シンフォギア習作 振れば風の鳴る翼的な女の子 作:レノボのカナリア
サボってた&文章がくどく成りすぎる病にかかって同じ内容のくせに文章量だけは五倍くらいになってしまいそうだったので、削除したりしてたらこんなに投稿が遅れました。
そのくせ、大した内容でないくせに短いものになってしまったというね………………
「明日のライブ、雅実さんは来られないということだ」
翼の復帰ライブ前日であった。
軽めの最終リハが終わった直後に突如としてそれは告げられ、意味を把握したマリアは一瞬、自らの頭がおかしいのかと混乱した。
そんな彼女をおいて、言うことは言ったとばかりに踵を返してスタッフの下へ行こうとする翼の手を咄嗟に掴んで引き寄せるマリア。
傍目に見ていた何人かのスタッフがタワーが建ったとはしゃいでいるが、それを気にする余裕など腕を掴む女にはない。
後でOHANASHI!しないといけないことは確実だが、とにかく今はそれどころではないのだ。
「ちょっと待って翼。私はいま、言いたいことが有るのだけどね?」
「いや、マリアが言いたいことは私にはよく分かる。来られないという言葉が果たして「来たくても来ることが出来ない」なのか「来ない」の尊敬語なのかを聞きたいのだろう?」
「そんな訳ないでしょう!?というかそんなニュアンスくらい、言われなくても分かるわよ!」
私が言いたいのはそういうことじゃなくて!と身振りで示したマリアが、実際に口に出したのはそれとは別の言葉。
「なんで来ないのよ!なんで前日にそれを言うのよ!なんで貴女にしか連絡が行ってないのよ!緒川ぁ!!」
「どうしました?」
「このおバカの話を一緒に聞いて頂戴!」
「え? はい、わかりました」
虚空から召喚された慎次を隣に置いたことで落ち着いたのか、マリアが翼をじっと見る。
その鋭い視線に話を促されたと理解した翼が口を開いた。
「今朝程に雅実さんから電話が掛かってきたんだ、明日のライブに行けなくなってしまったと」
「唐突過ぎるけどその理由は?」
「あぁ。親友の方が早朝に訪ねてきて「助けてほしい」と言ったから、だそうだ」
「……具体的には何を助けるの?」
「わからない」
「わからない、ですか?」
聴いていないのか、聴けなかったのか、その判断が付かない2人は顔を見合わせる。
「そちらのビジネス関係でトラブルがあったらしく、海外まで飛ぶと言う話だったんだが……雅実さんは敢えて聴かなかったらしい」
「え、なんでよ?待ちに待ったライブの前日に持ち込まれたトラブルなのよ、理由ぐらいちゃんと聴くものじゃないの?」
「まぁ普通はな。だが行先が中東だとわかった時点で、なるほど用心棒としては自分が最適だと思ったと。だから聴かなかったと言っていた」
「いや聴きなさいよ、まったく…………で、その親友って学友って呼ばれてる子よね?」
「そうだ」
学友……雅実がかつてからそう呼び続けているためにいつの間にか誰も彼もがそう呼ぶようになり、本人もそう名乗るようになっていたために現在本名を知るものはあまり居ないという。
見合い前に調べたので勿論マリアや緒川は知っているが、翼は雅実経由でしか彼を知らないので学友が本名だと勘違いしていた。
この場の3人が共通で理解しているのは、学友が雅実の唯一の親友にして人脈構築能力というか、コミュニケーション能力というか、そういった能力の怪物であるということだけだ。
そこら辺の一般人や企業家経済人に留まらず、在日米海兵隊のトップや某国のお偉い政治家ともパイプを持ち合わせているらしく、それに助けられたことがある雅実の長兄はこの親友を豊臣秀吉と劉邦を足して割らない人間だと評している。
先日の裏の格闘大会で何人かヤバめの人間とも繋がりが出来ているが今のところ本人たち以外は誰も知らないし、今回のビジネスにはそのヤバい人間がほんの少しだけ絡んでいることも、勿論誰も知らない。
5分くれたら大体の人間とは取っ掛かりが出来る、20分くれたら大体の人間とは仲良く出来る………とは本人の談だが、そんな学友はただいま雅実の武力を背景に大学の顔役として名を挙げていた。
体育会系の常だが雅実と学友が入学するまで色々な意味で荒れていた日皇大。
近隣の繁華街では日常的に喧嘩やらが起き、殆どイジメに近い可愛がりや運動部以外への嫌がらせなども毎日のようにあって治安が悪いとかいうレベルではなかった。
女子学生たちは安全のために固まって行動しなさい、などと指導されていた事があるのはそっち方面でも荒れていたからである。
何処の学校でもそうだが、実績の多い運動部というのは大体態度が大きい。
他の大学ならばそうした連中の大半は態度が大きい程度で事が済むのだが、日皇大はそういった連中の存在が伝統と化しており、はっきり言って漫画かアニメのような荒くれどもの坩堝だったのだ。
それが今のようにそこそこ大人しい空気となっているのは半分雅実の力、半分学友の人徳が原因なのである。
日皇大に廻らされている学生間のネットワークは学友が入学後2ヶ月で築き上げたものだが、それは情報の集積地と言っても過言ではなく、日皇大の風紀粛正に乗り出した――本人にその意図はないが――雅実を大きく助けた。
タバコの吸い殻をまとめてポイ捨てした連中を雅実が叩きのめし、研究棟の一角を不当に占拠していた空手部連中を雅実が叩きのめし、女子に絡んでいた連中を雅実が叩きのめし、文系理系の生徒をパシりにしていた連中を雅実が叩きのめし、後輩の癖に生意気だと突っ掛かって来た先輩やらOBやらを雅実が叩きのめし、繁華街で馬鹿騒ぎを起こした連中を雅実が叩きのめし、あっちを叩きのめし、こっちを叩きのめし、叩きのめし続けて…………ぼろぼろになった連中を学友がネットワークを利用して見つけては優しく纏め上げたのである。
飴と鞭だの北風と太陽だの言われたりしていたが、その実飴と太陽が鞭と北風に不良生徒の情報を流しているとは誰も思っていない。
雅実が問題児兼色々な意味で救世主、などと俵山総長を初めとする大学側の人間に思われているのはそんな理由からであった。
ちなみにSONGの人間はこれらを一応知っている。
知ってはいるが、彼らからすれば眉唾物の雅実伝説を先に見てしまったのでまぁ誇張されているのだろうな………と軽く捉えられてしまった。
これも雅実からすれば幸運だったのか、不幸だったのか………
「そっちもちゃんと調べなきゃダメだったかしら」
「そっちも?」
「雅実だけじゃなくて学友も調べなきゃダメだったかな、って意味よ。雅実が誰かを親友と呼ぶのはその学友だけって話なんでしょう?」
「あぁ、唯一の親友だと雅実さんは語っていたな」
「だったら貴女との見合いにも絡んできそうなものだったわけだし、調べとくべきだったわ」
「これを見合いに絡んだと言って良いのかは、わかりませんけどね」
「絡んでいるじゃない!はっきりと!」
ぷりぷり怒って見せるマリアだが、内心では趣味――言い方は悪いが――
のライブより友人の危機を優先する雅実への評価をまた上げたし、この事を後に聞かされるSONGの面々もこの選択を好意的にみることだろう。
そんな仲間たちからの後押しによって翼のアプローチも加速度的に増えて行くだろうから、雅実はまた1つ燃料を投下したことになる。
「あ、そうだわ! ねぇ翼、今回のことで雅実に少しは文句を言った?」
「文句?いや、そんなこと言うような場面ではなかっただろう」
「駄目よ。あの子が帰ってきたら文句の1つや2つ言いなさいな」
幾らなんでも不躾では?といった他2人の顔に気がついて、マリアは首を振った。
「何も本気じゃなくて良いのよ。冗談めかして言うだけ、それだけで事足りるから」
「「はぁ……?」」
「雅実は律儀者だし、こう言っておけば埋め合わせをしてくれると思わない?」
「思う。思うが、私はそういうのは嫌だ」
「え……………いえ、うん、なら良いけど」
翼の口から出たのは否定の言葉であった。
アンフェアな作戦であることはマリアは自身も理解していたので拘泥しない………しないが、どうにも違和感を感じるのである。
雅実に対するアプローチに積極性になりつつある翼ならば、乗り気とはならなくともここまできっぱりとした否定はしないはず………この違和感はマリアの勘違いなどではなかった。
実際に翼は、雅実と学友の仲を見合いの成功に利用するようなことをするべきではないとそう思っている。
思ってはいるのだが………
「とは言ってもだ。実はライブが終わった後に時間を見繕って、雅実さんには内緒で御学友と会ってみようと思っている」
見合いの成功どころか最速ゴールインに直結するような事を画策している時点で、マリアの提案を蹴った意味がなくなっている。
雅実は会わせたくないと言外に匂わせているのだが、匂わせた程度で察するならば風鳴翼は風鳴翼でない。
「私の友人とは沢山会っているのに、あちらの友人と私が会っていないのは可笑しいと思う!」
そうだろう?と問い掛けられたマリアと緒川は、もう一度顔を見合わせてから、それはそれは良い笑顔で頷いた。
――――
今現在学友が雅実の見合い相手を知らないのは、雅実が知られたくなさそうだからと、知ろうとしてないからです。
見合い相手を本気で探ろうとしたら、おそらく十分十五分で翼までたどり着きます。