シンフォギア習作 振れば風の鳴る翼的な女の子   作:レノボのカナリア

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肺炎で仕事をサボってました(ブラック感)


どんな服でも推しが着てれば良いのか?良いのか?って話

子供連れの家族が多く訪れる大衆的なショッピングモールには不釣り合いな、華麗な内装かつ質の良い布地を使う婦人服のショップに俺は居た。

 

モールの1階、天井までの高い空間を突き抜けたエントランスホールに接しているこのショップは売り場面積の広さに比例して売り物の種類も豊富であり、彼女や妻子に付き合わされる男は何時間でも待ち惚けを食らわされることだろう。

そんな男の大多数と同じで、俺はこういう時間が好きではない。

 

婦人服売り場というのが男にはなんと無く居心地が悪いものなのは、おそらく男性諸氏には解って貰えると思う。

ブラだのランジェリーだのそういう物がある売り場だと特にそうで、デパートなどでそこの横を通るだけで緊張するこの気持ち、それも解るだろうと思う。

 

 

 

だからヒソヒソと小さく、聞き取れるかどうかの声量で、女性店員が訝しみながら俺の事を見てなにやら囁きあっているこの状況が、どれだけ俺の心にダメージを与えているのか、それも、それも、きっと理解して貰えるだろうと思うのである。

 

というか理解して貰えないと辛い、本当に。

 

 

 

 

 

 

 

 

あの翼ちゃんと街中カジュアルデートをするからにはと考えて着てきた服は、自分で言うのもアレだがまぁ悪くはなかったと自賛できた。

 

基本服に拘りなどない俺は、馴染みの仕立て屋に駆け込み事情を説明して協力を依頼。

身の丈以上のお洒落はする必要がないのだと言われたから無難にスーツとコートという物に落ち着く。

 

 

無理を押して超特急で仕立てて貰ったスーツはとても素晴らしい出来なんだが、当日、待ち合わせの場に着いてからはもっと気の利いたコーディネートをすべきだったんじゃないかと不安になった。

 

翼ちゃんはアーティストとしてお洒落に気を遣っているだろうし、マリアが関わっていることもあってハイセンスな感じに来られたら釣り合いが取れないのではないかと、そういう類いの不安。

 

身バレしないように変装をしているだろうが、それでも俺は彼女の隣を歩いても可笑しくないような服装なのか?

ストールとか巻いた方が良かったのでは?

小物も変えた方が良かったか?

アクセも必要だったか?

 

そんな思いがグルグルと頭を駆け巡る。

 

 

まぁ、待ち合わせの場所に来た翼ちゃんがラフな感じの服だったから、そういう考えは消し飛んだんだけどさ。

なんというか、カジュアルという言葉の意味が俺と翼ちゃんとではまるで違うようだ。

 

 

いや、俺が悪いんだよ?

 

優しい翼ちゃんがお情けでデートと言ってくれたのに勝手に舞い上がって、浮かれポンチに勘違いして、変に着飾っちまって。

最初からちゃんと認識を擦り合わせればこんなことには………

 

翼ちゃんは優しいから俺の格好を似合っていると言ってくれたが、そんなことはないだろう。

 

現に周りの奴等の視線が俺の服に行っているんだ。

あれはきっと

 

 

「プーックスス!見て見て、あの雅実のざまを」

 

「滑稽よね、果敢なきよね、まるでカジュアル街中デートというものを理解してないよね!」

 

「無駄に背伸びした格好、みてらんねーぜ!」

 

「釣り合ってないわー、美しく可愛く最高のアーティストである翼ちゃんの服と釣り合ってないわー、着飾っても全然釣り合ってないわー」

 

とかなんとか言ってるに違いないんだ。

 

 

俺も普段着で来れば良かったんだ、なぁそうだろ肉ドラゴン?

 

ウンボクモソウオモウヨ!

 

 

翼ちゃんがそんな俺を見かねてたくさん喋りかけてくれるが、ふふ、ごめんね、和ませるよう良く分からないサングラスかけてみたりしてくれるなんて、トップアーティストにしてみたら嫌だろうに……

 

 

 

 

「およ!いやぁ奇遇ですね、翼さん!お1人でお出かけデスかー?」

 

脳内で肉ドラゴンと会話をしながら翼ちゃんの後ろを歩いていたら、突然隣から常識人の鎌ブンブン娘の暁切歌がひょっこりと現れた。

とても可愛らしいこの娘から見てもやはり俺はダメダメのダメらしい、翼ちゃんと居るという認識がまるでされていない。

 

 

「1人ではないぞ? 見ればわかるだろうが、今の私はこの人とデート中だ」

 

「ほ、ほえ? デート中と言うには翼さん、随分と気の抜けた服をしていますけれど……そっちの人は通りすがりじゃないと?」

 

「ははは、通りすがりの人と一緒にいるわけが……………まて、気の抜けた服?普通のデート着ではないか」

 

「ははは、いやいやそんなそんな。翼さんの服は友達とぶらりぶらりと歩き回る用であって、後ろの人みたいなお洒落さんとデートするっていうのにはちょっと……」

 

お洒落さんってのは俺のことか、違うか………違うな。

 

 

「何か駄目なのか?」

 

「だって、服装の釣り合いが取れてないじゃないデスか。 一応聞いておくのデスけど、どういう感じのデートスタイルのつもりだったのデス?」

 

「カジュアル街中デート、だが?」

 

翼ちゃんのカジュアル街中デートという言葉に、でえええええす!?と大袈裟な驚きを見せる暁切歌。

わざとらしいが、そんなところも可愛いね!

 

 

「翼さんのそれはカジュアルではなくラフなのデス!……マリアか緒川さんにチェックして貰わなかったのデスか?そうすればこんな……」

 

「私が服くらいは自分で決めると言ったのだ。それに2人は急がしそうだったし………だ、だが、そんなにもおかしいのだろうか?」

 

「少なくとも、マリアが見ていたらデコピンものデスよ」

 

「そんなに!?」

 

ダメなのか?そんなにダメなのか?と自分の姿を確認する翼ちゃんは、尻尾に噛みつこうとする子犬のようにその場でくるりくるりと回っている。

可愛い。

 

 

「まぁまぁ翼さん、いくら見たってダメなものはダメなのデス、だから……」

 

「だから?」

 

「今から買って着替えれば良いのデスよ。なんの為のショッピングモールデスか!」

 

「な、なるほど…………だが、此処までダメ出ししたのだから暁、お前にも付き合って貰うからな?」

 

「デデデデース!?そんな変なサングラスに合うものなんてアタシには選べないデスよ!?」

 

「サングラスは良いから!!ほら、行くぞ!」

 

口を挟むべきじゃないと思ったから黙っていたんだが、そうしたらデートに第三者が参加することになってるぞ。

置いてきぼりを食らった感じで釈然とはしないが、2人きりだと間が持たないからまぁ、うん、良いかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冒頭に戻るが、まったく良くなかった。

今生じゃ女と服屋に来ることなんてなくて、完全に失念していた。

 

女の買い物は、長い!とても、長いのだ!

 

 

入った店で翼ちゃんと切歌ちゃん(名前で呼べと言われた)が服を選び初めてはや30分。

新しい服を見つける度にどうですか?と聞かれては可愛いと思うよ、とか、似合っていると思うよ、とか答えるんだが、それがお気に召さなかったのか………

 

 

「これとこれ、どっちが好きですか?」

 

「いや、どっちも似合うと」

 

「似合う似合わないじゃないデスよ!貴方がどっちが好きなのか聞いているのデス!」

 

アウェーだ、いつの間にかアウェーになってしまっている。

 

 

これは失念2個目だ。

 

女にどっち?と問われたら、どちらかを答えねばならないということを忘れていた。

どっちでも良いだろ?なんて言った日には、それはそれは不機嫌になられる大問題。

 

 

「うーん、本気でどれも似合ってるとか言いやがりますよ」

 

「どうしたものか」

 

「面目ない」

 

「もういっそのこと、この人に全部決めてもらえば良いんじゃないデスか?」

 

「あぁ、それも有りだな。では雅実さん、選んで下さい」

 

「き、急にそんなことを言われても………困るぞ」

 

 

翼ちゃんの服を俺が決めるだなんてそんな不敬を……良いのか?

 

いや、でもな………確かにあれとかこれとかそれとか着て欲しいし、あれもこれもそれも、あとあれとかそれとかそうそう、それも、あれも、うんうん、それとそれとあれと、あぁ、これもそれも着て欲しいし、パンツルックも良いけどスカートも履いて欲しいよな、ゆったりした可愛い系の服、スラリとかっこいい系の服、3rdシングルの衣装に似たフリル付きのこれも良いな!

 

どうしよう悩む、悩むぞ。

翼ちゃんの良いところを生かすような、更に良いところを引き出すような、とっても可愛いもの、かっこいいもの………………全部だ、全部寄越せ!

 

 

「困るとか言って沢山カゴにぶちこみ初めたんデスが……えぇ?」

 

「あ、あの雅実さん?そんなに選ばれても」

 

「翼ちゃん、まずは抜き出すまで待ってて欲しい。俺は今、全力で君に着て欲しい服を選抜してるから」

 

「は、はい……………………興の乗りすぎたマリアみたいだ」

 

「デスデス。アタシや調の服を選んでるときのマリアそっくりです。あ、カゴが4つ目にって、し、下着まで入れだしましたよ!?」

 

「女性物の下着を、何故あんな真剣な瞳で比べて……緒川さんじゃあるまいし」

 

 

うーん、この服と合うのは多分これなんだが、翼ちゃんのサイズには合わないな。

あ、店員さん、これのワンサイズ下ってありますか?いえいえ、下は大丈夫、上だけで良いです。

 

 

「下着のサイズを把握してやがりマスデスよ……」

 

「いや、私は数値を公表してはいるぞ。だが細やかな差異はあるはずなのに」

 

「なぁ2人とも、翼ちゃんは俺の前でたくさんファッションショーしただろ?あれだけ見てればスリーサイズくらい簡単に測れる」

 

「「冬服の上から!?」」

 

「ふっ、俺が何十年翼ちゃん推しをしていると思っているんだ?これくらい余裕だよ」

 

「何十年って……言葉の意味は分からないデスけど、とにかくすごい自信なのデス!」

 

「さ、流石に目測とはいえスリーサイズを測られるというのは恥ずかしいのですが……」

 

「翼ちゃん、俺に下心はない!君に不埒な思いを抱いた事などないから安心してくれ!」

 

翼ちゃんと奏ちゃんをエッチな目で見るだなんてとんでもない!

確かに目のやり場に困ることはある、だけど俺は2人を性的な目でなんて見ないぞ!

 

 

「それはそれで、大きな敗北感を感じるのですが……」

 

「この人の精神、誠実とか器が大きいとかじゃなくて異質過ぎませんか……」

 

えぇ、なんでドン引きされてるんだ?

エッチな目線で見てますってわけじゃないのに?

 

 

「まぁ、とりあえずこれくらいかな……さぁ翼ちゃん、着てみてくれ」

 

「とりあえず?…………これ、どれだけ有るのですか?」

 

「上下40セット」

 

「流石に多くはありませんか?」

 

「40セット」

 

「え、はい、着ますね」

 

「あ、圧が強いデス……」

 

 

いやぁ自分の選んだ衣装を着てもらえるなんて、ファン冥利に尽きるってもんだよ。

欲を言えばステージ衣装も着てほしいけど、いやいやそんな贅沢は言えないもんな!

 

 

ははは、XV終わるまで生きててよかった!!

 





――――

本編とは関係ない数日後の話。
珍しく翼と2人きりでの訓練となった未来。

準備のためにインナーへの着替えをしていると、翼の下着の上下が珍しく揃っていて、しかもお洒落なものだったことに驚いた。
失礼な物言いかもしれないが翼もそう言うところを気にするようになったのだと、感慨深い気持ちになる未来。


「翼さん、それ新しい下着ですよね」

「そうだぞ小日向。良く見ているな」

「翼さんが可愛いタイプの下着を着てるなんて珍しいから目に入っちゃって。今日の私服に合わせてるんですね、とても似合ってますよ」

「あぁ、ありがとう。実はこれも私服も雅実さんに選んでもらった物なのだ。皆が似合っていると言ってくれてな、あの人の目は確かなようだと感心して……ん、どうした小日向」

「い、いえ、なんというかご馳走さまです?」

「私はなにも馳走などしていないが……」

「あはは」

不承不承の見合いと聞いていた割にはちゃんと進展してるんだなとか、下着のプレゼントだなんて相手の人は手が早いなぁとか、そんな当然すぎる思いが未来の脳裏をよぎるのだった。
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