転生者・暁 遊理の決闘考察   作:T・P・R

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遊戯王二次を書く場合カードテキストを書く書かないは作者の自由であり、僕は書く派です。

というか、無いと僕自身が何をしているのか分からなくなってしまいます。
所詮遊戯王はニワカってことなのでしょうね…


6話

「うう、やはりシニョリーナ暁では、力不足でしたノーネ……」

 

教員用の観覧席にて。

クロノス・デ・メディチ教諭は暗澹たる思いで十代と遊理の決闘(デュエル)の様子を観戦していた。

 

当初はオベリスクブルーのエリート、万丈目を十代にぶつけるつもりだったのだ。

わざわざ事前に貯金を下ろしてまで新カードを買い占め、入手したレアカードを万丈目 準に譲渡し、圧倒的なカード差と実力差で遊城 十代(ドロップアウトボーイ)をギャフンと言わせる計画だったのだ。

もともと、筆記は壊滅している十代である。

これで実技でも敗北したとなれば退校は必至だった。

 

しかし、落とした財布を遊理が拾ったことが切っ掛けで、クロノスの思惑は少しずつ狂い始めた。

 

暁 遊理

入学試験デュエルで試験官を相手にワンショットキルを成し遂げた生徒。

成績は優秀だが、もともと成績優秀者だけが集められたオベリスクブルーの中では指して目立たない平凡な生徒でしかない。

一応、入学試験デュエルでは試験官を相手にワンショットキルを成し遂げたらしいが、実際に十代との決闘(デュエル)でのタクティクスを見ていると、それも単なるマグレだったんじゃないかと疑ってしまう。

 

初手のエクスチェンジの発動タイミングと言い、わざわざ相手フィールドに上級モンスターを召喚するという意味不明な行動と言い、はっきり言ってむちゃくちゃだった。

本当に勝つつもりなのか疑わしくなるほどである。

 

「せめて、買い占めたレアカードでデッキを強化できていれば……」

 

遊理はかたくなに受け取らなかった。

私はこの子たちに選ばれていない、というクロノスからすれば訳の分からない理由で。

 

このまま成績優秀者である遊理が、落第生である十代に負けてしまえば、ギャフンと言わせるどころか、暗に十代の「知識と実戦は関係ない」という言葉を全肯定してしまう結果になってしまうだろう。

 

最悪の場合、遊理の退校もありえた。

 

「奇跡よ、起こってくれナノーネ」

 

 

 

 

 

 

「私のターン、ドロー」

 

さて、私の引いたカードの色は……茶色!

モンスターカードです!

 

ようやく来てくれましたか、これで何とか巻き返せる……と良いなぁ。

 

「この瞬間、悪魔の蜃気楼の効果発動! デッキから手札が4枚になるようにカードをドローする!」

 

十代君が一気にデッキからカードを3枚ドローしました。

 

「さらに速攻魔法! 非常食!」

 

 

【非常食】

速攻魔法

このカード以外の自分フィールド上に存在する

魔法・罠カードを任意の枚数墓地へ送って発動する。

墓地へ送ったカード1枚につき、自分は1000ライフポイント回復する。

 

 

やはり先ほどの伏せカードは非常食でしたか。

 

「これで悪夢の蜃気楼を墓地に送り、ライフを1000回復!」

 

 

遊城 十代

LP 4000 → 5000

 

 

悪夢の蜃気楼のデメリットを回避した挙句、回復までされてしまいました。

割と有名なコンボですが、実際にやられると溜まったもんじゃないですね…

 

「私はモンスターを裏側守備表示でセット。さらに魔法カード、太陽の書を発動!」

 

 

【太陽の書】

通常魔法

フィールド上に裏側表示で存在するモンスター1体を選択し、表側攻撃表示にする。

 

 

「これにより私のフィールドのモンスター1体は表側表示になります。反転! ブレイン・ジャッカー!」

 

表れたのは人間の脳髄に悪魔の手足やら翼やら目玉やらがくっついた不気味なモンスターです。

 

 

【ブレイン・ジャッカー】

効果モンスター

星2/闇属性/悪魔族/攻 200/守 900

リバース:このカードは装備カード扱いとなり、相手フィールド上モンスターに装備する。

このカードを装備したモンスターのコントロールを得る。

相手のスタンバイフェイズ毎に、相手は500ライフポイント回復する。

 

 

「ブレイン・ジャッカーのリバース効果。相手フィールド上のモンスターにこのカードを装備カードとして装備することでそのコントロールを奪い取ります!」

 

「何だって!?」

 

『よし、これでランパートガンナーが奪えれば少しは…「いえ、私はヴォルカニック・クイーンを選択します」なんで!?』

 

ギョッとした様子でこちらを振り返るココロちゃん。

十代君も不思議そうな表情です。

いいんですよ、ちゃんと考えがあってのことです。

ことですが……

 

『ねえ!? わざわざ私を呼んだってことは、私をついに受け入れたってことだよね!?』

 

ちょっと早まってしまったかもしれません。

ルカちゃんの炎の身体に装備カードとしてくっ付いたブレイン・ジャッカーが燃えています。

炎にまかれてのた打ち回るブレイン・ジャッカー。

ルカちゃんはうっとりした表情でそれを眺めています。

夢に見そうな光景です。

 

『マジ引くわ…』

 

『またまた、本当は仲良くしたい癖に』

 

『そんなわけないでしょ! こっちに来るな、寄るな、精霊界に帰れ変態!』

 

『うんうんわかってるよココロちゃん、心変わり(あまのじゃく)なココロちゃんのこと私はよく分かってるよ!』

 

『無駄にポジティブに好意的に解釈してんじゃないわよ!?』

 

いえ、ココロちゃん?

ワイワイ言い争うその光景は、とても喧嘩友達(なかよし)に見えますよ?

 

『で、それはそれとして、どうするの? 攻撃するの?』

 

「無理ですね」

 

ルカちゃんの攻撃力とランパートガンナーの守備力は同じ2500、突破不可能なのですよ。

おそらく十代君は、これを見越して数あるHEROの中からランパートガンナーを選んで召喚したのでしょうね。

これが戦略ではなく勘によるものだとすれば大した直観力です。

一応バーン効果を使えばダメージを与えられなくはないですが……今は止めておきましょう。

 

『本当に何のために奪ったのやら……』

 

言わないでください。

 

「私はカードをさらに1枚伏せてターンエンドです」

 

これで私手札はゼロ、フィールドの伏せカードは3枚になりました。

十代君はそれをワクワクというかドキドキした表情で見ています。

何を伏せたのか気になっているようですね…

 

 

ふっふっふ、まさか全部防御カードでもカウンターでもなくブラフだとは思うまい。

 

 

『使えないカードならなんでルカちゃんのコストにしないのよ?』

 

「さてね」

 

これもとりあえずは計算の内です。

それよりも問題はこっちです。

 

『わざわざ手間暇かけて私を呼んだってことは、私を愛してくれるってことだよねぇ? 凄くうれしい! 嬉しすぎて体中が熱くなる! だから私も遊理を愛するよ!』

 

 

だから心置きなく燃えてね?

 

ルカちゃんの全身から一際熱い炎が噴き出しました。

 

 

『これは単なる効果処理じゃない! 愛の炎なんだよおおおおぉぉおぉぉぉおおぉおぉ!!』

 

「いゃあああああ!」

 

『ちょっ、なんで私までってうわちゃああああ!?』

 

 

暁 遊理

LP 2500 → 1500

 

 

ルカちゃんのエンドフェイズにコントローラーに対して1000ポイントのバーン効果。

自分の場にモンスターがいればそれを身代りに回避できるのですが、フィールドどころか手札にもモンスターがいない私にはなす術がありません。

 

 

「お、俺のターン、ドロー……」

 

「ブ、ブレイン・ジャッカーの効果。スタンバイフェイズごとに相手のライフを500回復します」

 

「回復が必要なのは俺じゃないだろ…」

 

 

遊城 十代

LP 5000 → 5500

 

 

いよいよライフの差が絶望的になってきましたね。

 

「バトル! ランパートガンナーの効果! このモンスターは守備表示のまま相手プレイヤーに直接攻撃することが出来る! ランパート・ショット!」

 

『守備のまま攻撃? しかも直接!?』

 

ランパートガンナーの銃から放たれたミサイル? がルカちゃんを避けるように迂回して私に直撃しました。

 

「っ!」

 

 

暁 遊理

LP 1500 → 500

 

 

「ただし、この効果を使用した場合攻撃力は半分になる。ターンエンドだ」

 

内と外との波状攻撃で私の残りライフはとうとう500に。

いよいよ追い詰められましたね。

 

『ちょっと~ なんなのあのモンスター?』

 

『本当、私を無視するなんて』

 

 

ランパートガンナーは確かに守備表示のまま攻撃力を半分にして直接攻撃が可能なモンスターです。

しかし、その効果は相手フィールドがガラ空き状態、つまり直接攻撃可能な状態でないと使えないものだと思っていました。

明らかにOCGとは違うユニーク効果。

この世界に生まれてそれなりの時間を過ごしていますが未だにこういう場面に出くわすと混乱しちゃいます。

 

ですが…

 

「確かに予想外の効果でしたが、この状況そのものは予想外ではありません。むしろ計算通りと言えるのですよ」

 

『どういうこと?』

 

「十代君の攻めが普段からは考えられないほどに手緩いんですよ」

 

こう言ってはなんですが私ごときに止めを刺し損ねるなんて普段の十代君からすれば考えられない事態なのです。

それも悪夢の蜃気楼と非常食のコンボを使ってまで手札を増やしたにもかかわらずこの体たらく。

明らかに十代君の調子が上がっていませんね。

もし本調子の彼ならルカちゃんを正面から撃破して一気にライフを0まで削りきることも十分に可能だったでしょうに。

 

『そういえばそうよね…でもなんで? 遊理が何か仕掛けたの?』

 

 

「まさか」

 

これは私が何かしたからこうなったのではなく、十代君がもともとそういう特質の持ち主だったってことです。

今までは推測でしかありませんでしたが、実際に向き合って確信できました。

 

「たぶん十代君は窮地にこそ真の実力を発揮する、いわばクラッチ決闘者(デュエリスト)なのですよ」

 

『なるほど、こんな圧倒的過ぎる状況じゃ燃えないってわけか~』

 

思えば十代君は、今までは圧倒的強者を前に不利な状況を覆すようにして勝利してきました。

しかし今回は私という格下相手に最初から最後まで優勢なんて内容の一方的決闘(デュエル)です。

ジャイアントキリングの大番狂わせがアカデミアでの日常になっている十代君からしてみれば初めての体験なのでしょうね。

慣れない状況での決闘(デュエル)が彼に戸惑いを生んで、調子を落とす結果になっているのです。

 

つまり私と十代君というある意味ミスマッチな組み合わせがこの微妙な停滞を生んだわけですね。

さて、この空白のターンをどう生かすか……

ここまではイレギュラーをはらみつつも概ね予定通りですが……

 

手札0、残りライフ500。

フィールドには防御には全く役に立たない伏せカード3枚とエンドフェイズに私を焼くヴォルカニック・クイーン。

 

対する十代君は残りライフ5500もある上、フィールドには守備表示のまま直接攻撃が可能なランパートガンナーにセットカード1枚。

 

これでキーカードが引けなきゃ終わりですね。

 

「私のターン、ドロー」

 

さて、私が引いたカードは……

 

「……十代君」

 

「?」

 

「どうやらこの決闘(デュエル)、当初の予定通り私の独り勝ちで終わりそうです」

 

十代君だけはなくココロちゃんやルカちゃん、つまらなそうに観戦していた周囲の生徒や、教師も含めて。

その場にいる私以外の全員が息をのみました。

 

「っ!? この状況をひっくり返せるっていうのか!? ってか予定通りって……」

 

「はい、見ていてくださいね。私はモンスターを裏側守備表示でセットします」

 

 

「って、結局守備表示じゃないか!」

 

「はったりかよこのオベリスクブルーの恥さらしが!」

 

 

ヤジが飛びますが無視です。

 

「セットした瞬間、トラップ発動! 硫酸のたまった落とし穴!」

 

 

【硫酸のたまった落とし穴】

通常罠

フィールド上に裏側守備表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターを表側表示にして、守備力が2000以下の場合は破壊する。

守備力が2000より上の場合は裏側守備表示に戻す。

 

 

「落ちろ、私のセットモンスター!」

 

 

突如あいた大穴に落ちていく私のモンスター。

自分で召喚したモンスターを自分で罠にはめて突き落とすというこの行為にまたしても周囲にざわめきが広がります。

 

「自爆する気か? 自棄になったのか」

 

「半分正解です。そして反転して破壊された私のセットモンスター、幻惑のラフレシアのリバース効果発動!」

 

 

【幻惑のラフレシア】

効果モンスター

星2/地属性/植物族/攻 300/守 900

リバース:ターン終了時まで相手フィールド上表側表示モンスター1体のコントロールを得る。

 

 

「モンスター1体頂きます。来なさい! ランパートガンナー!」

 

「そんな!? 俺のヒーローがあああ!」

 

花粉を浴びて朦朧とした女銃戦士がふらふらとこちらのフィールドにやってきます。

 

『やった、形勢逆転! これでルカちゃんのバーン効果と合わせて総攻撃を仕掛ければライフはピッタリ0で遊理の勝ち!』

 

そう息巻くココロちゃん。

確かにそう上手くいけば私の勝ちですが、はたしてそう上手くいくでしょうか?

 

「無理ですね」

 

だいたい、それで勝てても意味がないというか、当初の目的が達成できません。

そもそもの前提として私の目指すところは十代君をギャフンと言わせることであり決闘(デュエル)の勝利ではないのですよ。

 

「私はさらにセットカードオープン、融合!」

 

「融合!? そうか、最初にエクスチェンジで交換して……」

 

「お察しの通り、ずっと伏せてました」

 

 

【融合】

通常魔法

自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

 

「フィールドのランパートガンナーとルカちゃ……ヴォルカニック・クイーンを融合!」

 

相手モンスターを素材とした融合召喚。

ある意味、セルフ超融合です。

 

 

「召喚! E・HERO ノヴァマスター!」

 

ルカちゃんとランパートガンナーが融合の渦に吸い込まれ、現れたのは炎を模した鎧を身に着けた紅の戦士です。

 

 

(エレメンタル)HERO(ヒーロー) ノヴァマスター】

融合・効果モンスター

星8/炎属性/戦士族/攻2600/守2100

「E・HERO」と名のついたモンスター+炎属性モンスター

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「俺の知らない……E・HERO」

 

「? 知らなかったんですか?」

 

「ああ! すげえぜ、こんなヒーローがいたなんて! 遊理はずっとこれを狙っていたのか!」

 

 

十代君は興奮を隠しきれないといった表情でした。

本当に知らないみたいですね。

この世界では余程のレアカードなのでしょうか……だったらなんで私のところに?

まあ、今はそんなことを考えてる場合じゃありませんね。

 

「バトル! ノヴァマスターで十代君にダイレクトアタック!」

 

私は攻撃宣言しました。

が、ノヴァマスターは動きません。

なんで?

 

「ノ、ノヴァマスター? いやノヴァマスターさん? いったいどうして……」

 

するとマスターさんがこちらを振り返って指をチッチッチと振っています。

一体何が足りないと?

 

『これはあれね。たぶん、技名を言ってほしいんだと思う』

 

「技名!?」

 

ど、どうしようそんなの考えて……

慌てる私。

早くしろと急かしてくるノヴァマスターさん。

さらにテンパる私。

えっと、えっと、ノヴァは確か新星って意味だから……

 

「ノ、ノヴァマスターさんの攻撃! スーパーノヴァエクスプロージョン!」

 

直訳で超新星爆発。

即興で考えた割には悪くない筈。

 

あ、ようやく動き出してくれました。

気に入ってくれたようで何よりです。

 

しかし、なんか締まらない展開ですね…

 

『それにこれで攻撃が通っても、ライフが5500もある十代君を削りきれないよ?』

 

「いや、そもそも通らないでしょうね」

 

『ええ?』

 

「トラップオープン! ドレインシールド!」

 

 

【ドレインシールド】

通常罠

相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。

攻撃モンスター1体の攻撃を無効にし、そのモンスターの攻撃力分だけ自分のライフを回復する。

 

 

「へへっ、エクスチェンジで交換したカードをずっと温存してたのはお前だけじゃないぜ!」

 

ドレインシールドの効果で、現れたバリアのような障壁に、ノヴァマスターさんの炎は残らず吸い込まれていきました。

 

 

遊城 十代

LP 5500 → 8100

 

 

「まあ、こうなるでしょうね」

 

『終わった……』

 

4000ルールではなかなか見られない数値にまで達した十代君のライフを見て絶望するココロちゃん。

まあ、これで終わりであることは確かですね。

 

「結局、知識と実戦は違うってことだな。どれだけ計算しても決闘(デュエル)は予定通りになんかならないぜ!」

 

「いえ、予定通りですよ? そもそもそれは私のカードですし、想定していないわけがないのです」

 

「何!?」

 

「これで全ての準備が整いました。ようやく発動できますよ。最後のリバースカードをオープン! 自爆スイッチ!」

 

「自爆スイッチィ!?」

 

 

【自爆スイッチ】

通常罠

自分のライフポイントが相手より7000ポイント以上少ない時に発動する事ができる。

お互いのライフポイントは0になる。

 

 

「遊理、お前まさか最初から!?」

 

「その通りですよ? 不思議に思いませんでした? 相手にわざわざライフ回復カードを渡したり、自らライフを削るようなプレイングをしたり」

 

そう、全てはこの瞬間のためです。

 

「言った通り、これで私の独り勝ちです」

 

私は眼の前に出現したドクロマークのスイッチを躊躇いなく押しました。

 

 

暁 遊理

LP 500 → 0

 

遊城 十代

LP 8100 → 0

 

 

私と十代君のライフが同時に0になったことにより、決闘(デュエル)引き分け(ドロー)で終わったのでした。

 

「楽しい…決闘(デュエル)だったかなぁ? とりあえずガッチャ」

 

「ガッチャ、です。それはさておき、賭けを覚えていますよね?」

 

「ああ、俺が勝ったら、遊理は俺に勉強を教えて、負けたら真面目に授業を受けろってのだろ?」

 

十代君は不完全燃焼そのものの様子でやや不満そうにしつつも、ニヤリと笑い

 

「でも、引き分けだったから賭けはお互いなしってことで「違いますよ? 十代君」……え?」

 

 

「私はこの決闘(デュエル)で貴方に()()()()()()()勉強を見るといったんです。そして十代君が私に()()()()()()()真面目に授業を受けるようにとも、あと実戦と知識は違うっていうセリフを取り消せってのもありましたね。そして試合の結果は引き分け。どちらも互いに勝てませんでしたよね??」

 

「……それじゃあ、賭けは?」

 

「もちろん、私に勝てなかったので約束通り提示した条件を全て飲んで頂きます。真面目に授業受けてください。もちろん私も十代君に勝てませんでした。一緒に勉強しましょう!」

 

「お、お前まさか全部最初から?」

 

「そのセリフは2度目ですが、何度でも言います。その通りですよ?」

 

故にこの結果は私の独り勝ちなんです。

これで全ては計画通り。

 

「じょ、冗談じゃないぜ!」

 

十代君は慌てた様子でその場から逃げようとします。

逃がすわけないでしょう?

 

私は素早く十代君の前に回り込み、1枚のカードを突き付けます。

 

「そ、そのカードは!」

 

「E・HERO ノヴァマスター。十代君は持っていないのでしたよね? どうです? 条件、飲んで頂けるのでしたらこのカードを差し上げても構いませんが?」

 

ゴクリ、と十代君が唾をのみ込みます。

その目はノヴァのカードに釘付けです。

 

『詭弁に鞭、さらに飴まで準備万端とか……やっぱり遊理ってこっちの才能あるよね絶対』

 

もともと、決闘(デュエル)ではまともに戦ったら不利なんです。

だったら、それ以外で勝利するだけです。

 

しばらく悩んだ末、ようやく十代君は口を開きました。

さあ、十代君の返答やいかに?




遊戯王の主人公は、追い詰めると覚醒してディスティニードローを繰り出してくる。
ではどうすればいいか?

遊理は「追い詰めなければいいじゃない」という結論に至りました。
実際効果あるのか微妙ですが。


ノヴァマスターは融合エレメンタルヒーローの中で唯一アニメにも漫画にも登場しない、つまりはOCGオリジナルのカードです。

OCG知識に精通した転生者である遊理とはそれなりの縁があったんでしょうね。
素材のヒーローとは仲良くないので、十代との対決以外では使えないカードでした。


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