転生者・暁 遊理の決闘考察   作:T・P・R

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感想にて、僕のもう1つの投稿作品であるナルト二次の主人公と、この遊戯王二次の主人公が似てるんじゃないかと指摘を受けました。

確かに口調とかは同じだと思いますけど、さすがにここまで擦れてないと信じたいところ。
ただし、擦れてない代わりに若干病み気味ですが。


9話

暁 遊理 手札 5枚

LP 1400

フィールド モンスターなし セットカードなし

 

タイタン 手札 1枚

LP 4000

フィールド プリズンクインデーモン セットカード 2枚

 

フィールド【万魔殿-悪魔の巣窟-】

 

 

「私のターン、ドロー」

 

引いたカードはブレード・スケーターでした。

 

 

【ブレード・スケーター】

通常モンスター

星4/地属性/戦士族/攻1400/守1500

氷上の舞姫は、華麗なる戦士。

必殺アクセル・スライサーで華麗に敵モンスターを切り裂く。

 

 

またしても明日香さんのカードです。

これはもしかして……

 

「私は魔法カード、一時休戦を発動」

 

「小癪な時間稼ぎを……弱者のあがきなぞ見苦しいだけだというのに」

 

「時間稼ぎだって立派な戦術です」

 

 

【一時休戦】

通常魔法

お互いに自分のデッキからカードを1枚ドローする。

次の相手ターン終了時まで、お互いが受ける全てのダメージは0になる。

 

 

この効果でさらに1枚ドローです。

これであのカードが来てくれれば…………来た!

正直、信じられません!

 

「私は魔法カード、融合を発動!」

 

 

【融合】

通常魔法

自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

 

「手札のエトワール・サイバーと、ブレード・スケーターを融合して、サイバー・ブレイダーを召喚します!」

 

現れたのは、明日香さんのエースモンスターである全身をレオタードに包んだ女性モンスターです。

 

まさか私が召喚できる日が来るとは思いませんでした。

かつて湖にて水をぶっかけられたことは文字通り水に流しましょう。

さあ、今こそ力を合わせて戦い―――

 

 

ザパァアアアン!!

 

 

―――突如、激しい水の渦がフィールドを包み込みプリズンクインデーモンと召喚したばかりのサイバー・ブレイダーを飲み込み押し流したのでした。

水がようやく収まった後のモンスターゾーンには何も残されていません。

 

 

【激流葬】

通常罠

モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時に発動できる。

フィールド上のモンスターを全て破壊する。

 

 

「ふん、他愛もない」

 

「そんなっ!?」

 

最期の希望があああ!?

 

決闘(デュエル)とは常に非情なのだ。さらにもう1枚のセットカードオープン、速攻魔法、デーモンの駆け引き!」

 

 

【デーモンの駆け引き】

速攻魔法

レベル8以上の自分フィールド上のモンスターが墓地へ送られたターンに発動する事ができる。

自分の手札またはデッキから「バーサーク・デッド・ドラゴン」1体を特殊召喚する。

 

 

「このカードは、レベル8以上の自分フィールド上のモンスターが墓地に送られた時に発動できる。そして自分の手札またはデッキからバーサーク・デッド・ドラゴンを召喚する! 現れよ! 地獄に堕ちてなお君臨する破壊の王者! バーサーク・デッド・ドラゴン!」

 

 

【バーサーク・デッド・ドラゴン】

効果モンスター

星8/闇属性/アンデット族/攻3500/守 0

このカードは「デーモンとの駆け引き」の効果でのみ特殊召喚が可能。

相手フィールド上の全てのモンスターに1回ずつ攻撃が可能。

自分のターンのエンドフェイズ毎にこのカードの攻撃力は500ポイントダウンする。

 

 

「……デーモンデッキじゃなかったんですか」

 

私は、めちゃくちゃな威圧感を放つ巨大なガイコツドラゴンを呆然と見上げます。

 

「……私はカードを1枚伏せてターンエンドです」

 

伏せたのはギブ&テイク。

防御カードでもカウンターでもありません。

つまり見せかけです。

しかし、諦めたわけじゃありません。

サイバー・ブレイダーだって、いつか必ず過労死するくらいに使い倒してやるんですよ。

 

「私のターン、ドロー。私は手札より魔法、死者蘇生を発動」

 

 

【死者蘇生】

通常魔法(制限カード)

自分または相手の墓地のモンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。

 

 

「再び冥府より甦れ、ジェノサイドキングデーモン」

 

 

【ジェノサイドキングデーモン】

効果モンスター

星4/闇属性/悪魔族/攻2000/守1500

自分フィールド上に「デーモン」という名のついたモンスターカードが存在しなければこのカードは召喚・反転召喚できない。

このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に800ライフポイントを払う。

このカードが相手のコントロールするカードの効果の対象になり、その処理を行う時にサイコロを1回振る。

2・5が出た場合、その効果を無効にし破壊する。

このカードが戦闘で破壊した効果モンスターの効果は無効化される。

 

 

『攻撃力2000のデーモンが復活したか』

 

「それだけじゃないですよ。墓地にプリズンクインデーモンがいます」

 

次のターンでは攻撃力3000のモンスターとなって私に襲い掛かってくるでしょう。

バーサーク・デッド・ドラゴンも健在だし、万事休すです。

 

「一時休戦に救われたな、ターンエンドだ」

 

この瞬間、バーサーク・デッド・ドラゴンの攻撃力は自身のデメリット効果で500ポイント下がり3000になりましたが、正直何の助けにもなりません。

 

 

暁 遊理 手札 2枚

LP 1400

フィールド モンスターなし セットカード1枚

 

タイタン 手札 2枚

LP 4000

フィールド バーサーク・デッド・ドラゴン ジェノサイドキングデーモン セットカードなし

 

フィールド【万魔殿-悪魔の巣窟-】

 

 

「私のターン、ドロー」

 

おそらくこれが私のラストターンでしょう。

ここで逆転できなければ終わりです。

そんな思いで引いたカードは手札抹殺。

逆転できるカードではありません。

これはもう、諦めるべきなのかもしれませんね。

 

「私は手札より魔法カード、手札抹殺を発動します」

 

 

【手札抹殺】

通常魔法

お互いの手札を全て捨て、それぞれ自分のデッキから捨てた枚数分のカードをドローする。

 

 

「ここにきて手札の交換とは……貴様の諦めの悪さは驚嘆に値するな」

 

「何分、それだけが取り柄なものでして」

 

「だが、その様子を見るに逆転のカードはとうとう引けなかったようだな……もう諦めて決闘(デュエル)など止めてしまえ。貴様は決闘者(デュエリスト)の器ではない。戦った私には分かる」

 

「ははは、よく言われますよ。自分でもそう思いますし。モンスターもデッキも天邪鬼で全然私の言うこと聞いてくれなくて……」

 

「そうだろうそうだろう。私の目に狂いはない」

 

「……でも、だからでしょうね」

 

「?」

 

「勝利を諦めた直後に、私のデッキ(この子たち)は途端に生き生きと動き出すんですよ」

 

本当に天邪鬼で厄介で扱いにくい子ばっかりで。

特にこの子はとりわけ面倒くさい精霊(モンスター)です。

 

「私は墓地にいる悪魔族モンスター、X・E・N・O、ブレイン・ジャッカー、憑依するブラッドソウルの3体を除外」

 

「なんだと!? 何時の間にそんなモンスターを墓地に……手札抹殺で捨てたカードか!」

 

「はい、ついさっきたった今墓地に送ったところです。おかげで条件を満たせました。さあ、出番です。ダーク・ネクロフィア!」

 

周囲の漂う闇の気配をさらに塗り潰すかのような漆黒のオーラ。

 

圧倒的存在感。

 

私の墓地から3枚の悪魔族モンスターが取り除かれ、フィールドの浮かび上がったカードから、青白い不気味な女性人形モンスターが、壊れた女の子の人形を抱きかかえて現れて……現れて……

 

 

「「『…………』」」

 

 

前言撤回、現れません。

そのかわり、フィールドに浮かんだカードの中から「とてとて、バタバタ」と何やら慌ただしい音が聞こえてきます。

それに加えて「バタンッゴツンッ」と何かにぶつかるような音が……時折悲鳴らしき声も聞こえてきます。

何やってんですかいったい?

 

そんなこんなで待つこと数十秒。

ようやく彼女は現れたのでした。

 

『ご、ごめんなさい、おまたせしました…』

 

「ええ、待ちましたよ。とっても」

 

『はうっ、すみません』

 

『デートに遅れた恋人かっ!』

 

 

【ダーク・ネクロフィア】

効果モンスター

星8/闇属性/悪魔族/攻2200/守2800

このカードは通常召喚できない。

自分の墓地に存在する悪魔族モンスター3体をゲームから除外した場合に特殊召喚する事ができる。

このカードが相手によって破壊され墓地へ送られたターンのエンドフェイズ時、このカードを装備カード扱いとして相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体に装備する。

この効果で装備カード扱いになっている場合のみ、装備モンスターのコントロールを得る。

 

 

カードから飛び出してきたのは、青白い女性マリオネットと、それを糸で操っている小さな女の子の人形です。

本体であるらしい小さな少女を模したアンティークドールは当たり前のように壊れてないし抱きかかえられていません。

壊れてないどころか、甘ロリ全開な服で球体関節などが隠れ、表情も豊かにクリクリ変化するのも相まって見た目には普通の女の子にしか見えないという、どこの世界の薔○乙女ですかと突っ込みたくなるような容姿をしています。

 

いやまあ、修理したのは私なんですが。

本人たっての希望でもあったし、何より何時までも壊れたままというのもかわいそうと思ったので毎日少しずつコツコツ修繕したのでした。

ただし、身体は治っても中身のポンコツ具合は治りませんでしたが。

 

「な、なんだこのモンスターは?」

 

「ご紹介します。ダーク・ネクロフィアのフィアちゃんです」

 

『よろしくおねがいします!』

 

見えていないにも関わらず、ぺこりと青白いマリオネット共々お辞儀するフィアちゃん。

お遊戯みたいです……いや遊戯なんですけど。

 

人形なのに、全く人形らしくありません。

というか、精霊らしくもなく、ドジッコなところも含めて人間くさいです。

 

どのくらいのドジッコかというと、真夜中に勝手にデッキから抜け出したかと思えば心霊現象(うっかり)で部屋の物を壊し、それを何とかしようとして更なる被害を生み出して、もうどうにならなくなって助けを求めて部屋の外にふらふらと飛び出していったかと思えば、その先で迷子になってしまうくらいのドジッコです。

 

朝起きたら知らぬ間に部屋が荒らされていて、さらに突然非通知で『ふえぇ、ここどこぉ?』なんて電話がかかってきた時は本気でビビりました。

何とも心臓に悪いモーニングコールです。

つうか、外に飛び出す前にまず私を起こせよ。

いやまあ、無自覚に被害を拡大するのはオカルトモンスターらしいと言えばある意味そうなんですけど。

決闘(デュエル)で共に戦う仲間というより、いろんな意味でひたすら手のかかる妹みたいな心境です。

ルカちゃんとは別の意味で目が離せません。

 

 

「……ずいぶんと信頼しているモンスターのようだな、だが所詮攻撃力2200。ジェノサイドキングデーモンは倒せても、バーサーク・デッド・ドラゴンは倒せまい。さらに私の手札にはデスルークデーモンがいる」

 

 

【デスルークデーモン】

効果モンスター

星3/光属性/悪魔族/攻1100/守1800

このカードのコントローラーは自分のスタンバイフェイズ毎に500ライフポイントを払う。

このカードが相手のコントロールするカードの効果の対象になり、その処理を行う時にサイコロを1回振る。

3が出た場合、その効果を無効にし破壊する。

自分フィールド上の「ジェノサイドキングデーモン」が破壊され墓地に送られた時、このカードを手札から墓地に送る事で、その「ジェノサイドキングデーモン」1体を特殊召喚する。

 

 

「今更何をしようと無駄だ。貴様には敗北以外のゴールはない!」

 

「そんなこと言われなくても解ってます。言ったはずですよ、勝利は諦めたって。私は自分フィールド上に2体のトーチトークンを特殊召喚」

 

此処からは賭けですね。

何せ初めて召喚するモンスターです。

さて、どんな奴なのか……できればまともであってほしいところです。

 

「召喚! トーチ・ゴーレム!」

 

拷問(トーチ)の名前の通り、頭部に凶悪な丸鋸が取り付けられた機械のようなゴーレムがフィールドに現れました。

いや~、これは頼もしいですね。

フィアちゃんと比べると余計に。

 

 

【トーチ・ゴーレム】

効果モンスター

星8/闇属性/悪魔族/攻3000/守 300

このカードは通常召喚できない。

このカードを手札から出す場合、自分フィールド上に「トーチトークン」(悪魔族・闇・星1・攻/守0)を2体攻撃表示で特殊召喚し、相手フィールド上にこのカードを特殊召喚しなければならない。

このカードを特殊召喚する場合、このターン通常召喚はできない。

 

 

これで自分のフィールドに現れてくれるなら言うことなしだったんですが……いや、敵に回すとおっかないことこの上なしです。

 

「貴様ふざけているのか!? 自分フィールドに役に立たない雑魚を召喚し、相手フィールドに攻撃力3000のモンスターを召喚するなど!」

 

「まあまあ、勝利を諦めた弱者のあがきです。黙って見ていてくださいよ。さて、フィアちゃん? トーチ・ゴーレムに攻撃です」

 

『はいっ、がんばりま…………え?』

 

「トーチ・ゴーレムに攻撃です」

 

『……じぇのさいどきんぐでーもんじゃなくて?』

 

「トーチ・ゴーレムです」

 

『む、むりです、かてないよ。ばらばらにされちゃう!』

 

「はい、バラバラにされてください」

 

『鬼がいる……』

 

何を言ってるんですかココロちゃん?

自爆特攻は立派な戦略の1つです。

何も悪くないです。

 

『う、うわああああん! ばけてでてやるううう!』

 

「はい」

 

それがフィアちゃんの仕事です。

マリオネット共々、涙目になってトーチ・ゴーレムに突撃して言ったフィアちゃんは、振り下ろされたゴーレムの拳にあっさりと潰されました。

プチっという音が何とも印象的に響きます。

しかし、トーチ・ゴーレムも容赦ないですね。

 

『……不器用なもんで』

 

『喋れたんだ……』

 

まあ、何はともあれご苦労さまですフィアちゃん、これが終わったらまた修理してあげますから。

 

 

暁 遊理

LP 1400 → 600

 

 

「ターンエンドです」

 

「本当に何がしたかったんだ?」

 

「まあ、見ててください。この瞬間、墓地のダーク・ネクロフィアの効果発動! このカードが相手によって破壊され墓地へ送られたターン終了時、このカードを装備カード扱いとして相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体に装備します。この効果で装備カード扱いになっている場合のみ、装備モンスターのコントロールを得ることができます。さあフィアちゃん、宣言通り化けて出てください!」

 

『は、はい!』

 

墓地から飛び出したやや汚れたフィアちゃんが、指先から糸を伸ばしてトーチ・ゴーレムにくっ付けました。

糸に操られたトーチ・ゴーレムはこちらのフィールドにやってきます。

ふっ、機械は説得が楽でいい……機械族じゃなくて悪魔族ですけど。

 

「なるほど、上級モンスターを奪ったか。だが…」

 

「それだけじゃありません。さらにこの瞬間、(トラップ)発動! ギブ&テイク!」

 

 

【ギブ(アンド)テイク】

通常罠

自分の墓地に存在するモンスター1体を相手フィールド上に守備表示で特殊召喚し、そのレベルの数だけ自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体のレベルをエンドフェイズ時まで上げる。

 

 

「さあ、再び相手フィールドに甦れ、明日香さんのエース、サイバー・ブレイダー! 今度こそ活躍して貰いますよ」

 

そう、過労死するほどに。

 

 

【サイバー・ブレイダー】

融合・効果モンスター

星6/地属性/戦士族/攻2100/守 800

「エトワール・サイバー」+「ブレード・スケーター」

このモンスターの融合召喚は上記のカードでしか行えない。

相手のコントロールするモンスターが1体のみの場合、このカードは戦闘によっては破壊されない。

相手のコントロールするモンスターが2体のみの場合、このカードの攻撃力は倍になる。

相手のコントロールするモンスターが3体のみの場合、このカードは相手の魔法・罠・効果モンスターの効果を無効にする。

 

 

 

タイタンさんのフィールドに召喚されたサイバー・ブレイダーはそのままくるくると踊り始めました。

 

「な、なんだ?」

 

「サイバー・ブレイダーは相手フィールドに存在するモンスターの数に応じてその効果を変化させる極めて特殊なモンスターです。この場合の相手のフィールドとは私のフィールドです。私のフィールドにはトーチトークンが2体と、先ほどコントロールを奪ったトーチ・ゴーレムの合計3体! よって、相手の魔法、罠、モンスター効果を全て無効にします! パ・ド・カトル!」

 

瞬間、トーチ・ゴーレムの行動を支配していたフィアちゃんの操り糸が切れて、タイタンさんのフィールドに帰っていきます。

それとほぼ同時に、サイバー・ブレイダーのステップも変化しました。

 

「フィアちゃんの効果が無効化され、トーチ・ゴーレムのコントロールが再びタイタンさんに戻ります。トーチ・ゴーレムが貴方のフィールドに帰還したことによってモンスターの数は2体に減りました。よって、サイバー・ブレイダーの効果が変化します。モンスターが2体の場合、攻撃力は2倍になります。 パ・ド・トロワ!」

 

と言っても、守備表示なので何の意味もありませんけどね。

重要なのは、サイバー・ブレイダーの攻撃力が上がったことではなく、無効化効果が消えた事です。

 

「無効化効果が消えたことにより、再びダーク・ネクロフィアがトーチ・ゴーレムのコントロールを奪い取ります!」

 

『ちょっと待って、これって……』

 

「モンスターの数が再び3体になったことにより、サイバー・ブレイダーのモンスター効果がまたまた変化、パ・ド・カトル!」

 

再び、ステップを変更するサイバー・ブレイダー。

 

「ま、まさか…」

 

「魔法、罠、効果全てが無効化されたことにより、トーチ・ゴーレムは再び貴方のフィールドへ帰還します。そしてモンスターの数が2体に減ったことによりサイバー・ブレイダーの効果が変化! パ・ド・トロワ! あとはもう言わずもがなでしょう。効果変更により、無効化消失、トーチ・ゴーレムが私のフィールドに再びやってきます!」

 

『無限ループ!?』

 

『むげんるーぷ?』

 

「無限ループだと!?」

 

「そう、無限ループです! しかもデッキ切れでもライフ切れでも止まらず任意解除も不可能な完全(パーフェクト)(むげん)ループです! つまり、サイバー・ブレイダーは赤い靴を履いた童話の少女のごとく、止まることなく不眠不休で永久に踊り続けるってことなのですよ!」

 

サイバー・ブレイダーの顔が恐怖にひきつりました。

逃がしませんよ?

明日香さんを助けるためにも、過労死するまで存分に舞い狂ってください!

 

『鬼がいる……』

 

『ひゃわわ』

 

「貴様、こんなことしていったい何のつもりだ!?」

 

「何もしませんよ?」

 

「なん……だと?」

 

「そんな驚くことですかね? 私に敗北以外のゴールはあり得ないと断言したのは他でもない貴方のはずですよ」

 

私はそのセリフを否定しません。

実際その通りでしたし、その運命をひっくり返すだけの実力もありませんでしたから。

それだけできることが限られているなら、選択肢はたった1つです。

 

「私はその敗北のゴールに到達するまで道のりを可能な限り引き延ばすまでです」

 

私はその場にぺたんと腰を下ろしつつ言い放ちました。

といっても、さすがに本当に永遠に引き延ばすつもりはありませんけどね。

決闘(デュエル)のルール的には永遠でも、人間はもちろん精霊の体力にも限りはありますし。

 

私はポケットをひっくり返し中身をぶちまけます。

出てきたのは大量の兵糧もといお菓子類。

感謝しますよ十代君。

 

「さて、手始めに3日ほど粘って見ましょうか。貴様は本当にそれでも決闘者(デュエリスト)か! とか思ってるかもしれませんけど。これはもはや決闘(デュエル)ではないと言ったのも貴方であることをお忘れなく。誅伐は十分できたでしょう。ならばここからは私のサバイバルに付き合ってください。あ、やっぱり無理して付き合わなくてもいいですよ? 限界だと思ったらどうぞご自由にゲームを中断してこの場から立ち去ってください。私は追いませんから」

 

さて、こんなもんですかね。

私は言いたいことを全部言い尽くした後、のんびりと見せつけるようにフルーツバーを口に頬張ったのでした。

飲み物がないのがちょっと辛いなぁとか思いつつ。




どうしようもない格上を前に敗北以外の決着はありえない、ならどうするか。

遊理は「決着つけさせなければいいじゃない」という結論にたどり着きました。

実際、アニメでは決闘(デュエル)を途中で放棄して決着を付けずに中断することは珍しくないわけで。
先々週の放送でもやってたし。


何というか、こういうことするから普通の感性を持った一般の精霊に嫌われるんでしょうね。
遊理の不幸もなかなかですけど、サイバー・ブレイダーはもっと不憫です。

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