シンフォギア習作 振れば風の鳴る翼的な女の子 作:レノボのカナリア
あれから資金が無いと何も出来ないよね解散!となったために手が空いた俺は、学友と共に良い値段のする寿司屋に来ていた。
奴は何やら俺に頼み事があるらしく、寿司で俺を釣りたいと言うので望み通り釣られて来たんだ。
初めて来た店だが、いやぁ値段相応に美味くてパクパクと箸が進む進む!
止まらない、止められない!
「次は何を握りますか?」
「大将にお任せするよ、あぁそれともう1本浸けてくれ…………いやぁ学友に奢らせて食べる飯はウマイ!」
「ウマイじゃないよ……どれだけ食べるんだ。しかもまだ昼間だっていうのに4本も空けて」
「飽きるまで飲み食いするぞ、お前の頼みなんてろくなもんじゃないからな」
「うん、別にたくさん食べてくれてて良いんだけどさ……でも君、なんだか飲み慣れてない? 今まで未成年だからって外では飲んでなかったけど、実は家で飲んでたりした?」
「少なくとも誕生日までは一滴も飲んでないぜ」
失敬な事をいう奴だよな、今の人生では成人するまで飲んでねぇよ。
今の両親のことは好きだからな…………アホなクソ親戚どもに絡まれるような原因を作って困らせるようなことをするつもりもない。
まぁ普通に生きてても絡んで来やがるんだが。
「それで、頼みってなんだ。わざわざこんな高い寿司食わせるんだ、大層なものなんだろ?」
「別に大層なものではないけど。うん、そうだね……どれが良い?」
「あ?」
どれって……
「僕の将来の稼ぎに関わるような物と、君は嫌がるだろうけど楽な物、君にとっては退屈すぎる裏で身体を張る物……3つ目は上手く行けばお金が沢山稼げるよ」
「ふぅん?じゃあ、お前が嫌でお前が退屈で身体を張る物、なんてどうだ?」
「おいおい」
「ははは、お前が決めろってことだよ」
こいつには困らされているが、なんだかんだ広すぎるその人脈には楽しませてもらってるからな。
たまには優しくしてやるよ。
「なら来週の土曜日、午後7時から数時間だけ開けておいてよ。待ち合わせ場所は後から知らせるからさ」
「了解した。だが、それはどれだ?」
「嫌でも楽な物だよ」
「嫌な物か……」
こいつが言う嫌な物ってのがなんなのか知らないが、余程の物じゃないと寿司の代価として逃げられないからなぁ……出来れば多少マシな物であって欲しいぜ。
「所で、土曜日の用事は聞かないでおいてやるが他の2つは何だったんだ?」
「ん、ちょっとビジネスで英国に行きたいから一緒に来てほしかったって言う物と、何か良くわからない格闘技大会で戦ってほしかったって物さ」
「良くわからない格闘技大会ぃ? なんだそりゃ、胡散臭ぇ……」
「いやいや胡散臭くなんてないよ。アメリカ金融界のフィクサーが何年かに一度開いているんだってさ。賞金は1千万ドル、もちろんUSドルでね」
「ふぅん」
現在の極端な円高でドルの価値は結構下がっているが、それでも1千万ってのはヤバすぎるな。
確か今日の相場がドル85円だったか、それでもかなりのものだ……あぁカツオがうめぇ。
「興味無さそうだね」
「無いわけじゃないけどな……お前がどうしてそんな大会に参加出来るのかとか、聞きたいことはある」
そういう莫大な金の動く大会ってのは大抵裏社会的な催し物だ……こいつ、一応は俺と同じで良いところの坊っちゃんなのに、どうしてこう変な所に入り込めるのか。
つーかよ、ヤクザごときにびびってた奴がそんな所に飛び込むなって……
「僕じゃなくて知り合いが参加するんだよ、オーナーの1人としてね。その大会に競技者を送りたいけど良い闘技者が居ないって言ってたからさ、じゃあ雅実はどうかなって思ったんだけど……」
「まぁ役不足だろうな」
「力不足じゃなくて?」
何言ってんだ……
「尋常な勝負で俺に勝ちうる人間なんて、知る限りじゃ2人くらいしか居ないからな」
「そ、それはちょっと自信過剰じゃないかな?」
「んなわけあるか。少なくともなんたら級王者だの霊長類最強だのとかいった連中に負ける気も、善戦させる気もねえよ」
「うーん、そこまで自信があるなら大会のほうに切り替えても良い?」
「金は全部俺ので、覆面着けて出て良くて、俺を楽しませるような実力者が居るなら後ろ向きに考えてやる」
俺をタイマンで倒せるのは弦十郎さんか風鳴訃堂だけだろう。
弦十郎さんは責任ある立場の人だから戦えないし、風鳴訃堂は獄中だから戦えないしで、結局俺を倒せる奴と戦うなんて現実的にはあり得ないってわけだ。
勝つと決まった戦いほどつまらないものはない、だから俺は戦わない。
「知り合いは賞金が欲しいわけじゃないらしいからそれは大丈夫かもだけど……雅実、携帯鳴ってない?」
「あ? あぁ本当だ」
壁掛けのコートから確かにバイブレーションの音が聞こえてきた。
メールはバイブレーションも切ってあるから、着信であることに間違いはない。
「出たら?」
「俺に掛けて来るに連中大した奴なんて……」
「ふふふ、見合い相手とそのお友達からも連絡が来るって言ってたじゃないか。なんだかんだちゃんと付き合ってるんだから、出なよ」
うーん翼ちゃんとマリアか。
確かに、だったら出ないわけにはいかないんだが……まぁ良い。
「……出るからちょっと待ってろ」
「え、此処で出れば良いのに」
「店の中で通話なんかするかよ」
まだ、こいつには見合い相手が翼ちゃんだったことを伝えてないからな。
口が妙に軽い奴だから、出来れば一生言わずに済めば良いんだが。
さて、一体誰なんだろうな…………
「昨日の今日で呼び出しちゃって、本当に申し訳ないデス……お友達さんとお酒を飲んでたんデスよね?」
「ははは、何時でも呼んでくれって言ったのは俺だからね。気にしないで良いさ!」
あの美味い寿司屋を離れ、俺は遠くの商店街に来ていた。
前に連絡先を渡していた切歌ちゃんからのSOSを受けたから駆けつけたわけだが、申し訳なさ気な彼女の横には当然のように月読調が立っている。
その月読調……なんだか 、心なし笑顔に見える。
心なしかって言うよりかなり笑顔、めっちゃ良い笑顔だ。
「忙しい中、わざわざありがとうございます」
「あ、あぁうん? 大丈夫だよ?」
切歌ちゃんが物凄く呆れた目で相方を見ているってことは、やっぱり普通じゃないくらいニコニコしてるってことだよな、この子。
しかし、なんでだ?荷物持ちが来たからか?
いやでも、そんな子ではなかったよな?
……本当に月読調なのか?
そっくりさん、とかなんとかないか?
確か、この子って他人との間に壁を作る子だったはず…………そう考えると、他人だって言われた方がしっくりくるような気が。
「雅実さんのことは翼さんとマリアから聞いてます」
「あぁ2人からか…………あ」
「?」
「キミガツバサチャントマリアノコトヲシッテルッテコトハ、キリカチャンモマリアノコトヲシッテルノカナ?」
「え、そうデスけどどうしたんデス?そんなに片言で」
「い、いやぁ、なんでもないよ、あはははは」
此処でこう言っておかないとどこかで絶対に下手な事を言っちまうからな、はは………
「ふふ」
や、やっぱり変だよこの子。
なんで初対面の俺にこんなフレンドリーな笑顔を向けてくるんだ……こ、怖い。
「はぁ………調、最初に自己紹介しないとデスよ」
「あ、そうだね切ちゃん……月読調です」
残念ながら本人だったか……
「久我雅実です……えっと、よろしくで良いのかな、月読さん?」
「はい、よろしくお願いします……あと、調で良いです」
「は、え?」
「調で良いです」
そう言って深々とお辞儀してくる月読調。
なんなんだよ本当に、頭がおかしくなりそうだ………
「わ、わかったよ調ちゃん……と、所で荷物ってどれかな?余り遅くなっても君たちが大変だろう? 早いところ済ませてしまおうか」
「えっと、あっちに置いてあるんデスけど……持てマス?」
指差された方を見てみると、テントの下に6つほど米俵が置いてあった。
引き渡し済みと書かれた紙が貼ってあるあれは、確かにこの子たちだけじゃ持てないよな。
「ああ、あれと?」
「「あれと?」」
「??」
「「??」」
通じてない?
「だからね、あれと他に何を運べば良いのかな?」
「え?あれデスよ、米俵を6個!」
「それだけ?何か他にはないのかい?」
「それだけって……あれだけですよ」
なんだ、電話口だとかなり重いものを運ばされるって聞いてたんだが、この程度だなんて拍子抜けだな。
ここから増える感じではないみたいだし……あ、そうだ。
「君たちが持っているのも俺が持とう」
「え、いえ台車があるのでこれは私達が」
「あはは、気にしない気にしない。これも良い運動になるからね」
「「運動……」」
「所謂筋トレってやつ」
「「筋トレ……」」
これくらいじゃ軽い負荷にもならないが、そう言わないとこの子たちはきっと申し訳ない気持ちになってしまうだろう。
だからこれは俺のトレーニングって事にしよう、そうしよう。
気を遣わせない気遣いってのも中々大変だが、そこはまぁ年長者の仕事ってことで………
「司令みたいな身体だとは思ってマシたけど、筋肉も司令みたいなのデス……」
「いやいや弦十郎さんほどでは……あ、キミモモシカシテソウシャナノカナ?」
「切ちゃん……」
「しょ、しょうがないじゃないデスか、翼さんとマリアの所からどのくらい情報が行ってるかわからないんデスから……」
うーん、なんと言うかやっぱり子供なだけに装者たちの情報管理が甘いな。
翼ちゃんを筆頭に皆ガバガバだよ。
というか機密保持のサインをした後から今までで、結構色々な機密に触れちゃってる感じがするんだけど……………どこかでもう一回サインとか必要なんだろうか?