シンフォギア習作 振れば風の鳴る翼的な女の子   作:レノボのカナリア

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繋ぎの回の文章を寝惚けて消し飛ばしてしまったため、無理やりまとめたので荒いのは勘弁勘弁。




太陽が見てるおデートの話

ここ1年の暁切歌は良い子であったと切歌は思う。

 

調のおさんどんを手伝う回数も増えたし、クリスの言い付けもしっかり守っているし、今まで甘えすぎていたマリアに甘える回数を減らして、響と未来に甘えるようにしていたし、翼の訓練やお出掛けに付き合っていたし、セレナ世界にこっそり行ってはナスターシャの肩も叩いたし!

他にも沢山良いことをしたと自負している……だからクリスマスにはサンタも来た。

 

勉強だって頑張っている。

訓練や出撃の影響で成績こそ悪いが、響よりマシと未来からの御墨付きをもらっていたから、やはり自分は頑張っている。

 

 

だから今、自分が置かれている状況はあまりにもあんまりだと切歌は思うのだ。

 

 

 

 

今は2月の第4週の土曜で、一昨日までは

 

「ほえー、翼さんのデートは土曜日デスか。まだまだ寒いデスけど上手く行くと良いデスねー!」

 

などと呑気にお茶を啜っていたはずなのに

 

「突然の仕事で英国に飛ばねばならないの!切歌、少しで良いの!翼の監視をお願い!SONGのお仕事だと思って本当に、お願いね!!」

 

などと大仕事を押し付けられてしまった。

 

 

 

2人はカジュアルな服装で街中デートを楽しむ手筈になっているから後ろからついて行き、こっそりと監視してくれれば良いと。

何も大変な事はないはずだから、ちょっと見て、切歌の目線からおかしなことにならなそうだったらすぐに帰って良いからと。

 

真剣なマリアにそんなことを言われたら、断れるはずがない。

決して4人の諭吉をポケットに捩じ込まれたから買収されたとかではなく、マリアの顔を立てたからであって、これは断れるはずがないのだ。

 

 

 

断れば良かったと最初に思ったのは当日、当事者2人が待ち合わせ場所に揃った時である。

 

 

カジュアルなスーツと薄手のコートに身を包んだ雅実が現れた時は良かった。

おお!ザ・大人の男デスよ!とかなんとか植木鉢の裏からキラキラとした視線を飛ばして見ていれば良かったのだ。

 

冬の終わり際の街デート服としてお手本とも言える雅実の服装は、切歌の採点では十分に及第点。

今この場でインフォーマルが必要な場面に出くわしてもそのまま参加できる、そんな感じ。

 

翼さんのお相手としてはまぁまぁデスね!と。

 

 

問題は時間ギリギリに現れたもう片方の当事者にあった。

 

翼の服装はカジュアルというより、ラフな格好だった。

遊びに行くのなら極々普通、付き合っている男女がデートするという時の服装としてはまぁ気取らないデートなら有りかなと言った物。

 

ただ着飾っている雅実と並ぶと明らかに見劣りするし、切歌にはその服が普段装者たちで出歩く時の服と大差が無いように思える。

なによりバッグすら持ってないのは大幅な減点対象だと、切歌は額を押さえた。

 

それはマストなおしゃれアイテムじゃないんデスか?デートなのにお化粧直しとかしないんデスか?

リップとかどこに持って…………もしやポケット?

 

並ぶ2人の服装がちぐはぐ過ぎて、周りの人の記憶に残ってしまいそうデスと切歌は思う。

雅実の巨体はただでさえ大いに衆目を集めるものなのだが、そんな巨漢の隣に居るのが不釣り合いなほどにラフな服装の女であるとなお目立つ。

 

 

マリアが2人の間に立っていたんじゃなかったんデスか!?

しっかりとデートの打ち合わせをしてたから、楽しむ手筈とやらになってるって言ったんじゃないんデスか!?

 

そんな文句を頭のなかで垂れ流しても切歌が逃げ出さなかったのは、当事者の2人がそんなことをまるで気にもせずに照れ照れしながら会話をしているようだったからだ。

内容は聞こえなかったが多分、待った?今来たところ!などと言っているのだろう。

 

ありがちデスねーと弛く見守っていると、翼が若干前に出るように2人が歩き出した。

慌ててストーキングを開始した切歌であるが、この時に帰っておけばと後悔することになるのは冒頭の通り。

 

 

 

断れば良かったと次に思ったのは、翼のエスコートで辿り着いた場所を見た時である。

 

 

地域密着型のショッピングモール……ジャ◯コとか、ダイエ◯とかそんな感じの、デートの経験が無い切歌でも論外と分かるような場所。

しかも目的はプリクラやクレーンゲームがメインのゲームセンター。

 

響の様なデートスポットのチョイスだと切歌は思うが、ドンピシャに翼は響を師としてここを選んでいる……どうせ真似するなら未来にでも習えば良いはずだが、響への信頼が斜め上に働いているようだ。

 

 

センター内を歩きながら翼がなにやら一生懸命にあーでもないこーでもないと語りかけて、色濃い苦笑いを浮かべた雅実がそれに頷く。

 

会話自体は普通に出来ている2人に切歌はそろそろ帰って良いかなと、逃げる方向へと思考を動かしていた。

これ以上おかしなことになんてならないだろうし、マリアへの言い訳も十分に立つと思ったからではあるのだが、人の良さが悪さをしてその決断が出来ないままにズルズルと後ろを歩き続ける羽目になる。

 

 

 

 

さて、とあるクレーンゲームの筐体前で立ち止まった翼がなにやら中のプライズを指さして何かを言っている。

意を得たりというふうに財布を出した雅実が挑戦しようしたのを見て、1人盛り上がる切歌のテンション。

 

 

取って欲しいとねだる年下彼女に、仕方ないなと取ってあげる年上彼氏……クリス先輩が持ってた少女漫画の世界デース!

ありがちで最強なデートシーン、翼さんもちゃんと考えてデートをしているのデスね!

 

などとトリップしてる間に、眼前の翼は雅実を押し留めて自分の携帯を筐体に翳してプレイを始めてしまった。

雅実と切歌が頭に?を浮かべる間もなく当の本人が数回のプレイでプライズを獲得。

 

誇らしげな顔を見せた翼に雅実は拍手をしているが、切歌としてはその謎の行動に首を傾げるしかない。

一体何をしているんだろうかという疑問は、獲得口から現れた大きめのプライズによってさらに増大する。

 

 

肉ドラゴンシリーズ第2弾、シャトーファフニール。

 

身体が美味しそうな肉の形をしたドラゴンのぬいぐるみである。

ドラゴンなのに牛のヒレの名前が付いているのかは謎であるが、何故か若者の間で流行りに流行っている物。

 

このファフニールはYouTu◯eで配信されている5分アニメの敵役で、毎度毎度主人公にムシャムシャと食べられては骨になって口から吐き出される役回り。

骨になっても普通に喋る姿がシュールで可愛いと評判なのだが、それを知らないこの場の3人にはただの半分骨のドラゴンだ。

 

 

全長およそ30センチのそのぬいぐるみは、見ればたしかに可愛らしいものではある。

若者に人気というのもわかる。

 

ただ、デート開始間もなくに取るような物ではなかった。

 

ファフニールは現在それを手渡された雅実が片手に抱えているのだが、スーツ姿の彼が肉のドラゴンを持つ様は異様の一言としか言いようがない。

翼は気にならないようだが、雅実はその不格好さに気づいており苦笑いの度合いが増している。

 

 

帰って良いデスかね?から、此処で帰っちゃったら不味くないデスかね?に切歌の思考が変わった。

詳しくは知らないがお見合い当日にも翼他一同が雅実に迷惑を掛けていると切歌は聞き及んでいる、なのにその埋め合わせ――埋め合わせにデートとは聞いたことがないが――でさらに迷惑を掛けるのはどうなのか。

 

翼がわざとやっているのなら、あえて何も言うまい。

ただ、いつも通りのすっとこどっこいでこれをやっているのであれば、常識人の切歌としてはなんとかしてあげねば!と思うのである。

翼は響に影響されてこんなコース取りをしているのだろうから、どうにかしてコースの軌道を修正してしまおうと切歌は動き出す。

 

 

 

 

まずはメールを打った。

 

「拝啓、翼さんへ。なんというか、こういうのはアタシも不慣れでして伝わるかどうかなのデスが、あなたの今のデートコースはお相手さまの服装とはミスマッチだと思うのデス」

 

送信して先を行く翼を見るが、一切反応していない。

マナーモードか、はたまた気づかないのか、どちらにせよ翼は雅実に従えてショッピングモールを練り歩いている。

 

 

電話ならどうかと、掛けてみた。

 

7、8とコールが鳴るが翼の動きに変化はない。

2人で極めてポップなファンシーショップに立ち入っていて、わけのわからない色付けされた箱をまじまじと眺めていた。

 

 

致し方ない、電話に出るよう伝えて貰おうと本部に連絡をした。

 

「雅実君とのデートに集中するよう、今日は任務用の端末を持たせていないのだ」

 

「お、およよ……」

 

「その、なんだ、すまない……」

 

気遣いがダメな方に作用してしまったようである。

 

 

 

いよいよどうしたものかと悩む先で、何を購入したのか小さな紙袋を手にショップから2人が出てきた。

バッグも無いのになぜ荷物を増やすのかと突っ込みを入れたい気持ちが頭に沸き上がる。

 

クリス先輩はいつもこんな感じにアタシたちへツッコミをしているんデスかね。

でも、アタシはここまでおかしなことはしていないのデスが。

 

 

そのクリスならこういう時なんと言うか。

切歌は脳内クリスと対話することによって解決を見いだすことにした。

 

 

「矢文でもやるか?」

 

「矢なんて持ってないデス」

 

「諦めようぜ」

 

「ポッケの諭吉がアタシを縛るデスよ」

 

「これも、すっとぼけたあの先輩らしいじゃねぇか」

 

「翼さんらしいで済んだら警察はいらないのデス!」

 

 

脳内クリスでは現状を突破することは叶わないのか……諦めかけたその時、脳内クリスが呟いた。

 

 

「もういっそのこと、偶然のふりして乗り込んじゃえよ」

 

 

その言葉はまさしく天啓であった。

外堀が埋められないなら内堀を埋めれば良いじゃない、そんな感じのアントワネット。

 

 

 

「なんて大胆な……さすがはクリス先輩、名案デース!天才デース!」

 

「いやいや、そんなそんな……当たり前のことを言うんじゃねぇよ」

 

「よーっし、そういうことならタイミングを計って突入するデスよ……およ?」

 

脳内クリスとの対話を終えてデート中の2人に目を向けると、いつの間にか持っている紙袋が2つに増えていた。

それだけならば良いが、翼の変装用メガネも最初と変わっているではないか!

 

マリアが好むような人を選ぶハイセンスなサングラスで、翼にははっきりいって似合わない、正直ギャグで掛けているのかと疑うレベルだ。

堂々と装着しているから多分真面目に掛けているであろうことが、なんとも言いがたい思いを切歌に抱かせる。

 

 

これ以上時間を置くとド壺にハマること請け合いだ。

 

 

これは、タイミングを計るとか言ってる場合じゃないデスよね……もう、行くしかないデス。

 

 

 

切歌は覚悟を決めた。

 

そして勇気を握り締め、2人の前に躍り出て……

 

 

 

「オヨ!イヤァキグウデスネ、ツバササン!オヒトリデオデカケデスカー?」

 

カデンツァ的学芸会を始めた。

 

 

 

おでかけですか?に雅実がレレレのおじさんを連想したのは内緒の話。

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