シンフォギア習作 振れば風の鳴る翼的な女の子 作:レノボのカナリア
シェム・ハがらみのアレやコレが終わって一年ほどの時が経った。
この一年の間にも色々な事があったが、それでも無事新年を迎えることが出来たと装者一同胸を撫で下ろした三が日。
働いてるのにお年玉がどうとか、響が一升餅を一人で食べきって体重がどうとか、新年祝いの流しそうめんがどうとか、関係各所への挨拶周りがどうとか数日間の騒がしい日々が終わり、正月ボケが残りつつも平日の感覚が取り戻されはじめた頃、SONGの司令である風鳴弦十郎がマリアと調を風鳴の本邸に呼び出した。
事前連絡もなしに突然呼ばれたが、本部に呼び出しというわけでもなかったこともあって少し気の抜けたまま訪れた二人だったのだが、敷地に入った瞬間に風鳴邸内の空気が慌ただしい事を感じとる。
顔を見合わせたマリアたちが案内されるがままに奥へ進むと、緒川慎次がなにやら声をかけて翼の部屋へ入る姿を目撃した。
男が仰々しい桐箱を二つ抱えていたのを見て翼が着物の着付けをしているのかもと調だけが思った。
「突然の呼び出しに本当、良く来てくれた。予定もあっただろうに」
普段のラフな姿からは想像できないほどの和装を身に付けた風鳴弦十郎が、廊下で二人を出迎えた。
紋付き羽織袴だと、やはり調だけが分かる。
「特に用事がなかったから、構わないわ」
「わたしも、今日は暇をしているつもりだったので」
「そう言って貰えると助かる」
ため息を吐きながら助かる助かると何度か繰り返す弦十郎。
「それで、一体どうしたと言うの?」
「話は茶でも呑みながら、な………」
「「??」」
日頃の快活さには程遠い彼の様子に戸惑いながら、二人は誘われるまま座敷に入っていった。
風鳴翼が見合いをする、それ自体には驚きよりも僅かながらに理解があった。
そうは見えないが、一応良家のお嬢様なわけであるから。
だが……
「それが来月って………えぇ?」
「そ、そんな顔をしないでくれ調くん。俺とて昨日知ったんだ」
「もっとダメじゃない……!?」
「これは親父が以前から進めていた話だそうで、場所と日時は去年の段階から決まっていたのだと」
「去年、色々ありましたもんね」
「親父は牢にいるし、そもそも風鳴機関が吹き飛んだこともあって混乱もしていたしで………」
「情報が来ていなかったと」
「うむ」
なんたることか!と憤慨するマリアに面目なさげに弦十郎が頭を下げた。
もちろん弦十郎にも言い分はある。
家長とも言える兄の八紘が死に強権を振るっていた風鳴訃堂が居なくなっただけでもアレなのに、シェム・ハの混乱の後始末や、父が居なくなったのをコレ幸いと家から離れはじめた兄弟親戚連中の説得やまとめ役………と、正直オーバーワークにも程があるし、なにより弦十郎は緒川忍群とのパイプをある程度しか持っていないのだ。
情報などほとんど慎次頼みである。
緒川の当主は変わらず風鳴に仕えると慎次から伝えられており、それだけが救いなのだが………
「まぁ良いわ。でもどうして昨日になって?」
「去年まで家の管理をしていた男がな、見合い予定の店からそろそろ打ち合わせをしないかと連絡を受けたらしく、こちらに伝えて来たんだ」
「去年まで?」
「親父に仕えていたが歳も歳だったからな、丁度いいと引退してしまった。引き継ぎが終わるまでは助けて欲しかったがな……まぁそういうわけで昨日わかったのさ」
「そうなんですね」
「そこの辺りはいいとして……結局私たちはなんのために呼ばれたのかしら?」
「見合いでは質問をしたりされたりするものなんだが、それの練習相手になって欲しい。無論、翼のな」
マリアと調がピシリという擬音と共に固まる。
はっきり言って嫁入り前というか付き合った経験も無い二人に頼む事ではないが、弦十郎は真面目に言っていた。
翼と歳の近い知人友人でこんな事を頼めそうな人間はこの二人しかいない。
これが弦十郎と慎次共通の認識だった。
その後数分の言い合いの結果として、マリアたちが押しきられて翼の相手をすることに決定。
この日からしばらくの間、二人と翼の疲労した様子があちらこちらで見られるようになった。
こんな感じの練習風景
「休日は何をして過ごしていますか?」
「主に鍛練だな。常在戦場の心得を忘れずに」
「翼、言葉遣い!」
「えっと、どちらにお住まいですか?」
「◯◯区の◯◯番地です」
「そこまでの個人情報は求めていない!」
「その、今までお付き合いした男性はいますか?」
「防人として戦い続け」
「防人いらない!アーティストだからとか、適当な理由をつけなさい!」