本日の訓練は終了
となった
・
・
・
訓練を終えたスバル達は夕食を取っていた
スバル 「ティア~、今日は寝ないの~。」
スバルは昨日のティアナの失態をからかう
ティアナ 「スバル!あんたねぇ~~!」
エリオ 「どうしたんですか?」
キャロ 「寝る?」
スバル 「ティアったら昨日ねぇ~・・・」
怒っているティアナを目の前にしても、スバルはからかうのを止めない
ティアナ 「スバル!」
スバル 「いたっ!ティア、いたっ!痛いよ、ティア~。
ごめん、ごめんってば~。
言わない、もう言わないから~。」
ティアナはスバルのお尻を力いっぱいつねっている
ティアナ 「まったく!」
セフィリア (今日は大丈夫みたいだな。
今日の訓練では、昨日より魔力弾の生成速度が少し早くなっていた。
自分ではまだ気づいていないだろうけど・・・
もともと素質があるんだ、コツを掴めば上達も早いだろうね。)
エリオ 「ティアナさん訓練の調子はどうなんですか?」
キャロ 「何か実感はありましたか。」
ティアナ 「昨日の今日じゃ、まだ実感なんてないわよ。
とにかく今はセフィさんを信じるだけよ。」
スバル 「そっか~、でもセフィさんならきっとティアを強くしてくれるよ。」
エリオ 「そうですよ。」
キャロ 「信じて頑張ってください。」
ティアナ 「あんた達に言われるまでもないわよ。」
ティアナはまだ気付いていないが、確実に訓練の成果は出ていると、セフィリアは
確信していたのであった
第三十三話でした
ティアナちゃんを強くしようの回でした
(書いていて思いました・・・、リスみたいなティアナ・・・
マジでみてみたかった・・・笑)
ではまた次回もよろしくお願いします