シンフォギア習作 振れば風の鳴る翼的な女の子   作:レノボのカナリア

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すっとこどっこいな防人の話

翼から見た久我雅実の第一印象は、筋肉の塊が人の形をしている! ただそれだけだった。

 

 

緒川が持ってきた資料の中でもその身体が鍛えに鍛えられているのは記されていたから、それを元に練習していた翼の頭には勿論その情報がインプットされてはいたわけで、普段の翼であれば顔立ちがどうだとか、人としての空気がどうだとか、信頼出来るか否かなどそういった感想を持ったはずである。

アーティストとしても装者としても、様々な体験をして、様々な人々に接してきた翼の感覚は決してバカにできるものではない。

 

ライブ前の楽屋でマリアとファーストコンタクトした際に

 

「可愛いタイプ、かな」

 

と第一印象を緒川に語っていることからもそれはわかるだろう。

 

 

 

ただし、それらは翼の思考が良くも悪くも平時の時にのみ発揮されるものであった。

 

アーティストとして出会う人々は大体が音楽関係者か芸能人なので最初からそういう対象に会う心持ちであり、装者として出会う人々は自衛隊やら研究員はたまた敵だったり味方だったり銃後だったりと、防人としての覚悟の上で会合する類いの存在。

見合いの席で初対面する存在など、翼からすれば未知なる生命体X以外の何物でもない。

 

なんなら埒外物理を用いてくる先史文明の遺産や、錬金術士たちが作り上げたアルカノイズ、平行世界からこんにちはするカルマノイズのほうがまだ理解出来るだろう。

 

 

そんな未知の存在を前に翼が緊張や混乱をしないわけがなかった。

 

アーティストとしても装者としても、翼が初めての緊張や恐怖に震えていた時は天羽奏が側にいて彼女を抱き締めていたものだが、美味しいトマトを育てるのは厳しさ!的なマリアは見守る体勢に入っていてそれをスルーしたし、調は調で、翼のことは頼れる先輩として完全に信頼していたからこそ緊張しているなど想像もしていなかった。

 

翼が練習中にすっとんきょうな発言をしていたのが緊張と混乱の結果であると、その練習に付き合っていた二人が理解していたのなら、翼ももう少しマシな心構えが出来ていたに違いない。

 

もっとも、本当ならば叔父の弦十郎がその辺りに気をまわしておかねばならなかったのだが…………

 

 

そんなこんな見合いの当日となり、ピークに達した緊張と混乱のせいで第一印象もまともに抱けず、練習したはずの「これで楽勝! 失敗しないお見合いの会話集!」も千ノ落涙が如く頭から抜け落ち、黙ったり失言したりした結果が………

 

「私が聖遺物関連の事を知っていると、なぜわかったのですか?」

 

だった。

 

 

 

 

この言葉を聞いた久我雅実が

 

「へ?」

 

だの

 

「え?」

 

だのと小さく驚いたのを見た瞬間、翼はほんの少しだけ正気に戻った。

 

目の前の男は大学で聖遺物の研究をしていると資料にもあって本人もそう言ってきただけなのに、自分は何を過剰反応しているのか、と。

風鳴の家が天羽々斬を保持していることやイチイバル紛失に関わっていることも、勉強しているならば手に入る情報ではないか。

危ない危ない、もう少しでボロを出すところだった、と。

 

 

翼本人は自分が少しだけ冷静になれたと思っているが、雅実が内心で震えながら言っているように

 

風鳴翼が聖遺物のことを知ってる!

 

などとは口にもしていないことが理解できていないし、そもそも雅実は天羽々斬だのイチイバルだのとも言葉にしていない。

 

 

 

「いえ、なんでもあり……!」

 

自分の失言をごまかそうと、なんでもありませんと口にする瞬間、またほんの少しだけ正気に戻った翼。

この言い方は明らかになんでもないような物ではない。

 

覆水盆に返らず、既になんでもあり!まで発音している己は此処からどうすれば……!

 

 

 

 

再来する混乱、そしてピークだったはずの波を大きく上回る緊張の訪れに翼が選んだ行動は

 

 

「時間をいただきたい!よろしいですか!?」

 

「は、はい?……え、あ、どうぞ…………?」

 

 

まさかのタイムであった。

 

 

 




運が良いのか悪いのか、見合いまでの期間中アルカノイズもカルマノイズも発生せずにいて、顔に傷が付いたら不味いと戦闘訓練も無かった。

取材も殆ど無かったうえ、怪我の心配云々でバイクもやはり乗りづらい。

バカ二人とやっさいもっさいは気を効かせて寄ってこないし、エビフライちゃんは流しそうめん学会をSONG内で立ち上げており忙しい。
393は進路で忙しそう。


結果気分転換することもなく長い間緊張しっぱなしの上、メンタルケアもろくにされなかった防人が完成しました。

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