主人公は原作主人公と、同学年にしました。
なお、はっきり明記しておきますが、僕はガチデッキを否定する気は毛頭ありません。
内容が内容だけに賛否が物凄い別れてるんですよねこの物語。
『おお、島の真ん中にでっかい火山がある! 火山島なのかな? それにしてもこんな島をよくまるごと学校にできたよね!』
私こと暁 遊理について……憑いて? とにかく一緒にいる魔法カード【心変わり】の精霊、通称ココロちゃんがヘリの窓に張り付いてはしゃいでいます。
小学生か……そういえば精霊に年齢の概念はあるのですかね。
今回、入学試験をパスした生徒は私を含めて全員―――と言っても30人くらいしかいませんが―――ヘリに乗って学園島まで移動します。
「たかが火山でそこまで興奮しなくても…精霊界にはもっと幻想的な光景があったのでは?」
『さあね~あるかもしれないし、ないかもしれない』
「要領を得ませんね。どういう世界なのですか?」
『要領を得ない世界なのよ』
禅問答みたいです。
まあ、見えるけど見えないものが住まう世界なんて大体そんな感じなのかもしれません。
デュエルアカデミアに通う生徒は編入試験の成績によって3種類の制服、3つの寮に分けられます。
中等部からくり上がり組の成績優秀者は、湖に面した絢爛豪華な学生寮オベリスクブルーに。
青を基調とした制服が目印です。
高等部から編入試験をパスした成績優秀者は日当たりのよい丘の学生寮ラーイエローに。
制服の色は黄色ですね。
そしてそれ以外の生徒、様々な理由で成績が振るわなかった生徒は全部まとめて断崖絶壁の海に面したボロボロの学生寮オシリスレッドに。
赤い色の制服はレッドゾーンの危険な奴らを意味するそうです。
各寮の名前の由来は、3幻神のカード【オベリスクの巨神兵】【ラーの翼神竜】【オシリスの天空竜】なのでしょうけど……オベリスクが最上位で、オシリスが最下位なのは何故なのでしょう?
強さ順なら太陽神ラーが最上位でしかるべきです。
この世界のラーはマジで強いんです……見たことないのでたぶんですけど。
前世のあれはラーじゃなくてヲーです。
それはさておき私の寮は
高等部からの編入なのにオベリスクブルーに入れた理由は成績優秀だったから……では勿論ありません。
前世ではどうだったか覚えてませんが、この世界においては
そのためか、希少な女子生徒は成績の高低に関係なくオベリスクブルーの女子寮に配属されるそうです。
というか女子寮がここしかありません。
といっても実際はほとんどの女子生徒が中等部出身の成績優秀者で、高等部から試験を受けてまで編入してくる女子生徒はめったにいないそうで。
今年はたった1人だけ……つまり私だけです。
肩身が狭い……
周囲が全員中等部からの顔見知りで私1人だけ部外者という圧倒的疎外感と場違い感に耐え切れず、私は寮を飛び出しました。
何というか、空気が煌びやかすぎて庶民である私は馴染める気がしないというか、そこに住んでる女子生徒もどこか浮世離れしているのですよ。
というか、どいつもこいつも身長が高い!
プロポーションが凄い!
ついこの間まで中学生だったとは到底思えないモデル体型ばっかりです。
どうなってるんでしょうか?
『皆
何でもないことのようにココロちゃん。
「……そういえば、男性のプロデュエリストもパワーデッキ使いは体格がいい人が多かったですね」
極端だと下手なボディビルダーなんかよりムキムキだったりします。
そして私の見た限り、女子生徒で一番強い輝きを放っている
突っ込みたいけど事実として女王の名に相応しいカリスマと輝きを備えているから突っ込めない…
胸囲の……もとい驚異の格差社会なのです。
『別に気にすることないと思うよ~?』
「身長が足りないんですよ」
背は別に高い方じゃないとは思ってましたが、よもや周囲から頭1つ小さいとは思わなかったです。
ノースリーブミニスカートという、やたらスタイリッシュな女子制服が欠片も似合わない……仕方なく長袖の制服を着てみたのですが今度は袖がブカブカ…余計に小さく見えるのですよ。
と、そんな益体もないことをココロちゃんと言い合いながら特に目的もなく学校の中を歩いていたら何やら広い空間が見えてきました。
体育館……いえこれは闘技場ですね。
『でっかいね~』
「ですね」
私は素直に感嘆しました。
それぞれの良さがあるのですよ。
今まで何百人、何千人という
長い時間をかけて染みついた目には見えない闘志のうずまきを肌で感じるのです。
『相変わらずそういうのに敏感よね~。やっぱり遊理は特別なのかも』
「そういうのじゃないと思いますよ」
むしろ弱いからこその資質なんじゃないかと。
いわばこれは草食動物とかの危機察知能力に近いような気がしますね……自分で分析して悲しくなるような結論ですけど。
「匂う、匂うぞ~
「え~?
「『
初めて聞く言葉です。
これをそんな風に表現するとか、なかなかぶっ飛んだセンスをお持ちで……何やら聞き覚えのある声なのです。
というか、私以外にも感じ取れる人がいたんですね。
「あ! 勝手に入っちゃっていいの!?」
闘技場に入ってきたのは、見るからにヤンチャ坊主な男子生徒と眼鏡をかけた気弱そうな男子生徒の2人組でした。
両者ともオシリスレッドの制服を着ています。
『あの元気そうな方の男の子って…』
「はい、実技でクロノス先生を破った110番のHERO使いですね」
エリートであるオベリスクブルーの生徒と比較しても何ら遜色ない
見間違えようがありません。
彼は私と同じように電車の事故に巻き込まれて遅れたらしく試験受付ギリギリに到着し、結果としてアカデミアの
良い意味でも悪い意味でも新入生の中では注目の的になっています。
『遊理の奇運もなかなかだけど、彼の悪運も大したもんだね』とはココロちゃんの評価です。
「おお~すげ~」
彼はキラキラと目を輝かせて周囲を見渡します。
「ここって最新設備の
心底羨ましそうにフィールドを見つめる眼鏡少年。
「やればいいんじゃないですか? 幸い今は誰も使ってないみたいですし」
急に話しかけたのがまずかったのか、ビクッと飛び上がる眼鏡少年。
その反応は地味に傷つきますね…同じくらいの身長で親近感抱いていたのに。
「え、でもいいのかな…」
「遠慮することないと思いますよ、だって私も貴方たちもアカデミアの生徒なんですから」
アンティールールや闇のゲームとかなら話は別ですが。
「そいつの言うとおりだぜ。そうだ、お前も一緒にどうだ? 俺、
こっちの少年―――十代君は物怖じしませんね。
類まれなる
「
「ぼ、僕は
こっちの眼鏡の弟分は翔君ですね、覚えました……ってココロちゃん?
ココロちゃんは私たちが自己紹介している間、十代君の顔の前でしきりに腕を振っていました。
何してるんですか貴女は?
『いや、
残念、と肩を落とすココロちゃん。
「(今は無理でしたけど、将来的にはまだ可能性あると思いますよ)」
『クリクリ~』
今の時点でも、精霊に好かれる素養はあるみたいですし。
と私は彼の肩に止まっているハネクリボーを見ながら思います。
「……? 俺の肩に何かついてるか?」
「さあ? いずれ気づくといいですね」
さて、どうなるやら『クリクリ~』十代君もいずれ『クリクリ~』精霊『クリ~』見えるよう『クリクリクリ~』にってうっとうしい!
さっきからなんですかこの羽の生えた毛玉は!
私にまとわりついてクリクリ笑っています。
ひょっとしなくても思いっきりからかわれてますね私。
『ハネクリボーに限らず、クリボーは皆人懐っこいからね。遊理と遊びたい……いや遊理
「私は玩具ですか!」
「うお!? どうしたんだ急に?」
「失礼、取り乱しました」
「意味わかんないッス……」
突然叫びだした(ように見える)私にオシリスコンビが若干引いています。
元を正せば十代君についてる精霊の所為なのに……そもそもHERO使いであるはずの彼が何故ハネクリボーを連れているのでしょう?
「まあいいや、とにかく
たとえどんな変な奴でも。
そんなセリフが十代君の言葉の後に聞こえてきたような気がしたのは私の被害妄想でしょうか?
「おっとそういうわけにはいかないんだよなぁ」
突然私たちの間にオベリスクブルーの制服を着た男子生徒の2人組が割り込んできました。
『何奴ッ!?』
『クリクリッ!』
物凄く良いリアクションをする精霊コンビ。
久方ぶりに自分以外の精霊を見たせいか、やたらテンション上がってますねこいつら。
「上を見てみろ」
「オベリスクの紋章が見えないか?」
割り込んできた男子生徒の2人が、不遜な態度で壁の紋章を示します。
あれは……確かにオベリスクの巨神兵の顔ですね。
えっと? つまりここはオベリスクブルー専用ってことですか?
『勿体ない……』
ココロちゃんが唖然としてつぶやきましたが、私も同感です。
これだけの設備を限られた生徒だけにしか使わせないなんて贅沢がどうとか言う以前の問題として設備の無駄でしょう。
「ご、ごめん知らなかったんだ……寮に帰ろう兄貴?」
翔君は気後れしたように言います。
「う~ん、なんかしっくりこないなぁ……じゃあ、お前が俺と勝負しないか? それならいいだろ?」
対して十代君は欠片も怯んでいません。
さすがに豪胆です。
「クロノス先生に勝っただけのことはありますね~」
途端、私のつぶやきを聞いたオベリスクブルーの2人組がギョッとしたように私を振り返り、改めて十代君を見つめました。
「だ、誰かと思ったら!」
気づいてなかったんですか?
「万丈目さん! クロノス教諭に勝った110番ですよ!」
「こっちの小娘も、試験官のライフポイントを一撃で0にしたやつだ!」
いや、小娘って…同い年ですよ? 見えないかもですけど、それは翔君とて同じはず。
それはさておき、呼ばれて出てきたのはオベリスクブルーの制服を着た目つきも髪型も鋭い男子生徒。
『何奴ッ!?』
『クリクリ~!』
現れた万丈目君は、生意気な
選民思想に染まった、まさにエリートって感じですね。
ただ不遜なだけではなく、恵まれた
「ああ、俺遊城 十代! よろしく! で、あいつは?」
十代君は相手が誰でも欠片も態度を変えませんね。
「お前万丈目さんを知らないのか! 同じ1年でも中等部からの生え抜き、超エリートクラスのナンバーワン!」
「未来の
いや、知るわけないでしょう。
いくら有名でも、それは中等部内の話で高等部からの編入組である私達には知りようがないのですよ。
「おかしいな」
「何が?」
「だって
『言うね~アンタのご主人』
『クリクリ~』
「ドロップアウト組のオシリスレッドが身の程知らずな…「ビークワイエット、諸君、はしゃぐな」万丈目さん?」
生意気な態度に怒りをあらわにした2人組を万丈目……さんがやんわりと制止しました。
「そいつら、お前たちよりやる。入学試験
「まぐれですよ」
とはいえ、この世界に必然ではない偶然なんて存在するのか微妙ですけど。
あと私を引き合いに出さないでください。
「俺はまぐれじゃないぜ。実力さ」
「フフン、その実力ここで見せて欲しいもだな」
「いいぜ」
睨みあって闘志をぶつけ合う2人。
『おお、
『クリクリ!』
そしていつの間にやら蚊帳の外になっている私と翔君。
とりあえず、私が
何故かって? ほぼ確実に負けるからですよ。
「貴方達! 何してるの?」
剣呑とした空気をまたもや突然の乱入者が打ち破りました。
静かな、それでいて凛とした張りのある声です……今度は女王様のご登場ですか。
『何奴ッ!?』
『クリクリ!』
精霊コンビはまたしてもそのリアクション、気に入ったんですか?
『いやここまで来るともう、お約束かと思って。だったら守らなきゃいけないじゃない?』
「お約束」と「約束」は全然違いますよ。
「誰だ?」
疑問の表情を浮かべる十代君
私がこっそりと教えます。
「明日香さんですよ。
その存在感は十代君にも万条目さんにも負けていません。
「へぇ、そうなのか。あいつとも
キラキラと目を輝かせる十代君。
しかし、改めてみると凄い光景ですね。
新入生でも指折りの実力者が揃い踏み……なんでこんな場所に居合わせちゃったのでしょうか?
場違いすぎて泣けてきます。
「天上院君」
万丈目さんの顔があからさまに穏やかになりました。
わかりやすい。
それにしても男子である万条目さんがさん付けで、女子の明日香さんを君付けするとか、何だかあべこべなような…
「やあ、この新入りがあまりに世間知らずなんでねぇ。学園の厳しさを少々教えて差し上げようと思って」
親しげに話しかける万丈目さんですが、明日香さんは終始鋭い顔で威圧感を放ったままです。
「そろそろ寮で歓迎会が始まる時間よ?」
文脈を無視したその言葉は言外にとっとと帰れと言っていました。
「っ……引き上げるぞ」
取り巻きの2人組をひきつれてその場を後にする万丈目さん。
「貴方達、万丈目君の挑発に乗らないことね。あいつらロクでもない連中なんだから…」
万丈目さん達が立ち去った後、そう私たちに忠告する明日香さん。
仲悪いのですかね?
「へぇ~、わざわざそんなことを教えてくれるなんて、ひょっとして俺に一目惚れか!?」
「兄貴そんなあり得ないことを!」
重くなった空気をぶち壊そうとしたのか、おどけた様に十代君はそんなことを言いました。
おかげで、険しい表情だった明日香さんも笑顔になり空気が少し軽くなりました。
「オシリスレッドでも歓迎会が始まるわよ」
「っそうだ! 寮に戻るぞ!」
「あっ、待ってよ兄貴~」
赤い制服の2人はあわただしくその場を後にする…かと思いきや十代君はくるりと振り返り
「そうだ! 言い忘れたぜ。俺、遊城 十代! よろしくな明日香! それじゃまたな遊理! お前も結構凄い奴だったんだな!」
十代君はそれだけ言い残すと、今度こそ翔君と一緒に駆け出していきました。
『最後の最後まで調子の良い男の子だったね~。クリボーくんが気に入るのも分かるなぁ』
「さて、そこの貴女……遊理と言ったかしら? 私達も女子寮に帰るわよ」
十代君の元気に当てられてか、当初より幾分柔らかい表情で明日香が私の腕を引っ張ります。
『十代君と翔君も凸凹コンビだったけど、こっちはこっちでアンバランスだよね~、同い年には到底見えないわ』
ココロちゃんが苦笑いしていますが、今は構っていられません。
「うぇ?…け、欠席するわけには…」
「そんなわけにはいかないでしょ。それでなくても高等部から編入する女子は珍しいのに、あまつさえその娘が試験官相手にワンショットキルをしたって、皆興味津々なんだから」
「そんなに注目されてたんですか私!?」
こ、これは予想外です。
どうしよう?
空気になって目立たないようにやり過ごそうと思っていたのですが。
その後、私は何処の貴族の晩餐ですかと突っ込みたくなるような歓迎会の中心で揉みくちゃにされたのでした。
続きを書くにあたって、まず決めようと思ったのは主人公の容姿の設定でした。
なんとなく女子の平均身長くらいに設定して……そのあと、明日香さんの身長を調べて170センチと判明してびっくりです。
ちなみに翔君は150センチでした。
あとは髪型ですけど…
ヒトデやカニやエビが跋扈する中、これに対抗できる髪型は……