今の所、世界の命運は俺にかかっている   作:流石ユユシタ

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稲妻の想い
百五話 三つ巴 


 ドーンと爆弾が投下された。平穏に文化祭が終わったと思ったらこんなことになるなんて。

 

 

「「……」」

「? ……あ! クロのことが……」

「いえ、聞こえてました」

「私も」

 

二人は予想外過ぎて固まってしまったようで、それを聞こえていないと勘違いしたアオイちゃんがもう一度言おうとしたのを二人が止めた。

 

 

 

「そう……だったら、諦めて欲しい」

「アオイ先輩、その前にクロとは?」

「クロはクロだよ。黒田十六夜の頭を取ってクロ、親しみを込めてクロ」

「唐突すぎませんかね? それと諦めて欲しいと言われましても……」

「あーし。火蓮とコハクが好きだから争いたくない。冬美が言ってた……女の人間関係は複雑だから、お昼のドロドロしたドラマみたいになるって。お昼のドラマ、見たことないけど相当ヤバいらしい。あーし、二人共ずっと仲良くなっていきたい。わがままを言えば結婚式の友情スピーチをしてほしいくらい」

「本当にわがままですね……」

「うん、分かっている」

「ドロドロしたくないならアオイが引けばいいんじゃないの?」

「それはもっと嫌……」

 

 

あれ? 食事の時間だよね? 微妙な雰囲気になっているのは気のせいだと思いたい。

 

アオイちゃん……グイグイ行き過ぎじゃ……よく考えたら彼を端っこにして自分だけがちゃっかり隣に居るし……席替えをコントロールしてる……

 

 

「と、取りあえず食べようよ! さ、冷めちゃうよ!」

「そうですね……あと、アオイ先輩席変わってください」

「断固拒否する」

 

 

ここにきてこの感じか……えっと、渦の中心である彼はと言うと、もう、どうしていいのか分からず程よく宥めるだけであった

 

「クロ、あーん」

 

いきなりのあーんだと……? 

 

 

「あ、その。俺は」

「二人とはしてたのに……あーしのは嫌って事なの……?」

 

露骨に顔に影が差す。シンデレラの演劇の練習が功を成しているようで余計に悲壮感が漂っている。

 

「そんなことは無いです!」

 

悲しみの顔を見てしまったらどうしても笑顔でいて欲しいという彼の性格と恐らく彼自身の本音もあるだろう。まぁ、嘘を付けないという事もあるんだろうけど

 

 

「じゃあ、あーん……」

「あ、どうも」

 

急にしおらしくなるのも彼らしい。

 

 

「美味しい?」

「と、とっても美味しいです……」

「そう……でも勘違いしないでクロの為にアーンしたわけじゃないんだからね……」

「それ、私の!?」

 

 

アオイちゃんが火蓮ちゃんの物まねを唐突に始めた事に全員が驚きを隠せない。彼も気になったようで彼女に聞いた

 

「アオイ先輩はどうして、火蓮先輩の真似を?」

「クロが火蓮の事好きだから。真似したらあーしも好きになってくれるかなって思った……あ、クロじゃなくて、クロ君って呼んだ方が良いかな? コハク感も出るし……」

「いえ、そのままで十分ですよ」

「そう? クロの好みになりたいからしてほしいことが言ったら何でも言って……あーし、頑張るよ。あと、火蓮とコハクのモノマネだってする」

「……っ!」

 

「「!!??」」

 

 

ああ、二人が驚いてるよ。彼が照れちゃったよ。

 

 

僕なりに分析すると二人は何処か先ほどまでは驚きもあったけど、余裕もあった。今までずっと献身的にここまで来て告白までされて来たのだから。控えめに言って負けることは無いだろうと何処かで思っていたはずだ。

 

 

でも、この少女、驚異的なスピードで駆け上がってきた。彼女は天然だから余計な事を殆ど考えていない。二人はずっと蛇行しながら切磋琢磨してきた。互いへの牽制とか素直になれない気持ちとかそう言った事で偶にわき道にそれた事もあっただろう。

 

 

だが、彼女は違う。蛇行の山道をまっすぐ。蛇行せずに頂上を目指すそんな子なんだ。

 

さらに、驚異的なスピード、二人の良さを吸収しようとしている。これは、このスピードは現代の一夜城の如く速い、しかも天然だから牽制とかが効かない。

 

 

この子……強い……と二人は思っている事だろう。

 

 

 

「クロ、顔赤くない? どうしたの?」

「いえ、ななん、何でも……」

「お熱ボンボンじゃ……」

「いい、いえ、そんなことは……」

「一応、熱測る……」

「――っ!」

 

 

彼女はオデコとオデコを合わせた。彼の顔がドンドン赤くなり、アオイちゃんも若干赤くなる。一歩間違えばキス位できてしまう距離。

 

 

「ちょ、ちょっとアオイ先輩!?」

「そそそそそそ、そんな測り方は現代ではしないわよ!!!」

 

 

二人が慌てて彼女の腕を掴み引き離す。アオイちゃんは、ふむふむと考えると二人に腕を拘束されながら呟いた。

 

「熱あるね……」

「いや、貴方のせい!」

「オデコ合わせの測り方なんて二次元限定よ!」

 

彼の方が目をグルグルさせてるぞ……その後、彼女は今度はちゃんと体温計で測った。ピピピと測定完了の音が鳴りそれを確認する。

 

「熱ないね……良かった」

「ありがとうございます」

「良かった。良かった……」

「くっ。アオイ先輩にナデポとニコポをされるなんて……」

 

 

ここで彼女はまさかの頭をなでなでした。いや、積み込み過ぎじゃないか彼女!? 確かに無意識の感じでやっているけど……恋を自覚したら、人ってここまでなる物なの? 無意識に触れ合いたい、話したい、アピールしたい、それが彼女の場合は顕著に出ているだけ?

 

 

 

「ニコポとナデポだと!? うぅ、なんなのよ……私は古参ヒロインなのに……」

 

火蓮ちゃんは驚きと歯がゆさを隠せずにいる。ツインテールがふるふると揺れている。それはそうとニコポとナデポってナニ? 彼と火蓮ちゃんは分かっているみたいだけど……

 

 

「あざとすぎる……私の、私の、個性なのに、私も何かしないと……それはそうとあのオデコ熱測りは何処かで使えますね……」

 

 

三つ巴はどうやらここから始まるらしい。

 

 

 

◆◆

 

 

 俺はどうすればいいんだろう。いや、アオイと言う少女の事は嫌いではない。嫌いになる要素が無いし、元々好きだし、前世から好きだし。猛烈に好きだし。眼とか、スタイルのスマートの中にも色気と言うか何というかあるのも好きだし、素直な所も好きだし。

 

 いや、だからと言って三股をお願いするには……確かに俺にとっては理想だけど……

 

 

「打ち上げにはカラオケはつきものです! と言うわけで私が歌います!」

 

 

食事が終わったあとはカラオケをするようでコハクがマイクを持って曲をかける。綺麗な声、セイレーンと錯覚するほどの歌声だ。ま、セイレーンの声なんて聞いたことないんですけどね……

 

 

それほど綺麗だという話だ。

 

 

『貴方と愛を~、囁きたいよね~イエス♪』

 

 

彼女はサビの所でこちらを向いてウインクをしてきた。そのハートの矢で俺の心は打ち抜かれて思わず心臓を抱えてしまう。

 

 

「あざといよ、コハクちゃん……」

「どうしよう……私アニソン歌おうとしてた。ヒロイン格差が広がりそう……」

「アニソン俺好きですよ!」

「なら、アニソンそのまま歌うわ……」

 

 

火蓮はアニソンを歌った。カラオケはやっぱり好きな歌を歌うに限るものだ。

 

「ふぅ、久しぶりに歌うと気持ちいわね」

「最高でした!」

「ふふ、当然よ!」

 

 

彼女は嬉しそうに笑った。こんなに献身的で可愛い子が好きでいてくれるのに……俺は未だにその想いに応えられていない。それって最悪なのでは無いだろうか

 

 

 

「次、はあーし……」

 

 

そんな事を考えているとこんどはアオイが歌いだす。彼女の声はまさに美声だった。

 

 

「うまっ!」

「アオイ先輩、こんな特技を……」

「わぁお……」

 

 

おいおい、アーティストかよって言う位に上手である。そう言えば彼女の喉は七色だったな。歌が滅茶苦茶うまい。

 

 

萌黄もかなり上手い。と言うかこの美女たちに下手な人はいないのだ。合いの手をしつつ彼女達のカラオケは続いて行った。三周位したら少し歌い疲れたようで皆ソファに腰を下ろす。

 

 

「十六夜君、隣良いですか?」

「寧ろ、お願いしたいです」

「座るわよ」

「お願いします!」

 

 

火蓮とコハクが隣に座る。萌黄は苦笑いしながら火蓮の隣に座って、アオイは……

 

 

「クロの膝に座っていい?」

 

俺の膝に座った。彼女はそのまま背中を俺に預ける。柔らかくもハリのある肉質が膝と胸板に当たり、彼女のさわやかなにおいも……強制的にドキドキさせられてしまう。

 

「……」

 

 

彼女は無言だが僅かに薄くだけど微笑んでいた。

 

 

「むぐぐぐ、そういうのイケナイと思いいます!」

 

 

天然だからだとしても無防備すぎる。体をこんなに密着させてくるなんて俺の心が無闇に荒らされていく気分だ。

 

 

心が荒々しくなったまま、時間は過ぎて行った。

 

 

 

◆◆

 

 

 

 私は最近影が薄いような気がしている。文化祭でもドキドキするような展開にはならず、何をするにも二番煎じ感が否めない。私だって十六夜が好きだ。この気持ちだけは誰にも負けない……いや、恥ずかしいわね。こんな事を考えるなんて。

 

 でも、本当だし、真実だし、真理だし。両想いだし。だから、最近はやりのニヤニヤ系のあまあまラブコメみたいなことが始まると思っていた。しかし、実際は違う、ライバルがいる恋愛頭脳系みたいなのが始まった。今日はライバルが増えた。相手は天然、結構スタイル良さげの無自覚系ヒロインでキャラが濃い。

 

 私は正直に言うとハーレムになってもいい、二股だろうが、三だろうが、四だろうが五だろうが別にいい。彼はきっと愛してくれるから、私が転んだら手を差し伸べてくれて、足幅だって合わせてくれる。私が何か言ったら出来る限り、いやそれ以上に何でもしてくれる。

 

 

――そんな人と一緒にいれるなら何でもいい……

 

 

手を繋いで笑いあうだけで幸せになれる。いつでも、いつまでも幸せ。そんな日々を送って行きたい。コハクもアオイも萌黄も好きだ。皆でいつまでも一緒も悪くない。

 

 

だけど、だけど……

 

 

――私と言う存在をもっと見て欲しい。

 

 

その為には、もっと私からも愛を囁かないと、ツンデレ体質で言いづらいけど言ってやる。

 

 

◆◆

 

 

 お風呂の中で人は何を考えるだろうか。まぁ、大体は一日の振り返りとかをする人が多いだろう。俺もその一人だ。全身を洗い湯船に浸かる。湯船に浸かるとき、人はどのように浸かるだろうか?

 

 一度潜って海坊主の気分になるだろうか? 将又、水の支配者、ウンディーネになった気分でぐるぐる水槽に只管に水の渦を作ったり、スプラッシュのように水滴を飛ばしたり、アヒルを浮かせてそれを船に見立て自分は海の神になった気分で大嵐ごっこでもするだろうか。

 

 俺は、ただ只管に地獄の窯に浸かる気分で入るというのを昔よくやっていたなと思い出す。

 

 するとドアが開く。ピタピタと水の床を歩く音が聞こえる。そこには銀色の髪。彼女はバスタオルで隠してはいるが隠せない可愛さ。

 

「コハクさん、どうして、ここに!?」

「背中を流そうと思って……でも、もう洗ってしまったみたいですね」

「は、はい」

 

 

彼女は全身を洗うと同じ浴槽に浸かった。体積が増え、水面が上昇する。息を飲むほどの美貌を持つ人が近くに居るとオドオドしてしまう。こういう事をするとカッコ悪くなってしまうのでピリッと大人な感じで行きたい。

 

 

と考えていると彼女は首に手を回して抱き着いてきた。彼女の凶器が当たりグラグラと理性の棒が倒れそうになる。取りあえず彼女を宥めようとした。しかし、彼女は抱き着いたまま不安そうな声を上げた。

 

 

「……私の十六夜君……。十六夜君、私を見捨てないですよね?……ずっと一緒ですよね? 貴方は私から離れたりしませんよね? 私を置いて他の人の所になんか行かないですよね?」

「勿論です!」

「本当ですか?」

「はい」

「本当にそうなんですか? 怖いんです。貴方が誰かの所に行くのが私じゃない誰かを選ぶのが。怖くて怖くて仕方ないんです。また一人にはなりたくないっ……」

 

 

彼女の締め付ける腕が強くなる。恐怖を抑えるように俺を逃がさない様に彼女はずっと抱き着いて顔をうずめていた。

 

「絶対に一人にはしません」

「良かった。そう言ってくれて……暫くこうしてていいですか?」

「勿論です!」

 

彼女はようやく落ち着きを取り戻してずっと抱き着いたままだった。その後すぐに言葉を発した。

 

「声が……聞こえたんです……また、声が……アオイ先輩に鼻の下を伸ばしている十六夜君の気を惹こうと無理やりこうやってお風呂に行こうとした時に……唐突に鮮明に聞こえたんです……『また、裏切られるかも』って」

「……そんなことあり得ないですよ。俺も皆も絶対に裏切ったりしない。手を繋ぎます」

「……そうですよね……ごめんなさい、疑ったりして……」

「謝ることないですよ! 俺がハッキリしないからいけないんですから……」

 

 

俺が悪いんだよ……その通りなんだよ……ハッキリせずに中途半端で行動してるから……彼女を不安にさせてしまった

 

「そ、そんなことないですよ! 元気出してください!」

「そうですかね……コハクさんを不安にさせてしまうようなことになってごめんなさい……」

「いえ、私の方が……あれ? 何か逆になってますね? 私が慰められてたのに……えっと、とにかく気にしないでください。いつも元気な十六夜君が私は好きです!」

「……そうですかね……じゃあ、そうします!」

「あ、でも、無理に元気にするのも辛いと思いますし……ええっと、どうするのがいいのでしょうか?」

「うーん、難しいですね。笑うから楽しいと聞いたことがありますから……取りあえず笑います!」

「無理しないでくださいね。でも、やっぱり十六夜君はニコニコの方が素敵です!」

 

 

……彼女の為にも不安定な関係は続けたくはないな。でも……俺は、このことには直ぐには答えが出せない。だったら、少しでも何か彼女の為に、負担を減らさないと……笑顔ももっと見せないと……

 

「そう言えば、コハクさん……あの、声ってかなり鮮明に聞こえたんですか?」

「え? あ、はい……その胸のあたりから」

「胸からですか……」

「聞いてみます?」

「え?」

「ここに顔を近づけたら聞こえるかもしれませんよ?」

「確かに……」

 

意外とやってみたら会話できるかもしれない。鮮明に聞こえるほどに声が聞こえるなら彼女の中には既に完全に人格がもう一つ形成されたのかもしれない。

 

魔力とは神秘の力で未だに全ての力は解明されていない。だからこそ、イレギュラーだってある。トラウマ、人の心の闇の部分に自身の魔力が流れ込んでそれが形となってあらたな精神、人格が生まれる事だってある。

 

そのせいで魔力が半分になるということもある。魔力によって生まれた人格。これは彼女の闇。

 

それを無理に引き出すのはずっと、ためらわれることだった。だから、放置せざるを得ない訳だったのだが、既に大分、人格が形成されているなら彼女の中に居る彼女に話しかけて、不安そうなことを言わない様に頼む……いや、でもそれを彼女の闇に言うのも、彼女の闇が可哀そうかも……

 

彼女のトラウマとか闇とかが固まった存在に……安易に言葉を掛けるのも……傷ついたりするかもしれない。人を疑って、信じない、でも優しいから……傷つけたくはない……でも……取りあえず話しかけるだけ……

 

 

「あ、あれ? からかおうとしたのに……結構マジな反応が……」

「ちょっと、話しかけて良いですかね?」

「ええ!? あの、いつもみたいに照れないんですか?」

「いえ、恥ずかしいですけど。今はそんなこと言ってる場合でもないですし」

「きゅ、急にそんな反応されると……こっちが恥ずかしく……あと、胸見すぎです!!」

「すいません。それより、耳当てて良いですかね? ちょっと軽く話して見たくて……」

「耳!? ええええええ!?」

「失礼していいですか?」

「ええええ!? あ、うぅ、ど、どうぞ……」

 

 

彼女の胸に耳を寄せる……そして、くっつく。布越しだがやわっこい。しかし、そういったよこしまな感情を後にしよう。

 

「えっと、俺の名前は黒田十六夜と言います。初めまして」

「……」

「えっと、もし、よろしければ俺と話してください!」

「んっ、……」

「あ!!! 今何か聞こえました!!!」

「それ、多分、私の心臓の鼓動です……」

「え? あ、確かに……」

 

 

確かに彼女の心臓の鼓動が聞こえる。やはり、精神がつながっている彼女しか話せないのか……

 

 

「えっと、俺はカレーが好きなんですけど……何か好きな物ってありますか?」

「……ふぇっ、あ、あの、擦れて……くすぐったいです……」

「すいません。あと、もうちょっとだけ、やっていいですか!?」

「ううぅ、私達は何をしてるんですか……」

「……えっと」

 

 

彼女の食事の好みはコハクと同じ……そう思って色々聞いたがなにも返事はなかった。

 

 

「どうやら、俺には聞こえないみたいですね」

「はい、そのようですね。ただ、もっと早く気付くべきかと……私結構、変な声出してたんですが……」

「いや、すいません……今思うと相当ヤバいことしてましたね……」

「そうですね……」

 

 

彼女の不安は出来る限り取り除いてあげたいけど……

 

 

「いつでも、24時間対応で俺はコハクさんの悩みを聞きます!」

「わぉ、頼もしい! なーんて、ふふ、ありがとうございます。……『ダーリン流石です』……あれ? コホン、流石です、十六夜君!」

「今、もしかして……」

「なんか、心の底から言葉が出ました……」

「もう少し、あの呼びかけをやってみましょう!!!」

「ええ!? あれ、は、その、変な声と気分になっちゃって……その、今日の所は……」

 

 

その後、もう少しチャレンジしたが彼女の心の底の住人が出ることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

 十六夜君と話してると、不安とか全部なくなって幸福感に包まれる。もしかしたら、と考えていた自分が馬鹿らしい。そんなことは絶対ない。

 

 

『本当なのですか?』

 

 

そうだとも

 

 

 

『前もそう思って裏切られたのに……証拠も無いのに……』

 

 

 

それは……

 

 

 

 

『でも、ダーリンが絶対に裏切らないというのだけは同意なのです。あの人は自分の命を顧みずに私を助けたのですから。周りから何を言われても、愚直に私を、いや、私たちを助け続けた。それは絶対の光なのです。でも、いつ、あの人が離れるかは誰にも分からない。裏切りはしないけどずっと隣なんて証拠はない。他の人に取られることもあるはずなのです。あーあ、私ならダーリンに女の武器を最大限使って、逃げられない証拠を掴んで幸せになるのに……あの人は私の希望なのです。絶対なのです。何故、不安定なままでキープするのか私には意味が分からないのです』

 

 

 

でも……

 

 

 

『私に変わって欲しいのです。そうすれば……私のものなのです……まぁ、そんなことなんてできませんが……速めに鎖で縛ることをお勧めするのです……それじゃあ、今日はこの辺で……さようなら……』

 

 

 

 

声が聞こえなくなった。その後には何かが私の心に強く根付いてしまったように思えたのだ。どんな手でも使って……だけど、その思考を私は払った。

 

 

『psご飯の食べ過ぎには気を付けてくださいね? ダーリンにちゃんといい女と思われるスタイルを維持するのです』

 

 

 

その思考も取っ払った。それから声がスッと止とまって全く出てこなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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