シンフォギア習作 振れば風の鳴る翼的な女の子   作:レノボのカナリア

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勘違いする話

卒業祝いパーティーの為に飾付けられた部屋の中心には、大きなテーブルが1つありました。

長方形の、長いテーブルでした。

 

その長い方の一辺に俺だけが座り、体面に他の子たちが座っています。

俺から見て左から髪がほわほわした感じの雪音クリス?げんなりした雪音クリス、怖い顔の立花響? アチャーと言いたげな切歌ちゃん、アチャーと言いたげな調ちゃんの順番で座っています。

 

 

「あったかいものどうぞ」

 

「あったかいものどうも」

 

小日向未来が俺に温かいお茶をくれました。

そのあと彼女は調ちゃんの右隣によっこいせと座り、ようやく話がはじまるのです。

 

 

「クリス、この子の説明をしてあげて」

 

「あたしがやるのか?」

 

「だって、この人と面識があって響のことを話せるのってクリスだけじゃない」

 

「それは、まぁ確かにそうなんだけど……でもお前のほうがしっかり説明出来るだろ、頼む」

 

「しょうがない、わかった」

 

この子、響と使い分けてるってことは目の前の女の子はやっぱり立花響じゃないのか?

目測上、身体のサイズとかが以前見た立花響とピッタリ同じなんだが……

 

 

「何、人のことジロジロ見て」

 

不機嫌そうな顔で俺に言うのは立花響っぽい子だ。

俺の視線に気付いたくらいだから、かなり感覚が鋭いのがわかる……

 

 

「申し訳ないね。あまりにもそっくりなものだからさ」

 

「……」

 

「おい、あんまりツンケンすんなよ。つーか、一体何をどうしたら土下座なんてことすることになんだよ」

 

「わたしに聞かれても……勝手にあっちがやったことだし」

 

「それについてはアタシが答えるデス」

 

切歌ちゃんがビシッと手を挙げた。

発言が挙手制なのかと勘違いしかねないくらいには、しっかり指が揃っている。

 

 

「米俵を担いだ雅実さんのために調がドアを開けたんデスけど、そうしたら目の前に…………えっと」

 

「うんうん、この子が居たんだね?」

 

「そうデス! そして、雅実さんが「こんにちは立花さん」って言ったらヒビ……この人が物凄くドスの利いた声で「はぁ?」って。そうしたら」

 

「あんちゃんが土下座したと?」

 

「「馴れ馴れしい口を利いて、申し訳ありませんでした」って言いながらデスけどね」

 

「「それは聴いてた」よ」

 

うーん、なんと言うか色んな所で土下座しすぎて板についてきたような気が…………

 

 

「雅実さん……あ、雅実さんと呼ばせて貰いますけど良いですか?」

 

「あぁ、自由に呼んでくれ」

 

「じゃあ雅実さん。実はこの子、響の妹なんですよ」

 

「「「「「え?」」」」」

 

今俺以外の子たちも、えって言ったぞ?

むしろ髪がほわほわした雪音クリス以外皆驚いてるんじゃ……

 

 

「2人は一卵性双生児なんです。だからこんなに似ているんですね」

 

「いちらんせい………なら、そっちの雪音さん似の子は」

 

「私は雪音ソネットです」

 

「はぁ!?」

 

ほわほわした髪の雪音クリスが明らかな偽名を名乗ると、雪音クリスが先よりも驚いた声を挙げる。

母親の名前を名乗られたらそりゃ驚くよな、うん。

 

 

まぁ俺のほうが驚いているだろうけどな!!

 

 

 

XVの後にもなんらかの事件が起こるかもとは確かに思ってはいたが、それはあくまでなんかあるよなー位の感覚だった。

 

だってシェム・ハから逃げ出したアヌンナキたちが存在しているはずなんだから、そいつらが地球に戻ってくる可能性だってあるだろ?

シェム・ハを倒しました、以後全く問題が起こりませんでした!とはならないことは明白だ。

 

 

俺が考えていたXV以降なら生き残れる!ってやつは、作中レベルでのノイズ被害は無くなるだろうっていう皮算用の元で成り立っていたわけで………………思えば本当に、とらぬたぬきのなんとやらだったなぁ。

シンフォギアの世界だと気づいて計画を立てた時には、まさかXVから1年ちょいでこんなになるなんて思いもしなかった。

 

まぁアニメのイベントスパンは、夏休みだの卒業式だの春休みだのともっと短い間隔だったけどさ。

 

 

まさか装者のクローン体……どちらかといえばエルフナインと同じ錬金術でコピーされた躯体か?そんな存在と会うことになるなんてな。

しかも、こんな所で。

 

 

「おい、怪しまれてないか?」

 

「ただ考え込んでるみたいだけど」

 

 

多分錬金術士たちの結社の生き残りが居て多分そいつらが装者のコピーを造っていたとかそういう話なんだろうが、その躯体たちと装者が一緒にいて仲良くパーティーなんてやろうとしているこの状況………どう見れば良いんだ?

 

うーん……………そういえばXVのちょっと前位に、多分AXZの頃辺りの時期に大蛇が空に浮かんでいて街を壊したっていう騒動があったな。

あの時はサンジェルマンたちが持ってた不死の蛇の事だと思ってたんだが、同時期に今までとは違うノイズが確認されていたって話も下兄が言ってたし…………良く良く考えたら、そんな奴らアニメでは出てなかったような気が?

仕方がないとはいえ、時間が経ちすぎて思い出せない所も出てきてるな。

 

 

「あの、ちょっと心配なのでお風呂場に行ってきますね」

 

「お願い調ちゃん」

 

もし、その空飛ぶ大蛇がXVまでの話とまるで関係のない存在であったなら、それが今回のことにどう関係している。

 

 

フロンティア事変はこちらの世界でのTVやネットでの露出が多かったし、父と上下兄が話していたからこそ分かるがアニメとの差違はなかった。

GXの時の事件だってキャロルがいて、オートスコアラーが起こしたであろう不審死もあって、シャトーも落ちたから差違はないだろう。

AXZだってそう、要石の封が解かれたことや辺りを怪しげな連中が動いていたのが両親の会話からわかったし、反応兵器が射たれたことでこれも違いは出ていない。

XVの件もライブの事件、八紘氏のこと、ユグドラシルが出っぱってきたことも、シェム・ハに意識を取られたことも、全部変わりはなかったように思える。

 

駄目だ、さっぱり分からん。

きっと蛇はあの神殺しで殴れちゃったやつなんだろう、そうに違いない。

 

 

「とりあえずお料理しちゃおうか?」

 

「一緒にやるね」

 

「ありがとうクリ……ソネット」

 

 

そんな俺にも分かることといえば、装者たちと躯体たちで意志の疎通がしっかりと取れているということ。

ほんの少しの間共に居るだけではここまで通じあうことなど出来ないだろうから、装者たちと躯体たちが出会ってからある程度時間が過ぎているんだろうということ。

 

この2つだけだ。

 

 

アニメでのイベントスパンを踏まえて考えるならば、双方が出会ったのは雪音クリスが卒業した後の夏休みくらいかな。

そこで何かがあって躯体たちと出会ったとかするなら、そこから半年以上経過した現在に仲が良くてもおかしくはない……………かも、しれないなぁ。

 

 

だがこれ以上考えても仕方がないな、どうせ俺には関係のない話だ……………さて。

 

 

 

「俺はそろそろお暇させて貰おうかな」

 

「え、もう帰るのか?」

 

帰ると言ったら何故か雪音クリスが驚いた顔をする。

俺を誘った2人が驚くならまだしも、招かれざる客を招くことになってしまった彼女がそんな表情をする必要なんてないのに。

 

 

「元々、荷物を置いたらすぐに退散するつもりだったからね。それに、これから卒業祝いをするんだろう?」

 

「つってもよ、時間を使わせておいて大した持て成しもなく帰らせるってのはあたしの沽券に関わるってもんだ」

 

「いやでもね、俺が居たんじゃ立花さんの妹さんも気まずいだろう」

 

「わたしは別に……」

 

「ははは、良いんだよ我慢しないで」

 

「我慢……」

 

立花響の躯体が俺を最初に見たとき、嫌悪感というか苦手苦手苦手本当に苦手!って感じの眼をしていたからな。

今でもほとんど俺の方を横目でしか見ていないから……多分男が嫌いなのか、俺みたいなデカイ人間が苦手なのか、どっちかだろう。

 

パーティーをするっていう所に乗り込んだ挙げ句、元から居た子を不快にさせるのは大人としてどうなんだって話だよ。

 

 

「それにさっきまで友人と呑んでいたからね、今ならまだ合流もできるしさ」

 

相手が気にしないようにと軽くとぼけて見せたら、雪音クリスがほほーう?と切歌ちゃんをジト眼で睨み始めた、何故?

 

 

「およ?どうしたんデスかクリス先輩」

 

「およ?じゃねぇだろ。いくら何時でも頼れなんて言われたからって、呑んでる最中の歳上を呼び出すんじゃねぇ!」

 

「ええ、でも……」

 

「デモもストもないっての……本当に悪いな」

 

「気にしない、気にしない。俺が飛び出て来たんだから、切歌ちゃんに被害が行くのは忍びないよ」

 

「そうなのデス、忍者ではないのデスよ!」

 

「「…………」」

 

忍びないって、別に忍者とか関係ないんだけど………

 

 

「あー………どうせ翼先輩関連でまた会うことになりそうだし、今回のことはまたそん時に礼をさせて貰うな」

 

「いや、今回のことはそもそも俺が切歌ちゃんへのお礼としてやった事だからさ、本当気にしないで良いんだって」

 

「でもな」

 

「クリスー?そういう人にはなにも言わずお礼しちゃえば良いんだよー」

 

余計な知恵を付けないで欲しいんだけど!?

声と一緒に何かをまな板で切る音や皿を用意するような音も聞こえてくるから、いよいよもって俺は邪魔者だろう。

 

 

「お邪魔しました、ってことで」

 

「じゃあ下まで送る」

 

「独り暮らしの女の子がエントランスまで男を送っていったら、周りに変な誤解を生むだろう。いらないよ」

 

「それもそうか」

 

「あ、ならアタシが一緒に行くデスよ。アタシはここに住んでるわけじゃないデスし、ちょっとコンビニに行きたいデスから!」

 

「おう、行ってやれ」

 

「えぇ……?」

 

それじゃ気を使った意味がなくないか?

雪音クリスでも切歌ちゃんでも、噂になっちゃ駄目だろうに。

 

 

「さぁさぁ行くデスよー!」

 

「あぁ、うん、そうだね」

 

この子が気にしてないなら良いのかな……良くない気がするんだけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雅実が雪音クリス宅を出た瞬間、洗面所から平行世界の翼とこちらの響が転がり出てきた。

そこそこ長く風呂場に隠れていた2人の服は、仕方がないことではあるが湿気でひどく濡れていた。

 

 

「かーっ、ようやく出られたー!」

 

「湿気で汗掻いちゃった!」

 

「2人とも、良く我慢出来ました」

 

軽く失礼な事を言うのは途中から風呂場へ向かった調。

雅実が居る間は出てこないようにと抑えに行ったのだが、幾らなんでもそれくらいは弁えている……と、2人自身は思っていた。

 

 

「こっちの俺の婚約者」

 

「お見合い相手ですよ、翼さん!」

 

「ああ、見合い相手な。うん、見合い相手と俺が会っちゃったら不味いってことくらい、俺も分かってるのにさー。調は心配性だよな」

 

「2人とも、私が行った時には我慢の限界だったと思う」

 

「そうだったっけ?」

 

「わたしは我慢出来てたと思うんだけどなー?」

 

「ジーッ………」

 

「「あはは」」

 

あからさまな誤魔化し笑い。

この2人、世界は違えど師を同じくしているからか妙に気があっているようで、揃っているとなかなか面倒だ。

 

 

「というか、俺たち隠れる必要あったのか?俺もこっちの俺の姉だって言っとけば誤魔化せたんじゃ」

 

「うんうん」

 

「お見合い相手の家族構成くらい向こうも知ってるに決まってるでしょ、翼、響」

 

「あ、クリスちゃん!」

 

「今はソネット、だよ」

 

「気に入ってるの、その偽名?」

 

悪戯っぽい顔の平行世界のクリスが名乗る。

その名がなんなのかを知らない平行世界の響が後ろから問いかけるとクリスはにこやかに頷いた。

 

 

「ねぇヒビキ?」

 

「なにクリ……わかったわかった、ソネットね」

 

「ふふ。あなたは、なんであの人に当たりが強かったの?」

 

「私も気になる」

 

「……あ、俺も!」

 

「いや、あんたは絶対気にしてないでしょ」

 

はぁ、とため息を吐いてから嫌そうに答えた。

 

 

「あの人、わたしの方にも居るんだよね」

 

「え、そうなの?」

 

「うん。板場さんの友達なんだけど……その」

 

「?」

 

「ダメなタイプの、ステレオタイプな嫌なオタクって感じで……苦手」

 

「??」

 

「良く分からない」

 

「うん」

 

「何て言うのかな、なんでもかんでもアニメに例えるみたいな感じ? ですぞとか言ってたりよく分からない単語で話し始めたり…………」

 

「あの久我さんがそんな感じだったら、確かに嫌かも」

 

「でもさ、オタクだったらあんな身体ではないんだろ?あんまり重ねるのもどうかと思うけどな」

 

「いや、コスプレのために鍛えてるって話で……こっちの人と大差ないんだ」

 

コスプレと聞いて思い思いの格好をした雅実が頭に浮かぶ装者たち。

なんとも言えない表情を浮かべた連中に平行世界の………ヒビキが質問を返した。

 

 

「逆に聞くけど、こっちのあの人はどんな感じなの?」

 

「うーん、わたしはあんまり知らないけど紳士な人かな?自分が悪い訳じゃないのに頭を下げてくれたし。あと、翼さんの大ファン」

 

「マリアと翼さん情報だと、野性味溢れるけど優しくて、気の利く人だって。さっき荷物を運んでくれた時、気を使ってくれてたのはわかったけど……あと、翼さんの大ファン」

 

「……こっちの翼さんの大ファンってことだけ覚えておこうかな。どっちにしろ、わたしたち平行世界の人間はもう会わないだろうし」

 

「確かにね」

 

「そうだな」

 

苦手な人間の平行世界バージョンということで一応聞いただけのヒビキが言うと、翼とクリスが同じ考えに至ったのか頷いた。

確かに普通に考えるならば、たまたま此処にいただけの平行世界の住人と何度も会うとは考えがたい。

 

ただ、既に状況が普通ではないのである。

 

 

 

一同の耳に玄関の外からトタトタと小走りする音が聞こえた、その時。

 

 

「お財布を忘れたデース!」

 

外に出ていた切歌が扉をバンッと開け

 

「おいおい切歌ちゃん。扉は静かに開けないと」

 

その後ろから雅実が現れて

 

 

「あ!」

 

「え?」

 

「「「「「あ」」」」」

 

全員、普通に眼が合ってしまった。

 

 

 

 

「えっと、翼の姉だ。よろしくな?」

 

数秒の空白の後、翼だけがなんとか言葉を発した。

 

 

雅実は気絶した。

 

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