シンフォギア習作 振れば風の鳴る翼的な女の子   作:レノボのカナリア

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潜水艦さん、本当のお名前なんてーの?


潜水艦内部での話

現在東京湾の湾口を主な停泊地としているかの潜水艦は、その存在を知る人間にはただSONGの仮設本部の潜水艦と呼ばれている。

正式には強襲揚陸潜水艦ありあけ型一番艦【ありあけ】という名称があるにはあるのだが、そこで働くスタッフたちも官僚政治家たちも、なんなら装者たちでさえも本部か仮設本部と呼ぶ始末。

 

誰にも名前をちゃんと呼ばれないそんな潜水艦、実は色々面倒な立場であったりする。

 

仮設本部というには本拠としている期間が長いことが国連でも疑問視されているのだが、世界を北へ南へと奔走することが多い都合上本部機能の移設にあたっての時間が取りづらいということ、国連直轄といえ半ば日本の機関であるという公然の事実、使い勝手や利便性が極めて高いことからこのままこの潜水艦を本部にしたいという現場の意見、アメリカをはじめとした様々な国が本部として名乗りを挙げており収拾が付かないことなど、その他もろもろでいつまで経っても落ち着かないのであった。

 

弦十郎としても可能なことならその辺りをどうにかしたいのではあるが、世界を股に掛けて活動する翼やマリアならいざ知らず大学に通っているクリスや卒業後進学が決まっている響、在学期間が残っている切歌と調がいるのである。

そんな中で日本を離れることなど、大人として看過できることではない。

 

彼が、装者たちが卒業するまでこの問題を先伸ばししようと決意して国内外で交渉に動いているからこそ、仮設本部の置かれた立場が安定していないのである。

いや、弦十郎が政界や官僚たちとも接触をしているおかげで安定しない立場程度で済んでいるとも言えるかもしれないが、そこはひとまず置いておく。

 

 

長々と書いて結局のところで何が言いたいのかと言えば、兄であり政治を一手に引き受けてSONGの防波堤となっていた風鳴八紘の死後、風鳴弦十郎は公私に渡って忙しいどころの話ではないくらいに忙しく、優秀とはいえ完璧な人間ではない彼は色々と失念してしまうこともあるだろうし、突発的な事が起きてしまっては優先順位の高い方へと足を向けてしまうのも仕方がないということである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

潜水艦内の食堂に通されたと思ったら、スタッフに何事かを耳打ちされた弦十郎さんが席を外すと言って出て行ってしまい、なんかまた二人きりにされてしまった、そんな俺と風鳴翼。

厳密にはキッチンの向こうからこちらを見ているスタッフがいたり、食堂の入り口付近からこちらを見ているスタッフがいたりと二人きりではないんだが………食堂自体が広いから周りに誰もいないのと同じこと。

 

結果和装で着飾った男女が、無機質な椅子に座って無機質なテーブルを挟んで黙っているという特異な状況が発生しています、どうしてこうなった。

 

 

 

「あぁ、ここに居たのね!」

 

「……ま、マリア!」

 

テーブルについてから数分経っていよいよ気まずさがピークに達すると思った時、ピンシャンとした声が食堂に響く。

助かったという顔をして風鳴翼がそちらを向いたことに、同じく助かったと感じつつも少しだけ心が傷んだ。

 

 

マリア・カデンツァヴナ・イヴ。

 

現れた彼女はアガートラームのシンフォギア装者にして世界的な歌手であり、俺が此処にいる原因の一端を担っている人間でもある。

潜水艦の内部には似つかわしくないお洒落な格好で仁王立ちしている姿からそうは見えないが、裏方向きの性格であるとしないフォギアでは語っていたはずだ。

 

今も頭のなかではのたうち回っているんだろうか……

 

でもそんな感じしないなぁやっぱ綺麗だなぁと呑気に感動しながら見ているこちらを、ただただまっすぐに見つめた彼女がスッと頭を下げる。

 

そうくると思ってはいたが、実際頭を下げられると驚くからやめてほしい。

何度下げられても、やっぱり慣れるもんじゃないから。

 

 

「私が迂闊に言葉を発してしまったから貴方に迷惑を掛けてしまった。散々司令たちにも言われているだろうから、私からは一度だけ………ごめんなさい」

 

確かに装者バレの原因の7割くらいはあっち側にあるかもしれないが、俺もスピーカーモードだと分かった時に速やかに離れれば良かった話なんだよな。

聞こえてくるのが歌姫マリアの声だと分かって生マリつばだ!とテンション挙げて聞き耳を立てたあげくのこれだからな、自業自得というかなんというか。

 

でも、こっちの気持ちを理解して一度で済ませてくれるってのは良いな、とても嬉しいぞ。

 

 

 

 

「頭を挙げてください。なんだか今日だけで一生分謝られている気がしますよ」

 

「ふふ、じゃあ何処かで謝ってバランスを取らないとダメね」

 

「いやぁ、はは……」

 

冗談と取られたのか笑われたが、これって結構真剣に言ってるんだけどな。

こう、変に何かが偏ると相応の揺り戻しが来るってのが俺の経験則なわけで、ここまで謝られ通しになるとそれが怖いっていう。

 

 

 

「で、翼。司令はどうしたのよ、一緒に居ないようだけど」

 

「それがな、叔父様は何やら慌ただしく出ていってしまって」

 

「だったら貴方がちゃんとお客様をもてなさないとダメでしょう。飲み物の一つもお出ししないで」

 

「す、すまない、気が回らなかった。今取って……」

 

「そんな事だろうとは思ってたから、エルフナインに持ってきて貰っているわ」

 

「エルフナインが?」

 

この距離でトップアーティスト二人の会話を聞いていられるだけで、今日は良い日だ。

アニメで好きだったエルフナインに飲み物を持ってきて貰えると言うのも、素晴らしい、本当に素晴らしい。

 

 

 

「み、み、皆さん!飲み物をお持ちしました!」

 

来た、エルフナインだ!とキッチンの方を見ると、トレイに湯気が立つ飲み物を四つ載せた緑がかった色の髪をしたエルフナインが歩いてきているのが見えた。

 

緊張してる顔が良い!トレイが重いのか、ヨタヨタ歩いてる!とにかく可愛い!ボクハネムクナイン!!

 

 

「お、おい、マリア?大丈夫なのか?」

 

てかエルフナインって金髪じゃなかったっけ?

 

「見守りなさい!」

 

あれ、キャロルから身体貰ったんだから金髪で良いんだよな?

 

「最近あおいの真似をしたがるのよねぇ、あの子」

 

うーんアニメ的な表現で金髪になっただけで本当は緑のままだったのか………まぁ可愛いからどうでも良いか!

 

 

 

「ほらエルフナイン、お客様に渡して」

 

「は、はい!」

 

マリアがニヤけ……いや優しい顔で言うと、エルフナインはがちがちのままに俺の方へと足を向けた。

俺も受け取れるようにと椅子ごと身体を向き直す。

 

さぁこい、ばっちこい、エルフナイン!

 

 

 

「あったかいものどうぞ……あっ」

 

 

Q : 両手で持ってもギリギリでしかバランスを取れてなかったエルフナインが、片手を飲み物に伸ばしてしまいました。

トレイが重くて重くて、思いっきり傾いてしまいましたが、この後どうなりますか?

 

なお、バランスを取ろうとして何故か右足と左足を交差させてセルフ足払いも掛けている物とする。

 

 

A : 空調が効いているとはいえ寒々とした潜水艦には最適な熱々の飲み物が四つと、可愛いエルフナインが飛び込んできます。

 

 

 

 





アヤヒナイン、大好き。
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