シンフォギア習作 振れば風の鳴る翼的な女の子 作:レノボのカナリア
名前も知らない黒塗りの高級車、もしかすればリムジンのひとつなのかも知れないが、車に詳しくないことで有名な俺こと久我雅実君はそんな感じの車に乗せられている。
ガルウィングがオサレなこの車は本来なら相当広く感じる空間なんだろうが、俺の身長的には高さが足りなくて中々に窮屈な感じだ。
いやまぁ窮屈なのは、向かいに座る風鳴さん家の二人が申し訳なさそうな顔をしているからってのも、あるんだろうけど。
「久我さん、お酒などいかがですか?」
あ、緒川さん(暫定分身1)いただきます。
「慣れない運転で恐縮です。乗り心地が悪くなければ良いのですが」
あ、緒川さん(暫定本体)運転上手いですね、家の者にも見習わせたいですよ。
「司令。無いこととは思いますが、一応周りの警戒はしておきますね」
「頼む」
あ、緒川さん(暫定分身2と3と4と5)が車の周りを並走しているぞ。
見間違えでなければ、対向車の運転手たちは必ず三度見四度見して通りすぎているはずだ。
車に乗ってからもう一時間近く走っているし、防犯カメラやドラレコの動画がSNSなんかにアップされたら大変だと思うんだが……いや、映らないんだろうか、映らないからこんな町中で分身なんてしているのか?
「本当に、こんな事に巻き込んでしまい、まことに申し訳ありませんでした」
「……申し訳ありませんでした」
無心になって外の分身を眺めているの俺に、二人が再び、再びというか4度か5度か、そこら辺の回数目の謝罪をしてきた。
怒ってないよー、大丈夫だよー、気にしないでーと言っても謝って来るのは、正直心にクるからやめて欲しいんだが、やめてくれない。
降ろしてもくれない。
本当に気にしてないから、マジで、ポーズとか体面とか気にしてないからマジマジ。
いやほんともうきにしないから、だからおうちにかえして(切実)
原作が終わってるっていっても、はぐれ錬金術士がばら蒔きまくってるアルカノイズや良くわからない新種のノイズがあちこちに出てきてる現状、原作キャラとは関わりたくないんだよ!
本音としては関わりたくはあるんだけど、出来ればこう、手心というか、優しい感じでお願いしたく存ずる所……正確に言うなら他の子達にしてほしかった。
この子だけはダメ、この子だけは本当に無理、無理無理かたつ無理!!
せっかく理性をフル稼働して我慢してるのに、なんでこんな酷いことをするんだよ。
「サインをするだけと言うならば、あの場所に書類を持って来てくださればよかったのではありませんか」
「機密文章でありますゆえ、お手数をおかけしてしまいますが足を運んでもらう事になってしまいまして」
知ってた!知ってたけど普通ならそういう疑問があるはずだからね、いってみたの!
二課時代とはいえ原作だと立花響は手錠かけられてたし、393も囲まれてたからな、そうならないだけマシだよな。
「今の時代、電子サインかその辺りの融通はある程度利かせて欲しかったものですが、まぁ良いでしょう」
「ありがとうございます」
「ただし」
「ただし?」
「ごほん、違和感があるのでその敬語は止めて欲しいですね。最初の時みたいにしてくれた方が、楽だから」
嫌みにならない口調って難しいよねって思いながら鷹揚さを意識して作り、迷惑を掛けられた側がほんのりと上からな感じで許したことをアピール。
ただ気にしない、ただ大丈夫だけだと責任感のあるOTONAには却って辛いもんな、分かるよ。
さっきまではただ大丈夫って言ってたけど、ある程度は俺の心持ちのままでやらせてほしかったんだよ。
で、そんな良いOTONAにはある程度責めて……こちらからわざとらしく要求。
「そうか、では、ありがたくそうさせて貰おうかな」
すればちゃんと乗ってくれるもんね。
年下を相手にしてもしっかりと社会人として謝れるし、こちらの意図も理解してくれるから対面の会話がやりやすいタイプだ。
年下にも頭を下げられる、これ本当に大事なことだ。
上流気取る社交場にも、それが出来ないで老けた事だけを武器にする老害はたくさんいるからな。
いやぁ悪いことをしたらすぐにちゃんと謝るなんて、わかっていても中々出来ることじゃないよ!
そうだよね雫ちゃん、見習いたいですね!!
半裸で狼狽える立花響に対して
「申し開きのしようもございません。なんなりと罰をお与えください」
すかさず土下座を敢行した俺は、きっとOTONAを見習えているはずだ。
キタヤマシズクチャンワカワイデスヨヤッター