シンフォギア習作 振れば風の鳴る翼的な女の子   作:レノボのカナリア

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よくある不穏な導入、みたいな話

切歌からある意味でのSOSを受けて1時間が過ぎたSONG本部潜水艦。

此方からではどうしようもないと言う返答を返すのみで申し訳ない気持ちになっていた彼らは、その後の連絡が途絶えていることに言い様のない座りの悪さを感じながらも通常通りの業務を行っていた。

 

 

 

「切歌君から続報が来ないのは果たして良いことなのか、悪いことなのか」

 

「進路変更のために突撃してみる、って言ったきりですもんね……」

 

「こんな時、緒川かマリア君が居てくれていたらこんな事にはとは、仕事を振った俺の言う台詞ではないのだがな……」

 

「しょうがないですよ。海外で自由に動ける装者はマリアさんだけですし、錬金術士の残党たちを追うには緒川さんが必要ですから」

 

 

パヴァリア光明結社の残党たちの大半は、すでに確保ないし壊滅させられている。

だが数年経った今でも生き残りは消えないし、そういった連中が資金を確保するためにあちこちにばら蒔いているアルカノイズ、未知の聖遺物や錬金技術の悪用による被害は後を絶たない。

 

各国の諜報組織と連動してSONGの諜報部が動いているために装者たちがわざわざ出張るような場面はあまり無いが、それでも言い方は悪いが、海外を飛び回る事の多いマリアは使い勝手の良い存在として忙しい立場だ。

シェム・ハの件以降出動回数がダントツに多く、どうにかして彼女の負担を減らせないかと苦難しているところである。

 

 

 

「うむ……それにしても、はぐれ錬金術士による被害が野放図に広がりすぎている気がする。世界中で散見されるではないか」

 

「そうですね……パヴァリア光明結社が崩壊した直後から比べると、目撃例を含めて事案が7、8倍ほどまで膨れ上がっています」

 

「つい先日にも南アで錬金術士たちによる小規模なテロがありましたけど、あちらで確認されたのは初めてですよ」

 

「犯人の大半が結社とは関係のない錬金術士だったあれか。藪をつついて蛇を出すと言うわけではないが、あまり追い込みを掛けすぎるのも考えものかもしれんな…………ん?」

 

もっとも結社残党は見逃せないのだからそれも難しいんだよなぁ………と弦十郎が思っていると、英国で件の錬金術士絡みの仕事をしているマリアから通信が飛び込んできた。

日本の現在時刻は午前11時なので、約9時間の時差を考えれば彼方では深夜の2時となる。

 

そんなにも早く、もしくは遅くからの連絡ということで身構えた弦十郎たちの前にマリアの姿が映り出された。

 

 

 

「ハロハロ、今大丈夫かしら?」

 

「あぁ大丈夫だ。何か問題でも起きたのか?」

 

「少し判断が難しいことがあってね、そちらの考えを仰ぎたいのよ」

 

言葉と共にモニターに報告書が挙げられる。

中には英国から提供された情報と、それらを元に彼女らが調査した結果が記されていたのだが……

 

 

「なんだ、この、宇宙にいる知的生命体へ呼び掛けていたというのは……」

 

「言葉の通りよ。私たちが調べていた錬金術士たちは、俗に言う所の宇宙人と会話がしたかったらしいの」

 

「宇宙人、だと?」

 

「なんとまぁオカルトチックな……いや、俺たちが言えることではないんだけどさ」

 

神秘とは、知らぬ端から見ればオカルトじみているのが当たり前である。

事実聖遺物という紛れもない現実の産物を取ってみても、役に立たないまじないの類いだと思われることが多いのだ。

 

シンフォギアもそういうものであり、今となっては公然の秘密だがSONGに体制が移るまでは秘匿対象だったのである。

 

 

「捕らえたこの錬金術士たち、自分たちは神の言葉を聞いたと主張しているのだけれど……神って、私たち的には引っ掛かるものがないかしら?」

 

「神、いにしえの支配者たるカストディアン……アヌンナキか」

 

「えぇ」

 

アヌンナキ、最悪の可能性が頭を過るのは悲観主義がすぎるだろうか。

シェム・ハの事を思えば楽観的にはなれない。

 

 

「エンキのように人類に友好的な存在か、シェム・ハのようにまだ言葉の通じる存在なら良いんだけど」

 

「我が敵手を見つけたり」

 

「は?」

 

「錬金術士たちが聞いたという言葉よ、朔也」

 

「敵手というのが人類を指す言葉で無いことを願うばかりだが…………………一先ずこの言葉の主をアヌンナキと仮定しよう。敵対するしないは相手次第だとしても、こちらは備えねばなるまい」

 

「具体的には?」

 

「平行世界の協力組織各位にこの事を知らせ、情報が無いか確かめて貰おう。それと、世界各国の首脳部にも連絡をしておくべきだな……藤尭、友里、資料をまとめておいてくれ。明日にも俺が直接話す」

 

「「はい」」

 

弦十郎の言葉を合図に、オペレーター組がキーボードを物凄いスピードで打ち込み始める。

横目で報告書を読み込みながらであるのにまるで手を止める様子がないのは、流石の流石と言えよう。

 

 

 

「マリア君も御苦労だったな、今から休むのか?」

 

そんな様子を見ながら問いかけると、彼女は首を横に振る。

何か他にやるべきことでもあるのかとも思ったが、直ぐに1つの心当たりを思い出した。

 

 

「翼のことなら詳しいことは分かっていないが……」

 

「そうなの……一応2人のことを切歌にお願いしていたから、大丈夫だとは思うんだけど」

 

「なんで切歌君がと思ったが、君が……実はな」

 

先程の連絡と、そこから何の音沙汰が無いことを説明する弦十郎。

それを聞いたマリアの表情から姪がひっぱたかれる未来を幻視するが、自業自得でしかないだろう。

 

 

「あの子は全く……アーティストだから服くらい選べると胸を張っていたのはなんなのよ」

 

「いやはや申し訳ない」

 

「まぁ良いわ、切歌が行ったのなら悪いことにはならないでしょう! 」

 

最近のあの子は良い子だから、良い子なのだけれど………もう少し甘えて欲しいのに………とぶつぶつ言い始めるマリア。

見るからにセレナ成分もエルフナイン成分も切調成分も足りてない。

 

そんな彼女に切歌成分の補充をと言うわけではないだろうが、丁度良いタイミングで切歌から1時間半ぶりに連絡が入る。

 

 

 

「大変なのデス、司令ー!!」

 

「うぉおい、どうした切歌君!?」

 

「何事!?」

 

「あ、マリア……は今はどうでも良いのデス、とにかく大変なのデスよ司令!」

 

速攻で切り捨てられ、どうでも良い……!?と崩れ落ち画面から見切れるマリアと、あわあわと泡くっている切歌。

どちらに声を掛ければと弦十郎が悩むより早く、見切れていない方の選択肢が続けざまに言い募る。

 

 

「あの男別れ際にありがとうとか言って、何故かアタシに諭吉を大量に握らせてデート再開しやがったんデスよ! 」

 

「諭吉とは?」

 

「これデス、これ!」

 

そう言って、切歌は推定10人の福沢諭吉を見せた。

使う分しか財布に入れない系女子、というより大半の人間には大金である紙を持たされて腕がプルプルしている。

 

たくさんの諭吉は切歌のお陰で一生物の想い出が出来たことに対する感謝の表れであった。

むしろお礼が少なすぎるのではないかと雅実が思っていることは内緒である。

 

 

「それは多分礼金か何かだろう。気まずさを解消してくれたお礼とか」

 

「そんな理由でこんなに渡すなって話デスよ!?」

 

「貰っておきなさいよ。あれでも雅実はボンボンで親がお金持ちなんだから、それくらい安い物なんでしょ」

 

「う、うぅ、でもデスね?マリアからも貰ってたわけで……こう、合わせてお小遣い2年ちょっと分くらいのお金を渡されてもどうしたら良いか……」

 

「少し使って後は貯金しなさい。お金なんて有って困るような物じゃないんだから」

 

「そう、デスかね………まぁ、仕舞っておきますけど」

 

渋々財布に諭吉を詰める切歌。

 

お金を貰ったとただ喜ばないあたりはナスターシャ教授の情操教育がしっかりしてるなと弦十郎は思うのだが、マリアとしてはもう少しお金に馴れて貰いたい所である。

 

装者として働いている以上賃金が発生しており、通帳やら各種保険やらの管理はマリアがやっているとは言え切歌が自由に出来る金はそこそこ多いのだ。

無駄遣いしないのは良いことだが、いつまでも298円のカップ麺を贅沢品と喜ばれては保護者としての面目が立たない。

 

 

 

ふと、諭吉の群れから1枚の紙切れが落下。

 

なんの気なしに切歌が拾って財布に入れるものだから保護者の目につかなかったが、その紙には雅実の携帯番号が記されていた。

 

 

お礼が足りないと思っていた彼が男手が必要な時には幾らでも呼べと渡した物なのだが、少なくともこの時点では切歌は呼ぶつもりなど更々ない。

更々なかったのだが、後々これが元で雅実のなごやか人生プランがルート変更を余儀なくされるのであった。

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