今の所、世界の命運は俺にかかっている   作:流石ユユシタ

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九十八話 焼肉は悪い文明

 焼肉食べ放題。その言葉を聞くと自然と人は食欲がわいてくる。焼肉が食べ放題なのだ。それは当然。一般的に男性ならば2000㎉、女性なら1800㎉を焼肉食べ放題で欲望を尽くすと摂取してしまう。カルビ、ロース、ハラミと言った様々な部位のほかに、ウインナーやハムといった加工肉も置いてある。

 

 

 さて、ここで問題。誰でも分かる簡単な問題だ。食べ過ぎるとどうなる? 答え。後で悲鳴を上げる。

 

 

「ひぇぇぇぇぇえぇ!!!」

 

 

 私の後輩であるコハクと一緒にお風呂に入る前に体重計に乗った彼女は、両手を顔に当ててガタガタ体を震わせている。

 

「そりゃ、焼肉あれだけ食べればそうなるわよ」

「で、でも、かなり抑えたのですが……」

「でも、いつもよりは食べてたでしょ」

「それは……はい……」

 

 

今日は十六夜のお母さんが焼肉店の割引券を送ってくれたので六人で焼肉屋に行ったのだ。そこでコハクは微笑まし気にパクパク口に運んでいた。最初に野菜を食べて体重荷重対策をしていたが功を奏することはなかったようだ。

 

「くっ……焼肉食べ放題は人類にとって悪い文明です……消さなければ……」

「何言ってんのよ。食べてるときは最高の文明って言ってたじゃない」

「くっ……そのときは誘惑されて思考力が落ちていました。やはり、悪い文明……」

 

 

実際はそこまで増えた訳じゃないだろうに。過剰に見た目とか気にするのよね。私は彼女の顔から僅かに視線を落とした。そこにはマスクメロ……スイカ……全体をとおしてみるとボンキュッボン。私とは対照的と言える。私はキュッキュッキュ。

 

なぜ、私はこんなに小さいんだろう……

 

 

「先輩も測ってくださいよ。増えてる人が多ければ安心感を得られます」

「理由が思ったよりクズでビックリよ」

 

と言いつつも私は体重計に乗った。フム……

 

「むしろ減ってるわね」

「ガーン……」

 

 

自分だけ体重増加はかなりつらいようだ。うわぁぁぁんと彼女は頭に手をあててどうしてこうなったという表情をしながら体を震わせる。すると彼女のバストが揺れる。前より大きくなってる様な……

 

「コハク、何カップだっけ?」

「今はGカップです」

 

前は確かFだった。つまりこの短期間で成長したと言う事だ。それが体重が増加している原因な気がするがそれを口にして慰めると私が悔しいので黙っておこう。彼女はしばらく悩み、明日からランニングを増やすという決意を固めた。

 

スタイル全然良いと思うけど……どこまでストイックなのだろうか? 肩甲骨トレーニング、股関節を柔らかくするストレッチ、かなりきつくて変な踊りを半時間位毎日やって、健康にいいからって水をがぶ飲み。

 

努力の塊。元の素材が良いことは明白だがそこから自分で更に追い込む凄いやつ。私だって最近、美容とかにはちょっとだけ気を遣ってはいるけど……コハク程ではない気がする……

 

はぁ、あんまり考えると自信が無くなりそうだからお風呂入ろ。

 

「それじゃ、お先に」

「あ、そうだ。火蓮先輩、一緒に一万秒まで湯船に浸かって体重落としませんか!?」

「いやよ。メンドクサイ」

「ええ!? 一人で一万秒はきついんですよ! お願いします、頼りになる先輩!」

「こんなときだけ、敬われてもね」

 

 

あざとい……まぁ、それも長所なんだろうけど。一人で湯船に長く浸かるのは嫌なのか、おだてて私を巻き込もうとする彼女を無視して私はいつも通りお風呂に入る、つもりだったのだが……

 

 

結局、根負けして彼女の体重を落とす長風呂に付き合わされた。

 

 

◆◆

 

 

コハクちゃんは努力家である。焼肉食べ放題に行った次の日は髪を結んでポニーテールにすると朝から変な踊りを踊り始めた。

 

何故か火蓮ちゃんも付き合って踊っているが……まぁ、一人でやるより二人の方が精神的に楽だろうから彼女を誘ったんだろうけど。火蓮ちゃんも付き合いが良いなぁ。

 

 

「はぁはぁはぁ」

「いつまでこれやればいいのよ!?」

「まだです! まだまだ!!」

「いつまでやるのよ!!」

「魔法訓練室ならご近所さんにも迷惑は掛かりません! あと、一時間付き合って貰います! 最高ですね! 魔法訓練室!」

「未だかつてない程に、魔法訓練室を憎んでるわ!」

 

 

 

体にフィットするランニングウェア、レディースパンツを着て踊り続ける。コハクちゃんって……エッチだね……。ぽよぽよ揺れて……。……火蓮ちゃんも揺れてる。ツインテールが。

 

「萌黄も踊んなさいよ!!」

「僕はこの席ではぁはぁ言う二人を脳裏に焼き付けるので忙しいからダメだよ!」

 

二人を眺めてしばらく経つと訓練室にアオイちゃんが入ってきた。彼女の格好はいつも通りのパーカー姿だけどお風呂上りのようにさっぱりして、石鹸の優しい香りが漂った。

 

 

「まだ、やってたんだ」

「そうなんだよ。二人共頑張ってるんだ。アオイちゃんはお風呂上り?」

「うん、ちょっと軽く走ってきて汗かいたから」

 

アオイちゃんって走ったり運動が好きなんだよね。アスリート体質で健康体質という無敵具合。長寿絶対するだろうね。

 

と考えていると音楽がようやく止まって二人共尻餅をつく。

 

「ふぅ、いい汗かきました」

「やり過ぎよ……」

 

二人共疲労困憊で肩で息をしている。

 

 

「ありがとうございますね、先輩がいたおかげで楽しく運動できました」

「まぁ、私も楽しくなくはなかったから……別にいいわよ」

「そうですか? それならまたやりましょうね! 痩せますし!」

「やらない」

 

 

ツンデレらしい火蓮ちゃん可愛い。コハクちゃんのグイグイ感も非常によろしい。

 

「コハクは痩せたいの?」

「ええ、まぁ」

「太ってないし、寧ろ痩せてると思うけど」

「確かに、今の所は理想の体型ですが油断は禁物。体重に常に余裕を持っておきたいのです」

「なるほど、だったら、あーしと走る? そこそこの運動にはなると思うけど」

「ええ、いいんですか!? 是非! お願いします!」

「じゃあ、今からいける?」

「え、でもシャワー浴びたばかりじゃ……」

「もう一回浴びれば問題ない」

「せ、先輩!」

 

 

アオイちゃん、可愛カッコいい。というわけでコハクちゃんが一旦着替えて、二人が一緒に走りに行っている間に火蓮ちゃんはシャワーと着替えを済まして、僕と一緒にソファーに座ってテレビを見始めた。

 

そして、一時間後……

 

二人が帰ってきた……

 

 

「こ、この先輩、鬼……」

「そんなに……きつかった? かなりペース落としたんだけど……」

 

 

コハクちゃんはフラフラで疲労でどうにかなりそうな顔であったが、アオイちゃんはケロッとしながらコハクちゃんを心配していた……

 

一体、アオイちゃんはどれほど足が速いんだ……

 

この日から、コハクちゃんの健康気遣いトレーニングからランニングの項目は消えた。

 

 

 

◆◆

 

 

 九月と言うのは未だに暑さはぬぐえないと思ったら、急に肌寒くなったり体調を管理するのが難しい時期だ。俺はクラスの自分の席に座りながら何とも言えない季節の変化を肌で感じる。

 

 

 来月には文化祭。と言う事はそろそろクラスごとに出し物の話し合いとか色々始まる事だろう。だとするなら、俺も色々動き始めないといけない。先ずは、萌黄ととある男子生徒二人のいざこざである。

 

 二年Aクラスでは男子がふざけていることでなかなか出し物が決まらない。そこで萌黄が男子に注意をして会議をスムーズに進ませるのだがそのせいで反感を買ってしまう。その後もヘイトが溜まり、男子達は文化祭当日に悪口を言ってそれを萌黄が聞いて、彼女が思わず一人で泣いてしまうと言う内容だ。『ストーリー』では彼女は誰にも相談をしないで自分自身に喝を入れて文化祭を楽しむがどこか表情が儚げであったのを覚えている。

 

 

 だとするなら、まずやるべきことは二年生の会議が始まる前にその男子生徒にはしっかりと話をしておかないといけない。今日の午後の授業が全学年、全クラス共通で話し合いがある。

 

 

 だから、俺が釘を刺す。話し合いの前の時間に言えば抑止力は高いだろうしな。確か、悪口を言う二人は坊主と目つきが悪い奴だったな。

 

 

 

◆◆

 

 

 

 そろそろ、文化祭がある、ふふふ、楽しみだ。皆で一緒に食べモノ食べたり写真撮ったり、撮った写真を加工したり……等と考えながら僕は自販機に飲み物を買いに行く。

 

 どの飲み物を買おうか悩む。数種類の飲み物が並ぶ中、一つの飲みものに目が留まった。ブラックコーヒーである。そう言えば彼がよく飲んでいるのもこれだ。

 

 

『十六夜君はブラックコーヒーが好きだなんて、大人ですね!』

『ええ、まぁこの深みがたまりません……大人ですから……』

 

 

どやぁと言う顔をしながらコーヒーを一口。そして、複雑そうな顔。絶対あんまり味分かってないでしょ? 

 

僕はあんまり飲まないけど……買ってみようかな……

 

 

ボタンを押してそれを買って教室に戻る。もう少しで授業が始まるからだ。一人歩いて曲がり角前で話し声が聞こえてきた。どっかで聞いたことがある声と、明らかに聞き覚えのある声。

 

 

「おい、なんだ……一年坊主……」

「そ、そうだ、俺らに何の用だ」

 

 

どっかで聞いたことのある声の二人は明らかに仰天の声。当然だ。相手は校内、いや、今や町外まで噂が轟いていると言われているのだから。

 

『死神』、『アジフライ』、『令和のブラックバス』etc。既に、二つ名が三ケタに登るらしい。

 

頭だけ、覗くように見るとやはり彼が居た。あの二人は……ああ、居たなクラスに。話したことないから良く分からないけどいつも、ゲラゲラ笑って授業中もうるさくてよく先生に注意されている。そして、詰まらないギャグでいつも教室を凍らせる二人。

 

なぜにこの組み合わせ? もしかして知り合いとか? いや、そんな感じでもない。取りあえず話を聞いてみる。

 

 

「次の時間、真面目に文化祭の話し合いに参加してください」

「な、なんだよ、それだけか?」

「そ、それならまぁ」

 

 

ええ? 彼って一年生だよね? なんで、そんなこと君が注意するの? 二人組は直ぐにでもここから離れたいのか彼の頼みを承諾する。

 

 

「あと、萌黄先輩の悪口とか絶対言わないでください。もし言ったら……」

「わかった、わかった……」

「おい、もう行こうぜ」

 

 

何故に僕の名前を……そう思っていると彼と同じクラスの男子生徒がひょっこり後ろから現れた。

 

「いやいやお前上級生によく言えたな」

「正直少し怖かった……」

「そのわりにはかなりいい感じだった気がするが」

「心の中では学園の強キャラを演じているからな。なんとか強者感が出せた。相手も俺の迫力にビビったようだな」

「いや、他の意味でビビっていたと思うが。それより、なんで一年のお前が二年の事に首突っ込んだんだ?」

 

 

あ、思い出した。彼の隣に居る男子生徒って前に僕が食堂で注意した生徒だ。そして、その生徒の疑問は僕も気になる。それと彼って言葉もあんな風に崩すんだ。以外だ。

 

 

「あの二人はギャグはつまらなくて五月蠅いと有名だからな。火蓮先輩と萌黄先輩とアオイ先輩のクラスで好き勝手やられるのは非常に不本意だと思っただけだ」

「ふーん。それにしても萌黄先輩の悪口言うなって……お前、まさか萌黄先輩にも手を出すつもりか?」

「そんなんじゃない。あの二人はそう言った事を言いそうだから釘を刺しただけだ」

「でも、あの先輩、背高くて強そうだし、そういうの気にする感じじゃないと思うけどな」

 

 

……強そうか。背高くて……まぁ、強くあろうとはしてるけど……さ。何か複雑でメンドクサイ僕の性格。背であんまり僕の尺度を測らないで欲しい……と思った。

 

「あの人は凄く気にするんだよ。あの人は強いけど、弱いところもある。でも、やっぱり強い人でカッコよくて可愛い人なんだ」

「え? 何お前? 萌黄先輩も好きなの?」

「それはちょっと難しいな。ただ、あの人には憧れとか色々抱いてるものがあるから……萌黄先輩は自分じゃなくて誰かを優先する人で結構ポーカーフェイスもうまいから一人で色々貯め込んで周りに気遣いをさせない真の意味で優しい人なんだよ。そんな人嫌いになる要素があるか?」

 

 

……

 

 

「あの人は泣いたり、悲しんだりせず、笑って喜んで欲しい。もし、何かを背負うつもりなら一緒に背負いたいだけだ」

 

 

 

……

 

 

 

 

「お前、いつから週刊少年系主人公になったんだ……」

「なったつもりは無いけどな」

 

 

◆◆

 

 

 はぁ、眠い……昨日はあまり眠れなかった。急に動画サイトで期間限定のアニメ公開という奇行を運営側がやってきたからだ。一度見たことがあったけれども期間限定公開と言われるとついつい見てしまった。

 

 お腹がそこそこ満たされて、寝不足。まさに狂気。狂おしい程に眠い。次の時間は文化祭の話し合いらしいから通常授業に比べたら耐えられるかしら? 

 

 文化祭と言えばラノベや漫画ではビックイベント。ここで恋が成就したり、進展したり、はたまた新たな恋が生まれたり目まぐるしい。まぁ、二次元を現実に重ねても意味ないが一般的にも文化祭は高校生にとって大きなイベントである事には変わりない。もしかしたら、私と十六夜の仲がかなり良い具合になるかもしれない。よし、目を開いて頑張ろう。

 

 

 と考えていると教室のドアが開く。片手にブラックコーヒーを持った萌黄。彼女が授業ギリギリとは珍しい。

 

「萌黄、顔真っ赤だけど大丈夫?」

「え、あ、うん……だ、大丈夫……」

「そう……」

 

 

風邪でも引いたのかな? 彼女の顔は未だかつてない程に何かを抱いてしまったように見えた。彼女はブラックコーヒーを一口飲んだ。

 

「苦い……」

 

何があったのよ……。ぼぉーッとして、心ここにあらずの彼女を見ながら私は謎の予兆を感じ取った。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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