シンフォギア習作 振れば風の鳴る翼的な女の子   作:レノボのカナリア

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くっそどうでもいい独自の脳内設定を垂れ流すので、面倒な方はおもいっきりスクロールを下げて最後の方だけ読んでください。


有った話、会った話

 

 

天羽奏とはツヴァイウィングの片割れであり、ガングニールの装者だった女だ。

2041年に起きたライブ会場の惨劇において絶唱を使用した後死亡し塵と消えたのだが、ノイズ被害に遭った人間は行方不明として扱われることが多いゆえに彼女も行方不明として生存を信じる熱狂的なファンも未だに存在している。

 

 

生存説の根拠として挙げられるのは、翼が頻繁に奏に向けたような言葉をあちらこちらの物陰で呟いていること、ある時期から奏にそっくりな存在が翼やマリアの周辺に現れていること。

そしてミラアルクによる襲撃があった2045年開催の翼ソロライブでも、奏にそっくりな女がノイズと戦っていたという噂。

 

マリアとラーメン屋にいた!とか、海でマリアや翼と一緒にいた!とか、メイド喫茶にいた!とか、具体的な目撃例が多くあったこともその説を強くした。

 

 

 

アニメでシンフォギアを知っている雅実は奏が死んでいることも知っている。

翼がイマジナリー奏に対して語りかけていることも知っている。

45年のroof of heavenで戦ったのは翼とマリアの二人だけだと知っている。

ラーメン屋だとか海だとかは立花響をそう見間違えたのだろうとか、シンフォギアの世界はなぜか故人の姿が普通に見えてしまうときがあるからそれだろうとか思っている――サンジェルマンとか、キャロルパパとかセレナとか。

 

 

だから、奏が生きていると主張するのは片翼をもがれてなお必死に羽ばたく翼に対する侮辱だと、他の装者達への侮辱だと、雅実は生存説を本気で否定していた。

roof of heavenの噂が出た時には庭の岩を粉々にするくらいに怒りで荒れ狂ったほどだ。

 

アニメという原典知っているからこそ雅実はそれがたったひとつの真実だと思っていたし、それと同じ流れで事件が起きては解決されていくからこそ、否定出来ない運命のようなものだともイベントが終わった今でもそう考えている。

 

 

 

しかし、アニメを知っているとは、アニメしか知らないと言い替えることが出来ることを雅実は理解出来ない。

 

雅実の知識、というより雅実の前世にはシンフォギアのアニメは有ったがアプリはなかった。

XDUというそれ自体がパラレルワールドとも言える世界の存在を、そして自身が生まれ落ちたこの世界がそのXDUを元にした更なるパラレルワールドだとは、雅実の立場で知り得るはずがなかったのである。

 

 

 

 

オタクゆえに二次創作というものを知っているのだから、異なる世界の推測くらい出来たのでは?とは、一概に言えない。

 

 

何故なら、天羽奏が死んでいるという事実が雅実の思考を固定させていたからだ。

 

死ぬ前から、そして死んだ後でも熱烈なツヴァイウィングクラスタの雅実は天羽奏という存在を基点としてシンフォギア世界を見ている。

天羽奏が物語通りの時に、物語通りの場所で死んでしまったのだからこの世界はきちんとアニメのシンフォギアの世界だと、彼はそういうふうに理解してしまっていた。

 

 

 

この時点においては、それは別に間違った理解ではなかった。

 

だが皮肉というよりは因果なもので、彼が居たことによりこの世界はアニメの世界とほぼ同一の世界という存在から転げ落ちた。

 

彼という異物が居たからこそ、それに反応したこの世界のギャラルホルンは基底状態を抜け出し、既にフィーネに成り代わられていた櫻井了子に見つかっていたのである。

 

 

ギャラルホルンがあるとはいうことは平行世界へのアクセスが可能となったということで、この世界でも異なる響や異なる奏などとの邂逅が行われた。

平行世界を股にかけた世界蛇とその同胞たちとの戦いや、それ以外にも俗にいうコラボ世界での戦いなど、それこそXDUのイベントのままに世界は動いてきた。

 

 

AXZから派生しているXDUの世界のままだったら、アニメ通りにXVへと歩みは進まなかっただろう。

シェム・ハも今の世代では出てこずに済んだ可能性すらある。

 

しかしこの世界はXDUを踏襲しつつもXVへと流れてしまった。

 

 

誤解が無いように断っておくが、本編世界からXDU世界へと流れたことに雅実の存在が関わっていたとしても、それ以降の流れはすべて勝手に起きた事。

雅実の存在は関係ない。

 

 

 

XVに突入した時のシンフォギア側はデュオレリックを持った装者たち、平行世界から譲り受けたシェンショウジンのギアを正式に纏う未来、平行世界のフィーネやウェル博士といった知識人たちと知恵の交換を行っていたエルフナイン、平行世界から訪れることの出来る本来とは異なる装者たちであった。

 

そういったシンフォギア側とシェム・ハの戦いは、シェム・ハがアイギスとシェンショウジンのデュオレリックによってアニメより遥かに強化されていた未来を乗っ取られたこともあり、当然アニメ以上の激しさを見せる。

 

 

ヨルムンガンドを屠ったミョルニルギアの一撃すらも防ぎきったアイギスの守りを、11人の装者によるバーニングエクスドライブ状態でのS2CA攻撃と再誕したキャロルの錬金術で破壊し、シェンショウジンのみを纏うシェム・ハから神殺しを反転させたガングニールで響が未来を奪還するという奇跡にて激闘に幕が降りた。

 

 

シンフォギア側の強化が著しいこの世界にて戦闘が激しくなったのは、あくまでもこのシェム・ハとの決戦のみであり、そこに至るまでの戦いは逆に沈静化したりそもそも挑まれなかったりと差異が大きい。

これはroof of heaven以降、ノーブルレッド達では装者に力業でも搦め手でも勝てる要素がほぼ見えなかったが故に、ほとんど彼女らが逃げに徹していたからでもある。

 

 

 

上記したがroof of heavenとは、2045年に行われた風鳴翼のソロライブだ。

 

マリア・カデンツァヴナ・イヴがサプライズで登場して盛り上がったが、終盤でミラアルクの襲撃を受けて多数の死傷者行方不明者が出てしまったこのライブは、実は雅実の知るアニメほどの被害が出たわけではない。

アニメにおける被害者は7万人超、しかしこの世界における被害者は死傷者行方不明者含めて1万人未満。

 

翼とマリアが強化されたからという理由も勿論あるわけだが、それよりも大きかったのは現場に居合わせたシンフォギア装者が2人だけではなかったということ。

 

 

2人、本来とは違う存在がそこにいた。

 

 

自分の世界では亡き姉の、そして自分の世界では失われた片翼の晴れ姿を見たいがためにこちらの世界に訪れていたセレナ・カデンツァヴナ・イヴと天羽奏、2人の存在がライブにおける被害を大幅に減らしたのだ。

 

 

1万人近い被害は確かに大きな衝撃を人々に与えた。

 

ただ会場の施設規模や襲撃の範囲から見れば圧倒的に少ないのも事実で、世間で風鳴翼の復帰が心待ちにされているのはそういった面が理解されているからだろう。

現実世界で1万人近い被害者を出してしまったら、もうアーティスト生命は絶たれたにも等しいはずだ……しかも1度ではなく2度なのだから。

 

しかしノイズ被害が当たり前となっているこの世界ではそういう物だというやや斜め方向への前向きさが人々の中にはあって、前向きであるからこそ被害が出たことよりも被害を少なくできたことを評価される傾向にあった。

 

 

雅実はアニメでの被害数をそもそも多数としか知らなかったため、前世における常識的な感覚として1万人の犠牲を多数と感じていた。

そのため「戦ったのは装者2人だけだから、こんなにも被害が出た」という固定概念だけを持ってしまっていたのである。

 

 

アニメでの被害者数が7万超ということだけでも知っていたら違和感くらいは覚えたのだろうが、残念ながらそうはならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

さて長々書いておいてあれだがこれ以上は蛇足であるため、必要なことだけまとめると……

 

雅実は天羽奏が死んでいることを知っているが、平行世界の存在を知らず平行世界の奏がたびたびこちらの世界に遊びに来ていて目撃されていることを知らない。

シンフォギア世界だし故人が見えても仕方ない、などと考えている。

たくさん死傷者行方不明者が出てしまったから、風鳴翼の再起はとても勇気がいるだろう、と考えている。

 

 

これだけだ。

 

 

 

だから、シャワーを浴びた後で機密保持のためのサインを書きに移動した部屋に記憶の中よりも成長している天羽奏が居て、その天羽奏が何やら謝りながら響とクリスに抱きついており、天羽奏の存在が見えていないかのように二人が振る舞っているのを見て

 

 

 

「奏ちゃんの!! 幽霊が!! いる!!!……………………ふぅ」

 

幽霊という殴ったり蹴ったりできない存在が死ぬほど怖くて怖くてたまらない雅実は、例えそれが生涯激推しのアーティストであったとしてもどうしようもなく怖く、幽霊なのだと理解した瞬間にはそう叫んで気絶した。

 

 

 

「「「「「「………」」」」」」

 

「え? これ、誰? 幽霊ってあたしが?」

 

SONGの一同が呆然とするなかで奏の困惑した声だけが潜水艦に虚しく響いた。

 

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